【感想・ネタバレ】増補版 敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 上のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月24日

昨年読み終えた本だけど、改めて...


20年以上前の本だけど、第二次世界大戦後の日本人の姿が、残酷なほどリアルに描写されていました。
著者の冷静で深い考察がとても面白く、非常に興味深い内容でした。

・天皇は屈辱的な敗北宣言を日本の戦争行為の再肯定と天皇の超越的な道徳性の再確認へと転換しようとし...続きを読むた。

・分割占領だったドイツとは異なり、日本は米国一国による占領のため日本が被害を与えたアジア諸国が日本占領において重要な役割を得られなかった。

・敗戦後の飢餓と虚脱状態によって日本人が自分自身の悲惨さに囚われてしまった。
→日本人の加害者意識より被害者意識が強まった。

・占領軍による植民地主義的な民主主義革命という矛盾
加藤悦郎
「鎖は切断された ー しかし、我々はこの鎖を断つために一滴の血も汗も流さなかったことを忘れてはならない。」


戦時中、極限の飢餓によって日本兵が同じ日本人の肉を喰らったということは遠藤周作の「深い河」で知りましたが
この本では、国内の悲惨な食糧不足の結末も描かれています。


「敗戦国の非軍事化と民主化」という米国による未知の試みは、現代の日本人にも影響を与え続けているのに、歴史と切り離れてそのことに無自覚になっていったのかなぁ。

正直、日本は今でも米国に実験体にされている気がしてならない。
開国以来、欧米列強への劣等感をバネに「一等国」を目指し続けて戦争へと突入した姿と、本質的には変わっていない気がします。
テレビで流れる「先進国」という言葉に虚しさが響く。


RAAなど、読むのがつらくなる内容が多いです。
自分が思い描いていた戦争の実態がいかに甘かったか、思い知らされました...

でも、全ては知ることから始まると思いますし
知らなければ、次の世代に引き継げない。

そして
戦争について学び、語り継ぐことが戦争の犠牲者への最大の鎮魂になるのではないかと思います。


戦没者を一方的に「英霊」と祀り上げて
戦没者に「ありがとう」と言う人達もいますが

僕は絶対にそんなことはしたくありません。
それこそが、戦争を引き起こした思想だからです。


平和には学ぶ努力が伴うことを、改めて教えてもらえた気がします。



この本を読んだからかもしれませんが

池上彰さんがテレビ番組で
「日本は戦後すぐ民主化しました。」と話していて
とても腹が立ちました。

なぜそんな大事なことを一言で片付けるのか。
どうやって民主化したのか。
なぜ民主化したのか。
国家の民主化とはそんなにすぐ成し遂げられるものなのか。

あらゆる問いを置き去りにした後に
日本と比較して韓国は民主化の歴史が浅いという話まで始めていて、出演者は誰一人疑問を呈さない。

日本は本当に民主化しているのか。
なぜ韓国や中国に対する日本人の加害者意識がこんなに低いのか。
こういう話をしないのは
最終的に天皇の戦争責任の話につながるからだと思います。

自国の歴史を省みずに
他国批判に走る大人が「戦争」を言い出すのではないでしょうか。

僕自身も、戦争の話をしてくれた祖父や
こういった本と出会わなければそんな大人になっていたと思います。

先人達が命懸けで遺してくれたものを
手放してはいけないと思うし
この本の表題は、そういう意味が込められているのかもしれません...


戦争の勝者は、今も戦争を続けています。

0

Posted by ブクログ 2021年08月08日

副題が「第二次大戦後の日本人」。
第二次大戦の敗戦後、アメリカを主体とする連合国の占領軍が日本に上陸した。1945年8月の終戦からさほどの日数は経っていない。本書は、占領下の日本および日本人のふるまいの記録である。
筆者のジョン・ダワーは本書発行当時、MITの教授。歴史学者と思うが、学者の著書らしく...続きを読む事実関係を丹念に整理し記録している。1945年からの数年間のことが主題ではあるが、発行は2001年と比較的新しい(それでも20年が経過しているが)。
本書の説明にも書かれているし、本文中の筆者の筆の運び方もそうだが、この時期の日本・日本人について、筆者は、「勝者による上からの革命に、敗北を抱きしめながら民衆が力強く呼応した奇蹟的な敗北の物語」としてとらえている。
同時代に生きていたわけではないので、時代の感覚までは分からないのであるが、本書を読む限り、日本人一般は終戦からマッカーサー占領軍の占領を、ある程度抵抗感なく、受け入れていたように思える。それは表面上はともかく、戦争および戦争を戦うための日本軍の生活全般におけるしめつけや経済的窮乏、さらには、度重なる市街地の爆撃による設備的・人的な被害に対して、当時の日本人は実際には飽き飽きしていたのではないかと思うからである。
そういった気分の中での米軍による占領を、様々な側面から描写・記録しており、とても興味深い。下巻を引き続き読む予定。

0

Posted by ブクログ 2021年05月13日

まだ下巻は読み終わっていないのだけれど、素晴らしい本です。★5つじゃ足りないかも。

多くの未知の歴史的事実にすっかり心奪われている。
ノンフィクションならではの驚きと、知性と理性の塊のような著者のフィルターによる新しい視点とをむさぼるように堪能し、何度も行きつ戻りつしているので、いまだ下巻の途中。...続きを読むいったいいつから読んでいるんだという感じですが・・・

上巻は、「増補版の序文」から始まり、「日本の読者へ」と続き、謝辞と目次を挟んで、さらに本来の「序」があるという構成で、本文が始まるまでに前書きのようなものがいくつもあって、ちょっと驚くのだけど、実のところ、この一連の序文が特に素晴らしかった。

著者は、この前書きのパートで、いくつかこの本の命題ともいうべき疑問を投げかけている。

『あれだけの悲惨と混乱の最中にありながら、なぜ、日本は無秩序と無縁であったのか? あれだけの激しい戦闘のあとに、なぜ、占領者に対する暴力がまったく発生しなかったのか? どのような事情によって、日本人はあの苦難を乗り越え、多様な創造性を発揮して「やり直す」ことができたのか? 戦後日本では、いったいどんな心理的、制度的、法的な変革、それも重要かつ永続的な変革が起こったのか?』

これらは、私にとっては、もちろんおなじみの疑問でもある。これを、「だから日本人は素晴らしい国民、世界でも類を見ない勤勉な国民」などという文脈で続ける人が多くて、その偏狭で視野が狭いナショナリズムにイラっとさせられることも多々ある。
でも、著者はこうした質問に、さらにこう続ける。
『戦後初期の「アメリカ」は、イラク占領に苦しみながら、グローバルな「自由市場」の帝国を築こうとしている今のアメリカと、どこがどう違っているのか?』

私はこの部分でかなりびっくりした。
今のイラクの状況と、戦後の日本を結び付けて考えたことなどなかったから。
日本はイラクとは、国民性も気候も文化も歴史も全然違うし時代も違うから、と言えばそうなのかもしれないけれども、考えてみれば、共通点はある。(今までまったくそんな風に考えたことがなかったので、私はここで初めて共通点に思い至る)

当時の日本は "神"(=天皇)の名の下にジハードを戦い、投降するよりは死を選び、自爆攻撃も行った。
敗北後は、対戦相手アメリカの「軍」に支配されていた。
もちろん両国とも白人の国ではない。

『今日のイラクの状況は、戦後の日本を理解するうえで新しい光を投げかけてもいる。イラク占領は、日本占領と根本的に違っている』と著者は書いている。
さらに、『われわれの歴史への問いは、われわれが置かれた状況に応じて変化する』と。
そして、本文に入るわけである。

ということで、本文を読みながら、私の思考はしばしば今現在の政治や社会状況と当時を行ったりきたりした。
今の私たちは、歴史へ何を問いかければいいんだろう?などと考えながら。
こういう思考の旅はとても楽しいです。

当時について、知らない事実ばかりだったと言ってもよい。
物不足だったことはもちろん聞いているけれども、ここまで長期にわたって深刻な飢えがあったとは全く理解していなかったし、その一方で、立場を利用して富を蓄えた人が多くいたことも衝撃だった。パンパンが果たした役割も影響も、この本を読むまではよく分かっていなかった。
マッカーサーに宛てて、一般の人々から手紙が押し寄せたというのもかなり驚かされた。

そして、一番衝撃だったのは、やっぱり天皇陛下にまつわる部分・・・
天皇陛下が、国民の命ごいのために、単身GHQへ乗り込んでいって、すべての責任を取ろうとしたとかいう神話を、まさに私も教え込まれておりました。

これまで、海外の方から、何度か雑談などで天皇制についてどう思うか聞かれたことがあるが、この本を読むと、海外の方々の質問の意味がなんとなく理解できた、、、、ような気がする。
(「地味で勤勉ないい人たちよ~」などと答えていた私のまぬけっぷり・・・彼らが聞きたかったのはそういうことではなかったはずだ。笑)

天皇制については、今も別に否定的ではありませんが、戦中戦後を通して天皇が果たした役割については、つくづくと考えさせられた。
裕仁は少なくとも辞任すべきだったのではないか、というのが著者の見解でしょうが、冷静に振り返ってみれば、確かにそうだろうなと思う。歴史に if はないし、マッカーサーがやっぱり正しいのかもしれませんが。
このあたりは、BS-TBSの「関口宏のもう一度!近現代史」を見ながら、引き続き考えたいと思う。(いい番組です~! 毎週楽しみに見てます)

ちなみに、天皇とマッカーサーに関する記述のクライマックスは上巻ではなく下巻にある。
上巻よりも下巻の方が、GHQと日本の政治家たちとの裏事情をよりえぐり出していて、よりエキサイティングです。(上巻は主に、敗戦時の日本全体の事情と、一般市民たちのリアクションが記されている)

戦争に行ったうちのおじいちゃんは、昭和天皇が亡くなった時、目をうるうるさせてTVの前に座り、何時間も特集番組を見続けていたなぁ。(和室だったからかもしれないが、ずっと正座していた)
保守政党の人々が、占領軍からのラジカルな指令の数々に度肝を抜かれている様子を読むとき、脳裏に祖父のあのしょんぼりした後ろ姿がチラ付きます・・・私にとって、あの姿は戦前および敗戦直後の古き日本の象徴みたいなものなので。

私がネットに、こんなこと(責任をとるべきだったかもとか)を書き散らしていると知ったら卒倒したかも。昭和天皇とそれほど変わらない時期に亡くなりましたが。

ということで、続きを読みます。

0

Posted by ブクログ 2020年09月27日

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人
(和書)2013年11月22日 21:14
2004 岩波書店 ジョン ダワー, John W. Dower, 三浦 陽一, 高杉 忠明


どうしてこうなってしまったのか疑問に思っていたところが明確にされていてこんな本を読みたかったのだと叫びたい...続きを読むです。

こういった本がアメリカ人の手によって書かれたのが面白いところです。ハワード・ジンの「民衆のアメリカ史」を敗戦後の日本の民衆をテーマに書きなおしたようなそんなインパクトの有る本です。

凄く良かった。次巻も楽しみです。

0

Posted by ブクログ 2018年06月15日

敗戦後、連合国の占領下にある日本の姿をリアリティーを持って伝えている一冊。上巻では政治家ではなく一般市民がメイン。インフレ、食糧難、教育改革、風俗など様々な側面から敗戦の虚脱、急激な変化の中でも力強く生きる庶民の姿が描かれている。
読みやすい文章に加えて写真・資料が多数掲載されており、目で見ながらそ...続きを読むの時代を感じることができる非常に読みやすく充実した内容の良書。

0

Posted by ブクログ 2017年01月30日

膨大な資料を渉猟して記述されたにもかかわらず、単に資料の羅列にならない文章になっているのは、著者の並々ならぬ筆力の賜物であろう(もちろん、訳者も含めてのことであるが)。
何より、歴史記述の視点を、その時代を生きる一人一人の人間に焦点化しているということが、この著作をまるで小説を読むかのように、夢中に...続きを読むなって読ませる大きな要因となっているのではないか.
とにかく、この本によって、初めて日本の戦後史を詳しく知ることができた。
下巻を読むのが楽しみである。

0

Posted by ブクログ 2014年08月23日

天皇を含む記述はやはり外人でないと書けない。
丹念に調べられた分析には驚かされる。知らない事かたくさんあるのだなぁ。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年04月15日

敗戦直後の日本の状況を、アメリカ人日本史家がありありと描く作品。写真や資料が豊富で、上下合わせて800ページ以上になるけれども、飽きのこない構成になっています。
その時代を生きた人と接することだってある、わずか70年前のことなのに、自分はあまりに無知であることを実感。
天皇の戦争責任回避、虚脱、カス...続きを読むトリ文化、逆コース、皇位継承者、極東軍事裁判過程、日本国憲法制定過程、などなど...
読み終えて、近年の自民党政権の動向に危うさをより感じるとともに、良くも悪くも日本人の国民性は戦中・戦後からあまり変わっていないのだなと感じる次第です。

0

Posted by ブクログ 2013年12月07日

終戦のエンペラー観る前に読み終えたかった一冊 orz

アメリカ人の日本史家が、敗戦直後の日本の世相を描いた本。

将軍様の国並みにやさぐれた状態から、占領軍を受け入れ復興に向けて進んでいく当時の雰囲気が分かりやすく書かれています。違う国の人に自分の国の文化を教えてもらうってのはなんだか不思議な気分...続きを読む w 読んでて一番びっくりしたんは赤線が当時の国策やったってこと。米軍の男から一般の日本人女性を守るための防波堤な位置付け(酷い話やけど)らしく、戦争に負けるってのはそういうことなのね、と思いやした。

下巻は戦争犯罪人、東京裁判、戦後の思想統制の話なので、こっちも面白そうやね(-_-)

0

Posted by ブクログ 2010年12月21日

急変していく社会のなかで、人々は連続性を保ちつつ折衷的に思想や概念を獲得していったように、少なくともこの本からはみえる。その後の発展に大きな影響を与えた一方で、精神的な支柱を模索し、生計を立てる切実な努力と密接に絡んだこうした価値観の転換の過程に、無自覚の変質や破綻が潜んでいるのかもしれない。そうし...続きを読むた価値観に根ざす思想の行く末は、主観的、利己主義的に歪曲されたものになるのでは。自国の思想の獲得過程を知ることなしに批判的に考えることはできないと痛切に感じた。

0

Posted by ブクログ 2009年12月26日

『敗北を抱きしめて』1945年の終戦以降数年間の日本について書かれた本です。非常にソソられる、いいタイトルだと思うのですが、どうでしょう。意訳気味の邦題なのかと思ったら、原題も"Embracing Defeat"。センスのよさが感じられます。

そのタイトルだけではなく、内容も...続きを読む非常に質の高いものです。すでにピューリツァ賞受賞含めて、内外で高い評価を受けていますが、傑作という前に大変な労作といえます。デリケートなテーマを扱うこともあり、バランスを取るために学者として多大な努力をしていることが随所に伺えます。

また筆致は時に詩的であり、一方適切な抑制も利いていて、扱うテーマに相応しいものです。例えば、第一章は「相原ゆう」という無名の農家の妻の玉音放送の経験のエピソードで始まりますが、その入り最初の文は「1945年8月15日、正午前。このあとに起こったことは、けっして忘れられることはなかった」となっています。無名のエピソードから始めることで、名もなき人々にも焦点を当てることを示唆されていますが、最初の文はその1つのエピソードに掛かるとともに全体にも掛けられている(誰にとっても/その日のことだけではなく/忘れられることはなかった)という仕掛けがあります(たぶん)。

上巻は、主に戦後の生活および文化的な様相が取り上げられていて、風俗(パンパン、RAA)、闇市、カストリ文化などが描写されています。ぼんやりとは知っていると思っていたことですが、あえて目を向けることはしてこなかったんだな、と思います。1945年といえば、自分が生まれた年を起点にすると、現在よりもずっと近い年であったりするのですが。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

そうか、戦後は米軍による検閲があったために空白部分がなかなか埋まらなかったんだ。
自民党と米の関係があくまで強固な理由が分かってきた。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

政治のトップからではなく、一般の日本人の視線から、敗戦をどう受け止めてきたかを豊富な資料を基に書いた、戦後史のベーシック。
戦争責任・天皇制存続・憲法改正・メディア検閲など現代の問題も、この時代を抜いて語ることはできない。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

「敗北は自己変革のまたとないチャンスである」と言い切るジョン・ダワーの歴史観はとてもポジティブだ。このことはおそらく、私たちが「あの戦争」を教室の中で否定的にしか捉えることを教えられなかったことに対するアンチテーゼなのかもしれない。リアリティをもって歴史を語るにはどうすべきか、考えるのにお薦めの1冊

0

Posted by ブクログ 2023年07月20日

終戦直後の日本の世相を論じた本。戦争が日本から何を奪い、何をもたらしたかをこの本から考察できる。外国人が書いているため変にバイアスがかかっておらず、読む側も第三者的視点で冷静に考えることができ読みやすい。

0

Posted by ブクログ 2022年10月02日

戦後直後の日本の世相・風俗・思想を詳しく論述した書。外国人の視点であるため、白人の優生思想が若干見え隠れするものの、客観的であることが良い。日本人の著書だとやたら愛国的であったり戦争アレルギーが出てたりと思想が強いものが多いので。
若干難しめの論述をしているのにもかかわらず、訳文が非常に優れてて読み...続きを読むやすい。

0

Posted by ブクログ 2015年04月23日

1945年8月、、、日本は敗戦を迎えました。 焦土と化した日本、たくましく復活した日本。
名もなき一般の人々がどのようにこの時期を過ごしたのか、非常に興味深い話がつづられています。
デリケートなカテゴリーの話でもあり、非常に労を尽くして書かれたと推察されます。

ただ、、、字が小さく、非常に中身が濃...続きを読むく、、、読むのに苦労しました。
下巻に入る前に少し休憩^^

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年02月11日

戦後GHQ占領下の日本を描いた大著。

GHQによる上からの圧力によりそれまでの軍事国家から
民主主義への転換を迫られた日本。
読んでいて思うのは戦時中の軍国主義的風潮も
戦後の民主主義的風潮も支持すべき対象が変わっただけであり
「お上に従う」という側面に変化は感じられない。
確かに民主主義という方...続きを読む向性が決まった後は
具体的な肉付けを国民が主体的に行った面はあると思うが
最初の変化が起こらないうちは何も変わらない国なのかもしれない。

ただ「カストリ文化」などに代表される当時の性産業は興味深い。

0

Posted by ブクログ 2012年05月20日

今年から設定、8月の自主課題図書。
でも今年から時代は「震災後」で、もう「戦争」や「戦後」は流行らないってさ。
常に時代遅れの女、な私。
それでも、「震災後」を考えるにしても、あの戦争で何が起こって、日本人がどう行動し、何を考え、何を考えなかったか知ることは、大事だと思うんだけど。

この本読んでも...続きを読むのすっごいいろんなコトを考えましたが。
正直、まとまり切らんかった。
要継続検討、的な。
引き続き考えるにあたっての、個人的メモ。
・敗戦・占領・上からの革命を「抱きしめる」
・戦争責任
・戦犯裁判
・日本国憲法
・アジアの視点の欠如
・日本人の二面性

知らないこと、忘れてることが多過ぎる。
そんなに昔のことじゃない。
知らないで済むことじゃない。

0

Posted by ブクログ 2011年09月11日

歴史認識とはつまり、記憶の集積である。その記憶というのは、実際に体験したことよりも、書物や映像、また教室などで間接的に体験したことの方が、はるかに多い。

本書は私に、新たな、そして画期的な視点を加えてくれた。占領期における民衆の歴史である。大きな流れで歴史を眺めようとすると、政治的なものや個人の出...続きを読む来事を追ってしまうことが多くなってしまう。残される資料も、そのような側からのものが多いため、尚更である。

本書は、そうではない。名もなき民衆が、どのように社会の上層に振り回され、踏みつけられ、それでも尚しなやかに切り抜けていったかが書かれている。対照的に、権力にしがみつこうとする上層階級には、嫌悪感さえ覚える書きっぷりである。

平易な記述でとても読みやすい一作。下巻も読破するつもりである。

0

Posted by ブクログ 2010年05月07日

ジョン・ダワー『増補版 敗北を抱きしめて』(上巻)
(三浦陽一・高杉忠明訳)(2004)を読む。
1999年に原著が発行され、2001年に邦訳版を出版。
筆者が収集した写真資料を豊富に取り入れた増補版が本書である。

歴史を学んでいるといつも思うことがある。
僕たちが生きている現在は過去とつながって...続きを読むいるという事実だ。
当たり前ではないかと思われるかもしれないが、どうだろう。
普段は目の前にあること、いまの暮らしがあることを
当たり前のように受けとめている。
しかし、過去のある時点まで時間を遡ってみると、
まるで異なる未来に進む可能性があった分岐点に行き当たる。

1945年8月の敗戦はそんな分岐点のひとつである。
連合国、とりわけアメリカの日本占領に関する戦略、戦術。
マッカーサー将軍の野心。
天皇制の存続と上からの民主主義。
憲法。参政権。

普段はそうした歴史的事実が
現在の自分の暮らしに直結している実感はない。
しかし、気づかぬからと言って、
あるいは目をつぶっているからと言って、
現在につながる歴史をなかったことにはできない。

時間と人間と社会が織りなす歴史の重みを
ひとたび実感してしまうと、
いまの暮らしが当たり前には思えなくなる。
そして、現在の政治や経済の混乱ぶりにも
原因と結果があることを知る。

ピュリッツァー賞受賞作。
本の目利き151人が選んだ「ゼロ年代(2000-2009)の50冊」
(朝日新聞社企画)にもリストアップされている。

0

Posted by ブクログ 2009年10月10日

日本の占領期における政治経済から大衆文化までの幅広い分野が、昭和天皇やマッカーサーはもちろん、高級官僚、文豪、一般大衆、パンパンと呼ばれる娼婦といったこれまた幅広い人々の視点を通して描き出されている。
よくぞここまで調べ、まとめあげたなぁと言う感じ。東京裁判や占領時の政策における言及では、占領を正当...続きを読む化というか言い訳じみた台詞も見てとれるが、草の根レベルで起こっていたことまで細かく触れられていて、非常に勉強になる本だった。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

卒論用に読んでます。戦後史を知る入門書としてはお勧めです。網羅的に書いてあるから、読みやすいのでは。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

下巻もあります。戦後日本の、つまり現代日本の出発点を描いた力作。いろいろな可能性があった中から、必然偶然によって今のような日本社会になった。ということは…。

0

Posted by ブクログ 2023年05月29日

日本人を「江戸時代のゼロ成長と家長中心の家=村社会の変化を嫌う伝統」文化社会と見ると、敗戦による変化は支配者を換えただけの愚民の聚合である。中央集権の帝政官僚の忠誠心が民に初等からの学校教育により愛国心を天皇を中心とした信仰(大日本賛美)に裏打ちされ、軍の暴走・大陸侵略に「新たな領土ができた」と有頂...続きを読む天になり、ついにはアメリカ様に挑戦するまで不遜になったと見れば「反省」「新日本」で蒔き直しようという「焼け跡民主主義」を理想化「そこには理念があった」著者は占領軍の贅沢三昧、45万人で電力消費の1/3も指摘する

0

Posted by ブクログ 2022年03月26日

上巻は 日本の庶民の敗戦直後の様子が中心。犠牲者としての庶民が 当時の文学、生活状況とともに 映し出されている。これが 敗北の姿なのだと思う


上巻のポイント
*敗戦により 庶民に虚脱が生まれたこと
*戦勝国のおごりと 敗戦国の屈辱 が 虚脱を生んだこと
*非軍事化と民主化は 女性を強くしたこと
...続きを読む*「売春婦」「闇市」「カストリ」が 庶民の虚脱を救ったこと
*虚脱を理解すると 坂口安吾「堕落論」の意味が理解できること
*敗北に目をつけて、英会話の本を出版した目ざとい日本人もいたこと

0

Posted by ブクログ 2021年02月04日

【本書のまとめ】

1 戦後の民主主義革命
敗戦した日本に対するアメリカの一連の改革は、「上からの民主主義革命」であった。アメリカの占領軍は解放軍という好意的な言葉で呼ばれていたが、これは戦後の日本の軍人官僚の大部分が保身に走ったり、目下で進行する貧困と無秩序に何の関心も払わなかったりしたことが遠因...続きを読むになっている。この「贈り物」は日本人自らの力で得たものでは無かった。

日本占領下における米国の目標は、比較的おだやかな軍事化と政治改革のための占領であったが、次第に民主主義へと誘導するような史上例のない実験的占領へと変質した。戦争の勝者がこのような大胆な企て――敗戦国の政治、社会、文化、経済を編みなおし、しかもその過程で一般大衆の考え方そのものを変革する――をすることは、法的にも歴史的にも前例がなかった。
何故こうしたラディカルな改革が成功したのか?それは、米国が多少救世主のような情熱を持っていたからだと考えられる。この東洋の敵は、ドイツと違って封建的で西洋化されていない未発達の国である。この敵を啓蒙することには、健全で新しい行動規範を創造しようとする強い情熱が備わることになる。ここに国際法上先例のない行為が正当化される土壌が生まれ、その行為によって得られる「宣教師的感覚」がアメリカを動かしていた。
このアメリカの野心は、憲法の自由主義化、婦人参政権、労働組合運動促進、教育の自由化、財閥解体など、種々の改革によって、日本国民にも知れ渡ることになった。

これらは「上からの革命」である。歴史上類を見ない、軍事政権主導のトップダウン式革命は、日本人の希望に火をつけ、日本人の想像力を刺激した。かつてなかったほどの個人の自由と民主的表現が花開き、古い日本社会の権威主義的な構造が瓦解した。


2 降伏直後の日本人の精神状態
降伏直後の日本人には疲労と絶望が広がり、「虚脱」が見られた。
負け戦を何年も戦い続けた弊害として日本の食糧生産は壊滅しており、人々は日々の食糧にありつくだけでも大変であった。闇市は拡大し続ける一方失業は深刻で、インフレの進行と飢餓の蔓延が起こったにもかかわらず、日本政府は何もしなかった。この時期の窮乏と虚脱は1949年ごろまで続くことになる。
虚脱の原因は、敗戦の衝撃(崇高な目的意識の喪失)だけではない。それは戦争による疲労と民衆の戦意低下が、戦後の指導層の無能とあからさまな腐敗によって増幅されたためであった。戦後の混乱期に乗じて私腹を肥やす指導層が後を絶たず、軍人や官僚による軍需物資の横領が相次ぎ、それを闇市に流して莫大な利益を得ていた。

未曽有の混乱のなかで、日本に独特の人種的・文化的な「和」だとか「美徳」だとか「家族的団結」といった立派な志は、すべて中身のない噓っぱちであったことがあきらかになった。


3 敗北の文化
①パンパン
アメリカが偉大な理由は、それがとてつもない金持ちだったからであり、多くの日本人にとって「民主主義」が魅力的だったのは、それが豊かになる方法のように見えたからだ。
こうした米兵を相手にする「パンパン(米兵向け売春婦)」が数多く生まれる。もともとは米兵が日本人女性を強姦することを防止する目的であり、日本政府の非公式な後ろ盾を受け斡旋された人々がパンパンの職についた。何せよ米兵にすり寄れば金が貰えるため、パンパンたちは少々特異な意味で、戦後日本の物質第一主義と消費至上主義の先駆者であったと言える。

大挙してやってきたアメリカ人の頭の中では、こうした現状を受け、日本自体が女性的だという考えが生まれた。敵である日本人は、撲滅対象の獣のような人間から、手に取って楽しむ従順な異国の人間へと、驚くほど突然に変貌したのだ。国家同士の関係が男女の関係に変換されて表現されていた。

②闇市
闇市ではヤクザによる縄張りが形成されていた。闇市には買えないものがない。ヤクザは周辺一帯の店からショバ代をしょっ引いて儲けを得るのと同時に、ごみ処理や建設業など治安を維持するのに役立った。

③カストリ文化
カストリとは安くて質の悪い、混ぜ物を入れた酒のことである。転じて、低俗でいかがわしい趣向を前面に打ち出した文化を「カストリ文化」といい、1950年代になっても時代の一角に栄えていた。
肉欲・退廃が蔓延する低俗な世界であったが、この世界の住人は、パンパンや闇商人と同じように、古い権威や根拠のない独断からの解放を人々に強く印象付けるような熱気と活力を持っていた。
カストリ文化を代表するのはなまめかしい性的対象としての女性である。セミヌード線画の雑誌、ストリップショーなど、放蕩とエロチシズムはさまざまなレベルに現れていた。


4 言論
敗戦から数週間で、出版、放送、映画といった分野で、敗戦の暗さを吹き飛ばすような明るさが見え始めた。戦後の日本の中心的な発想のひとつは、ほかならぬ「刷新」であったからだ。なじみのある言葉や以前からの発想を、これまでとは違うふうに利用することで、戦争言論から平和言論への移行がスムースに行われた。


5 革命
日本人にとって「上からの革命」はけっして珍しい経験ではない。19世紀半ばからずっと、支配層は民衆に対して産業化・近代化・西洋化を進め、新たな国家の新たな臣民になれと解き続けてきた。アメリカの改革者たちによる日本占領が成功した理由の一つがこれである。
端的に言えば、日本人は権威主義的だったのだ。そのため、「最高司令官ダグラス・マッカーサーは偉大であり、それゆえ、民主主義も偉大なのだ」というのが大多数の日本人の反応であった。
征服者の軍隊は一人ひとりが法外な権威を持っていた。空襲で焼け残った東京の地に建てられた「リトル・アメリカ」には、外の世界の荒廃ぶりとは対照的に、アメ車が行き交い、米国軍人向けの商品を潤沢に扱う店が軒を連ねていた。
勝者は出版を検閲し、メディアを掌握し、特権階級を作り上げた。言うならば、かつての西欧列強が世界に覇権を拡大していく際に伴っていた、人種差別的な教化の焼き増しが繰り返されたのだ。

占領政策は、すでに存在している日本の政府組織をつうじて「間接的」に行われた。占領軍は日本を直接統治するだけの言語能力と専門能力に欠けていたからだ。
日本の軍事組織は消滅したが、官僚制は手つかずのままであり、天皇も退位しなかった。アメリカの植民地総督は、自分達が出した指令を遂行するのに、現地のエリート官僚層に頼り切っていたのだ。その結果、SCAP(連合国軍最高司令官)の庇護を受けた日本の官僚は、戦争に向けて国家総動員を進めていた絶頂期よりも、実際にははるかに大きな権限と影響力を獲得したのである。

対して日本人は、はるかにすばやく民主主義を受け入れた。あらゆる階層の日本人が、それまで天皇にしか抱かなかった熱狂をもって、最高司令官を受け容れ、敬意と服従をGHQに向けるようになったのだ。

知識人の間では、社会の広範な分野で活動する人々が、さまざまな形でマルクス主義を受容していた。多くは、公式的なマルクス主義を乗り越えて、あらゆる真の民主主義革命の基礎を成すと信じられていた「近代的自己」や「近代的自我」、あるいは「近代人の確立」をめぐる根本的な問題を提起していた。

一般人の間では、草の根から民主化運動が起こり始める。女性参政権の付与、学生運動の機運の高まりなど、政治的な意見の交換があちらこちらで行われるようになり、ラジオ等のメディアは、草の根の人々が「民主主義を受け容れるとはどういうことなのか」を考えるのに役立つ事件や活動を根気強く報道した。

労働法、教育改革、女性参政権など、これらの諸改革には、たとえGHQが日本政府に一方的に命令できる優越的立場にあったことを考慮しても、日本人自身の積極的な関与があった。日本人は因習を打破し改革を積極的に受け容れる姿勢が出来ており、それゆえ徹底した仕事を成し遂げたのであった。占領軍の要求が、日本の抑圧的なシステムに風穴を開け、人々に自由に意見を表明させる礎になったのだ。


6 労働者革命
アメリカは日本の政治的自由化と社会改革を推進したが、「経済再建」という点では、積極的な役割を果たそうとしなかった。これが急進的な政治活動を盛り上げる環境を作り上げることになる。
当時、インフレの影響はかなり深刻で、ホワイト・カラー層とブルー・カラー層の賃金格差が縮小し、ホワイト・カラー層の労働組合加入が目立つようになる。労働組合の組織化が急速に進んだのは、かつて総力戦への動員のために労働者がさまざまな会社や産業レベルで組織されていたという事情があったからだ。個々の企業の従業員が自主的に、事務所や工場、鉱山を占拠し、生産管理闘争を行っていた。
1946年当時は、赤旗の意味は革命や共産主義というよりも、経済的受難による労働運動を連想させるものであった。1946年5月19日には、配給制度の不備に抗議する主婦たちが皇居をめざして行進する「食料メーデー」が起こった。と言っても、食糧危機を克服し政治家や官僚の堕落を正すよう、また民主革命を指導してくれるよう、「天皇にお願いする」という内容の運動であり、このうえない思想の混乱と茶番劇であったのだが。

その後、アメリカからの食糧輸送によって、5月中旬に予想された深刻な食糧危機は回避されたものの、激しいインフレは収まらず、1947年2月1日、共産党と左翼勢力によって二・一ゼネストが計画された。しかし、前日にマッカーサーが介入し、ストを中止に追い込んだ。

労働組合と左翼は日本の民主化に実に多大な考えを、つまり政治的思考や急進的な試みも居場所が与えられ得るということを、身をもって証明したのであった。


【感想】
これは面白い!
「戦後」という日本社会の一大転換期において、当時の庶民社会ではどのような現象が起こり、人々は敗戦をどのように受け止めたのか?平和の侵略者たる日本が秩序を回復し、民主主義思想を簡単に受け容れる従順な民となるには、いかなるプロセスを辿ったのか?GHQの占領政策、日本政府の対応、経済状況、市井で勃興したサブカルチャーなど、多角的な角度から戦後の検証を試みる本である。
とある出来事が起こった時――とりわけその事象の社会的インパクトが大きければ大きいほど――、そこに暮らしていた人々の感情の変化は見逃されがちである。社会に起こった衝撃を後世の人々が検証するときは、線よりも点で、ミクロよりもマクロな視点で物事を俯瞰的に捉えてしまう。
しかしながら、戦争と平和は決して断絶された個々の事象ではなく、連綿と続く価値観の変容である。この価値観の移り代わりを捉えるのには、やはり「当時そこに暮らしていた人々の息づかいを観察する」ことが、最も適していると言えるのではないだろうか。この本が素晴らしいのは、その変化を機敏に捉え、「困窮の中の混乱」として見過ごされがちな数々の事象を、「戦後という時代性が引き起こしたファクト」として位置づけたことにある。
まだ上巻しか読んでいないが、専門的な内容にも関わらず大変分かりやすく、また挿絵も相まって当時の空気をはっきりとイメージすることができた。
ピュリッツァー賞受賞も納得の出来栄えである。直ちに下巻も読み進めたい。

0

Posted by ブクログ 2011年08月13日

戦争直後をアメリカ人が書いた。これは写真など増えている増補版。
いろんな人から見た歴史を知りたい。歴史は、視点が違えば、まったく別物になるから。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

卒論関係で読み進めている一冊。戦後、日本でいったい何があったのか――鋭い観察眼と綿密なデータのもとに、入門者でも分かりやすい語り口で描かれています。とりあえず目標は下巻までたどり着くこと。

0

Posted by ブクログ 2009年10月04日

去年とってた講義の教授のおすすめ本…というか1回生のときの夏休みの宿題の選択課題図書のうちの1冊かな?読まなかったけど気になる本。

0

「学術・語学」ランキング