【感想・ネタバレ】経済学の名著30のレビュー

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Posted by ブクログ

 昨今の経済状況を観て、経済学は冷たいものなのだろうか。そんな疑問を持ち手にとった一冊。しかし読み終えたあと希望を持てた。古典を深く読むならばその根底には温かい哲学が流れている、そう思えた。
 はじめにの章で「資本主義」と「市場経済」の対比が便利であるとの提案になるほどと思った。「資本主義」という見方では貨幣や資産が中心となり実際の商品や財は背後に退いていく、とのこと。いままさにピケティが注目を集めているがその考えに共通の理念を感じる。
 そもそも何のための経済か。なぜ経済学から哲学がパージされたのか。今こそ古典に流れる哲学の復権を望む。私も本書をガイドに古典を読み進めたい。

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2014年12月25日

Posted by ブクログ

経済学の古典三十冊を要約して紹介するもの。
著者が自負するとおり自説に関係なくその古典の著者の意思をバイアスなしで紹介していて感心。
そうゆう意味で今まで誤解され批判を受けてきた古典や考えに新しく光をあてていて、「あ、そうだったんか…」と唸る事が多かった。
加えて経済思想史に関する本を読むのはこれが初めてだったので、今までどれだけの知の巨人がいたのかとゆうことでも驚かされた。
今大学で学んでいる経済学はミクロってのもあって新古典派経済学と言える。それ自体には不満はないがおれが個人的に強い関心を持つのは経済思想史とかだったりする。「経済思想史の変遷」とゆうクラスがあるらしいけど実際教えられているのか不明だしでちょっと腐りかけてたところにこの本は知的な喜びを与えてくれた。

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2010年05月29日

Posted by ブクログ

松原隆一郎(1956年~)氏は、東大工学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、東大教養学部助教授、東大大学院総合文化研究科教授等を経て、放送大学教授、東大名誉教授。専攻は社会経済学、経済思想史。
本書は、経済学の古典・名著から厳選された30冊について、そのエッセンスをそれぞれ6~12ページ程度で紹介したものである。
収録されているのは、ロック『統治論』、スミス『道徳感情論』、『国富論』、J・S・ミル『経済学原理』、マルクス『資本論』、シュンペーター『経済発展の理論』、マーシャル『産業と商業』、ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』、ポラニー『大転換』、サムエルソン『経済分析の基礎』、ハイエク『科学による反革命』、『自由の条件』、ガルブレイス『ゆたかな社会』、フリードマン『資本主義と自由』、ドラッカー『断絶の時代』、ロールズ『正義論』、セン『不平等の再検討』等。
私は、世界中で広がる経済格差の元凶ともいえる資本主義に問題意識を持ち、これまで、水野和夫、トマ・ピケティ、ジョセフ・スティグリッツ、(社会学者)広井良典、斎藤幸平らの著書や、経済学史を扱った中村隆之『はじめての経済思想史』、荒谷大輔『資本主義に出口はあるか』等を読んできたが、本書を手に取ったのもその流れによる。
本書では上記の通り、ロックに始まり、古典派経済学、マルクス経済学、ケインズ経済学、新自由主義派、更にセンに至る著作が取り上げられているが、著者は、経済学の分野は、政治学や社会学と異なり、複数の異なる学派の共存に寛容でなく、単独の学派の独占状態をあえて忌避しない風潮が強いため(特に、かつてのマルクス派、近年の新自由主義派)、単独の著者による経済学史の本についても、(著者が支持する)単独学派の優位性を示すような書き方をされることが少なくないことを指摘し、本書においては、できる限り中立に、「それぞれの著者の意図をできる限り再現し、歴史的な経緯もふまえて紹介すること」を基本方針としたと語っている。
そうした中で、著者が示した、歴史家フェルナン・ブローデルによる「市場経済」と「資本主義」という対比を用いた説明は興味深いものである。それは、貨幣と商品の交換の連鎖である経済について、商品が商品と交換されるように見るのが「市場経済」で、貨幣がより多くの貨幣をもたらすように見るのが「資本主義」とする。そして、前者は、スミスから新古典派、ハイエクらによって論じられ、金融市場を実物経済と両立し得るものと見做してきたのに対し、後者は、マルクス、ケインズらによって論じられ、人間には貨幣そのものを蓄積しようとする性向があり、よって資本主義と市場社会の間には矛盾があると見做してきたというものである。これに基づけば、近年広がる「資本主義の限界(→脱成長コミュニズム)」という論調についても、前者は否定、後者は肯定ということになる。
一から通読するには少々パワーが要るが、興味のある部分を読むということでも有用な一冊と思う。
(2022年1月了)

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2022年01月17日

Posted by ブクログ

経済思想の豊穣さを感じられる一冊。公務員試験の教科書に載っている経済学は、サムエルソンの伝統を引き継ぐもので、経済学の一部に過ぎないことが分かり、目から鱗だった。一方で経済学者の眼は、時に正義論をも巻き込み、政治学や倫理学との境界上で、その範囲を自問していることに分かり、非常に興味深かった。

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2018年06月22日

Posted by ブクログ

原典を読んでおらず(理解できる自信もない)、著者の解釈や30冊のチョイスの評価は当然できないが、そもそも経済学が主観的で何が正しいとは言えない学問であることがよくわかった。
時代背景や各学者の信条による守備範囲や前提条件の違いが興味深かった。知識不足で理解できなかった部分はこれから勉強したい。
経済の本や専門家のコメントに触れる際に「この人はどの流派か」と考える上で参考になりそうだ。

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2020年06月07日

Posted by ブクログ

ちくま名著30シリーズを読んでみた。1冊目。

あまり経済学に馴染みのない自分にとって、読み進めるのに時間はかかったものの、あまり耳にすることのない経済学者の名前と、その著書を知ることができて読んでよかったと思う。

ナイト『リスク・不確実性および利潤』などは著者も著書もまったく知らない状態だったが、こうした知らなかった名著を通して経済や人々の営みを見通すという行為のおもしろさを感じる。またハイエクの名前は知っていても『科学による反革命』というあまり聞きなれない著書を取り上げている。単なる名所めぐりのような凡庸な内容ではなく、名著らしい名著とでもいうのか、その影響度だけではなく質の良さから30冊を選択しているようにも感じられる。

ボードリヤールについての解説はとくに印象に残った。
シミュレーションの世界として「記号としての商品の消費」というのはうまく説明できているように感じた。

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2018年11月25日

Posted by ブクログ

古典は読むのが難解で読むにはなかなかの覚悟が必要だが、本書を読むことで若干読んでみたいなと思えた。なぜそう思えたのかといえば、古典の現代的な意義を、最近の出来事と絡めて紹介されていたいたからだ。

セン『不平等の再検討』
フリードマン『資本主義と自由』

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

経済学の名著30冊を、自説などに影響されずに客観的に紹介する本。
バイアスがかかっていないブックガイドは本当に少ないので助かると思う。

入門書ではないので、経済史の基本と流れがわかったうえで、より深く知りたい人が本を読む前に選ぶ時に参考にするような使い方が一番よいと思う。多くの経済学の原著・名著があるなかで、どのような本が読むに値するかを、先人に学び、書籍を選ぶ眼をもつことも大切だと思う。

しかし、評者は大学でも一般教養で経済学は学んでおらず、独学で経済学を学んでいて、本書の内容にはついていけない部分があった。ある程度の高度な素養をもつと、良い本にみえると思う。その意味では自分にとっては★3つだが、★5つになる人も多いと思った。

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2013年03月28日

Posted by ブクログ

現代に至るまでの膨大な量にわたる古典の中から、著者お勧めのものをピックアップして紹介する、という形式のもの。
正直私も古典と言われてもどれから読んでいいのか皆目見当がつかなかったために、このようなブックガイドを参考にしようと思っていました。各先人の著作と思想が数ページにまとめられていたため読みやすく感じました。
一つ難点を言うと、これはどうしても仕方がないことですが、著者の個人的視点から書かれたものであるため、紹介されている著作の真に強調したい箇所が多少ずれている可能性があることです。

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2011年04月26日

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