【感想・ネタバレ】勝者の混迷──ローマ人の物語[電子版]IIIのレビュー

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mac

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社会問題

一部ご紹介します。
・ハンニバル「いかなる強大国といえども、長期にわたって安泰であり続けることは出来ない。国外には敵を持たなくなっても、国内に敵を持つようになる。外からの敵は寄せ付けない頑健そのものの肉体であっても、身体の内部の疾患に、肉体の成長についていけなかったがゆえの内臓疾患に苦しめられることに似ている。」
・失業者問題は、福祉の充実では、解決しきれない。なぜなら、失業するということは、生活手段を失うことだけでなく、人間の存在理由までも失うことになるからだ。
・人間とは、食べていけなくなるや、食べていけそうに思える土地に移動するものだ。この類いの民族移動を、古代では蛮族の侵入と呼び、現代では難民の発生と呼ぶ。
・全ての物事は、プラスとマイナスの両面を持つ。プラス面しかないシステムなど存在しない。故に、改革とは、もともとマイナスであったから改革するのではなく、当初はプラスであっても、時が経つにつれて、マイナス面が目立ってきたことを改める行為なのだ。
・法律とは、厳正に施行しようとすれば、人間性との間に摩擦を生じやすい。それを防ぐのが、義理人情。
・「主権在民」とは、それを尊重すればするほど、外部に対して閉鎖的にならざるを得なくなる。なぜなら、主権者である市民の持つ権利は平等でなければならず、その平等を維持するには、閉鎖によって異分子を排除することでしか、実現できないからだ。それ故、外国人流入に反対する日本の鎖国論者を、頑迷な守旧派などと思ってはならない。彼らは、国家の構成員全員は平等な権利を持たなければならないと信じている純情な主権在民主義者であるからだ。

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2022年09月30日

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ネタバレ

ハンニバルを倒し、帝国カルタゴを滅亡させ、一気に地中海の覇者となったローマ人。しかし大国への道のりの速さゆえに、ローマは内部から病み始める。権力が集中しすぎた元老院に対して改革を迫る若き護民官グラックスは同国人に殺され、続く改革者たちも、内なる敵に向き合わねばならない―ローマ人はいかにしてこの“混迷の世紀”を脱脚するか。

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2012年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次ポエニ戦役に勝利し、地中海の覇権を不動のものとしたローマであるが、大きくなりすぎた反動が自身を襲う。属州となったシラクサから安価な農産物が入るようになり、ローマの農業者は葡萄畑などに転換するしかなくなったが、この転換には多額の投資が必要であった。投資能力のない者は土地を富裕層に譲渡せざるを得ず、格差が拡大したのである。
このような背景の中、グラックス兄弟が登場する。兄のティベリウス・グラックスは、大規模農地の所有権を放棄させる農地法を護民官として提案し民衆に支持されるも、これが富裕層が多くを占める元老院の反感を買う。護民官への再選を期した集会において、反対派(背後には元老院が控えている)に撲殺されてしまう。兄の意思は弟のガイウス・グラックスに引き継がれ、農地法の復活に留まらず、陪審員を元老院のみでなく騎士階級にも広げたり、ローマ市民権をラテン同盟国にも与える提案をしたため、兄弟そろって元老院の反感を買ってしまう。元老院はガイウスの同僚(フラックス)への工作を図り、ガイウスよりも民衆受けする法案をフラックスに提案させることで、元老院はガイウスの護民官への再選の妨害に成功する。ガイウスの提案が次々と廃案になるのを目の当たりにした民衆は騒動を起こし、元老院最終勧告が発令され、ガイウスは奴隷と共に自殺に追い込まれるのであった。護民官の立場で元老院に立ち向かうのがグラックス兄弟の改革の失敗と分析していた部分は学びを感じた。平民出身であるが、ローマでの絶対権力を誇るようになるガイウス・マリウスは護民官ではなく、執政官の立場で改革を実施し実を結ぶのである。
マリウスは平民であるが、軍事面での功績を足掛かりとして、政治家のキャリアを歩み始める。当時のローマでの徴兵制度は、税金(血の税)としての側面もあったため、民衆の格差拡大の影響を受け軍が弱体化していた。マリウスはこれを志願制にすることで、職業軍人をベースにした軍編成を行い軍事強化に成功する。軍制改革により順調に戦果を挙げるマリウスであったが、この軍制改革が同盟国の反乱を招いていしまう。ローマ市民にとっての兵は「職業」であるが、ラテン市民にとっては「義務」であったためである。

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2023年02月19日

sf

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まさに混迷

ローマ史の位置づけとしてはカエサル登場の前哨となるが、登場人物はいずれも一癖も二癖もある人ばかりで読みごたえは十分です。スッラの死後の「スッラ体制の崩壊」という流れが、リーダーのあるべき姿を考えさせられます。

#ドキドキハラハラ #深い

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2021年10月25日

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