【感想・ネタバレ】凋落 木村剛と大島健伸のレビュー

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Posted by ブクログ

 

社会人1年目に半年で辞めた会社。
良くも悪くも自分の人生なのでしょうがない。
(勉強になったと。。あのとき就職氷河期だったし)

という意味で振り返りで購入。
最後の3文で評価★�に。

ともすれば人々は自らのちっぽけな不運を嘆きがちだ。
持てる者と持たざる者、勝者と敗者が背中合わせのこの社会に
多くの人々が不満を抱きつつもその不満さえもが豊かさの中で
消費されていく。変革の機運はひどく乏しい。息苦しいけれども
物質的に満ち足りてはいる。そんな時代を日本人はいつまで
続けることができるのだろうか?

1
2011年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

バブル後の不況と続くミニバブルのなか、数々のブラックな噂を撒き散らし、やっぱりな感じで破綻した商工ローンと、庶民の味方をうたいながら、あらびっくり、ブラック商工ローンと、実はズブズブの関係にあって、日本初のペイオフ発動を伴い、お国のなけなしの引当金の大半を引き剥がしつつ、ど派手に潰れた日本振興銀行。
両行を牽引していた、二人の経営者の隆盛と凋落を追った評伝。

おもに飛ばしの手法を用いた粉飾―大島・木村両氏が最終的にやったことは似たようなものですが、そこに至るまでの経緯や、両者のタイプが対照的なのが面白いところです。


一方の大島さんは、スケールこそ群を抜いているものの、よくある強欲経営者ですね。とてもわかりやすい。
彼はとにかくお金が好き。お金をいっぱい積み上げるために、いろんなことを考え出します。
この人にとっての「会社」は、金をつくるための装置以外のなにものでもありません。効率よく金を生む会社がいい会社。あれこれきれいごとを並べていても、それ以外に経営の目的はない。
だから、捕まるのが想定外だっただけで、やらかしたことは全部確信犯でしょう。リアルナニワ金融道。

この人は半島からやってきた、野心たっぷりの実業家一族の出身とのことで、当然、差別も経験したでしょう。頭と金で見返してやろう、ハンデをはねかえし、なにがなんでもセレブ層に食い込もうという上昇志向がすごい。
だから娘の結婚式に、日米各界名士を招待して何千万も遣う、なんてとんでもないことを平気でやっちゃう。
成金はイタイね、と親代々のセレブの皆様は笑うでしょうが、人並はずれた野心と欲の持ち主が、旧体制をひっくり返して歴史が動くこともあります。ただ、この人の場合、残念ながらそこまでの運と器はなかった、というだけ。
とても善人とはいえないし、友達になろうとも思わないけど、こういう破天荒な野人には独特の魅力と迫力がありますね。
ある意味、木村氏以上のパワーがあったのに、惜しいことでした。


さて、もう一方の木村さん、この人は、大島氏とは正反対の、バリバリの体制派です。
地方の公立小学校から国立附属中高、東大経済を経てお約束のように日銀へ。
日銀を中途退職し、外資コンサル会社の出先機関でコキ使われるあたりから、若干コースが狂うのですが、そこは持ち前の押しの強さで跳ね返し、時流に乗った言説で、時の小泉政権本流に食い込みます。
このあたりからは、マスコミにおける露出も多かったこととて、ご存じのかたも多いのでは。

お国に物申すトップコンサル。
当時が、得意の絶頂だったでしょう。そこまでで満足していれば、小泉退陣後も、彼自身の地位や名誉や収入は、ゆるぎないものとなっていたはず。
ところがこの人は、さらに先を目指そうとします。

著者はその理由が「わからない」という。
しかし、これは優秀なコンサルなら、誰しも一度は駆られる誘惑だと思います。おそらく自分の理論をわが手で実践してみたくなったのです。
「コンサルなんて偉そうに言うけど、所詮はただの評論家。口だけじゃん」
と陰で言われるのに我慢ならなかったんじゃないかな。

頭がいい。自信もある。そして手ひどく失敗したことがないから、怖いもの知らず。
さらにいけないことには、彼は平凡なサラリーマンの息子です。事業経験どころか、経営の現実を身近に見聞きしたことさえない。
このあたりも、よくも悪くも商売人の世界に少年時代からどっぷりつかって育った大島氏と好対照です。

金融の地べたを知らない、純粋培養のエリート。そしてエリートだけに、自分の手におえない世界があるとは思わない。
それがすべての災いのもととなります。
すなわち、父親の事業を継いで頭角を現し始めたばかりの落合という男に入れ込み、この得体のしれない人物をバックアップして、自身が策定にかかわった「金融再生プログラム」のモデルケースに仕立てようと考えます。そのために、金融庁顧問の座を擲ち(利益相反排除)、外資コンサル本社と手を切り(口出しさせない)、さらにMBOによって個人会社としたコンサル会社を通じて、新銀行の増資まで引き受けます。
こうやって、新銀行の信用を高めると同時に、自らリスクを取って名実ともに事業に本腰を入れる。絶対うまくやれると思ったんですね。潔いのは認めますが、あまりに無謀。
あとから見れば、このとき既に川を渡ってしまっています。


すんなり当局の審査を通過したまではよかったが(そりゃそうだよ、仕組みを作った本人が申請してるんだもん。情実があろうがなかろうが、そもそもツボがわかってます。ここで癒着を問うのは無理でしょう)、創業早々、読者にとってはやっぱりな感じで、社長就任予定の落合氏に問題勃発。結局一年足らずで落合は解雇。
実質単独のオーナー経営者となった木村氏は、落合氏の開けた穴を埋めるために個人でも負債を背負い、振興銀行の経営そのものも、しょっぱなから歪んだ道を辿らざるをえなくなります。
このゴタゴタのなかで懐かしのリキッド・オーディオなんかも出てきて、映画「ソーシャルネットワーク」でナップスターの人を見たときみたいな気分…。

ベンチャー経営の泣き所、人材不足(店舗展開のために人数だけは多い)に足を取られつつ、すべてを独りで背負い込み、表向き成功者の仮面を維持しながら、裏では弥縫策に奔走する。
木村氏の孤独と焦りが手に取るようにわかる筆致で、以後はほとんどサスペンス小説のような展開となります。


さて、本書のハイライト、問題の商工ローンとの関係が起こるのは、お話の最終局面です。

振興銀行と商工ローンとの共犯関係はなかった。藁をもすがる状況下で、焦った木村氏が海千山千の大島氏にはめられちゃったんだろう、というのが本書の立場です。たぶん、検察もそのストーリーで行くんじゃないのかな。
しかしきっかけはどうあれ、そのあと、損失を隠すためにやったことが道義的にはもちろん、多分法的にも完全にダメなので、シロではありえないと思います。

ちなみに逮捕の直接の根拠となったメール削除・検査妨害事件についても著者は義理堅く詳述していますが、この程度のごまかしがことの本質ではなく、「ネットワーク」を形成する多数の企業を巻き込んだ、大仕掛けな粉飾・隠蔽のほんの尻尾の先っぽにすぎないことがたいへんよくわかりました。


たぶん、木村氏が並みのおつむなら、もっと早くに潰れていたのでしょうが、なまじ秀才で勉強家なだけに、思いつく限りの手を打ち、かえって傷を深めてしまったのが哀れといえば哀れ。
振興銀行のうたい文句にみるように、大島と違って、お金だけが目的というわけではなかったのかもしれない。が、著者が言うように、「レピュテーションリスクを恐れた」(要は恰好つけ)というのとも、ちょっと違うような気がします。
「自分が頭がいいことを証明する」ために事業を起こし、強烈な自負心のために、自らのまぬけさ加減を最後まで認めたくなかったというあたりでは。


……とはいえ、何でもありの金融村の事件です。
すべてを失ったと見せて、
「蓋をあけてみたら、木村の家族名義の隠し口座に大金が流し込まれていた」
なんて事実が将来ひょっこり出てきたとしても、驚くにはあたりません。フフフ。


ところで、このドラマチックなドキュメンタリーには、抱腹絶倒のオチまでついています。
本件ではわき役であり、大島や木村ほど、大物でも利口でもなかったのに、このドタバタ劇のなかで、なぜか一人だけ勝ち残った人がいるのですね。
おそらく今後、何らかの事情聴取とか取り調べ上の協力要請はあっても、この人物が罪に問われることはないんじゃないかと思います。
いやあ、実にしぶとい(笑)。三十六計逃げるにしかず。これぞ「生きる力」。
こうなったら、ぜひ最後まで逃げ切ってもらいたいものですね。

0
2011年05月11日

Posted by ブクログ

 丁寧な取材の積み上げをもとに書かれた、一級の経済ドキュメントです。この手の本は書き手が上手で題材が良くても取材が足りなければ消化不良になってしまい、ごろつきジャーナリズムの記事と大差なくなってしまいます。また取材が丁寧でも分析力や筆力が不足していれば読み物としての面白みがなくなります。
 SFCGと日本興業銀行を経営していた、大島健伸氏と木村剛氏。全く接点のなかった二人がそれぞれの会社の経営行き詰まりを背景に一瞬交差し、「債権の2重譲渡」という前代未聞の結末を迎えわずか3カ月で蜜月が破たんします。
 詳しくは是非本書を読んでいただきたいと思いますが、共通しているのは、両社とも「社会的な意義」や「会社としての使命」を標榜しながら実態的に経営者が目指したのはそれとは無関係のもの。大島氏は蓄財とその後に続く資産隠し、木村氏は成功するまで辞められないという自分の使命感のみ。両社とも従業員のことや取引先の繁栄はまったく忘れ去られている形です。
 経営者は棺桶に入るまでその評価は定まらない…というのが本書を読み、最初に頭に浮かんだ感想です。

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2011年03月31日

Posted by ブクログ

いけすの外を泳いでると、こーゆー景色を見かけることもある。それの特大のやつって感じ。自分が見かけたやつと突き合わせて考えてみるのも面白い。

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2021年08月01日

Posted by ブクログ

破綻した日本振興銀行の木村剛と、SFCG(旧商工ファンド)の大島健伸の人生を巡るノンフィクション。
みんな強欲だねぇ。
高金利だけに目がくらみ日本振興銀行に預金した人たち。
その人たちから預かったお金を怪しげなグループ企業に還流させた木村剛。
日本振興銀行を欺き、お金を引き出した大島健伸。
みんな紙一重なんだけどね。

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2011年06月08日

Posted by ブクログ

レピュテーションとういう個人益の追求。持てるものとと持たざるもの、社会に多くの人々が不満を抱きつつも、その不満さえも豊かさのなかで消費されていく。今日人々は何ら疑問を感じることなく、ひたすら個人益を求め、それゆえ半径50センチの世界しかもっぱらの関心は向けられない。(あとがき抜粋)
 「2人の登場人物と取り巻きの人は後悔していないのか?」
 「個人益を目指すことで幸せになれるのか?」
 「数字の魔力」に想像力をめぐらせる。

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2011年05月03日

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