【感想・ネタバレ】職業欄はエスパーのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 超能力者に取材したノンフィクション。
 超能力を信じるか、信じないかは別にして面白いですよ。メディアとかに食いつぶされて大変な思いをした人も多いと思うので、そのへんは何とも言えない思いもありますが。正直、私としてはあってもなくてもどっちでもいいんです。事によってはわからないということが面白いんです

0
2021年12月16日

Posted by ブクログ

 タイトルは笑える。
 職業がエスパーとはどういうことだ。コメディなのか? と思わせて、その実、ものすごい重い題材を取り扱っている。
 書き手はドキュメンタリー映像監督。有名な作品はオウムを取り扱った「A」シリーズだそう。

 エスパーというものについて、当人以外、いや、もしくは親しい人がエスパーでもない限り、「あ、うんSFとかに出てくるアレだよね」となる。
 私は、信じる信じないでいうと、信じてない。
 著者も信じる信じないでいうと、そこははっきりとしない。信じるとは言い切れないというスタンスである。

 エスパーを職業とする彼らのドキュメンタリーを撮りたいとして、まず、企画書を作り、お金をもらってくる必要がある。
 その時、お金を出す人たちは問いかける「本当に信じているの?」と。ネタとしてエスパーを取り扱うのではなくて、職業をエスパーとしているただの人を主体とした場合、企画は通りにくい。その状況すらも著者は語る。
 語るとは何か。
 なぜ語るのか。

 エスパーという、日常ではあまり使わない職業を選んだ彼らに、周囲の人に、わざときつい言葉を投げて反応を見る。そしてそんな言葉を投げる自分に傷つく。しかし、傷つけても、傷ついてもみたいものがあるという姿勢がすごい。
 これも数ヶ月前に読んで、言葉が出てこなかったもの。

 再読したい。

0
2016年12月31日

Posted by ブクログ

森達也がテレビのドキュメンタリーの取材をきかっけとして長年追いかけてきた3人の「エスパー」- オールマイティな秋山眞人、ダウジングの堤裕司、スプーン曲げの清田益章 - についてのノンフィクション。ドキュメンタリーと言ってもいいのかもしれない。

スプーン曲げの清田氏は、一時はTVで頻繁に取上げられていたらしいが、自分の記憶にはほとんどない。ユリ・ゲラーの記憶もほとんどないので、ぎりぎり少し前の世代の記憶なのかもしれない。彼らがそんなに稼いでいたというのも驚いた。
スプーン曲げ含めて自分はまったく信用しておらず、トリックに違いないと思っていた。これまで、ラスベガスでクローズアップマジックも見たし、アメリカでホームパーティに来ていたマジシャンが目の前でやってもらったマジックも見た。全くどうやっているのか分からないし、素晴らしい技だと思った。でもタネはあるというのが前提だ。マジックと超能力はタネの有無を前提とするのかの違いがある。

森さんが何か嘘やごまかしをしているとは思えない。また、そこで感じているリアリティも本物だと思う。清田氏の実家で、両親を前にして聞いた幼き頃のエピソード(テレポテーションや宇宙人まで出てくる)の会話も、内容はある意味トンデモないのだが、妙なリアリティがある。3人のエスパーたちもこんなに長きの間、嘘をつくメリットもないだろうし、ダウジングの堤さんは性格なのか、あえてやる必要のないリスクも取っている(しかも時々外す)。この本を読んでいると人との付き合いの中で何かを判断するというのは難しいものだなと思う。

超能力はあると断言できず、それでも彼らを信じることもできる。全く矛盾した感情を抱えて進む物語に引き込まれる。そして最後には能力があるかどうかで困惑などする必要などなく、「自分を信じ、他者を信じ、日々を送る彼らを僕も信じる。彼らの人格を信じる」と結論づける。彼らへのまなざしは信頼に溢れている。「彼らとの付き合いは今後も続く。これには確信がある。被写体として興味が持続しているからじゃない。彼らを好きだからだ」となる。そしてその影響を受けて、自分も心の底からは信用していない本の中のエスパーたちに肩入れしてしまうのだ。そう感じてもらえないかもしれないが、面白かった。

0
2014年12月31日

Posted by ブクログ

二人の超能力者、清田氏、秋山氏とダウジングの堤氏。常識人から怪訝な目で見られる事を宿命とする異能者達に森達也氏が密着し、その光と陰を語らせマスメディアへの疑問を提示する。
斜め上の世界のヒューマンドキュメンタリーって単純に興味をそそり面白い!超能力否定派の代表大槻教授の二枚舌と人間性とタレントぶりには失笑。テレビ局の犬。

0
2013年04月28日

Posted by ブクログ

自分を試すノンフィクションだ。

何より著者である森達也氏の心の葛藤が伝わってくる。
目の前で見せられたスプーン曲げ、スプーン捻り。
ダウジングでの意地悪な実験。額に張り付く1円玉。
それらを目の当たりにしながらも、信じていいのか?信じてはいけないのか?その狭間で揺れ動く心の行く先を追いかける物語であるとも言える。
そう言う意味では、ドキュメンタリーというのはやはり中立の立場で物事を捉えられるものではないのだということも理解できた。
刺激に満ちたドキュメントはいつだって、自分もその中に飛び込んで、溺れないように暴れているようなものだ。

オイラ個人で言えば、子供の頃から興味ありました。だから基本的にはオカルト的なものに対して、肯定的なスタンスを取っています。
霊体験も二度ありました。
しかし、この本を読めばさらなる驚愕を覚えます。

森氏は強烈な現象を目の当たりにしても、決して彼ら超能力者の技術を信じることができない。ほんの枝葉末節をあげつらいトリックではないのかと疑念を抱いている。自分の手の内のスプーンがねじれているにもかかわらず。その辺りの葛藤が苦しく胸に迫る。

しかし、「彼らの言うことが嘘ではないということは信じる」という言葉に救われる。そして「あいまいな確信」を獲得することができたという。また、超能力をバラエティ番組で放送するメディアの姿勢を批判するあたりからメディア論に流れていく。

要するに人はメディアに流されることなく、自分一人一人の心と向き合った上で行動しろということだ。メディアでバッシングされるから沢尻エリカがむかつくとか、腰パン王子を揶揄するのだけはオイラはしたくないと改めて思うのだった。

だってたった一人の個人をなぜ総掛かりでイジメなきゃならないのでしょうか??

0
2013年03月15日

Posted by ブクログ

職業をエスパーにした人たちの日常、メディアで見るエスパーたちの本音などがすごく丁寧に書かれていて面白かった!!超能力はあるかないか、幽霊や宇宙人はいるかいないか、この本はそんなことを主張したわけじゃないし、森達也なんて目の前で長年さんざん不思議な現象を見てきても、「結局わからない」っていうスタンスを取っている。さんざん見ても大槻教授のように「絶対インチキ」という認めない人もいれば、見てもないのに盲目的に信じる人もいる。この本はそんな頑なになってしまう人間の不思議さや、不可思議現象を隠そうする何年にもわたる社会の流れ、メディアのあるべき姿をできるだけ客観的に述べようとしている。清田益章、秋山眞人、堤裕司の3人が3人ともキャラクターが違っているのも面白い。特に清田さんの傷つきやすさや、時々すごくエラそうなところや、超能力者としての能力の揺れ具合、そして清田さんの親の愛情など、小説やマンガの主人公みたい。

0
2011年01月28日

Posted by ブクログ

ドキュメンタリー作家森達也が取り上げた題材は超能力者。

これは森さんが取材したからこそ意味のある本だし、
「信じる」人も「信じない」人も、「どちらでもない」人にも読んで欲しい。

「超能力とは何か」ではなく、「超能力者とはどういった人か」に主眼を置いたのは非常に彼らしいく、
新しくないのに誰も見ていなかった視点。

読み終わったときに心の内に残る気持ちは言葉に出来ない。

0
2010年11月03日

Posted by ブクログ

これ、途中で表紙の写真が怖くなってしまい、カバーをはずしました。

確かに私も「超能力ならスプーン曲げ以外にもっとすごいことやれよー」
という人種だったのですが、これ読むとそうも言ってられないような…。

大槻義彦氏には正々堂々と出てきて欲しかったな。個人的感想ですが。

0
2009年10月14日

Posted by ブクログ

頁を捲る手が止まらず一気読みしてしまった。スプーン曲げの清田益章、UFOの秋山眞人、ダウジングの堤裕司という超能力者3者3様の在り方が非常に興味深い。そして森達也の著作に何度も出てくるメディアへの懐疑、ドキュメンタリーに対する姿勢、なにより物事へのアプローチの仕方というものが、地下鉄サリン事件をはさみ8年間にわたるこの取材過程(もちろんその間には『A』もある)の中で方向付けられたことがわかる。毎度ながらこの人の視点には共感できる。取材対象を撮りながら、自ら煩悶し続けるといういつものアレだが、ただ今回に関しては少し無理矢理拒否している部分が見えるようにも思える。文庫版あとがきの最後の最後の一言が結局は全てだったんじゃないかと思う。なのに「信じてませんよ」の一言が痛々しい。後々の著作を読めば、拒否反応の理由は今や森さん自身も分かってるんじゃないだろうか。

超能力やUFO、超常現象や奇跡とかスピリチュアルとかなんでもいいんだけど、こういう話って「有る無し論」になってしまう。要は信じるか信じないかという事なんだけれども。森さんはずっとその間を反芻しているわけだ。でもこの「有る無し論」自体が非常に演出的というかテレビ的というか、不毛な論議だよなと思う。特に否定する側の反応がとかく感情的になりすぎる。森さんが指摘する大槻教授のように、過剰にヒステリックで頑な拒否反応(大槻教授の場合はテレビ的な演出が多分に含まれているにせよ)が多いと思う。一言で言うと「騙されないぞ!」ということに尽きる。わたしは騙されないからね、みんなも騙されないように、と。

さて、ここで僕は思う。そもそも「騙される」ってどういうことなんだろうか。たとえばスプーン曲げの超能力がトリックだったとして、誰かが不幸になるだろうか。森さんの言うように、年端もいかない少年に対して目くじらを立てて怒るほどのことだろうか。「騙された」「騙されない」なんてのは本人の気持ち次第でしかない。全ての人に対応する絶対的な物差しなんて存在しないのだから。もっと言うと、例えばどっかの宗教団体で高価な壷を買ったとして本人がそれで幸せな気持ちになれるのならそれはそれでアリじゃないかと思う。その人の心はその人のものなのだから。外から他人が物差しで測る事は出来ない。

だから僕は、誰かに騙されることを恐れて窮屈に生きるぐらいなら、たとえ騙されていたとしても楽しく生きるほうを選ぶ。

0
2009年10月07日

Posted by ブクログ

森達也による同名のテレビドキュメンタリーの書籍化。清田益章、秋山眞人、堤裕司という3人の日本を代表する超能力者たちの日常を追った作品。特に清田のいかにも複雑なひととなりはとても興味深く、同時にマスコミ批評的な側面もある傑作。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

超能力ブームも実はリアルタイムではないかも…。清田君ってそこまでやる人だったんだ!と始めて知ってびっくり。そして超常現象を目の当たりにし、能力者と打ち解けつつも、それを鵜呑みにできないドキュメンタリー作家。オカルトファンとしてもノンフィクション好きとしても楽しめる。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

ドキュメンタリーなの?と思わせるくらいの浮世離れ感。読みやすく、ところどころフィクションの小説かと錯覚してしまった。それくらい、出てくるキャラクターたちの個性も強くて。
でも、これがドキュメンタリーなんだってことにこの作品の面白さ、深さがあるなぁと思います。

「信じるか、信じないか、結局その質問にしかたどり着けない、自分はその程度」という作者の言葉がとても印象的でした。あなたは信じますかという問いを尋ねたい訳でもなく、そこに固執したいのでもないけれど、やっぱり聞かざるをえない。すごく正直な作者だと思った。

そして私もやっぱり「えー嘘だろう」と思い続けてしまった。

途中の作者の葛藤すら、面白かったです。

0
2016年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人は見えないもの、わからないものに恐怖を抱く。
そして頭ごなしに否定する。
ということに、一石を投じようとする一冊です。
現象そのものを肯定、否定せず、人を信じますというスタンスがこの本のキモでしょうね。

0
2015年03月12日

Posted by ブクログ

著者は、超能力有る無い論争の観点ではなく、エスパー(というか、超能力を使った仕事)を生業としている人々(まあ、所謂「エスパー」ですよね)個人に興味を持って取材を始めます。取材を進める内に、彼らの純粋性?(時として、「社会」の中で上手く生きていけないほどの)に惹かれて行くのが、読んでいて良くわかります
清田少年(もう、少年でなくてオッサンですが)の、危ないほどの純粋さ、世渡り不上手さが、良く書かれています。

個人的には知り合いが沢山出ているので、星1つオマケの「星4つ」です。

0
2013年05月31日

Posted by ブクログ

著者の中庸のスタンスが好き。スプーン曲げを目の前で見て、物理で説明できないと思ってもその現象から理論に結び付けるのは確かに難しい。分からないものは分からないままに。

・強い光源は他を隠す。小さいものや弱いものや薄いものを、押し潰して扁平にしてしまう。

・秋山眞人は静かに言う。「優しい気持ちは重要です。特に僕らは世間から迫害されたり冷遇されたり差別されることが多いから、気を抜くとネガティブな方向に引っ張られてしまうんです。そうなったら悲惨です。何人もの超能力者たちの末路を僕は見聞きしています。本当に凄惨な話です。…だから荒んだ気持ちになりかけたときには、ここに来てこうして街の灯を眺めながら、このひとつひとつに人の営みがあるんだと確認するんです。人間を本当にいとおしく思える気持ちをとりもどせるまで、ここでじっと街の灯を眺めています。」

・テープの残量を計算しながらファインダーを目に押し当てようとして、項のあたりに視線を感じた。思わず顔を上げた。清田は僕を見ていた。いつからなのか、清田はじっと僕を見つめていた。
「…UFOを見たことがあるとか宇宙人に会ったことがあるとかって話をすると、みんな困ったなあって顔をするんだよ。それは信じられませんってはっきり言う奴もいるよ。だけどさ、じゃあ聞くけど、おまえら本当に、UFO見たいと思って夜空を見続けたことがあるのかよ?俺は見ているよ。毎晩何時間も見ていた時期があるよ。否定する奴に限って夜空を真剣に見ていないんだよ。それで、あるわけないですよって笑うんだよな。だけどさ、本気にならなきゃ何も見えねえぜ。スプーン曲げでも同じだよ。否定する奴に限って自分は本気で試してないんだよ。鼻唄歌いながら試したって曲がらなぜ。当たり前の話しじゃないか。だからしっかり見ててくれよ。たかがスプーン曲げだけどさ、俺とマリックさんとが同じはずがないんだよ。本当に真剣に見てくれさえすれば、そのくらいの違いには誰だって絶対気づくはずだぜ。」

・僕自身は未だにスプーンを手に念じることはないが、つい先日、夜空をしばらく眺めていたことがある。ずいぶん長時間眺めていたつもりだったが、時計を見れば五分もたっていない。たぶんこれが僕の限界なのだろう。

0
2013年12月29日

Posted by ブクログ

読んでいて、いい意味でも悪い意味でも、世界が歪んで見えたというか、これまでと違うように見えた、というか。読みたくなかったなぁ、これ、ていう気もちょっとする。そうだよね、もう何を信じればいいのかなんて、わかったもんじゃないんだよねー、ていう。もう、それに尽きる。読後感はちょっとあんまり良くない、正直なところ。(12/1/29)

0
2012年08月08日

Posted by ブクログ

超能力者と呼ばれる人たちのメディア外の姿を追ったノンフィクション。
あるのかないのか、ホントウなのかウソなのか。
「ない」モノやコトを「ある」と言う人たち。それを科学や物理の法則に当てはめて「ない」と否定する人たち。 
分からないから知りたい。でも分からない。

0
2012年05月31日

Posted by ブクログ

かなりディープな世界だし、サラッと書かれているわけでもない。でも、かなりわかりやすいし、読みやすい。少しでもこういったものに興味がある人なら、おそらく楽しめると思う。

0
2009年10月07日

Posted by ブクログ

再読森達也の本は,対象の選択が面白く,取材方法もフェアーな感じがする。この本もその点は同じである。ただ,今回読んでいて,森達也がなぜスプーン曲げを試そうとしないのかがよくわからなかった。この点も含めて,全体として,もう少しつっこめばいいのにというもどかしさが残る本でもあった。読者が知りたいのは,ノンフィクションの対象となったことについての詳細な情報であって,作者のノンフィクションに対する姿勢ではないのだから。

0
2011年09月28日

Posted by ブクログ


超能力業界代表・秋山眞人、スプーン曲げ・清田益章、ダウジング・堤祐司の大御所三人の私生活にスポットを当てたドキュメントを撮るまでの4年間。そして、超能力否定派第一人者・大槻義彦教授との決裂までの8年間を綴った渾身のノンフィクション。名作です。ドキュメント・メイキング本としても面白い。


0
2009年10月07日

Posted by ブクログ

実際に体験しても信じられないことが世の中にはある。人から聞いたことを聞いたままただ信じるような人にはなるまいと思った。

0
2011年08月06日

Posted by ブクログ

「嫌気がさす」「結局こうだ……」といったフレーズが度々くるのでまたか!と思うけど、まあそれがこの人なのですね。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「……UFOを見たことがあるとか宇宙人に会ったことがあるとかって話をすると、みんな困ったなあって顔するんだよ。それは信じられませんってはっきり言う奴もいるよ。だけどさ、じゃあ聞くけど、おまえら本当に、UFOを見たいと思って夜空を見続けたことがあるのかよ?
俺は見ているよ。毎晩何時間も見ていた時期があるよ。否定する奴に限って夜空を真剣に見てないんだよ。それで、あるわけないですよって笑うんだよな。だけどさ、本気にならなきゃ何も見えねえぜ。スプーン曲げも同じだよ。否定する奴に限って自分は本気で試してないんだよ。鼻唄歌いながら試したって曲がらないぜ。当たり前の話じゃないか。だからしっかり見てくれよ。たかがスプーン曲げだけどさ、俺とマリックさんとが同じはずがないんだよ。本当に真剣に見てくれさえすれば、そのくらいの違いには誰だって絶対気付くはずだぜ」(240-1)


スプーン曲げ、UFO招来、ダウジングを職業として選び、世間一般に「超能力者」として認識されている3人を、数年来に渡って追いかけたドキュメント。

真に世界への感覚を揺さぶられたとき、信じる、信じないという「強い態度決定」の狭間に、私たちは置き去りにされる。目の前に起こった事象になすがままに晒されるだけである場面というのは、確かに存在する(たとえば絶景を見ているとき、事件を目撃したとき)。
しかし私たちは日常では他者に対し、非常に簡単に「信じるのか」「信じないのか」という、態度決定を迫る問いを投げかける。自身の世界の安寧を頑なに保持するために、まずは早々に態度を決めてしまうことで、出来した事象の理解可能な領域だけを残し、不確実性を捨象する。結果、いつの間にか本来の事象の全体に届きうるはずだった思考の、その手を伸ばしうる範囲自体を切り詰めてしまう。

何も、価値判断の不純さを訴えるものではない。ただ、私たちはそのように思考することで、世界を成立させてきたし、きっとこれからもそうしていくだろうということだ。
ただしそのことに少しでも感覚があるだけで、自身の世界の領野は遥かに広がるだろうし、世界への感覚それ自体も鋭敏になるだろう(最も、それによって痛みや苦しみを感じ、煩悶を抱えるシーンは確実に増えることになる)。

そのとき、世界や他者は相変わらず大きな不確実と未知を抱えたものとしてあらわれる。自身の態度決定によって切り詰められてしまう前のそれらの姿に、今までよりも少しだけ、近づくことが出来るようになるのかもしれない。


長い期間の交流にも関わらず、被写体によって変化を被ることがなかった、ドキュメンタリーとしては失敗だったと述懐する著者の論調が、他の作品と比しても自己否定的であることが印象に残った。

0
2014年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

内容はというと、タイトルまんま、エスパーという職業で生活している人の日常を追ったドキュメント。“放送禁止歌”のドキュメンタリー監督+作家の森達也さんが著者。

この本はエスパーの嘘本当の白黒をつける!というより、エスパーと著者の人間同士の関わり合い、その中での心を動きが描かれていて、取材の中で自身が色んな壁に邪魔されながら、いつも「どっちだろう?どっちだろう?」悩みながら取材を続ける著者の心の動きが自分とリンクして、一緒に色んなことを考えながら悩みながら、本を読んでいくかんじ。森さんの本はこういった身近なテーマと、森さん自身の葛藤などを軸に、社会のしくみとか、自分自身の意識とかそういったことを、考えるきっかけを与えてくれる。しかも読み物としても面白い!ブラボー!

ちなみに私は、『UFOは(インチキ写真はたくさんあると思うけど)、こんだけ宇宙が広いんだからそりゃあるだろう』『霊や超能力は全く信じない(見たことがないから)』派だったんですが、『怪しいには怪しいけど、霊とか超能力ってもしかしたらあるのかも??』派に。そしたら、世の中がすごく広がった感じがする。別にこれから超能力とか霊の世界について詳しく調べてみよーとか、興味を持った!とかは、あまり思わないのだけれど、でもあったらステキだな☆なんて今は思ったりして。

…そんな『信じるけど信じない』という誰もが持つグレイゾーンが全然アリで本当だということ!そして世の中のグレイゾーンだらけ。一人一人が認めることで、色んなことがもっとよくなるということ。それもこの本の大きなポイント。

ちなみに、子供の時以来、はじめてスプーン曲げにも再チャレンジしてみましたw。もちろん曲がりませんでしたが。ポイントはイメージすることととスプーンに謝ることだそうでw。

0
2011年10月07日

Posted by ブクログ

スプーン曲げの清田益章など3名の「超能力者」を被写体として撮られたテレビドキュメンタリーのディレクターによる1998年の記録。

0
2011年01月16日

Posted by ブクログ

評価は★3つと4つの間くらい。

題材になっている超能力者たちがメディアに登場する際、
ほぼ100%といって論証は、「真か偽か」「信じるか信じないか」。

モリタツは、そこに一定の興味を認めながらも、
時にトリックと論破され、狂人と揶揄されたりする、
そういう論調を伴って生きてきた超能力者たちの日常にカメラを向ける。

つくづく、変わったところに興味を持つ人だと思う。
作品は相変わらず、揺れながら、揺れた世界を描き出している。

読み終わって、魔女狩りの集団心理を思い出した。
異端の存在は自己否定につながるという、妄想に近い憎悪。
面白い作品でした。

0
2010年06月28日

Posted by ブクログ

3人の超能力者、スプーン曲げの清田・
UFOを呼ぶ秋山・ダウンジング堤の
日常を追った8年間で得た
著者にとっての「超能力」とは

0
2009年10月04日

「エッセイ・紀行」ランキング