感情タグBEST3
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今川氏真によって妻や妹を強引に人質に取られ、菅沼新八郎定盈は松平元康へ従うことを決める。別離や苦難が続く巻。
野田四郎が新八郎へ言う「言葉賤しからずして、姿幽玄ならんを、達人と申すべきか。殿は、歌道を歩まれるでしょう」という予言めいた台詞が、物語の行く末を感じさせる。
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菅沼新八郎定盈が永禄三年に今川軍傘下で西三河の刈谷で初陣を果たしてから、永禄十二年に徳川家康の下で遠江攻略を果たしその翌年までの十年間を描く第五巻。永禄三年は今川義元が桶狭間で倒れた年。そこから三河には松平元康の時代が訪れるのだが、物語は東三河の菅沼主従の目線で進む。菅沼新八郎は祖父同様にいち早く新時代に希望を託すのだが、祖父の時代とは異なり今川の支配力は強く、菅沼主従は辛酸を嘗める。その頃松平元康は西三河の平定に忙しく、なかなかその姿は新八郎の目の前に現れない。この渇望感、待望感が良い。
ちなみに永禄十三年が元亀元年になった年、織田信長は既に京にあり、姉川の戦、長島一向一揆と畿内の敵対勢力と敢然と戦っている。十年で天下布武の第一人者に躍り出た信長と、ようやく二国を得た元康改め家康。信長のスピードに比べれば家康など凡将だが、周囲の期待を裏切らない速さで進むところに、長く生きて天下を得た家康の本領があるのかもしれない。
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主人公である菅沼家3代(定則・定村・定盈)と
徳川家3代(清康・広忠・家康)を対比して物語を進みます。
東三河の小豪族で取り上げられることのあまりない
菅沼一族がそれぞれ生き生きと描かれています。
物語的には野田城の籠城戦、長篠の戦いがクライマックと
なります。
そのため同じ著者の「新三河物語」とは異なり、
この後老醜・妄執に囚われる家康が出てこないで終わります。
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浮世をはなれなければ、浮世がみえぬではありませぬか。(17P)
全体感を感じるには、まずは孤としての自分を感じろと言うことでしょうか?
自分を感じる。
なんとなくいい言葉です。
四郎と新八郎がようやく舞台に上がって本編がはじまりました。
長い前置きだったわい。
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シリーズも五巻目。今巻は、桶狭間から今川氏衰亡まで。
桶狭間の戦いは遠景として描かれていて、その過程を菅沼氏から描いているところがある意味新鮮。
今まで今川氏に付いていた菅沼氏や東三河の諸豪族が松平に付くことになる過程が丹念に描かれている。
妻を殺され、城を奪われ、恩ある西郷氏を殺され。
そういう苦難の時を経て同じく雌伏の時を経た家康に従って今川打倒の兵を遠州に進める場面が今巻のハイライト。
今まで抑えに抑えていたモノが解放されていく感じがいい。
さて、今川氏がつぶれて、今度は武田との対決になるんだろう。
最終巻はあの有名な武田氏の上洛なんだろうな。
クライマックスに期待する。