【感想・ネタバレ】インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本がなぜ、戦争に突き進んだか。諜報戦争の面から覗く、第二次世界大戦。ゾルゲ程度しか二次大戦のスパイは知らなかったので非常に興味深かった。

日本が英米との情報戦争で大きく差をつけられ敗北の原因になったというのは有名な話ではあるが、本書を読むと、日本も日本なりに努力していたことがうかがえる。コードネーム、ニイカワことラットランドによるスパイ活動は読んでいて膝を打つ。まさかイギリス人をアメリカに、日本のスパイとしてリクルートしているとは。まあラットランドも結局アメリカに寝返るのですが。

イギリスのスパイシンシア。ワインとベッド、社交性を武器に情報を奪い取る様は非常に恐ろしい。国家で重要なポジションにいるならば、舞踏会などで会った人間と軽々しくセックスするのはやめようと強く感じた。

そして、ブレッチリー・パーク。当時のイギリスは暗号解読の先進国。まさかここまで多くの情報を得ているとは。例えば独ソ戦。日本の外務省が独ソ戦に対してオロオロ時間を無駄にしているのに対しイギリスの対応は早かった。先んずれば人を制すを地で行く。南仏進駐も予め知り尽くしており、アメリカ参戦に一役買っている。

意外にも、日本の暗号もそこそこ強かった旨が書いてあり驚嘆した。暗号機パープルはエニグマよりも解読に時間がかかり(それでも41年2月には解読されたが)、陸軍暗号解読班は優秀だったそうだ。

横山一郎大佐が有能。アメリカでのスパイマスターであり、日米戦争回避のために、アメリカから「満州国承認」すら引き出した日米諒解案を得た。まあ松岡洋右が蔑ろにして幻に終わったが。アメリカで必死に構築した諜報網が崩れていく様はなかなか見どころが多い。

アメリカの孤立主義に対するソ連、イギリスの苦闘が見て取れる。孤立主義のカリスマ、トマス・デューイを止めるためにウィルキーを支援、他候補者のスキャンダルをバラまき、いざ共和党候補にウィルキーが選出されると用済みとして放る。恐ろしい。

最初は日本、次に英国と来てNKVD。さすがロシアなだけあって闇が深い。日本をアメリカと戦わせるために経済的に日本を絞め殺そうとしたユーリストや、ゾルゲ以上に日本社会に溶け込んでいたエコノミスト。

インテリジェンス1941


ジェームズ・ボンドの元ネタとされるユーゴスラビア出身のドゥシュコ・ポポフ。ドイツとイギリスの二重スパイ。コードネームはトライシクル。彼が真珠湾攻撃を誤った情報から予測し、アメリカに伝える。しかし、その情報が信じられず(そもそも二重スパイという人種が信頼に値しないと判断され、また日本の諜報網を潰したはずなのに真珠湾にスパイがいるはずないという思い込みで)捨てられた。

一方で、アメリカの暗号解読班は人員がとんでもなく欠乏している中、かろうじて日本の「真珠湾に関する情報」を仕入れることに成功する。

最初は日本、次に英国と来てNKVD。さすがロシアなだけあって闇が深い。日本をアメリカと戦わせるために経済的に日本を絞め殺そうとしたユーリストや、ゾルゲ以上に日本社会に溶け込んでいたエコノミスト。

ユーリストに対するソ連スパイの渡したメモ。それが後のハル・ノート。ハル・ノートはソ連製だった!? というのも、ハル・ノートの原案のホワイト案を出した、ハリー・デクスター・ホワイトはソ連のスパイだった。この内容はある程度穏健的でアメとムチ両方あったが、国務省次官のウェルズや、極東問題顧問のホーンベックが対日強硬派でアメを削ったのだ。

アメリカは日本に対しての暫定協定案で、インドシナ北部の25000人までの兵員を認める方針でいた。しかし日本軍は交渉が決裂したときのために、インドシナへの日本軍が16隻の輸送船を送り、兵員を増員しようとした。それがイギリスのスパイに「10-30隻の輸送船」と報告され、その情報をアメリカにリークし、アメリカ担当者は「30-50隻」と大統領に報告した。明らかに協定案を尊重していないとして、ハル・ノートが渡され、日米戦争が不可避になる。情報を持っていたイギリスが、ほとんど表に出ずに日米を動かす様は「紳士の国」としか言いようがない。

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2021年09月22日

Posted by ブクログ

【この瞬間,世界を動かしていたのは,物理的な力ではなく,情報の力だった】(本文より引用)

真珠湾攻撃に至る前の数ヶ月間に列強間で行われた諜報戦に焦点を当てた作品。日本を始めとする各国のスパイたちが,戦争回避や自国の利益のためにいかに動いたかを丹念に追っていきます。著者は,「NHKスペシャル」等の番組を担当した山崎啓明。

新たに公文書の公開がなされた英国の動きも交えながら諜報戦の行方を描いたことにより,日本にとってのあの戦争が,言わずもがなの「世界」大戦であったことが改めてよくわかりました。まだまだ表に出てきていないこともあると思いますが,情報を扱うというのはどういうことかを考える上でも最適な作品です。

前知識があまりなくても読みやすい☆5つ

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2020年01月10日

Posted by ブクログ

・イギリスが保管する「ウルトラ文書」が、日本の戦争直前の諜報活動を物語ってくれる。
・アメリカ国内に築かれた日本の諜報機関といえば、「東機関」が有名。
・ロンドンやワシントン軍縮条約で日本は追い込められた、とする向きもあるが、実際は、アメリカやイギリスの戦艦保有量も制限されたのであり、国力の差からすれば、むしろ日本に有利だった。
・ハリー・ホワイトというアメリカ財務省の経済学者がいたが、実はソ連のスパイだった。しかも彼が、いわゆるハル・ノートの原案になるものを書いた。
・同じ時期に、ソ連は”エコノミスト”と呼ばれるスパイを日本に花っていたが、これが誰かは今もって不明。
・アメリカのスパイマスターだった横山一郎は、戦艦ミズーリの上での降伏文書調印式の時に艦上にいた。

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2014年08月12日

Posted by ブクログ

・1941年当時の情報を活かせない日本型組織の問題―既定路線にしがみつき、状況の変化に応じて、柔軟に判断を変えることができない
・「暫定協定案」への中国の激烈な拒否反応→アメリカを対戦へ引きづり出すべくチャーチル英首相の策謀→インドシナへ南下する日本の兵力をアメリカへ過大に報告→「ハルノート」の提示

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2018年11月04日

Posted by ブクログ

様々な意図によって操られるマスメディアから一方的に流される情報は基本的に信用しない。
なるべくソースの異なり、思想信条、利益などが異なる様々な情報源からの情報を収集し、状況判断をしていきたい。
しかし、まだ、それらの情報には、表面からは見えていない情報が、真の意図が隠されているのではないか?

昨年12月8日に放送された、NHKスペシャルの書籍化。

ヨーロッパに端を発した戦争が、第二次世界大戦という世界をそして日本を巻き込んでいく戦争に拡大していくなかで、秘密裏に、かつ、華々しく繰り広げられていた情報戦。
その情報戦の少なくとも一部は、米英の情報開示、そして、ソビエト連邦崩壊後の情報開示によって明らかになってきている。

それらの証拠に基づき、ドイツ、イタリアの戦争、そして日本の対米開戦に突き進むなかで、情報がどのように取得され、どのように使われ、どのように意図的に受け渡されることにより、どのように国の決定がなされていったかということを、史実をもとに世界規模の情報戦の姿として描き出している。

NHKスペシャルの書籍化ということもあり、華もあり、また、登場人物が活き活きと描かれ、飽きることがない。
孤立化する日本が、連合国にによって戦争に追い込まれていくという構図はよく聞く話ではあるが、日本の対米開戦によって、米国が第二次世界大戦に当事者として本格的に参戦することによって、一番利益を受けたのは誰か? など、より深く世界情勢を検討するヒントを与えてくれる。

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2014年08月15日

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