【感想・ネタバレ】あゝ、荒野のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

この本のテーマは、「それでも生きていかなければいけない人間について」とか「命の重さ」かなあと感じた。

青春小説と言ってる人もいるくらいなので、青年2人がボクシングで絆を深める話なのかと思ったら、全く違う。

p12.バリカンが「何とかして周囲にひしめく人類の一パーセントたちに好かれたいと思っていた。」で早くも涙が出そうになった。
同じジムで過ごす新次と健二の様子は微笑ましい以外の何者でもなかったし、健二はここで愛を知ることができるんだと思った。
だけど、健二は新次に愛されていると思うことはついに最後までなかったのかな、と。
だからこそ、ボクシングを通して、リングの上で殴り殺されることこそ愛されることだと思ったんじゃないか。きっと、健二は新次のことを愛してしまっていたのであって、健二の新次への愛は新次に愛されることで完成するものだと思っていたんじゃないか。
薄れていく意識の中で、人生のたった2人の家族であったうち、「憎んだ」親父さんに対してさえ「俺はここにいます、だからどこにも行かないで」と思っていることや、新次のパンチが入るたびにそれを会話のように感じて喜んでいる様子があまりに切なくて、どうしてどうして、と思った。どうにかして、この本の中の健二を愛したいと本気で思うほどだった。

映画のときに死亡診断書の名前が、お父さんの健夫なのか健二なのかわからないまま終わるシーンが頭に残ってとてもモヤモヤしていたけれど、本では直筆の診断書が載っていて、「二木健夫(20)」と表記があったことが1番ショッキングだった。
ただ間違えたという説もあるみたいだけれど、命を失った後でさえ、正しい本名も伝えてくれる人がいないくらい、誰にも愛されることなく死んでいったと表す意図があったのか、ただ間違えたのだとしたら、著者だけでも健二を愛して欲しかったのに、と思えてならなくて、読み終わってしばらくは辛い気持ちが消えなかった。

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2019年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

暴力から見出す愛のかたち。
私の経験していないエキゾチックで濃厚な年代の東京を感じさせる文章。
文学と言う見地よりはそういう感じでしょうか。。


死亡診断書がバリカンの親父さんなのが謎ですが、どういうことなのでしょうか?

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2012年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1960年代の新宿。暴力的で退廃的な匂いのする新宿新次と、どもりのせいで自分は愛されないと思いこんでいる大男のバリカンは、さびれたボクシングジムのボクサーとなった。新次と出会ったセックス依存症の芳子、スーパーの経営には成功したが性的不能者の宮木、大学の自殺研究会のメンバー川崎、孤独な老人・バリカンの父親。60年代に生きる人々の人間模様。


難しい。。。言葉が闘っている。あの時代の空虚で明るい場所が見えるようで見えないような喧噪にまみれた匂いの感じられる小説だった。あの当時の東京は、朽ちていく感じだったんだろうか。
性的な描写をまざまざと見せつけられる度に人間の醜悪さと正直さゆえの、人間の奥底の本質を感じられた。
バリカンの人間くささと弱さはわかった気がするけど、結局、新次はどういう人間だったんだろうか。他の登場人物の行き先は?

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2011年08月12日

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