【感想・ネタバレ】クジラの子らは砂上に歌う 1のレビュー

果てない砂の海を漂流する漂泊船「泥クジラ」。チャクロはその泥クジラの「記録係」であった。
泥クジラの住人の多くが、情念動(サイミア)と呼ばれる不思議な力を使い、そして彼らは短命であるという。
若い仲間の死に何度も傷つきながら、それでも彼らは穏やかで平和に暮らしていた。
しかし、ある日廃墟船に偵察に赴いたチャクロは、衰弱した少女・リコスに出会い、それにより状況は一変する。
泥クジラ以外の世界、そこに住まう人間を見たことがない住人たち。そんな彼らにとって残酷な真実を知るリコス。
外の世界はどうなっているのか、住人の祖先たちはなぜ泥クジラで生活していたのか、そもそも泥クジラとは一体なんなのか…。
すべての謎が明かされ、自分たちが短命である理由を知った住人たちは、新天地を目指し泥クジラの舵を取るのだった。

このお話はタイトル通り、「クジラの子」、すなわち泥クジラで生きる子どもたちを描いています。
「泥クジラ」という聞きなれない場所に住んでいることで、どこか遠いところの話に聞こえますが、彼らは楽しいも悲しいも感じる、感情を持った普通の人間でした。
というのも、外の世界には感情を持たない人間がいたからです。リコスもまたその1人でした。
そんな彼女ですが、チャクロやその仲間と過ごすうちに、自分の感情を取り戻していきます。
そしてクジラの子たちを助けたい、彼らと生きたい、そう願うようになるのです。
しかしそれは決して簡単な道ではなく、何度もクジラの子たちは絶望し、立ち尽くすのでした。

残酷な真実ばかりの世界で、悲しみがあふれる世界で、それでも人間は感情を持つのが正しいのでしょうか。
チャクロは言います。「痛みや苦しみすべてが俺たちの生きてきた記録だ」と。そしてだからこそ忘れることはできないと。
仕事や人間関係で嫌なことがあったとき、悲しくて泣きたいと思ったとき、何度でも読み返したくなる1冊です。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

文明崩壊後の砂漠を渡る「泥クジラ」なる巨船上に共同体を築いて暮らす民。
情念動を操る短命な超能力者「印」と、その指導者的立場である僅か一割の「無印」…
この設定だけでSFファンならときめくはず。加えて泥クジラの風俗や文化や生態系がとてもよく練られている。冠婚葬祭の習俗や食、衣類や詠読みに至るまで、過酷な環境に晒されながらも生活の知恵を駆使して逞しく暮らす泥クジラの民の生き方は非常に魅力的。
思春期の少年少女の中性的な色気を抽出する愛らしく繊細な絵柄と壮大な世界観が融合し、豊饒な物語にぐいぐい引き込まれる。この漫画自体、作者が再発見した偽史の体裁をとっている仕掛けが心憎い。
登場人物も敵味方とりまぜてキャラが立っており、戦闘狂のリョダリにしろ眼帯の団長にしろ背景が掘り下げられるほど憎めなくなる。喜怒哀楽の、特に「哀」の表現が秀逸で、リョダリが哄笑しながら堕ちていくシーンや団長が草を叩き斬るシーンの痛切さは胸に迫った。
平凡な少年が外界よりの使者である少女と出会い運命を切り開く、ボーイミーツガール物としても非常によくできている。
主人公のチャクロは心優しく、敵であろうと無闇な殺生は避ける。首長のスオウも年端もいかぬ敵兵に「共にここで暮らそう」と呼びかけたりと、絶望の中でもひたむきに明日を信じ続ける登場人物の純粋さや善良さが光る。
もちろんそれと対比される邪悪なキャラクターもいるのだが、遺されたものに託された想いの強さと尊さには胸が熱くならざるえない。
他にも寿命差故に引き裂かれがちな印と無印の恋愛、印の子を持った無印の親の宿命が数々のドラマを生み目が離せない。
ナウシカに言及する声は既にあるが、「地球へ……」なども思い出す。
オウニは「NO.6」のネズミを彷彿とさせるアウトローな造形なので、気になった人は是非読んでほしい。

2
2017年08月24日

Posted by ブクログ

 ファンタジー、それもディストピア物でのハイファンタジー作品である。スローペースで世界観を伝えるような内容で一巻は展開されているが、終盤に急展開を迎える。作り上げた焼き物をバリーンしてしまうかのような急展開である。
 個人的には、ここまで描き込まれたハイファンタジーを(漫画という形式で)初めて見かけた。こうした密度の高い作品は、どちらかというと女性向けの漫画の方で見かける機会が多い気がするのは、単なる個人的な感想に過ぎないところだろうか。
 中世ヨーロッパの小説のように、物語は「どこかで見かけて買った記録を元に翻案したものだ」形式で説明されていて、全体的に洒落ているなという印象を受けている。

 個人的には、緩い感触で展開されている前半部も大変好みだったのだが、ここからどう転ぶかわからない。とりあえず、星四つ半相当と見て次の巻に注目したい。

2
2015年07月31日

Posted by ブクログ

途中、小説原作かと思って背表紙を見返した。いや凄いなこれ怖くて魅力的な異界をしっかり話の中で情感豊かに作り上げてる。また思いきり辛くも先の気になるところで1巻のヒキになるんだ。

2
2014年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

繊細な絵、繊細な感情表現で描かれる砂上の人々の静かな暮らし。4話で容赦無く心を抉られる。1〜3話で積み重ねたものが全て崩れるがその崩れ方が本当に容赦無い。しかし1話での砂刑歴との記述ですでに「それ」が示されてて…行き場の無い彼らがどうなっていくのかこれからも見守りたい。

1
2018年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても不思議な作品。オリジナル作品?でも、あとがきを見るとノンフィクション??このあとがきもフィクションなのかな??
とても繊細で魅力的な線画。ジブリのように、独特で完成された世界観。世界の秘密が知りたくて、どんどん先が気になって最後まで一気に読んでしまいました。ラスト、いきなり風向きが変わって。。

1
2015年06月16日

無料版購入済み

ファンタジーな船と、謎の少女。

超能力の様な力を使いながら、自然の恵と畑を耕して暮らす世界。幸せそうで、ほっこりする。

和やかだったのに、それを揺るがす展開。これからが、本番のストーリーなのかな?
主人公達や、世界の謎を知っていそうな少女が、どう関わっていくのかな。

#ドキドキハラハラ #ほのぼの #切ない

0
2024年03月11日

無料版購入済み

美しさに飲まれる。

まだ序盤しか読めていませんが、既に物語の壮大さ、設定の細やかさ、絵の美しさに圧倒されています。滅びゆく未来ーーという設定が好きな人には堪らない作品だと思う。ゆっくり時間をかけて丁寧に読みたくなる、本当に美しい作品です。

#深い #切ない #エモい

0
2022年09月28日

Posted by ブクログ

砂の海の中を漂う巨大な船、通称“泥クジラ”。そこで暮らすチャクロはある日、廃墟船を発見し始めて外の人と出会う。その出会いは今までの暮らしを変えていくことになる。
幻想的な雰囲気と柔らかなタッチの絵、優しい世界で短命だけど、穏やかな暮らしを送る人たち。この設定で一体どういう話が展開されていくんだろとのほほんと思っていたら、突き落とされるような絶望感が待っていた。柔らかな印象と反比例するような残酷な出来事、何回読んでも終盤は涙してしまう。ただ絵とストーリーのギャップ、バンバン人が死ぬこと、中性的なキャラたち、作り込まれた設定についていけない人もいる作品かもしれない。
個人的には作者のこの世界観を作った想像力とそれを描く創造力に魅力を感じた。一応作者はネタ屋さんで見つけた日記的なものを作品にしたとあとがきで書いている。だが、つっこみどころの多いあとがきとも書いている。一体どこまでこの世界を考えて作ったのだろうと読者も想像力が膨らむ。

0
2022年07月29日

購入済み

独特の世界観

ファンタジックなテイストの絵柄に反して、なかなかヘビーなストーリーでした。独特の世界観があって惹き込まれます。退廃的な雰囲気があって、少し風の谷のナウシカに通じるものがある。

0
2022年05月09日

ネタバレ 無料版購入済み

んとね謎

1巻を読んでの感想は最初から設定がよくわからんし、で世界観もちょっとよく分からない2巻よんでないのでわからいのですが、、、期待は大

0
2021年05月08日

Posted by ブクログ

泥クジラの人々と外の世界の少女との穏やかな交流……から一転、4話で話が急展開して1巻終わり。

正直、3話までの流れがずっと続くなら「絵は綺麗だけど先は気にならないかな」って思ってた。
けどあの4話……ここから泥クジラの人々はどう巻き返すのか。どんな謎が隠されてるのか。
気になるのでこの先も読むの確定。

0
2020年11月21日

ネタバレ 無料版購入済み

ちょっと不思議な作品世界

実は私は未読なのですが、フランク・ハーバード氏の砂の惑星シリーズ等、作者はお好きなのでしょうか。謎の少女、リコスさんが城の外にいて、一定、外に何があるか、知っているようです。
ただまだ作品も始まったばかりなので、これだけだと分からないことだらけです。
作画はかなり丁寧です。マンガのナウシカを彷彿地させるタッチで、良作の予感はしました。

0
2023年07月26日

ネタバレ 無料版購入済み

冒頭の葬送の詠唱?祈り?の言葉が素敵で何度もこのシーンを見たさに頁をひらいてしまう。
それに続く砂の世界と。幻想的で見惚れます。

0
2022年10月15日

購入済み

ファンタジーもので、閉鎖的な空間で生きていた主人公たちが物語が進むにつれて自分の置かれた状況が解き明かされていきます。
設定が作り込まれていて、キャラクターたちも心情が伝わってくる描き方をされていると思います。

0
2022年02月28日

Posted by ブクログ

(3巻まで読んだ評価)
変わった雰囲気の漫画だなと思ったが、意外と普通に読めた。
風の谷のナウシカとかあんな感じの雰囲気?なのかな…うまく表現できませんが…(´・ω・`)

うおー全巻買うぜー!!という感じではないが4巻読んで判断したい、そんな感じ。

0
2022年02月20日

無料版購入済み

絵がすごく丁寧で綺麗です。幻想的な泥クジラの世界が細部まで描き込まれている感じがします。リコスが運んできた風がどう泥クジラを動かしていくんだろう?

#ドキドキハラハラ

0
2022年09月28日

Posted by ブクログ

最初は設定は面白いと思いながらも、どういうタイプの話になるのか不思議に思いながら読んでいたけれど、最後の方の急展開で一気に引き込まれた、2巻への引きも絶妙で次が読みたくなる。

0
2017年11月04日

Posted by ブクログ

面白い。この手の世界観全て作るファンタジーって今だと凄く希少で、ボニータだから出来たんだろうな。世界観に入りやすいし、読みやすい。
主人公は女の子だと思ってたら少年なのね。
一話の核となる文章の助詞が違和感あるけど、後は気にならなかった。
続きも気になる。

0
2016年07月06日

Posted by ブクログ

最初は繊細さと切なさが纏った表紙に惹かられ、読み入ったら世界観も独特で寂し雰囲気も漂って、実に魅力的な作品です!

0
2015年06月29日

Posted by ブクログ

ハウルみたいなファンタジーかと思ったら、おもくそトルメキアに惨殺される風の谷の世界観でした…ウワァ

しかもナウシカのように和解?協力?とかそーゆーのは一切なく、「暴力はやめて!話し合おうよ!」…って言い終わらないうちに槍で刺される、みたいな展開しかありません…
でもなんというか、言葉の通じない、聞き入れようとしない、自分たちの価値観に雁字搦めになってる人ってどこにでもいるじゃないですか。
戦争や争いって、こうして起こるんだな…そしてもしそれが和平を取り付けることができたらそれは奇跡なんだな、と。

続きが気になるけど、これ絶対絶望の連続でしょこれ・・・

0
2015年02月08日

Posted by ブクログ

砂の海に浮かぶ巨大船という閉鎖世界。
超能力を持つ短命な人々が穏やかに暮らしています。先進文明は滅び、人類は衰退期にあるらしい。
なぜ船は漂流し続けているのか?
外の世界の真実とは?
廃墟船の少女を拾った日から、穏やかだった日々は変容し破壊されていく…。
雰囲気が素敵な本格ファンタジー。
好きなんですが、物語が壮大になり過ぎて、まとまらずに終わるなんてことにならないか…少し不安になります。

0
2014年08月19日

Posted by ブクログ

何を描いてもかわいくなってしまうかわいい職人、アヴィの最新作。
今回はかわいさはちょっと控えめで、何を描いても色気がにじみ出ております。まさか男が出来たんじゃないだろうなアヴィ?

0
2013年12月18日

Posted by ブクログ

砂の海に漂う「泥クジラ」。
砂で覆いつくされた世界感。

壮大な世界観のはずなのに、とても息苦しい。
終始、喉に砂が引っかかっているようだ。

0
2023年03月31日

Posted by ブクログ

かなり特殊なファンタジー設定なので、この世界観に慣れるまでにもうちょっとかかりそうだけど、今のところ嫌いではない。

0
2016年10月31日

Posted by ブクログ

絵はすごいですね。
まだ1巻なので、面白いのか?そうでないのか?よくわからない。
リコスは何を知ってるんだろう?
最後、泥クジラに今までにない危機が
これはいったい・・・。
チャクロが主人公ってことはこの少年の活躍も楽しみ。
2巻に期待。

0
2014年12月07日

「少女マンガ」ランキング