【感想・ネタバレ】天体の回転についてのレビュー

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Posted by ブクログ

 いわゆる記憶喪失というのがあるが、あれは一時的に記憶を失っているようにみえるだけで、脳の中に記憶は残っており、人間性まで変わってしまうわけではない。では、脳の記憶中枢が破壊されて、すべての記憶を失ってしまったら、私は私でいられるだろうか。記憶がなくなったら、もう私らしく振る舞わないような気がするが、そうだとしたら、記憶こそが自己ということになる。しかし、自己がただの記憶の連なりかというと、そうではないような気もするし、私の記憶を他人に植え付けたとしてもそれは私ではないと永井均ならいうだろう。

 小林泰三はそうした問題をテーマに扱うため、「北」とか付く長たらしい名前の独裁国家の訳のわからない兵器実験を持ち出す。もっともらしい説明はともかく、実験のせいで世界中の人間が短期記憶しか持てなくなってしまった。そこで苦労のすえ、長期記憶を電子的な手段で補う技術が開発されたという未来。簡単にいえば、人間みなにUSBの端子が付いていて、長期記憶はUSBメモリに保存しておくという感じ。ここまでが「盗まれた昨日」という短編の設定。その設定下でどんな話が展開するかは読んでのお楽しみ。私はこれが一番面白かった。

 この短編の次、本書最後に収められた「時空争奪」は時空レベルで「昨日」が盗まれた話で、バリントン・ベイリーばりのとんでもない話なのだが、冒頭の「天体の回転について」は端正なニュートン物理学SF。ただ萌え要素が付加されているのが表紙の通り。
 基本的には論理を追求したアイディア・ストーリーだが、そこにスプラッタな要素が加わるといったあたりが、小林泰三の定番。逆にいうと、無重力環境しか知らない未来の世代の小説家志願者が、重力下の地球の話という「時代劇」を一生懸命書こうとしてとんでもない小説を書いては失敗して、という奇妙な小説が、実は科学的論理に裏づけられたアイディア・ストーリーの相貌を現す。

 本書、昔懐かしいSF短編集という感じで好感を持った。もっとも話がまとまりすぎて、もっと破綻したところが欲しい気がするが、無い物ねだりかも。

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2016年02月05日

Posted by ブクログ

 SF作品を8編収録した短編集。

 小林さんらしい独創的なアイディアやグロ描写、ナンセンスなユーモアがたっぷり詰まっています。その一方で今まで読んできた小林作品よりとっつきやすい短編が多かったので、全体的に読みやすく感じました。

 表題作「天体の回転について」は科学とは無縁の世界に住む少年が宇宙エレベーターに乗り未知の科学と宇宙の世界へ旅立つ話。
作中の宇宙エレベーターの説明も面白かったのですが、その案内役となるホログラムの少女のセリフが個人的にいらっとしました(笑)
というのも「さあ、笑って♥」「これを使ってね♥」という風に彼女の喋る言葉のほとんどの語尾にハートマークがつくからです(笑)
そうしたイライラも含めて面白かったと言えば面白かったのですが。

 「あの日」は小林さんらしいナンセンス具合。よくこんなことを真面目に書くなあ、と思ったのですが、あとがきを読むと案外作中の話も笑い事ではないのかもしれないですね。

「三〇〇万」はとある宇宙人民族の侵略の物語。
この短編を読んでいて思い出したのは歴史の元寇の話です。攻めてきたモンゴル軍に対し日本軍は苦戦を強いられるのですが、それは戦い方や武器の違いだけでなく文化や価値観の違いもあったそうです。

 というのも日本は合戦時、武将同士の一対一の戦いで有名な武将の首を挙げることが美徳とされていました。「我こそは~」と戦い前に名のることも当たり前のことでした。しかしモンゴル人はそんなことお構いなしの集団戦法でした。

 とまあそんな具合で侵略時の文化の違いが小林さんらしく味付けされた短編となっています。あまりのかみ合わなさに思わず苦笑してしまいました。
また一方で技術や科学に対する小林さんの思いというのも書かれているように思います。

「盗まれた昨日」は人類が記憶装置を埋め込む未来が舞台。
 SFとしての面白さに加えミステリ的な味付けが加えられ、さらにそこに記憶と身体をめぐる哲学的な問いも加えられる、設定、世界観、展開とも魅力的な作品で長編でも見栄えのしそうな非常に濃い短編でした。

 濃さでいえば最終話「時空争奪」もかなりのもの。作中の時空論、宇宙論のトンデモっぷりに小林さんにしか書きえないような描写や展開も見られて、こちらも面白かったです。

 感想を書くため改めて各短編振り返ってみましたが、やっぱり小林さんはぶっ飛んでるな、と思いました(笑)。

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2015年04月06日

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ネタバレ

同じ作者の作品が面白かったので買ってみた本。

天体の回転については科学を恐ろしいものと考えるようになった人類の中で科学に興味を持った青年?が天橋立(軌道エレベーター)に乗る話。リーナかわいい。
一応、ハッピーエンドなのかな?
妖怪がよくわからなかったけど、科学を使う人類のこと?

灰色の車輪はロボット三原則を主題にした内容。ちょいグロだったけど面白かった。

性交体験者は超絶エログロだった、こういうのはいい!

300万も予想外の展開で楽しめた。テラってそういうことだよねw

盗まれた昨日と銀の船は衝撃のラストで面白かった。

他の作品もなかなか面白かった。

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2014年06月15日

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表紙を除いて最高だた。
コミカルな部分、ロジカルなSF部分、グロな部分が揃ってた

表紙がアレじゃなきゃ小林泰三入門としてみんなにオススメするのに…

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2010年10月26日

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「灰色の車輪」「三〇〇万」が特に好き。
古典SFでよくモチーフにされがちなテーマを、よりとっつきやすく再構築したような印象の短編集でした。

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2024年02月13日

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ネタバレ

ハヤカワ文庫から出てる小林泰三の短編ですね。レーベル通りSF寄りの作品が多めです。
後に失われた過去と未来の犯罪 や 記憶破断者になるような記憶の扱いが見られファンには嬉しい作品かもしれない。ミステリーとしては、重力が無いのが普遍的な未来の世界で実は重力のある地球が舞台でしたという叙述トリックを成立させたい文学少女の話が面白い。彼女らにとっては血が吹き出たら球体になるし、ジャンプをしたら落ちてくることは無いのだ。

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2023年01月04日

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表紙で敬遠してたのだけど、紙で買えなくなりそうだったので入手しました。
「あの日」がユーモアたっぷりで面白かった。
「盗まれた昨日」は例によって「失われた過去と未来の犯罪」の習作。短くまとまっていて、SFは哲学と紙一重なのを気づかせてくれる良作。
ハードSFというほど敷居が高くはないので、ミステリ好きにもオススメです。

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2022年04月24日

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SF。ホラー。短編集。
「時空争奪」は既読。
作者らしさ溢れる一冊。定期的に挟まれるグロ描写が印象的。
「性交体験者」が特に好き。異様な世界観でのミステリという、自分好みのジャンル。白井智之さんっぽさを感じた。
表題作、「灰色の車輪」、「三〇〇万」も良い。

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2020年06月08日

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未知との遭遇、世界の崩壊など、楽しくも恐ろしい8つの体験。表題作は、少年が謎の少女ガイドさんと出会い、宇宙へ旅立つ模様を描く。小林泰三の持ち味である噛み合わない会話文は、ここで真価を発揮する。「あの日」「三◯◯万」もまた然りだ。

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2019年01月06日

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ハードSFの短編集。コントみたいなノリの「あの日」、ロボット三原則をネタにした「灰色の車輪」が面白かった。

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2018年12月13日

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数学的に図形を使って誰か解説してくれ

こんなにネットが発達した時代になぜそんなサイトが、うごのたけのこのように存在しないのか

そんな日は永遠にやって来ないのか

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2014年06月18日

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―――無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか
ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」
宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」など
ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。


表紙はちょっとアレやけど
小林泰三によるガッチガチのハードSF短編集

『玩具修理者』みたいな、SFホラーの暗黒面的な作品は少ないけど
その分論理が徹底されてて、かつグロ要素と結び付いて
もはや爽快ですらある笑”

「地球に来る宇宙人は、超高度な文明を持っているはずなのに、なぜ野蛮な手段に出るのか」
に解答を与えた『三〇〇万』
と、『灰色の車輪』がお気に入り

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2012年12月30日

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短編集として、面白かったです。
前半はハードSFながら、後半の作品、特に最後はクトゥルフ神話と時空理論をあわせた、一風変わった作品で、楽しめました。
と、ここまで読んで、実はこの本、前に一度読んだことに気が付きました。
何となく覚えのある作品があるなぁ、とちょっと思っていたのですが、確かどれも読んだ記憶が・・・
忘れっぽいのは、楽しみが増えていいとも言えますが、それでいいのかな?

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2012年12月06日

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非常にバラエティに富んでいて、設定と発想で魅せるSF短編集。
それぞれの作品の色がまったく違ったものなので、飽きずに楽しんで読んだ。

表題作と、ロボット反乱ネタの「灰色の車輪」と長期記憶をメモリに頼らざるを得なくなった人間を描いた「盗まれた昨日」が個人的には好き。
表紙のミクさん(違)はエレベーターガールだったんですね。

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2012年10月12日

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ネタバレ

どれも面白かったけど、表題の「天体の回転について」は感銘できるところもあり凄くよかった。文化をなくした人間でも、2次元には惹かれてしまうんだなぁと、呆れるような安心するような。

個人的には2次元に恋をした人間は報われないと思っているので、最後のオチはあんまり納得いかなかったけど、あれは小林泰三の良心だと思うことにする。

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2012年08月08日

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久しぶりにハードSF読んだ。読んだ直後より、後で反芻するとじわじわ来る面白さ。ロボット三原則ネタ、軌道エレベーターネタ、クトゥルフネタの作品が面白かった。

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2011年11月20日

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「天体の回転について」小林泰三
時空SF短編集。ミッドナイトブルー。

ちょっとこのカバーは気にくわないんですが、中身はガチガチのSFです。
ファーストコンタクト、軌道エレベータ、ロボットの反乱、時空論、等々。
あまり『海を見る人』のように叙情性に満ち溢れた短編はないですが、グロテスクもほとんどなくて入門編にはいいのでは?
世界観にとらわれすぎない単発モノばかりだから、あえて“泰三イズム”を感じる。
個人的には「時空争奪」「盗まれた昨日」がよかったかな。

それにしてもカバー画が気にくわない…!(4)

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2011年04月06日

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 表題作「天体の回転について」が、これまで読んできた氏の作品中で、もっとも驚いた作品です。こういう爽やかな作品もあるんだなあと。異文化の感覚の違いがもたらす、どこかコミカルな「三00万」も好きな作品です。
 その他の作品は相変わらずグロさとロジックが炸裂。アジモフとキャシャーンを思い出す「灰色の車輪」や、やっぱりやってくれたクトゥルフ色の「時空争奪」も面白い。SF・ホラーファンにお勧めです^^

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2010年11月14日

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カバーイラストが KEI だから手に取ったというわけでは決してなく。

2つ目以降、徐々に濃くなるスプラッタ度。
そういえば、この人のお話はこうだったと再認識。

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2010年10月19日

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自分はこういうアイディア一点張りのハードSFを楽しめるほどハードなSFファンではないのかも。
どうしても物語には楽しみが欲しい派。
あと科学(宇宙)の見せる壮大とか荘厳な世界観が欲しい派。
ということを改めて考えさせられた一冊。

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2015年09月04日

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ネタバレ

確か軌道エレベーターが話題になった時にいつか読もうと思ってWishlistに入れていた作品。小林泰三はどちらかと言うとぐろいホラー畑というイメージだったので、読み始めてから途中で「そういえば、この人って確かホラーなんじゃなかったっけ?」と気付いた(本人はSFが本職と考えているらしいが)。

表紙がアレなのでそういう話がメインかと思いきやそんなこともなく、SFとファンタジー(+グロ)の境界線で自由に発想を動かす短編8編を収録している。

短編集となるとどうしても作品ごとに当たり外れはやっぱりあって、個人的なお勧めはミステリー風味かつコメディタッチで読者にはまったく説明がなく物語が進んでいく「あの日」。こういう「よくわからない世界で起承転結の物語を描く」というのは、短編のほうがやっぱりむいている。
一方で、あんまり気持ちよく読めないというのは、最後の「時空争奪」。たぶん、ここのあたりが著者の真骨頂なんだろうけど。

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2015年01月11日

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粒揃いの短編集。
「銀の舟」「300万」「時空争奪」あたりがお気に入りです。表紙に怯みましたが(笑)読んでみて正解でした。

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2014年05月09日

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表題作、「あの日」「時空争奪」の3つだけ読む。表題作はとても親切(なんせガイド付きだし)に天体物理学の基礎を主人公と共に学べるので、「コリオリとか聞いたことあるけどどんなだったけ?」な文系こそ楽しめるのでは。「あの日」も発想がとても面白い。そしてなにより表紙のKEIさんの絵が素敵です

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2011年08月09日

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小林泰三らしいハードSF短編集。全部で8篇が収められているが、どれもまさに”SF”なので、SF苦手な人にはちょっと辛いかも知れない。だが、宇宙って不思議だよなあ、なんて考えている人には宇宙科学について興味を抱けるような描写が数多あるので、ここから気になる単語を辿ってみるのも視野を広くする切っ掛けになるかも知れない。
私が特に好きだったのは、コミカルコメディであり酷くブラックな『あの日』と、セックス描写満載の『性交体験者』、それから人間のアイデンティティの在処を問う『盗まれた昨日』の3篇。どれも短編ながらとても濃い。なお、『あの日』に関しては何度笑ったか分からない。自分がよく知らないことについて知ったか振って書いてしまうと、こんなわけの分からない小説になってしまうのか! と逆に新鮮だった。
なお、これは蛇足だが最後の篇『時空争奪』で”川”の在り方についての議論が沢山出てくる。小林泰三は川が好きなのだと思う。彼がmixiにて、川についてよく書いているのは見ていたのだが、それが作品にこういったカタチで活かされているんだな、と思うと妙に感慨深い。【366P】

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2010年12月13日

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誰だ、小林泰三の作品にKEIの絵をつけるとか無謀な事をした奴は!(笑)中身は小林泰三らしいSF短編集。最後の一篇がクトゥルフ・ネタで安心した。

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2010年10月28日

Posted by ブクログ

思うのは、手塚治虫。
あと、やっぱり表紙に抵抗感が。すいません。

たぶん、この表紙でも、うちの中三の子供は読んでくれない気がする。
それよりは、ネタバレでも宇宙エレベーターか、人面岩とかの方が誘導しやすいのでは、ないか、と残念に思う。

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2010年10月26日

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「性交体験者」「盗まれた昨日」は悪趣味だけど、アイデンティティを揺るがされるSFらしいストーリーで好み。

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2010年10月16日

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ホラー描写はもうちょっとおさえめのほうが好みな感じ。
でも久々にSF読んで、胸熱な感じはそれなりにあって楽しめた。

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2010年10月02日

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