【感想・ネタバレ】本質を見抜く力―環境・食料・エネルギーのレビュー

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今から、草むらに行って虫でも捕まえた方がいいのかな〜、っと言う読後感。抽象的な議論を積み重ねてもどうにもならない、と言うのは確かにそうだと思われた。「下」から積み上げていくことが、確実である方法である、と言うのは、確実性の高いこと、かつ自分の中で何度も咀嚼したことしか言わない(言えない)養老さんらしい発言である。確かに苦労は多かったろうが、ある意味でうらやましいとも思える養老さんの生き方は、いつも本気で世界と向き合っているその姿勢がそう思わせるのだろう。
本質を見失いがちな現代人に、おすすめの一冊である。

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2023年07月22日

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石油、温暖化、少子化、水に農業の問題。事の起こりを知ってから自分の頭でしっかり考えることをしなくては「だめ」ですなぁ!

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2018年10月12日

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読書録「本質を見抜く力」5

著者 養老孟司、竹村公太郎
出版 PHP新書

p144より引用
“いまの人はいらいらしがちで、すぐ全か無
かと考えますけれども、生態系を扱うにはほ
どほどという考え方が必要です。”

目次から抜粋引用
“人類史は、エネルギー争奪史
 温暖化対策に金をかけるな
 少子化万歳!ー小さいことが好きな日本人
 「水争い」をする必要がない日本の役割
 農業・漁業・林業百年の計”

 解剖学者と元官僚の二人による、世の中の
問題について語り合った対談集。
 人類の歴史の見方から世の中を支える業務
についてまで、それぞれの歩んできた分野の
経験を活かして語り合われています。

 上記の引用は、自然に対する養老氏の考え
の一部。徹底的にある一つの要素を排除して
しまうと、その要素に押さえつけられていた
物が台頭してきて、結局都合の悪い事態に
なってしまう、ということがあるのでしょう
ね。今世間を騒がせていることも、なんだか
そんのふうな感じを受けてしまいます。

ーーーーー

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2015年03月29日

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ネタバレ

読んでいて今までのものの見方がすごく一方的で小さな視点しか見ていないのではないかと感じてしまった。広い視野を持つためにはあらゆる文献をこれからも読んでいきたい。

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2014年04月23日

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読むの二回目だけどやっぱ面白い。以前より自分に内容が近い感じがするのは、震災や原発のことがあるからだろうな

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2011年11月23日

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養老孟司氏と元国土交通省竹村河川局長との対談形式の本である。
幼年期を少国民と過ごされた方らしいコメントがほんの少し目に入るが、
意図的に読み飛ばす。情報は多く入手し吟味する。

以下に備忘録を掲載。
<石油>
・アメリカの自由経済は原油価格を一定にするに限りの自由:無限にオイルを供給することが条件
・1965年に油田の発見がピークであり、ゆえに石油の供給ピークは現在。
・アメリカは第二次世界大戦頃まではダントツで石油産出国だったが60年代から輸入国になる。
・肺がんを引き起こすのは煙草ではなく、車等の公害が主因。
・排出権は炭酸ガス規制上で成立する商売
・アメリカのエネルギー問題は解決が難しい。

<森林>
・日本列島全体でみると、明治大正期より今の方が森林が豊か(図8.9)。
・江戸時代までは薪がエネルギーであり、森林資源の枯渇と人口が調整されていた。
・古代文明のあったところは、森林資源が使い古されたため全部荒地。
 (ギリシャはオリーブが生えているだけ、黄河は泥だらけ)

<エネルギー全般>
・温暖化によってよりよい環境で生活するために日本の首都も九州から関西、東京に移ってきた。
・今後は都市機能が東北や北海道になる可能性もありあえる。
・公共の意味を再検討:僻地にも水道・ガス・道路がありコストがかかる。
 離島には港の整備も含めて、1人当たり数千万円かけているのではないか。

<温暖化>
・温暖化に日本がアダプトすれば北海道が一番良いコメがとれる。
・温暖化に日本がアダプトすれば、ロシア・カナダが有利。
・100年後は関東は沖縄並の亜熱帯気候に。
・温暖化→雪が降らなくなる→水不足→ダムの貯水率を上げるために、今より10mかさ上げ。

<人口>
・この150年は人口バブル。100年後は7千万人。
・文明国では人口が減ると人間が劣化:労働者が減る→使い道のある人が減る→社会が劣化
・優秀というより、野心的な人がこれからは必要。
・偉い人は働かない。ギリシャ文明の奴隷制、インド、中国など。
・これまで科学を支えてきたのは、ヨーロッパの難民、次に日本人、今は中国人。

<食料>
・食料自給率(カロリーベース)40%程度は八百長。
 ぜいたく品はカロリーが高く外国に依存している。
 アフリカのある国ではカロリーベースではそれが100%となる。
・食料自給額(生産額ベースでの計算)では、70%以上ある。

<その他>
・何かを成し遂げようと思ったら、敵を作らないこと。味方は少なくてもよい。
 敵がいると、その対応でエネルギーを消耗し、前向きなことができない。
・官僚は、所属組織へのロイヤリティではなく、
 国民への奉仕のロイヤリティを持たなくてはいけない。

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2010年11月14日

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メディアが喧伝し始めた所謂〝環境問題〟を見つめ直すよいきっかけになります。養老氏、竹村氏の主張の根拠となる統計データ、文献など、非常に興味深い情報を披露しています。

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2010年03月22日

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博識な二人の対談形式。

世の中の色々な社会問題に対して二人の見解に触れられる一冊です。

仮説をしっかりと立て、それに対して図や資料を使って分析し、立証しているし、
仮説自体もおもしろく思慮深さを感じることができる一冊です。
普段の新聞やテレビの出来事を深く掘り下げて世の中の問題に対面している二人はとてもかっこいい。

もっともっと勉強しようと思える一冊です。

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2009年10月09日

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理科系の視点として「モノ」から物流、歴史、環境問題を論じようという養老氏の試みにより出版された本。
人間の感情や、思想から行動が起こるのではなく、全ての事象は「モノ」に起因するという信念を養老氏は持っているというが、随所に前者の文系的視点での議論もあり、「モノ」だけで議論することの難しさを感じる。

好き勝手に喋っている対談なので、逆に読みやすい。

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2009年10月04日

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物事のうわべだけを見て分かったつもりになってる。今の日本にはそういう人ばかりいる。 もっと物事の本質を見抜く「ものの見方・考え方」を身に着けておかないと、この先大変ですよ。 という感じの内容です。 読んでると、自分の中の「バカの壁」に気づかされ、目が開いて行く心地がしました。

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2013年03月16日

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値段(760円)の割に相当お得な本である。
きっかけ:石破茂農林水産大臣のすすめ
普段考えてもみなかった視点を得られ、世の中の見方に関して相当考えさせられた。自分たちの存在のベースになっているものはエネルギーということに気付かされた。

○アメリカの言う自由経済は、原油価格が上がらないという前提あっての概念なんですよ。(p14)
 アメリカの言う自由経済には、実は「無限にオイルを供給する」という条件があった。
ex;70年代から石油の輸入国になる フランクリン・ルーズベルトが、40年代半ばにすでにサウジに行っている。

○先の日米戦争は油で始まり油で終わった。(p20)
 ヒトラーがバルバロッサ大作戦で旧ソ連に入っていったことも、おそらく石油が原因。
 昭和天皇は、「先の日米戦争は油で始まり油で終わった」とおっしゃています。

○禁煙ブームの裏にあるのは自動車業界と石油業界のたくらみ(p24)
 油の命を長らえてなおかつ収益を上げる。そうするのが一番効率いい。ヨーロッパははじめから排出権取引で儲けようと思っていた。

○何かをやりとげようと思ったら、敵を作らないこと  誰かの信用を得るには直接その人と会わないとだめ

○日本は水に関してニュートラル。国際河川を持った国と丁寧に、忍耐強く話し合うことが日本の国際社会での任務なのです。(p123)

○みんなが「日本の食糧自給率は40%」と刷り込まれてしまった。生産額ベースで計算すると、70%もあるのです(141)

○先の省庁大編成のいちばんの問題は、省庁が少なくなって、事務次官がみんな東大法学部になったことです。しかも年齢も同じです。東大法学部の同窓会、同級会で会議をしても緊張感はなかなか維持できません。(156)

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2009年10月04日

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社会の変化の表層を追いかけている。いつでも足元がグラグラと不安定だ。
養老先生は現代社会のさまざまな課題を概念ではなく具体的なモノやデータに即して考えれば本質が見えてくると言う。ダム行政に手腕を発揮してきた国土交通省河川局長との対談や農業経済学者との鼎談で見えてくる事象に、そうだったのか!!と胸に手を当ててしまった。

あの昭和天皇は「先の日米戦争は油(石油)で始まり油で終わった」とか「雑草という草はない」など自然科学者として健全な精神を持っていたとの部分も記憶に残る。
日本の環境や食料、エネルギーについてきちんとした視点を持つことを学んだ。

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2009年10月07日

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抽象論で演繹的に考えるのではなく、モノに落として帰納的に考えることが必要。そのためには見る力、受け取る力が必要で、結果本質が見えるようになるということだと理解する。

農業・エネルギー・環境から日本の社会を論じているが、上記の視点からまさに日本の本質を言い当てていると思う。

「意見が異なるものに目を向けるということ」をはじめいろいろと気づかされる。

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2014年10月05日

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ネタバレ

副題の「環境・食料・エネルギー」について元建設省官僚で河川事業に詳しい竹村公太郎氏と、教養においての大家養老孟司氏の対談。環境問題は非常に難しい。また「日本の食と農」の神門善久氏を加えた鼎談もあり、現在の問題点が詳らかにされる。簡単な解決方法はないのだけれど、現実にこうした知の積み重ねで物事が進んでいることを願わずにはいられない。

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2014年08月12日

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現在の情報社会においてモノを忘れつつある。
モノは五感で捉える本質的なこと。この本を読んで自分がすでに見失っているモノを知らされました。(知らないだけというのもありますが…)
本質を見抜いていかねば!!

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2013年09月01日

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多くのデータに基づく明快な主張が繰り広げられていてとても参考になった。
地球環境の問題についても多数触れられており、まさに目からウロコ。
博物学や地理学の重要性について述べられている最後の2章は納得。

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2012年09月23日

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ネタバレ

おもしろかったところ
・水は日本が誇る資源、水力発電の有効利用を
・江戸時代以前は木材がエネルギーだったが、枯渇による人口増ストップ がおこった。
・利根川東遷以前は、江戸を含む関東平野は湿地帯、葦だらけだった。
・食料自給率は、生産額ベースでは70%あり、40%はカロリーベース
・「傷つく」という言葉で討論を封じてしまう風潮への警告

疑問など
・石油採掘は2010年がピーク?
・水源の中国資本による購入にも触れてほしかった。

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2012年03月21日

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物事を捉えるには、一言でいえば「五感を働かせる。」「モノから考える。」そうすると、見えなかったことが見えてくる…ということなのでしょうが、解剖学の賢人養老さんと、元国土交通省河川局長の竹村さんの対談そのものが面白い。養老さんの本が久々に読みたくなった。

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2012年01月03日

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ネタバレ

[ 内容 ]
石油高騰、温暖化、食料・水不足、少子化…。
これらの問題を概念ではなく具体的なモノ、データに則して考えれば、本質が見えてくる。
知見を論じ合うのは、解剖学の賢人と、ダム行政に手腕を発揮してきた元国土交通省河川局長。
「日本人は既に一度エネルギー枯渇を経験している」「温暖化対策に金をかけるな」「小さいことが好きな日本は世界の見本になり得る」、さらに「自殺する人は傲慢」という卓見まで。
戦う農業経済学者・神門善久との鼎談も掲載。
ものの見方、日本の見方を変える一冊。

[ 目次 ]
第1章 人類史は、エネルギー争奪史
第2章 温暖化対策に金をかけるな
第3章 少子化万歳!―小さいことが好きな日本人
第4章 「水争い」をする必要がない日本の役割
第5章 農業・漁業・林業 百年の計
第6章 特別鼎談 日本の農業、本当の問題(養老孟司&竹村公太郎&神門善久)
第7章 いま、もっとも必要なのは「博物学」

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月22日

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 養老さんの割合適当な発言がいい感じ。巻末の三者対談で、どうにかまとめようとする竹村さんがお労しかった。
 歴史(古代の遷都から江戸の黒船来航まで)をエネルギー問題から読み解くという視点が面白かった。

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2011年03月24日

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今こそ読む本だと思い手に取った。エネルギーをどう考えるか。石油の枯渇が目に見えている事と、争奪の歴史。都市論にも踏み込んでいて、集まって住むエネルギー効率性を指摘、集落の提案もしている。モノから考える。食、農、水資源。これから更に重要視されるだろう。原子力も含め。日本人の価値観がこれから大きく変わるだろう。(2011.3.18)

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2011年03月18日

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肺癌と大気汚染   生態系は100年で回復しない 新しい森には虫がいない  人類の文明史のなかで植林で山の木を守ろうとしたのは日本文明のみ。  エネルギー源を日本国内で分散すべき   いまの人はいらいらしがちですぐ全か無かと考えますけれども、生態系を扱うにはほどほどという考え方が重要です。エネルギーの問題も正解はなんだという態度ではなく、ほどほどのところで収めようとすればよい。  問題を直視すればかならず解決策はある。  ただしい受け取り方はあっても、ただしいやり方はない。

2015/6/7 購入にして再読

山の木を植林で守ろうとしたのはおそらく日本文明のみ

ギリシャ文明は奴隷制の上に成り立つ アテネ市民10万人に、奴隷が10万人いた 古代ギリシャの民主制を賛美する人は奴隷の存在をわすれている

概念でなくモノを残せ
概念には当然ズレが生じる

千葉の銚子には鬼怒川しか流れなかったのが、利根川、渡良瀬川を銚子へ流した 江戸時代

家康がなぜ駿府を終の棲家としたのか
鎌倉と同じ天然の要塞

河川法の第一条に環境保全をいれた

いまの医学には現物がない。あるのは検査の結果だけ。つまり情報だけ。医学が情報処理になって、生物を扱わなくなった

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2015年06月07日

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著者二人の対談。モノとう現実から日本を考える。竹村氏は、国土交通省の河川局長を勤めた人。石油や水、森林や河川などの下部構造から日本の文化や歴史を洞察する。いままで知らなかった独自の視点による情報が新鮮で、興味深く読んだ。江戸時代末期、日本のエネルギーとしての森林利用は限度に達し、いたるところ禿山だらけだった。その限界を打ち破ることが出来たのは、黒船来航による開国だった等々。文科系の人間が見落とすような発見に満ちている。

たとえば、アメリカ自由経済は原油価格が上がらないことを前提として成り立っていた。それを視点にするといろいろなことが見えてくる。戦後7回あった不景気のうち6回は原油価格値上がり後に起きている。その原油に限度が見えてきたから、バイオエタノールに必死にシフトしようとする。そこから穀物の値上がり等の問題も起こった。しかしアメリカとエネルギー問題は解決不能で、インフラが石油依存(たとえば自動車依存)のため、それが切れたときのショックは大きいという。

さらに、地球温暖化問題の具体例の一つとして水問題がある。日本が水に恵まれているのは、国土の70パーセントを覆う森林の恩恵によるが、地下水を利用するアメリカ農業はやがて限度に達するだろう。中国は、水の限界のためこれ以上発展することはできないだろう。北京の砂漠化も近い将来深刻化する。日本も、水に恵まれているからといって安閑としていれば生き残れない。森林、河川、海岸、海域等の環境を守っていくことが必要である。

この他、なるほどと思わせる発見や洞察が随所に見られる。最近読んだ本のなかでもとくに興味深く読めた。

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2009年10月04日

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この対談本が面白いのは、上から目線の養老先生は本質を見失ったことも言っているのに、対談相手の竹村さんは本質を見抜いたコメントをされていることだ。

例えば、60ページで養老さんは、「自給率を高めることとフードマイレージを低く抑えることは必ずしもイコールではない」と述べている。環境・エネルギーの観点からは全く正しい。ところが、EUがそういう発想で各国で分担しているというのは、論理の飛躍だ。EUは幾重もの陸路と海路で繋がっているから、食糧安全保障の観点からも分担は正しい。しかし、日本は輸入=海路なので、コロナ禍のコンテナ不足のようにリダンダンシーの点で危うく、日本はEUとは違い、単独での自給率はやはり不可欠な指標だ。

第四章には、「水争い」をする必要がない日本の役割というタイトルがついているが、竹村さんは、東大の沖教授のバーチャルウォーターを取り上げて、日本が間接的には水の大輸入国であることや、水問題が地球温暖化の影響の目に見える事象であることを伝えている。つまり、日本は食料や材木の輸入という形で水争いに巻き込まれていることを示している。これは、まさに本質を見抜いている。

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2022年01月03日

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諸氏の対話がそのまま本になっている。会話形式のため発言が大袈裟であったり、それは言いすぎだろうというものが多かったように思う。ただ、見方として面白い部分もあった。中国の発展が水の制約で限界があるというのは新鮮だった。

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2021年08月08日

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養老猛司氏の本は読んだことがないが、「バカの壁」ほか、なんだかおもしろそうなのでそのうち読んでみよう。
竹村氏は元国土交通省局長。

そういう2人による環境・食料・エネルギー問題をめぐる対談集で、談論風発風に進んでいたところに、神門善久という農学教授が飛び込んできて、農政問題が大変だ、誰もオレの言うことを聞いてくれない、農林水産省はバカだと叫ぶので、年寄り2人がもてあましてニガ笑いといった座談風景が思い浮かんでくる本でした。

竹村氏の発言。
「頭のいいだけではない、勇気もあり、社会を綱渡りしていく度胸とバランス感覚を備えた役人が少なくなりました。
現在はマスコミによって細部のミスでたたかれ意気消沈し、役人になろうとする優秀な人材はカネ儲けのマーケットの世界に行ってしまう。
この激動の時代にこそ構想力と気概を持った役人が必要です。国の役人こそが百年後の国土と食料とエネルギーを考えるセクターになるべきです。」(p158)

「役人」のところは「政治家」と読み替えるべきかもしれない。

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2018年10月01日

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「バカの壁」で有名な養老孟司。彼が対談によって現代の問題を考える。二酸化炭素が本当に地球温暖化させているの?森林は本当に減っているの??データを基に常識と思われていることを問い直す。理系的発想。「モノ」にこだわる。

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2014年12月18日

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この本は米国でのシェールガス・オイル革命が明らかになる以前の2008.9に出版された本なので、その点は少し考慮すべき点があると思いますが、第一章で述べられている、「人類史はエネルギー争奪史である」という解説は戦争の歴史を見るに当たって興味ある見方でした。

この本は「バカの壁」で有名な養老氏と、最近(2014.2)になって彼の著作の面白さにとり付かれるようになりました、竹村氏との共著です。

特に、日本の農業について、何が問題なのか、選挙の洗礼を受けなければならない政治家では絶対に言うことのできない内容を解説してくれている点が良かったです。

都市化により有料な農地から高く売れることから失われていることや、日本の地籍が確定している(自分の土地が台帳と合っているか)割合が、全国でまちまちで、特に歴史のある西日本当たりでは、かなり低い(10%程度)というのは驚きでした。これが農業問題を改善させることのできない元凶なのですね。

更に、今では緑に囲まれていると思っている日本ですが、つい最近(明治のころ)までは禿山だったという写真付きの説明は納得感がありました。それを養老氏の専門の一部である「昆虫」が、例えば、六甲山脈や富士山付近の樹海で、あまりいないことから説明できるというのも興味ある考え方でした。

以下は気になったポイントです。

・油田の産出量のピークは、発見から50年ほどずれる、油田発見のグラフの重心が1960年なので、2010年が産出量のピークにあたるという計算になる(p13)

・第二次世界大戦前夜の石油産出分布は、アメリカが圧倒的、2位以下の国の合計よりも多い。日本は、400万KLの需要に対して、産出量は30万KL、7%程度は賄っていた(p19)

・ヒトラーが、バルバロッサ大作戦で旧ソ連に入ったのは、石油が原因だろう、最終的にはコーカサス油田が欲しかったと思われる(p21)

・中国で大慶油田が見つからなかったら戦争をせずにすんだという話があるが、当時の軍人は戦争で成功すれば爵位がもらえるので油田発見には無意識になる(p22)

・中国の肺がん発生率は地方によってバラバラ、たばこが原因ではなく大気汚染である、その元凶は石油業界とクルマである(p24)

・アメリカが農業用にくみ上げているのは、化石地下水といって二度と回復しないもの(p28)

・アメリカがいまのようにガソリンの大量消費を前提にしたシステムになったのは、都市間・都市内の大量輸送システムが生まれなかったから(p29)

・百年前は丸裸だった山肌が粘り強い植林活動のおかげで、いまは木が回復している、しかし虫はいない。生態系は百年では回復しない(p32)

・ペリーの黒船との邂逅は、日本文明にとって蒸気機関と化石エネルギーであった。森林が崩壊寸前の江戸文明にとっては黒船来航は救いであった(p37)

・世界の川が泥だらけなのは、人間が上流の木を伐ったから、黄河の上流の木が伐られたのは、万里の長城が元凶であった可能性がある。薪が必要になったので(p39)

・奈良盆地では、二百年の間に、飛鳥・藤原・平城京と何度も造り、奈良の人口10万人に大して年間200万本必要である。これにより奈良盆地の周辺の森林が崩壊した(p41)

・寒冷化が進むと海面が下がり、河口近くに干潟が現われてくる、そこに土砂が流れ込み堆積して沖積平野が誕生していった(p53)

・水の中に住むサルが人間になった仮説について、地上で直立歩行に移行するわけがない、水の中なら自然に建てる(p55)

・日本の女性は子供を生まなくなったのは、女性たちに「いま結婚して子供を作るのは危ない」という直感があるのではないか(p77)

・参勤交代も三代目くらいからは、単身赴任している地方から江戸に里帰りするという感覚(p80)

・ペリーは、水をよこせと言ったのみ、日本は、何もないけれど、大地震・水害・疫病だけはひっきりなしに起こるとんでもない国だった(p86)

・日本は大政奉還によって国民国家になったが、大政奉還の式典に通訳が入ったという話はない、日本人の情報共有力はすごかった(p88)

・日本人が馬車を作らなかった理由は、去勢の技術がなかったから(p104)

・イスラエルがゴラン高原を手離さないのは、そこがヨルダン川の水源になっているから(p120)

・虎ノ門のダムは明治後半まで残っていたが、いつのまにか埋め立てられた。いまは溜池という地名のみ残っている(p124)

・日本は地質時代のある時期にはバラバラの島であった、東北・関東・中部・近畿・中国といういのは、実は島の区分である、5つの島がくっついて本州ができた、糸魚川静岡構造線がその名残、琵琶湖は中部と近畿と中国の海峡(p129)

・1987年までは農水省は自給率は生産額ベースで80%、今はカロリーベースが40%、生産額は70%(p141)

・アフリカの貧しい国のカロリーベースの自給率は100%(p142)

・農業所得の過半が農業、65歳未満、農業従事60日以上の者がいる農家は42万戸、全体では285万戸(p161)

・自分の土地が台帳と合っているかどうかが確定しているのは、大阪では1%もない(p164)

・まじめに農業をやっている人が周辺の農地を買ったり借りたりして規模を拡大しようとすると、農村集落の和を乱すとしてJAや、片手間農家から邪魔される(p177)

・人口が3000万人から1.2億人まで増えたしわ寄せは、土地が被った。(p178)

・日本農業は、諸外国の農産物流入で崩壊するのではない、片手間農家などの地権者のわがままと、それを容認する行政・研究者の無責任のせいで、自壊に向かっている(p184)

・60年代の公民権運動で批判され、法的にも無効であるとされたが、そこで住人たちが編み出したのが、土地利用計画であった(p199)

・日本よりアメリカの砂糖のほうが甘い、それには水が絡んでいるのだろう、砂糖分子に水がどのように結合するかで甘さが変わってくる(p220)

2014年2月23日作成

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2014年02月23日

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・今は高校から大学への通路が構造化されており、決まった人材しか養成できなくなっている。東大病院は20年前から灘校出身者だらけ(養老)
・イスラエルがゴラン高原を手放さないのは、ヨルダン川の水源になっているから。使える井戸はほとんどが暫定国境線でイスラエル側に入っている(養老)
・減反をやめれば生産量は1.4倍になるので、生産費は半減でき、価格は半分になる。実際には米の内外価格差は2倍しかないので、完全自由化しても大丈夫。農地の有効利用を阻んでいるのは、農地を資産として持っている人が多すぎるため(神門)

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2018年10月31日

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世の中の事象を「モノ」に立ち返って考える、を基本コンセプトに、
石油、水、農地、食糧、人口など、あらゆる資源から社会問題を考察します。
こうした資源から冷静に分析すると、
メディアや国家の発する情報がいかに本質を外しているかがわかることが、
示唆されています。
「資源の量がこうなんだから、こうしてしまえばいい」という極論が楽しいです。
石油はもう枯渇するんだから、そのキャパに見合った人口にするために、
減少政策をとるべき、とか。

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2011年04月10日

「社会・政治」ランキング