【感想・ネタバレ】螢川・泥の河のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年11月01日

丁寧に綴られた言葉とリアルな情景が秀逸
人間の生の美しさと強さとそして嫌悪が
子どもの視点を通して不器用に映し出される
忘れた頃にまた読み返したくなる一冊

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Posted by ブクログ 2023年10月08日

確かに美しい文体で、イメージの中の風景も自分の幼少期が思い起こされる。
今、考えると初恋だった近所の年上のお姉さん❗
幸せになってたらいいなーと思いながら読めた作品

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Posted by ブクログ 2023年10月05日

昭和30年代という戦後復興真っ只中の日本が舞台の小説。

「泥の河」は、大阪で食堂を営む家族と、舟で様々な地域を転々としながら生活を営む家族との何か切なくなるような話。

「螢川」は、富山に住む家族に降りかかる友人、親との死別などの悲劇、幼なじみとの淡い恋心を交えながら家族の揺れ動く心の描写に美しく...続きを読むも切なくなるような話。

どちらの話も時代に翻弄されたが故に避けられない悲劇が描かれているにも関わらず、所々に差し込まれる風景描写が非常に美しく、とても惹きつけられるものがあった。古き良き時代のノスタルジーを想起させてくれる素晴らしい表現なので、風景描写だけでも読んで損はない小説。

「朝陽はまだ姿を見せていなかったが、鬱金色のさざめきがすでに川面で煌めいていた。」

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Posted by ブクログ 2023年06月25日

宮本輝の初期代表作、太宰治賞『泥の河』と芥川賞『螢川』を収録している。全てが代表作である純文学の権化のような作家だが、その中でもデビュー作と実質デビュー作はこの人を語るには欠かせないものだろう。

戦後経済成長期で、発展を遂げようとしている大阪府の2つの家族を描いた『泥の河』。
同じく戦後経済成長期...続きを読むで、衰退しつつある富山に住む少年と周辺を描いた『螢川』。

全く正反対の舞台であるが、方や田舎に移ろうとし、方や都会に移ろうとする。ほぼ同じ時代に暮らしていても、2つの物語が目指す生活は異なっていた。

しかし、彼らとて、自ら進んで計画したわけではない。運命とも、悲劇ともいえる状況に身を置かれ、やむなく決心したのだ。

昭和の時代、風景、人情、感情の起伏を流動的に描き、その上、読者の心には写真のように物語の光景を刻みつける。文学が閉ざされた現代においても、宮本輝の文学は輝度を増すばかりだ。

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Posted by ブクログ 2023年05月03日

太宰治賞を受賞した泥の河と,翌年に芥川賞を受賞した螢川のカップリング.恥ずかしながら宮本輝を読んだのは初めてだが,美しいですね.

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年05月03日

 1947年生まれ、宮本輝さん。芥川賞作家で好きな作家さんです。まさに、純文学と言った作品を書かれると思います。作風は変化するでしょうけど、この頃の作品が気に入っています。「蛍川・泥の河」、1994.12発行。「泥の河」は、太宰治賞。小学2年、うどん屋の信夫の「廓舟」の喜一(小2)、姉の銀子(小4)...続きを読む、母親へのそれぞれの思いが伝わってきます。「蛍川」は芥川賞。中学2年、竜夫の同級生、英子への恋心、いたち川のはるか上流に降る蛍の大群が。その情景が瞼に浮かびます!

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Posted by ブクログ 2022年08月26日

作家・宮本輝の初期の代表作2編が収録されています。
本作収録の2編の短編により、宮本輝は作家としての地位を確立しました。

宮本輝は教科書では村上春樹や吉本ばなななどと並んで文学作家として紹介されることが多いです。
ただ、大体"第三の新人"あたりからの文学作品は大衆文学との境が薄...続きを読むれていて、宮本輝作品も文学といわれると違和感を感じます。
この頃に登場した作家達は、共通した思想や定義などはなく、各作家が作品毎に思想を込めている部分があります。
また、2022年8月現在も活動中である作家も少なくなく、本作は純文学と大衆文学の境目がなくなってきた時期の文学作品と言えるかと思います。

各作品の感想は以下の通りです。

・泥の河...
宮本輝氏の作家デビュー作品。太宰治賞受賞作。
戦後の傷跡が残る大阪で、安治川の畔に住む少年「信雄」と、船に住む姉弟との交友を描いた作品です。
姉弟の母はその船で体を売って糊口を凌いでいます。
信雄は、船に住む「喜一」と友達になるのですが、喜一の母が客を取っている様子を垣間見てしまう。
周囲の大人に下劣な冗談を言われ、それでも喜一と友人でいようとする信雄の心理描写に長けた作品だと思います。
信雄が育ちの異なる喜一の"楽しいと言っていること"を理解できず、ラストは切なさがありました。
本作は宮本輝氏の幼少期をモチーフとしているようで、少年ゆえに処理できない自分の中の感情が書かれた名作です。

・螢川...
芥川賞受賞作です。
富山県を舞台にした作品で、こちらも重要な舞台として"川"が登場します。
もう一編『道頓堀川』という作品があり、こちらを併せて「川三部作」をなすそうです。

中学二年生の「竜夫」を中心として書かれています。
かつては戦後復興時にタイヤ販売で成功し、北陸有数の商人にのし上がった父でしたが、行き詰まり、家には借財のみが残ってしまった。
老いた父は病に倒れ、母も看病のためにろくな仕事につけずにいる。
竜夫には関根という親友がおり、関根は同級生の英子と同じ高校へ進学するために猛勉強をしています。
実は竜夫も英子に憧れをもっているのですが、それを隠しています。
テーマとして、少年が直面する2つの死を描き、生命が対比されて浮かび上がってくるように思いました。
交尾に勤しむ蛍の、恐ろしいまでに幻想的な光によって浮かび上がる英子の姿は、竜夫にとっては正しく生命の輝きそのものであったのであろうと思います。
本作も、登場人物の心理描写や情景描写が巧みで、ノスタルジーを呼び起こします。
また、シンプルに読み物としておもしろい作品でした。

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Posted by ブクログ 2022年01月29日

太宰治賞受賞作「泥の河」、芥川賞受賞作「螢川」。名作である。
古典とも言われる名作は、何回読み返しても、また違う感動があります。
暗鬱な北陸の風土に、生き抜いていく人間の哀愁、命というものの叫びというものが、読み手に強烈に跳ね返ってくる。若い頃では感じ得ない感情を、感動がここにはある。

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Posted by ブクログ 2022年01月16日

「泥の河」と「螢川」の二篇。前者は太宰治賞、後者は芥川賞を受賞しています。両作品ともに性の目覚めにある少年が主人公。その目に映る大人の弱さ、泥臭さ、悲しさと、自然の儚さ、雄大さ、不気味さ、厳しさ……色とりどりに目まぐるしく変わる描写が叙情たっぷりでした。

少年は身近な者の死によって、常に死が意識下...続きを読むにあるような感じです。さらに二つの作品とも、怪しげな生物の動きが掉尾を飾っています。ラストはまさに衝撃的な一枚の絵となっています。余韻の中でなんとなく、生きることは刹那の繰り返しなんだろうなと思いつつ頁を閉じました。再読したい二作品です。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年01月10日

『戦後の貧しさの中で…力強く生き抜く子どもたち』

太宰治賞作品「泥の河」
芥川賞作品「螢川」

どちらも、昭和の薫り漂う時代背景のもと、子どもの視点から見た大人の世界、生と死、恋心を精緻な描写で描きだす。
戦後間もない貧しい環境の中、必死に生き抜く力強さを感じた。

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Posted by ブクログ 2021年12月23日

文学的表現が美しく、内容も素晴らしい。
こんな文学に出会えて良かったと心から思います。

泥の河 太宰治賞
螢川  芥川賞  

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Posted by ブクログ 2021年07月10日

「泥の河」戦後高度成長期の裏で必死に生きている人々やその生活を読みながら、昔どこかで見たテレビや映画の暗い映像が思い起こされた。当時は遠い世界のように思っていたが、現実にあったのだと今は思う。
信雄の両親が喜一姉弟に優しく接する心の持ち主だという所が良い。お祭りの場面は昭和の情景が鮮やかに蘇る。喜一...続きを読む母の行為を目撃してしまった信雄の衝撃から、喜一姉弟が抱えている心の闇、喜一の狂気に近い行動の理由が同時に分かって何とも言えない哀しい気持ちとなる。
終始暗いが心に重く強烈な印象が残る名作と思った。

「蛍川」主人公竜夫の思春期の恋心、友人が事故で死んだ衝撃、やはり死んでいく父への思いもさることながら、その母千代の心情描写も心に沁みる。
夫が死の直前に前妻の名前かと思われる言葉を呟いた事を心のわだかまりとしながら、夫の死後会いに来た前妻を前にした時の気持ちの遷移、蛍が出たら大阪に行こうと前向きな姿に変わっていく様が、蛍の大群に遭遇した鮮やかな描写と重なり合う。
母の出発点は竜夫の淡い恋の終わりでもあるが、新たな始まりでもあり、全体的に暗い中にも「泥の河」の読後感とは違ったものとなった。

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Posted by ブクログ 2021年07月07日

螢川の圧巻のラストは忘れがたい。20年も前に読んだのに、様々なシーンが記憶に残る。日本の情緒を見事に捕らえている。

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Posted by ブクログ 2021年06月13日

著者の初期を代表する「川三部作」のうち二編が収録されている。「泥の河」は太宰治賞、「蛍川」は芥川賞を受賞。
いずれの作品も貧しさによる閉塞感が主人公の周辺を包み、終始暗いトーンで進行する物語だが、未来へ向けて一歩踏み出そうとする人間の強さが描かれている。特に「蛍川」は富山の美しい情景に心が癒される。...続きを読む蛍の大群を観に川へ向かう4人が見た夕暮れの描写が圧巻で息を飲むほど。

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Posted by ブクログ 2021年09月27日

泥の河

宮本輝の感性がシャープで、のちのまだろっこしい文章ではなく
直裁な文体が 叙事詩のように広がっている。
泥のような河にも 人生は繰り広げられている。
人生というより 生があり 死があった。
そして、戦争の焼け跡の 猥雑な雰囲気があり、
たくましさと心細さが入交じっている。
戦争に勝ったか ...続きを読む負けたかよりも、生き残ったのかどうかのほうが、
重要なんだという 信雄の父親の言葉が印象的だった。

多感になる前の8歳の信雄は、
泥の河に面した うどん屋の息子だった。
河とともに生活することが 普通だった。
そんな信雄の前に 小さな船が一艘現れた。

同じ歳の喜一と姉の銀子がその船にすんでいた。
それは 同じ河に沿って生きているにも関わらず
違う世界のものが たくさんにじんでいた。

廓船として、まわりから見られ、そのことでいじめられる喜一や銀子。
信雄はいたたまれないが、喜一は違った顔を持っていた。
そういう、隔たりの中で 信雄は涙を流すしかなかった。

蛍川

日本のふるさとの情景と
青春の始まりのほのかな香りと甘酸っぱさ。
こんな風に 情景をとらえる筆力は やはりなみなみならぬものがある。

大人の世界では
父親 重竜は 豪快な人物であるが、竜夫が物心ついたときには
事業に失敗して、敗北した姿しか見えなかった。
竜夫は千代の子であるが、重竜の前妻は子供が生まれないがゆえに
離縁してしまった。なぜ、そのようにしたか 千代も竜夫もわからない。
よほど 子供が欲しかったのだろう。

竜夫が好意を寄せているのが 英子だが
関根も同じように 英子に好意を寄せていた。
そのため、関根は英子が進む高校への受験に励んだが
父親から 受験をすることを拒絶され、
英子から盗んだ 写真を 竜夫に 渡して
死んでしまう。実に、甘酸っぱい経験となる。

銀蔵は 4月に大雪がふると 田植え前に蛍が 乱舞すると
いっていた。銀蔵、千代、英子、竜夫は 蛍を見に行くのだが、
蛍は。

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Posted by ブクログ 2024年03月12日

螢川・泥の河どちらもとても良かった。特に泥の河(太宰治賞)は個人的にとても好きだ。
流れるように読めるけど、心理・情景描写がその流れを邪魔することなく綺麗におさまっているのが凄いと思った。『田園発 港行き自転車』で富山を舞台にしていたのだが螢川も富山であった。出身地を見ると関西なため、富山が好きなの...続きを読むかなと思っていた。が、解説を読むとどうやら著者は幼い頃、富山に一年間住んでいたことがあるとのこと。一年間だけで小説の舞台に度々登場するくらいなのだから、富山で得た色々は宮本輝にとって特別なものだったのだろうか。
とにかく良い小説だった。

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Posted by ブクログ 2023年11月13日

 2篇とも死や不幸や性の目覚めが少年の目を通して描かれている。それらは劇的ではないが主人公に影響を与える。登場人物の日常が微かに変化していく様子が、美しさとうら寂しさを感じさせる季節や街の描写と相俟って妙なる調べとなっている。この作者の事物の描き方捉え方は自分の好みかもしれない。

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Posted by ブクログ 2023年10月13日

『泥の河』では高度経済成長期間近の大阪の雰囲気を感じることができる。
小学生や中校生といった多感な時期特有の葛藤を2作品では見事に表現されていると感じた。
『泥の河』で出てきた巨大な鯉ってどんなものなのか想像しながら読むと少し面白かったです。
廓舟で生活する母と2人の子どもが、次の場所では平和に過ご...続きを読むせることを祈るばかり。
『螢川』は文句なしの面白さ、これこそ昭和の純文学という感じ。最後の螢が一面に飛んでいることを描写する文章が美しい。一昔前はこんなにも螢が多く綺麗だったのかと思いながら読み進めた。

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Posted by ブクログ 2022年11月17日

宮本輝さんと言う作家はなぜこうも人間の生きていく悲しみを描いていくのだろう。
その文章が胸に沁み、浮かび上がる人間の優しさを感じながらもやっぱり読後感は淋しい。

泥の河
原作よりも映画を先に観ており、底辺に暮らす人とその底辺よりも少し上という感じの人々の思いやり優しさに感動したものだった。
原作を...続きを読む読んで映画の方は少し表現の仕方に違いがあると感じたが両者が私に与える心の震えは同じようなものだった。
水上生活者の喜一が信雄の家に招かれた時に誇らしげに軍歌「戦友」を歌う。
聞いた信男の父晋平が「うまい、ほんまにうまいなあ」と褒める。
なぜだろう、この文章を読んで私は涙が溢れ出た。
喜一の父親は戦争で受けた傷が元で死んでいる。

晋平は戦地でたくさんの戦友を失っている。
晋平が信雄に
「戦争はまだ終わってないでェ、なあ、のぶちゃん」
と語りかける場面がある。
そして
「一所懸命生きて来て、
人間死ぬ言うたら、ほんまにすかみたいな死に方するもんや。」
とも語る。

「泥の河」「螢川」、2作品とも人間の生と死に特別の感慨を持ち、逆らえない運命の中で必死に生きていかねばならない覚悟と、その中でも優しさがなければならないと訴えているのかもしれないと感じた。

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Posted by ブクログ 2022年06月22日

幼いときの記憶ってなかなか消えない。
知らない町なのに、肌にまとわりつくジメジメした感じ、磯の香り、船の油のにおい、足元がグラグラする。ほんとに体験したかのように迫ってくる。
忘れたいよいな、申し訳ないような、気持ちになった。

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Posted by ブクログ 2022年06月04日

「泥の河」は後の「流転の海」にオーバーラップする原点の様な、ひいては著者の原点となる作品。唐突な死としぶとい生の印象が心に泥の様に溜まる。
昭和30年の大阪市福島の光景が目の前に現れる様だった。

「蛍川」はやや趣が変わった青春小説の感じ。父や友の死と自分のこれからの生き方、やはり生と死が作品の軸で...続きを読むはあるが、それに加えて幼なじみへの恋や家族の歴史等、読後感は一種の爽やかさがあった。

虎谷誠々堂書店ロサヴィア店にて購入。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月10日

泥の河
大阪、堂島川と土佐堀川、安治川
水上生活者の消えゆく時代の話。今では消滅し、わずかにかき船などが残るのみ。格差是正が悪とは言わぬが過去の人間生活を忘れることは罪、記憶したい、記録したい。

螢川
常願寺川の支流、いたち川
白い街の底が汚れている
一年を終えると、あたかも冬こそすべてであったよ...続きを読むうに思われる。土が残雪であり、水が残雪であり、草が残雪であり、さらには光までが残雪のよいyだった。春があっても、夏があっても、そこには絶えず冬の胞子がひそんでいて、この裏日本特有の香気を年中重く澱ませていた。
日本海側の陰鬱な様子を綺麗に描写している。

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Posted by ブクログ 2021年11月29日

敗戦後間もないまだ鬱蒼とした時代、川の畔の少年達の物語、中編2編。
太宰治賞「泥の河」
社会の底辺よりも底、泥の河で廓舟に暮らす母子と短い交流を持つ食堂の少年。日常が淡々と語られる。抵抗するでもなく、厳しい貧さを受け入れる母子。廓舟の友人の過ちを許せなかった少年。悲しみ辛さの心情を直接表現するものは...続きを読むないが、作品全体から悲しみが溢れる。
芥川賞「蛍川」
中学生という、これからの生き方が決まるであろう時期に父、友人の死に直面する少年。何かが終わろうとも、少年の生は続く。ラストの蛍の乱舞、少女にまとわりつ表現は、圧巻。

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Posted by ブクログ 2021年08月16日

芥川賞を受賞した螢川、太宰治賞を受賞した泥の河の短編二部。
螢川では富山を舞台に中学3年生の主人公が経験する父の死の寂しさと初恋の淡さを螢の美しさで表現しており、泥の河では戦後まもない時代に食堂を営む両親の子である主人公が母、無口な姉と共に川で船上生活をする少年と出会い、別れを通し、人間の影の部分を...続きを読む日常生活を通して描写した作品。

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Posted by ブクログ 2020年12月28日

何でもない日常の中で突如起きた知り合いの死から始まる『泥の河』。
子供の視点で書かれる理不尽な現実、無邪気な残酷さ、非力ゆえの抗えない境遇、大人の読者である自分からすると悲惨な生活に思える。
戦後間もない貧しく混乱した時代の話だということもある。けれど翻ってわが身を考えた時、ここまで極端じゃないけれ...続きを読むど、現実に対して理不尽さ、非情さ、非力さを感じた記憶がある。
今だと折れてしまったり、立ち直れそうにない酷なこともあったけれど、子供ならではの柔軟さで切り抜けたような。
舞台と時代は違うのに強く過去を思い起こさせられた。
『螢川』は北陸の冬から夏にかけての物語。
卒中で半身不随になった父を持つ少年が主人公。
豪胆で情が深い父と、従順で笑顔のさびしい母、父の先妻や長年の友達、幼馴染の女の子や、彼女に恋をしている同級生、その彼の父親や、螢が乱舞する時期とその場所を知るお爺さん等々、短編なのに登場人物が盛りだくさん。
断片的な出来事が連ねられ、広げられた話が、何万、何十万の螢に包まれた最終場面で一つに収斂する。
初読の時と同じく、その描写の美しさは見事というより、怖かった。

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Posted by ブクログ 2020年11月12日

雑誌で著者の対談記事を読んで興味を持ち書店で購入しました。
こういう芥川賞っぽい小説、好きです。
自分では経験していない戦後の空気感を感じれるっていうのはやはり、著者の実力なんでしょうね。
登場人物のそれぞれが一生懸命生きている感じにも引き込まれました。

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Posted by ブクログ 2023年02月22日


現代作品にはあまりない、古風で哀愁漂う独特な雰囲気を纏った物語。生きること、命とは、子供の非力さ、色々と投げかけ考えさせられる内容であるのに、その背後には美しさもあり、何とも不思議な感覚に囚われる。短編だけどとても奥深い作品だった。

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Posted by ブクログ 2022年12月19日

蛍川、昨日1日読んでいた。宮本輝の芥川賞受賞作。鮮やかな人物描写と細やかな自然描写。この後に錦繍が発表されたが、その萌芽を感じられる。

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Posted by ブクログ 2021年01月22日

SNSでお薦め頂いた作品。芥川龍之介賞受賞作(含む)。在り来たりかもしれないが、フレーズに挙げた(p154.9行〜同.16行)一連の行動が妙に心に残った。竜夫の友を思う心情に感嘆たる思いを抱いた。最後の蛍のシーンは幻想的でエロティックですらあった(^^ 星三つ半。

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Posted by ブクログ 2021年01月11日

『泥の河』は、如何にも高校生の模試の問題に出て来そうな文章。展開は『螢川』より分かりやすいと思う。
老人を飲み込んだお化け鯉が親子3人の船の後をついていくシーン。解説を読んで、ああそんな暗示にも読めるのかと思わされた。

『螢川』は、蛍のシーンが「綺麗だねー」と言うような想像できるお決まりの美しさじ...続きを読むゃないのが良かった。
生きてまっせー!という熱気が鮮やか。


おまけ
この本を薦めていた人が、「こんなん読んでる自分かっこいいですよね?ね?」という雰囲気を出していたのが腹立たしくて読んでやった。
絶対あいつ誰よりも中身分かってないぞ。

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