【感想・ネタバレ】宮台教授の就活原論のレビュー

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タブラ・ラサ タルコット・パーソンズ ハーバート・サイモン ニクラス・ルーマン 進化の袋小路 就活における「適応力」 フォード主義 ジョン・デューイ ポストフォード主義 スローフード運動 仕事以外の場で承認を(帰還場所:
ホームベースを見つける) 宗教的不安の回避 葬式を出さなくなった日本 プライミング ミメーシス フィードインタリフ 小林秀雄「様々なる意匠」 ハイパーメリトクラシー主義 「誰か何とか言ってやれよ問題」 サプライヤー目線 カセクシス 「言葉を言わせている文脈」に注目 「テクストから身を外す(コンテクストに注目する)」 世直し宗教・癒し宗教 

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2015年03月21日

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励まされた気がする!

ゆるく、就活したいなぁ〜
もう、就活前に決まってるようなもんだなーと思った!

そして平田オリザ氏の「わかりあえないことから」
に通じる就活の矛盾を、また別の言葉で書いてあって面白く思った

なにごとも俯瞰して考えたいな〜と思った

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2013年03月31日

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ボランティアとか会社家庭に依存しない第三のホームがこれから生きてく上でPriorityが一番になっていくしそれで幸せになるしかない

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2012年08月16日

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ネタバレ

 巷に溢れる就活マニュアルとは全く違い、<脱>就活マニュアル的な本。
 就活が適職があるという幻想に踊らされていることや、自己実現の最良の方法でないことを明晰に示している。他のことを疎かにして就活だけうまくいくはずないということ。たとえそれで就職できたとしても持続できない。
 この本で自分が大切だと感じたのは、仕事がどうであろうと自分が自分でいられること。自分を入れ替え不可能な存在として承認してくれる人間関係さえあればどうとでも生きていける。依存せずに自立できるためのホームベースを獲得できるように、就職の意味を再検討するための一冊。いや、幸せになるための生き方を見つめなおす一冊。

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2012年01月23日

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タイトルこそ就活だが、内容はそんなものにとどまらない。就職とは全く関係ない自分が読んでも非常に面白く、ガツンとした衝撃があった。良書。

1.「任せて文句垂れる社会」から「引き受けて考える社会」へ
2.「空気に縛られる社会」から「知識を尊重する社会」へ
3.「行政に従って褒美を貰う社会」から「善いことをすると儲かる社会」へ
4.「国家と市場に依存する社会」から「共同体自治で自立する社会」へ
5・「便利と快適を追及する社会」から「幸福と尊厳を追求する社会」へ

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2011年12月20日

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就活をテーマにしていますが、日本の社会と会社の転換期について書かれた本ともいえます。5つの社会変革の提言は、3・11以降、ビジョンというよりTo Doリスト化していると思います。本書の問題把握が本質的であればあるだけ、新しい世代のこれからは大変!「年長世代の自明性を破る提案を連発しつつ、相対的に人間関係を台無しにしないで済ませる能力」なんて、なんとスーパーなコンピテンシーか…しかし、試行錯誤しながら他者性を獲得しようとするしたたかさはこれからの時代に本当に必要な力であるともいえます。ただ、就活世代に求めるだけではなく、会社がどう変われるのかも同時に問われているのだと思います。「就活原論」の続編として「リクルーティング原論」も読みたい!

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2011年11月13日

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これから生きていくにあたり、大切なことが書いてあります。就職活動とは生き様の表れ。人生論と思って読むことをオススメします。

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2011年11月02日

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OB訪問をして「素敵な人に会いました☆(正確には☆ではなく、キラキラしたのが点滅する)私もこんなふうになりたい☆(正確には以下略)」と書く女子学生、「就活セミナーを主催します」と告知する男子学生etc.etc。
学生時代、就活生のやっているキラキラした(いわゆる意識の高い)就活ブログにぶちあたる度にはらわたを掻きむしりたくなるような気分になった方は、私以外にも多いのではないでしょうか。
大部分がそこに乗っていけない自分への劣等感だということはわかりつつ、一方で「なぜこのゲームに乗ることを自明視するのか?」という疑問もある。『宮台教授の就活原論』は、そんなぐるぐるした気持ちを解決してくれる、初めての就活本です。

◆就活というゲームの仕組みがわかる
日本を代表する社会学者のひとりである宮台真司さんが、産業構造の変化、働くということの変化などから、就活とは何かを社会学的に解き明かします。

◆現代社会で働く時に必要なことがわかる
キーワードは「適応」と「適応力」。グローバル化の進展で市場の流動性が上昇する中、現状に「適応」していては生きていけない。大切なのは「適応力」。これは、今生きていく上で何にでも当てはまることだと思います。さらに、仕事を適応力で乗り切る場合に必要な「ホームベース」の大切さにも言及します。

◆3.11後の世の中を良くするために必要なことがわかる
今の就活に適応した先に待っているのは、<任せて文句垂れる><空気に縛られる><行政に従って褒美を貰う><国家と市場に依存する><便利と快適を追求する>デタラメな社会。この社会を変えるための指針が書かれています。

◆就活に必要なことがわかる
「充実した学生生活を送ること」「ひとかどの人間であること」など、基本的には時間をかけるしかないことが多いですが、「他人に『そんなんじゃだめだ』と言われたら素直に受け止める」というのは、すぐにできることだと思います。

などなどのことから考えるに、このもやもやした気持ちを抱える私は「適応してはダメだとなんとなく思っていたけど、適応力はないし別のルールを作る能力もない」……ってつまり頭でっかちな大学生だったってことですね。
これから就活の方も、就活に悩む方も、私のように現在働いている人にもオススメする、色々な読み方ができる「働くこと」の基本書です。

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2011年10月20日

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別に就職活動するわけじゃないけど、宮台さんの新刊ということで。
やっぱりなんというか、人気のある知識人であることに自覚的というか、スノッブな意識にすごく語りかけてくる話口。
ひごろあれこれふわふわと考えていることを、社会学の概念を用いながら言葉でずばっと言い表して分析してくれるのが宮台さんの本を読む一番の理由なんだろうな。
学術用語と、わかりやすい日常用語を行き来する能力はほんとにすばらしいと思う。
流動性の増した市場において仕事に自己実現を求めるのは危険すぎるから、どこかにしっかり感情のホームベースを構築したうえで、どういう状況にも適応できる力と、人間的なコミュニケーション能力を養うことが重要、だそうです、簡単に言えば。
前半で提示される、仲間と戯れる「内在系」でいくか、それでも限界に挑戦する「超越系」でいくか、という問題、および、後半で提示される、やや圧迫的にでもコミュニケーションの涵養をめざすべきかという「誰か何とかいってやれよ」問題、のふたつは今後もう少し考えなければならない。
労働・教育に関心がある人も、ふつうに就職活動するひとにも、もちろん、読んだほうがいいとすすめられる。

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2011年10月09日

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おなじみ宮台真司さんの本。
出版されたのは2011年だからかなり前。

「就活原論」とタイトルにあるけど、就活を通して社会を見るための本と言える。著者は社会学者なので当然の視座だとは思うけど。

個人的にはすごく面白かった。
けど、今まさに就活してる学生に役立つかというと、たぶんあまり役に立たないかな?とは思う(笑)宮台さんが提示する処方箋は、すぐに実践できるものではなく、どうしても時間がかかるので。

とはいえ、この社会で就活という変なイベント(ゲーム)に参加する必要があるならば、読んでおいた方が良い。どちらかというと、小学生前後の子供がいる親が読むべき本だと思う。今まさに就活してる子がいる親が読んでもしょうがない。

あるいは、就職面接を実行する側の社会人も読んでタメにはなるだろう。

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2018年08月16日

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隣近所が日頃から仲良く交流する間柄であれば近隣騒音だと感じられないノイズが、互いに交流のない場合近隣騒音だと感じられる。

「仕事は単なる糧ではなく、人生そのもの、社会関係そのものだ」とする日本的発想が、終身雇用・年功序列と結びつく形で、企業への高い忠誠心を生み出す。

市場での過酷な戦いでの勝利は、共同体での絆抜きではありえない。

好きな本を読み、好きな映画を観て、思うところを忌憚なく表現する。それができれば貧乏など物の数ではない。

「会社四季報」にあたり、財務諸表を検討する。

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2016年07月06日

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就活の本ではあるが、前半の労働環境に対する考察は、就活生で無くてもとても参考になる。

「適応」と「適応力」は違う、前者は既存の会社のカラーに染まる事、後者は会社がどのような形態に変わったとしても、追随できる能力の事。
今の会社は後者を求めている。

このくだりが一番ツボにはまった。

企業側の目線を意識もでき、労働に対する考え方を見直すこともできる。
就活前はもちろんのこと、仕事の覚えたてのころには非常に有益な一冊になると思う。

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2013年11月11日

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先日、金沢での集まりで話題となったので、早速、読書!
筆者は、首都大東京(昔の都立大)の教授で、女子高生の援助交際研究で話題となった人。彼が就職委員長として活躍していたときに感じたことをまとめたもの。

金沢では、学者先生の独りよがりな指摘が多いものの、現場に立つと感じることが多いと話されていた。確かに自分も学生に『自分の頭で考えろ!!!」と思わず言ってしまうことも多く、共感する点も多かった。

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2012年07月04日

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社会学の流れを踏まえて就活についての具体的な手法ではなく、就活への取り組みの「心構え」についての本。

現状が良い社会かどうかは置いておいて、とりあえず現状を正しく認識させようという感じ。
特に「ホームベースを持て」というのは、社会学者ならではの助言だと思う。

ただ難点としては、これを最後まで読める学生は満足な就職ができるんじゃないの?っていう疑問。
つまり、救われない学生に対する「救いの手」になっているかどうかは微妙だと思う。
(「最後まで読む」という程度の努力ができなければ満足な就職は難しいとも言えるが)

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2012年05月10日

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著者が批判する「就活マニュアル」や「自己啓発本」をそもそも読んだことが無いのでその辺の話はよくわからないが、まだ就活を考えていない院志望の自分にとっても興味深い内容だった。
むしろ、就活を考える前にこの本に出会えたことを嬉しく思う。

「本来の自分」をホームベースに置き「仮の自分」を職場に置くという著者の理想。
「仕事による自己実現」を謳い「共同体の空洞化」を招いた就職の現実。
僕が就活をするときにはどちらにバランスが傾いているだろうか。
でもそれは悩んでも仕方ない、社会が決めることなので、僕らは黙って自分を磨いてりゃいいんでしょうね。

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2012年04月02日

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個人が攻撃呪文だけじゃなく、防御呪文と回復呪文を発動出来る環境作りこそ必須。個人と環境、どちらにも働きかけたい。

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2012年02月07日

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常日頃からの宮台の言説を、学生向けにわかりやすく書き直したという感じの体裁です。

なので、宮台読みには、既知のことばかりですが、改めて読むと、子供たちにどう生きたら良いかをどう教えたら良いのか、自らの生き方をも悩むという再帰性を悩む親世代にもお勧めの本です。

寧ろ、親世代の常識は成り立たず、これまでの常識を打ち破ることから始めた方が良いくらいです。

周りから信頼される人になることが、仕事をすることに繋がるのだ。遠いように思えるけど、急がば回れですね。

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2012年01月17日

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【リード】
社会を空洞化させる企業行動・人生を空洞化させる仕事の仕方

【内容】
○ 10年後に企業が何を作っているか、どんなサービスを提供しているか定かでない。そのために、「適応」ではなく、「適応力」が求められるようになっている。
○ ホームベースがあるものは燃え尽きずにモチベーションを維持できるが、ホームベースのないものは、途中でモチベーションを失う
○ ワークライフバランスとは自由な時間に趣味を楽しむという意味じゃない
○ 内定を取りまくるのは、「自分は何でもやれます。実際こんなことをやってきました」という学生


【コメント】
『日本の難点』の著者。首都大学東京の元就職支援委員長。
キャッチーな帯だったので、リクルータに選ばれたこともありジャケ買いしてしまったが、内容はかなり骨太。

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2011年12月11日

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宮台著書を拝読すると、「そうできたらいいのになああああ!」とか「そうなったらいいのになあああ!」と思うことばっかりでいつも悶えます。自分なりに噛み砕いて、あるいはちまちまとでも実践して、でも感染してもらえるほどには自分が至らないのでほんと凹む(笑)

シュウカツ生ではないのですが、ちょうど「年長世代の自明性を打ち破ってなおかつ人間関係を破綻させ」てしまい辞職した時だったので諸々突き刺さりました。処方箋過ぎて困る。。。でもどうやるのかはやっぱり自分で練習していくしかないなとか。それでもビジョンをすっきりはっきりさせて貰えるだけで相当ズルしてるなー申し訳ないなーダメだなーくらいには思います。これも毎度のこと。

著作が、どんどん解り易いものになっていくのに毎度驚くのですが、今回はもう太字サービスが。サービスが。中高生に読ませて一緒に考えていきたいなと思わせる本でした。図書棚に置いて貸し出そうと思います。

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2011年12月01日

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就活についての本のようにも見えるが、仕事と生き方の本である。

一度就職した今では、就職活動が遊びに見える感覚があるが、それは視点が「就職する」から「どんな仕事をするか」に移ったため。

本書は、大学生が就職をするための先に視点を移す事が出来る良い本だと思う。

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2011年11月30日

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原論」と名のつく通り、内定をもらうための小手先のテクニックを書いた本とは真逆の骨太な内容。タイトルに「就活」と入っているが、大学3年生だけでなく、むしろ高校生、大学1年生が読むべきものだと思う。また、社会人が読んでも、自分のキャリアを考えるための良い教材になると思う。

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2011年11月13日

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ネタバレ

帯に惹かれて神保町の三省堂で衝動買い。就活生ももちろんだけど、就活をする前の大学生と、大学のキャリアセンター職員の皆様に読んでほしい一冊。講談社と某中小出版社の両方に内定した学生に対して著者が行ったアドヴァイス(実話)は、就活の本来の目的に立ち返るという意味でも、非常に示唆に富んでいました。文体は極めて平易なので、移動中に読めました。

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2011年10月24日

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価値を訴求し、市場を啓発せよ。

* 共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること。→就業時間の短さ(ワークライフバランス)
* 共同体空洞化の歴史をふまえて、善いことをして儲ける。共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生する。

* 人々のニーズに応じてはいけない。ニーズに応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新しいニーズをつくり出せ。
* これから生き残るのは社会的に正しい企業だけ/〈よさ〉から〈ただしさ〉へのコミュニケーションシフト/「社会的な正しさ」がカッコイイという訴求

p.34 適応力
自己発見シートを埋めて「自分はこういう人間だから、こういう会社でこういう仕事をして自己実現したい」という就活はナンセンス。「こういう会社」も「こういう仕事」も随時変わり得ると腹を括るべきなのです。

p.44 ポストフォード主義:「仕事での自己実現」が可能な人々と、その競争に敗れた人々。後者を「良き消費者」として養成。

p.51- 「仕事=人生」にはできない/企業はうまく生きる人間を求め始めている
〈システム〉でうまく生きることと、〈生活世界」でまともに生きること。

p.79 「いい学校、いい会社、いい人生」を鵜呑みにして、信頼できる親友や性愛パートナーを作るための修行をないがしろにしてまで勉強に打ち込むならば、皆さんは、仕事での成功も、幸せな人生も、望めなくなります。

p.82 共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること。

p.87 「経済回って社会回らず」は経済を破壊し、「仕事回って家庭回らず」は仕事を破壊するのです。

p.89
〈任せて文句垂れる社会〉から〈引き受けて考える社会へ〉
〈空気に縛られる社会〉から〈知識を尊重する社会〉へ
〈行政に従って褒美をもらう社会〉から〈善いことをすると儲かる社会〉へ
〈国家と市場に依存する社会〉から〈共同体自治で自律する社会〉へ
〈便利と快適を追求する社会〉から〈幸福と尊厳を追求する社会〉へ

p.96 鬱陶しさは包摂と表裏一体です。鬱陶しさだけ切り離して、子供が世話になったりいろんな当番を代わってもらう恩恵だけを享受できません。

p.97 ホームベースの基礎は「我々」
絆を与える近接的な共同体は、多かれ少なかれ、何かをシェアしているという感覚に支えられます。シェアされるものは、血縁的儀礼だったり、宗教的戒律だったり、職場の時間と空間だったりします。シェアしているという感覚が情緒的アタッチメントを与えます。
※帰還場所=出撃基地(ホームベース)

p.98 シェア
一見したところ典型家族とかけ離れていても、長らく近しくあり続ける近接的共同体のうち、とりわけ「成人の感情的回復」機能と「子供の一次的社会化」機能を担うユニットなら、家族と見做すことが大切です。今後は変形家族こそが大切になります。
 僕の周りで実際に目立ってきましたが、自分と同じ価値観を持つ人たちが多い地域に移り住んだり、自分と同じ価値観を持つ仲間同士が特定の地域やマンションに集住して、子育てや弱者の介護を相互扶助する、といった動きも、一部で確実に進みつつあります。
 まだ子供のいない若者たちが、一軒家を借り切って集住するシェアハウスの動きも、ここ数年進みつつあります。この動きが、趣味の相互扶助集団を超えて、絆の相互扶助集団につながるか否かが、間もなく彼らが子供を持つようになった段階で試されます。

p.100 これからの企業人や職業人はこうした共同体空洞化の歴史に無頓着であるわけには行きません。先に〈善いことをすると儲かる社会〉が大切だと言いました。善いことをして儲けましょう。善いことの主軸は、共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生することです。
 場所と人との間の入替可能な関係を食い止めましょう。そのためには、場所が快適で便利であればOKという発想を捨てるべきです。快適で便利な場所はどこにだってあり得る入替可能なものですが、入替不可能な関係なくして幸福と尊厳はあり得ないからです。

就職課が学生を迷わせた。適職幻想。かつては「先輩のコネ」が当たり前だった。情報過多が生んだ「適職幻想スパイラル」。選択肢は多ければ多いほどよいという勘違い。
→「人々のニーズに応じてはいけない。ニーズに応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新しいニーズをつくり出せ」(p.112) ※市場の啓発


p.119 最終目的を絶えず思い出すことは、手段的行為が弛緩した繰り返し(ルーティン)になるのを妨げ、その手段的行為をすることが喜びになります。最終目的の達成が大いなる喜びであれば、認知的整合化のメカニズムによって、それに貢献する営みが喜びになります。
(…)
 だから、大学生の時間は、最終目的に紐付けられた優先順位(プライオリティ)を手にするための試行錯誤のために使うべきです。就職時点で優先順位がまだ分からないのでは、手段的行為にいそしむ喜びも、手段的行為としての相対化も、利用できないということです。
※ゲストティーチャー、ロールモデル、スゴイ奴、感染(ミメーシス)
→最終目的&優先順位を巡る試行錯誤は、「スゴイ奴」と出会って感染(ミメーシス)しては卒業する経験が、最も効果的です。

p.128 大学生にもなってBtoB企業とBtoC企業の識別もできず、消費者広告に登場するのがBtoCの企業ばかりであることを知らないというのは、頭が悪すぎます。(…)皆さんが就職活動をする際にも、コミュニティバンクの経営方針のように、儲けと同程度かそれ以上に公共性を評価する態度があっても良いでしょう。しかしその際にも、企業の公共的活動がどれだけ持続可能かを評価するには、財務諸表の検討が欠かせません。
※学生に読み解けるのかという問題。会計は恣意的であって経営状態の悪さを隠すもの。

p.130 やはり、企業内部の人の話を聞いてほしいのです。そうすることで、ものづくりやサービス提供についての戦略や同業他社に負けないための狡猾さを、徹底的に観察してほしいのです。アウトプットではなく、インプットにこそ注目して欲しいと思います。
 とりわけ重要なのは、木で鼻をくくったような公式見解ではなく、ハイコンテクストな情報あるいはパーソナル情報です。人の言うことは分脈次第で変わるものですが、分脈次第で言うことがどう変わるかを通じて、それを左右する不変更を探り出すのです。

p.131 どんなコンテンツについても必ず、視座・視点・視野の恣意性があります。恣意性とは、本来別様の可能性があるのに現実にはソレでしかないという状態です。視座・視点・視野の恣意性に気づき、なぜソレが選択されているかを問えば、膨大な情報が得られます。

p.132 中小企業でこそ「自己実現」ができる>「仕事での自己実現」を目指している場合は、こうした「全体性からの疎外」は良くありません。全体性が見える中小企業がおすすめです。

p.138 これから生き残るのは社会的に正しい企業だけ
 先進各国が軒並みそうした方向にシフトしつつある以上、遅かれ早かれどのみち日本もシフトします。もし〈善いことをすると儲かる社会〉に変われなければ、日本は遠からず三等国以下に落ちぶれ、自殺や犯罪などで人が死にまくる「終わった社会」になります。
 これは、道徳的な問題というよりも構造的な問題です。グローバル化がもたらす構造的変化ゆえに、将来に生き残るのは社会的に正しい企業だけになるのです。社会的に正しい事業に携わることは生き甲斐を与え、親や周囲からの承認にさえ結びつくようになります。

p.138-139 〈よさ〉から〈ただしさ〉へのコミュニケーションシフト
 社会システムの持続可能性(サステナビリティ)とは別に、分断された島宇宙同士をブリッジするというコミュニケーション上の要請から、〈ただしさ〉が〈よさ〉に対して持つ比重が高くなってきました。「親や周囲からの承認にさえ結びつく」と言った所以です。
(…)
 こうした市場における消費傾向を観察する限り、「社会的な正しさ」を付加価値とするマーケティング戦略は、今後ますます有力になると思われます。これは法令遵守(コンプライアンス)などというケチな話ではなく、積極的に市場に打って出るべき戦略なのです。

p.139-141 「社会的な正しさ」がカッコイイという訴求
 小林秀雄は「様々なる意匠」と表現しました。天皇主義も意匠、民主主義も意匠、意匠と戯れる営みは永久に不滅だというわけです。意匠をモードと翻訳するとピッタリきます。日本は「空気に縛られてモードが定まる/変化する社会」つまり〈モードの帝国〉です。
 震災後、アーティストなどを中心に「ちゃらちゃらした流行の時代は終わった、これからは倫理の時代だ」などと言われています。これを正しく言い換えると、「ちゃらちゃらした流行が流行する時代」から「倫理が流行する時代」へ、ということになります。
 これを否定的に捉えすぎないようにしましょう。日本は〈モードの帝国〉を簡単にやめられません。唯一絶対神の不在という宗教社会学的な構造に結びついているからです。であれば、かつてGHQがそうしたように〈モードの帝国〉を戦略的に利用するべきです。
 名著『菊と刀』でルール・ベネディクトが欧米の「罪の文化」に日本の「恥の文化」を対置しました。真意は、日本における「社会的な正しさ」は、イデオロギー(神を気遣う内的確かさ)というよりモード(人目を気遣う外的確かさ)に過ぎないという指摘です。
 であれば、単に“人々がまだ気づいていないこんな「社会的正しさ」がある”という訴求だけではなく、“その「社会的な正しさ」は古くてダサイ、これからはこの「社会的な正しさ」がカッコイイ”という訴求を、マーケティング戦略として利用できるはずなのです。

p.141-142 「食の安全」という正しさを商業化した「大地を守る会」
 これはブランディングの成功です。「安全・安心なものを追求することがカッコイイ」という方向に市場をオーガナイズ(オルグ!)しました。そう、藤田和芳社長は、大学生の時代に全共闘運動に関わっていらっしゃった。まさに市場をオルグしたわけです。

p.144 内定を取りまくるのは「実績」のある学生
実績に裏打ちされたタフネスと柔軟さ。他者性の欠如。

 (1)ビビらずに限界ギリギリまで挑戦でき、(2)限界を知るがゆえに高望みせず、(3)様々な社会的手順に通暁し、(4)コミュニケーションにおいて相手が何を求めているのかを的確に把握して動ける。これらの能力を与える「充実した大学生活」が大切です。→「ひとかどの人間」
 逆に、内定が出ないのは、(1)限界を試したことがないのでビビリがちだったり、(2)同じ理由でお門違いの自己実現欲求を抱いていたり、(3)どんなボタンを押すとどんな社会過程が動くのか知らなかったり、(4)他者の構えに鈍感な学生です。→「ひとかどでない人間」

p.166 新入社員の三割が三年で止める、三つの原因
適職志向が強いからこそ会社を辞める。
1.グループワーク能力 →反活動
2.ノイズ耐性 →弟や妹が騒ぐ横で勉強する
3.集団ヒステリー現象 皆が奮闘することで、あり得ない力を発揮する

p.169 就活本の多くは、新卒者が適職を選べず三年で止める傾向を問題視する一方で、雇用問題を扱った本は、雇用の流動性を上げるべきだと提言しています。二つは端的に矛盾します。国際標準の正解は「流動性を上げろ」です。「一生を捧げる適職を見つけろ」は一般に間違いです。

p.175 社会性のある人間は教育で作る
 学校教育がグループワークを重視すべき理由や、サークル活動を中心として充実した大学生活を送るべき理由は、さもないと「社会化の不全」すなわち「社会システムが前提とする社会性を欠いた状態」が生じやすいからです。社会性を欠いた人は就職に失敗します。

p.182 企業社会では、グループワーク能力の欠落は、パーソナリティ障害と同様。生育環境次第。社会化の失敗。
 つまり、皆さんのグループワーク能力はもともと就活問題を超える問題です。なのに、企業は人事採用においてグループワークを極めて重視します。企業が最大限重視するポイントが、就活問題を超えている。そこに就職活動の成否をめぐる今日の本質的な困難があります。

p.213 自殺のロールプレイに学ぶ文脈コントロール
(1)お前が死んだら俺は悲しい →それだけの人間関係ができていることが前提
(2)おなか空いてないか? 何か食べてからにしよう

p.220 コネ:学生がどんな人間なのかを企業の採用担当が深いところまで把握するには、その学生についての文脈依存的なコミュニケーションが不可欠。「ぶっちゃけ、○○ってどうよう」という質問に、「あいつはああ見えて……云々」と具体的かつ肯定的に証言してくれる人々のネットワークを広く持つこと。だからこそ充実した大学生活を送るべき。

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2012年05月24日

Posted by ブクログ

就職課のサポートやリクルートのビジネスの中で学生側にはふんだんに選択肢が用意されるようになり、「これだけあれば、この中に自分に一番合った企業があるだろう」「自分はこういう人間だから、こういう仕事が向いている」という適職幻想が生まれた。いわゆる「最適マッチング幻想」で、これは就職だけでなく性愛にもある。最適マッチング幻想が蔓延した結果、「もっと良い選択肢があるはずだ」と永久に迷い続け、全選択に失敗する。

「最適マッチング幻想」
不自由の解消が必ずしも幸せに繋がる訳ではない事をこの単語が物語っているように思う。皮肉にもリクルートの社是は「『不』の解消」。

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2022年03月04日

Posted by ブクログ

・昨日かな。
働くことを考える哲学カフェの課題本でした。読むことは必須ではありませんでしたが読みました。
・たくのむ というのを利用しての開催でしたがわたしの家の電波に問題ありなのか声が雑音にまぎれてきこえてこず。あせりした。

・宮台さんの本は他に読んだことあり講演会も2回ほどいってたのでさほどアウェイなかんじはせずよかったです。
・どんな仕事か知りもせず、イメージ優先で就職を希望する学生が多すぎると述べられていました。どんな仕事かは働いてないし身近にいないとしりようもないのでは?とか思いました。仕事の中身より周囲の承認ってのはわかる気がします。

・誰か何とか言ってやれよ問題。
他人の期待による呼びかけに応じられない人はどの会社に就職してもうまくいかないでしょう。

はい。すみません。
他人から本当のことを言ってもらえる人間関係ってないかもなと反省しました。

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2020年06月21日

Posted by ブクログ

前半3分の1を読んだところでは就活とはあまり関係なく、自論の展開だが、
それはそれで面白かった。
後半は就活に関する内容も出てくる。が、この宮台さんは頭が良すぎて、その他大勢の一般人へのメッセージではなく、それなりに能力のある人を対象に本を書いているようだ。
ちょっと鼻につく自慢話が多い。戦後5人目の東大での社会学博士とか、2回言わなくてもいいような気もするが。小学6年で塾にちょっといっただけで麻布中学に入った話、自分の周りにはロールモデルになる人がたくさんいた話など、本人にその気はないにしても、あまりいい感じはしない。
比較するのもなんだが、就職系の本としては、海老原さんのほうがまだ全体感があって説得力がある。

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2019年09月23日

Posted by ブクログ

「行政に従って褒美をもらう社会から善いことをすると儲かる社会へ」 に共感。サークルで「相手の立場や状況を理解し、相手や社会に働きかけることで、それを動かす力」が磨かれていると実感。

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2013年07月14日

Posted by ブクログ

就職してしまった人が読んでもオモシロいと思います。職場のメンタルヘルスチェックを受けているような気持ちになりました。自分には帰る場所がある。仕事以外に、打ち込めるものがある。自分は周りから理解されていないと感じる?チェックをしていけば、適職を見付けないと!という幻想に苦しめられず、職を持つのことの考え方も変わっていくような気がします。

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2012年01月13日

Posted by ブクログ

後輩たちの「2カ月遅れ就活開始日」記念。

本書は「就活本のバカヤロー!」と、就活マニュアルを批判しつつも、本書自体が一種の就活マニュアルの様相を呈しているのが否めない。

「『最適の仕事』なんてない」
「そもそも仕事は実現の最良の方法ではない」
「『絶対内定』式の自己発見の方法は表層的には役に立たない」等々語られている割に、

「常に人生の最終目標を思い出せ!」なんて書いてあったりする。

大抵の学生は「人生の最終目標」なんてものを持っていないし、それを見つけようと「自己分析(笑)」に走る人が多いのが現状なのでは?
むしろこの発想は「絶対内定」に近いような?


「中小企業を狙え」という本書の主張は他の就活本にも書いてあったりするけれど、日々新聞で「不祥事を起こしたり巨額損失を出しても、巨大企業なら潰れない」という現実を目の当たりにされればそりゃ大企業を目指したくもなるわな。

***

とはいえ共感できた部分もちらほら。

「最近の若者は、『摂氏25度から30度の間では極めて高性能に作動するが、それ以外の温度では使い物にならなくなる』というように、作業限界がとても狭くなっている」

「コミュニケーション能力は文脈をコントロールする力を含む。たとえば『自殺したい』と友人から打ち明けられた場合、真っ向から「生きていれば良いこともある」という類の表層的な発言をすると相手を余計に死に追いやることになる。「お前が死んだら俺は悲しい」というような言葉がリアリティを持つほど信頼関係が築かれていないのなら、「とりあえず腹減ってない?何か食べてから話そう」と文脈をずらす能力が必要になる」

「学問の学問性は、対象によってではなく、方法によって決まる(故・小室直樹氏の言葉)」

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2011年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

インターン採用のための面接をしていてショックを受けたことが本
書を読むきっかけでした。何にショックを受けたかと言えば、自分
を押し殺し、企業社会の価値観に過剰適応しようとしている学生達
の姿にであり、また、そのように仕向けている就活本や就活セミナ
ー、はたまた企業人事部のあり方にでした。

企業が求めているのは自社の業績に貢献してくれるであろう人材で
す。それは昔も今も変わらない。しかし、バブル崩壊後長引く経済
の停滞とグローバル化の進展の中で、企業が求める人材像は変化し
てきています。本書ではそれを「『適応』から『適応力』へ」とい
う言葉で表現していますが、今の組織や業務に適応できることはも
とより、どんな状況になってもやっていけるタフネスさと柔軟性を
併せ持つことが求められるようになっているのです。大企業ですら
安泰でなくなったこの20年間を踏まえれば、それも当然でしょう。

一方で、学生の側には「仕事を通じた自己実現願望」と、自分にふ
さわしい仕事がどこかにあるはずだという「適職幻想」が広がって
います。その背景には、OB・OGとの人間関係をベースにした就職
活動から、大学の就職課と就職支援企業のサポートを前提とした就
職活動へのシフトがあると著者は指摘します。就職支援企業の提供
する膨大な選択肢を前にして、自分にふさわしい職場、自己実現で
きる職場はどこかと学生達は悩み、就活本や就活セミナーで教えら
れる安易な自己発見、適職発見の手法に洗脳され、自意識を肥大化
させるか、自分を見失うかのどちらかに陥っているのです。

企業は「適応力」を求めているのに、就活本や就活セミナーの言う
ことを真に受けて「過剰適応」した「適応力のない」学生ばかりが
増えていくという逆説。ここには深刻なミスマッチがありますし、
企業の側も学生の側も、こんなことをやっていたらどんどんダメに
なっていくのではないかとそら恐ろしくなります。

ではどうすればいいのか。

学生の側に求められるのは、今の企業社会の価値観に振り回される
ことなく、「ひとかどの人物」になるための経験をできるだけ多く
積むことだと著者は言います。そして、企業の側に求められるのは、
企業の都合ではなく、人材育成に必要な大学の都合を最優先に採用
活動をすること。さらに、子どもが「ひとかどの人物」になるため
に、親や教員が自らの生き方を見直すことも必要になります。「あ
さましい人間は必ずあさましい人間を育てる」からです。

結局、著者が説こうとしているのは、日本人はどうすれば幸せに生
きられるのか、ということです。キーワードは〈引き受けて考える〉
〈知識を尊重する〉〈善いことをして儲ける〉〈共同体自治で自立
する〉〈幸福と尊厳を追求する〉。詳しくは本書に譲りますが、そ
れぞれ今の日本社会のあり方に対するアンチテーゼです。これらを
前提とした生き方が、個人にも、企業にも求められていく。そうい
う「構え」で就活に臨むべきである。そう著者は主張します。

就活論の名を借りた日本社会論ですから、就活中の学生さんが読ん
でも途方に暮れるだけかもしれません。むしろ、お子さんをお持ち
の方や企業の採用担当者、CSR担当者、経営者にとって刺激的な一
冊となることでしょう。是非、読んでみてください。

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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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「人間関係を台無しにせずに異論を述べる能力」の前提にもなる、
今日最も重大なコミュニケーション能力、それは「相手を理解する
能力」であると断言できます。
これは「相手に同調する能力」でも「相手に迎合する能力」でもあ
りません。むしろ同調や迎合は相手を理解しなくてもできる。とい
うか相手を理解せずにやり過ごすための作法だと言えるほどです。

自己発見シートを埋めて「自分はこういう人間だから、こういう会
社でこういう仕事をして自己実現したい」という就活はナンセンス。
「こういう会社」も「こういう仕事」も随時変わり得ると腹を括る
べきなのです。

「仕事で自己実現する」という考え方自体に問題があります。仕事
で自己実現できる人も稀にいますが、仕事での自己実現は現実には
極めて困難だし、自己実現は必ずしも仕事を通じて果たすべきもの
でもないからです。

70年代には、一方で、「成長の限界=環境の限界+資源の限界」が
露になる動きがあり、他方で、「福祉の限界=財政破綻+共同体空
洞化」が露になる動きがありました。これに対応して、80年代、先
進各国で共同体自立化運動が同時多発します。

これらの運動の共通性は、共同体が、市場に依存しすぎても、国家
(行政官僚制)に依存しすぎても危ないとして、市場や国家からの、
共同体の相対的な自立を目指すところにありました。

言いたいのは「仕事での自己実現」を求めても、まじめにこつこつ
働いても、報われる可能性が低いという事実です。
そんな可能性の低いことに賭けるよりも、勤め先が倒産したり売上
げ減で給料が下ったりして仕事で不本意な目に遭っても、承認から
見放されず尊厳(自己価値)を手放さなくて済むような関係性を―
―つまりは本拠地を――仕事以外の場で構築維持するほうが合理的
です。

難しい言葉で言えば、市場と共同体は両立します。というか、市場
での過酷な戦いでの勝利は、共同体の絆抜きにあり得ない。

高々22年プラスアルファしか生きていない学生に――10年前まで
ランドセルを背負っていた者に――自分のことなど分かるはずもあ
りません。それなのに「自分にはこういう仕事が向いている」なん
て言われても、「自分の何を知ってるっていうんだ」という思いで
す。

この間、東大病院の霊安室で一晩過ごした時、病院の関係者に、こ
の病院で死を迎えた人のうち何割が、葬式を出してもらえずに葬ら
れるのかを尋ねました。何と三割以上です。

村八分という言葉があります。村の誰もが縁を切るとしても、葬式
と火事の時だけは、ちゃんと助けてやるという意味です。つまり、
最低限の尊厳だけは共同体が維持してあげるということです。とこ
ろが、その最後の二分がとうの昔になくなったのです。

「仕事での自己実現」という固定観念は危険です。むしろ仕事がど
うあろうが自分が自分でいられることが大切です。

今の日本は、地域であれ家族であれ、共同体が空洞化しています。
共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること
です。子育てにせよ、介護にせよ、ボランティア活動にせよ、NPO
活動にせよ、就業時間が長すぎれば十分にはできません。

日本社会のデタラメは続くでしょう。
このデタラメに巻き込まれていたら、皆さんに将来はありません。
デタラメに巻き込まれないためには〈引き受けて考える〉〈知識を
尊重する〉〈善いことをして儲ける〉〈共同体自治で自立する〉
〈幸福と尊厳を追求する〉といった価値セットの死守が必要です。

これからの企業人や職業人はこうした共同体空洞化の歴史に無頓着
であるわけには行きません。先に〈善いことをすると儲かる社会〉
が大切だと言いました。善いことをして儲けましょう。善いことの
主軸は、共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生することです。

僕は最近、就職支援委員会の席だけでなく、企業へのアドバイスを
含めたあらゆる機会に「人々のニーズに応じてはいけない。ニーズ
に応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新し
いニーズを作り出せ」と訴えています。

企業の都合に大学が適応して悪循環の輪を回すのは愚昧です。優秀
な人材を社会的に輩出するために必要な大学の都合に、企業が適応
すべきです。

就職活動が大変なのは、労働市場の状況が悪いからではなく、たい
ていの大学生が大企業を狙うからです。

内定を取りまくるタイプには共通性があります。まず、自分にコレ
が向いているとかアレがやりたいなどと言わず、自分はなんでもや
れますという構えであること。次に、実際自分はなんでもやってき
ました、と実績を示せるということ。
一口で言えば「実績に裏打ちされたタフネスと柔軟さ」に尽きます。

どうすれば内定を取れる学生になれるのかという問いと、どうすれ
ばモテル人間になれるのかとう問いへの答えは、似ています。「ひ
とかどの人物」になれば良い。

「ひとかどの人物」は、自信があるから過剰適応しません。同じ理
由で「ひとかどの人物」は、変化する環境への適応を「仮の姿」と
してこなす。間違っても、自分を改造してまで適応しようとはしま
せん。

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●[2]編集後記

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我が家に新しい命がやってきて、一週間が過ぎました。出産から
は10日。無事に出生届けも出し、ほっと一息ついたところです。

この10日間、お産に立ち会った時の記憶を反芻してきました。お
産はとても美しい行為でした。陣痛に歪む妻の顔には苦しんでい
るのか恍惚としているのかちょっと判別しがたいような不思議な
美しさがありましたし、生まれた瞬間の赤ちゃんの体も光り輝い
ていました。二人ともに崇高な美しさに満ちていました。

小さな産道を通り抜けるために、自ら頭を変形させたり、身体を
回転させたりする胎児。それに合わせて開いていく母体。人間の
身体というものは、とてもダイナミックなデザインになっている
のだということを実感し、身体観も変わりました。

息子は、臍帯(臍の緒)が首と身体に巻き付いたまま出てきまし
た。途中で進めなくなり、苦しそうだったため、最後は押して出
すようなちょっと無理なことをしました。でも、産後にフォロー
してくれた助産師さんによると、本当は臍帯が巻き付いていても、
赤ちゃんはそれをゆっくりと自分でほどいて出てこれるのだそう
です。これには驚きました。

生命というのはたいがいのことに自ら対応できる力を持っている
のですね。だから、時間はかかるかもしれないけれど、外から介
入して技術的に解決する前に、自分で解決することを信じて待っ
てあげる。そういう生命の力に対する信頼を取り戻すことが、今、
一番大切なことなのかもしれません。

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2011年10月24日

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