【感想・ネタバレ】増補版 敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 上のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

昨年読み終えた本だけど、改めて...


20年以上前の本だけど、第二次世界大戦後の日本人の姿が、残酷なほどリアルに描写されていました。
著者の冷静で深い考察がとても面白く、非常に興味深い内容でした。

・天皇は屈辱的な敗北宣言を日本の戦争行為の再肯定と天皇の超越的な道徳性の再確認へと転換しようとした。

・分割占領だったドイツとは異なり、日本は米国一国による占領のため日本が被害を与えたアジア諸国が日本占領において重要な役割を得られなかった。

・敗戦後の飢餓と虚脱状態によって日本人が自分自身の悲惨さに囚われてしまった。
→日本人の加害者意識より被害者意識が強まった。

・占領軍による植民地主義的な民主主義革命という矛盾
加藤悦郎
「鎖は切断された ー しかし、我々はこの鎖を断つために一滴の血も汗も流さなかったことを忘れてはならない。」


戦時中、極限の飢餓によって日本兵が同じ日本人の肉を喰らったということは遠藤周作の「深い河」で知りましたが
この本では、国内の悲惨な食糧不足の結末も描かれています。


「敗戦国の非軍事化と民主化」という米国による未知の試みは、現代の日本人にも影響を与え続けているのに、歴史と切り離れてそのことに無自覚になっていったのかなぁ。

正直、日本は今でも米国に実験体にされている気がしてならない。
開国以来、欧米列強への劣等感をバネに「一等国」を目指し続けて戦争へと突入した姿と、本質的には変わっていない気がします。
テレビで流れる「先進国」という言葉に虚しさが響く。


RAAなど、読むのがつらくなる内容が多いです。
自分が思い描いていた戦争の実態がいかに甘かったか、思い知らされました...

でも、全ては知ることから始まると思いますし
知らなければ、次の世代に引き継げない。

そして
戦争について学び、語り継ぐことが戦争の犠牲者への最大の鎮魂になるのではないかと思います。


戦没者を一方的に「英霊」と祀り上げて
戦没者に「ありがとう」と言う人達もいますが

僕は絶対にそんなことはしたくありません。
それこそが、戦争を引き起こした思想だからです。


平和には学ぶ努力が伴うことを、改めて教えてもらえた気がします。



この本を読んだからかもしれませんが

池上彰さんがテレビ番組で
「日本は戦後すぐ民主化しました。」と話していて
とても腹が立ちました。

なぜそんな大事なことを一言で片付けるのか。
どうやって民主化したのか。
なぜ民主化したのか。
国家の民主化とはそんなにすぐ成し遂げられるものなのか。

あらゆる問いを置き去りにした後に
日本と比較して韓国は民主化の歴史が浅いという話まで始めていて、出演者は誰一人疑問を呈さない。

日本は本当に民主化しているのか。
なぜ韓国や中国に対する日本人の加害者意識がこんなに低いのか。
こういう話をしないのは
最終的に天皇の戦争責任の話につながるからだと思います。

自国の歴史を省みずに
他国批判に走る大人が「戦争」を言い出すのではないでしょうか。

僕自身も、戦争の話をしてくれた祖父や
こういった本と出会わなければそんな大人になっていたと思います。

先人達が命懸けで遺してくれたものを
手放してはいけないと思うし
この本の表題は、そういう意味が込められているのかもしれません...


戦争の勝者は、今も戦争を続けています。

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2022年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

敗戦直後の日本の状況を、アメリカ人日本史家がありありと描く作品。写真や資料が豊富で、上下合わせて800ページ以上になるけれども、飽きのこない構成になっています。
その時代を生きた人と接することだってある、わずか70年前のことなのに、自分はあまりに無知であることを実感。
天皇の戦争責任回避、虚脱、カストリ文化、逆コース、皇位継承者、極東軍事裁判過程、日本国憲法制定過程、などなど...
読み終えて、近年の自民党政権の動向に危うさをより感じるとともに、良くも悪くも日本人の国民性は戦中・戦後からあまり変わっていないのだなと感じる次第です。

0
2014年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後GHQ占領下の日本を描いた大著。

GHQによる上からの圧力によりそれまでの軍事国家から
民主主義への転換を迫られた日本。
読んでいて思うのは戦時中の軍国主義的風潮も
戦後の民主主義的風潮も支持すべき対象が変わっただけであり
「お上に従う」という側面に変化は感じられない。
確かに民主主義という方向性が決まった後は
具体的な肉付けを国民が主体的に行った面はあると思うが
最初の変化が起こらないうちは何も変わらない国なのかもしれない。

ただ「カストリ文化」などに代表される当時の性産業は興味深い。

0
2012年02月11日

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