【感想・ネタバレ】荻窪メリーゴーランドのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

これはすごい。
ひとつひとつの短歌を切り取っても素敵なんだけど、
短歌のかけあいで綴られる物語は、まるで映画のよう。
少しずつ違和感が出てきて、「?」と思っている間に急展開。最後は予想外の結末へ。
最後まで読んでから違和感のあったところを読み返すと、「そういうことか!」と二度読んでわかるおもしろさ。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

特装版を購入。
特装版で読める【たくらみの告白】で木下さんと鈴木さんがどういう視点でで相手の短歌を受け取ったのか解説をしてくれている。
明朝体が鈴木さん、ゴシック体が木下さん。それぞれ女性のSと男性のKの視点で話が進む。短歌を読むという体験だからこそ、仕掛けられる違和感があって、文字では書かれていない感情を想像させられる。
【たくらみの告白】を読んだ前と後では、それが正解というわけではないけど、最初と違う視点と世界が見えた。狂気の中の美しさ。

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

盲の熱情に目を奪われて、気づけばその終わりまで見届けてしまっていた。はじめにくる花火のように、恋は鮮烈で有限で、火が着いた時から終わりを予感せずにはいられない。やさしさと激しさと、いつまでも続くような後悔を抱き合わせて、くるくると、恋は回りだす。短歌ならではの余白や、不意打ちに翻弄されながら読んだ。特装版ではこの恋に仕掛けられたたくらみの一部が明らかにされているのでぜひお手にとっていただきたい。ページを捲り終えて、その終わりを認識してからまた開きたくなる。いつかの恋を思い返すように。

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2023年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごいもの読んだ。
たしかにすっごく上質な「歌集」なんだけど、それだけじゃなかった。

まったく予備知識なしで読み始めたんだけど、男女二人の歌人がそれぞれ交互に歌を詠んでひとつの物語を作っていく、っていう構成なのはすぐにわかって、はじめのほうは素直に楽しく読んでた。

脳内で浮かぶ絵は魚喃キリコか浅野いにお。実写なら岩井俊二の空気(世代バレ)。

少しけだるいような、ささやかでしあわせな恋。
荻窪がどういう雰囲気の土地なのか知らないけど、なんかこうやって地名が入ると一気に都会の片隅で肩寄せ合う男女の生活感みたいなものが滲んで良いね。

しあわせな恋人同士のふたり。
やがて同棲をはじめ、ペットを飼い、彼氏が母親に彼女を紹介する。

で、このあたりから、だんだん、「ん?」っていう違和感がやってくる。
一首一首の完成度が高いので、違和感の正体にはすぐには気づかなかった。
でも、どゆこと?って、その2つの歌が並んでいる意味を追求することなく、ただ漠然としたと違和感だけを抱えたまま進んで行く。

やがてはっきりと事実らしきものが明らかになる。
彼女には新しい恋人ができて、彼の元を去っているらしい。
きっかけは母との顔合わせのあと?彼女は逃げた子猫を探しに行き、そのあと行方をくらます?

とにかく誕生日の歌で、二人がもう一緒にいないことが決定的に描かれる。
彼氏は彼女を探しているけれど、見つからない。

それから回想。「2年前」と書いてるのでわかる。
彼女が落とした赤い財布を拾ったことが出会いだったらしい。
ここでの感情は、彼女のほうが深いような気がする。
前半読んでるときは思わなかったけど、最初に好きになったのは彼女のほうだったんじゃないのかなあ。
恋のはじまりの、きらきらした二人の歌がここに入るっていうのが残酷。

そしてこっからは完全にサスペンス劇場。ラストに向けて一気に不穏になっていく。
短歌が並んでるだけなんだけど、場面がドラマのようにはっきり描写されてる。臨場感すげえ。

彼女(仮・ハルカ)のマンションに行く彼(仮・タツヤ)。
同じ階で先にエレベーターを降りた男が、ハルカの部屋のインターホンを鳴らしたので、タツヤは「は?」ってなる
逃げ込んだエレベーターの窓から、タツヤは、ハルカと男のキスシーンを目撃。
パニックになったタツヤ、どっかから包丁買って来て、ハルカの部屋を襲撃。
けれど刺すことはできず、新恋人に阻まれたりして、自分が刺されてしまう。
傷を負って渋谷の街をさまようタツヤ。
だんだん意識が遠のいていく。サイレンが鳴り響く中、世界がぐるぐるとメリーゴーランドのように回る…(ちくしょう私がまとめて書くとなんでこんなに陳腐になるんだ)

一回目読んだときは茫然としてしまった。
なんてこった…あんなにしあわせそうだったのに!
でもすげえな、歌集でこんな衝撃。
描かれてる一首一首は、その瞬間の感情を見事に切り取っていて、心の渇いたおばちゃんの私にもぎゅんぎゅん刺さってくるようなやつばっかりなのに、これらが連なることによって一つのストーリーが浮かび上がってくる。

しかもただのラブストーリーじゃなくて(いや途中までは純度の高いラブストーリーに見える、ハッピーエンドに向かうように見える)、とんでもないサスペンス展開……。

とか思いながら、もう一度読み返してハッとした。

「え、これ、どこからが幻覚?」

どう考えても変、っていう点が仕掛けられてるじゃん。うへえ、気づかなかった!!!

二人が飼ってたのは犬なの?猫なの?
トイプードルのはずだったのに、途中から「猫」になってるじゃないか。
お母さんには彼女が見えていない?
てか無視してるのかと思ったけど、見えていないんじゃなくて、本当にいないから?
泣き出したのは、「そこにいるじゃん」って言った、息子の狂気のせい?

♂母を追いきみも子猫も駆け出してひとりで剥いている萩の月
♀缶ビール潰せばベッドに逃げてゆく子犬、こいぬという名にしよう。
♂「いる人が見えない 病気」こんなとき(にも/こそ)ぼくはGoogleに訊く

この3首の並びがよくわからなかったんだけど、この少し前の、母と息子の会話の場面もヒントなのか。
彼女も同席してるはずなのに、母親は終始彼女を無視してるようなことを言う。
ひでえ母親だと思ったけど、そうじゃなかったのかよう~。

♂「広いわね」「まあふたりだとちょうどだよ」「そっか、子猫も家族だもんね」
♂「恋人はいないの?」「なんで?いるじゃんか!?そこに!!!」と指せば母が泣き出す

彼氏のほうの歌だけ抜き出してみるとはっきりするんだけど、彼女の歌と交互に並んでるせいですっかりケムに巻かれちゃってた。油断した。
彼女が言ってる「ベッドに逃げてゆく子犬」って、犬じゃなくて新しい恋人ってこと?

そう思ったら、この物語(歌集だ)をどう解釈していいかますますわからなくなった。

ホントにサスペンスじゃん。
他にもヒントがあるのかもしれん。もっと何回も読めばわかるのかも。

木下龍也さんを初めて知ったのは岡野大嗣さんとの「玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ」だったんだけども、
あれもたしかに結構サスペンスの空気があったんだよね。
はっきり描かれてはないけど、なにか破滅的な事件の匂いがした。

今回のは、あれをより濃く、具体的に仕掛けた感じ。

彼はいつから彼女の幻覚を見ていたんだろう。
犬を飼っていた頃には、まだ二人でいたはず。
このあたりがすごい謎解きポイントな気がする。

小冊子つきの特装版とやらを買えば謎が解けるんだろうか…
でも自分で勝手に解釈したいような気もするんだよね。

それにしても、「歌集」ってものの概念を越えた作品だった。
これをネタバレなしで読めて、衝撃食らってよかった。

小説ではできない仕掛けだし、感情の部分の鮮烈な切り取りはやっぱり短歌でしか表現できない部分だし。

ほんと、すげえものを読んだなあ…
もっと話題になっていい作品だと思う…

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく良かった
歌人の木下龍也さんと鈴木晴香さんが短歌で紡ぐたくらみに満ちた恋愛ミステリー。
鈴木さんの歌は明朝体で、木下さんの歌はゴシック体で表記されている。
恋愛中の本好きの二人が、海行って花火見て、同棲して…ん?なんか変だぞ?
今まで短歌を読んできて想像していたストーリーと微妙にズレてきて、物語は一気に不穏さを増してくる。
今まで読んでいたものは何だったの?
あれは、誰だったの?

普段短歌に親しみのないひとでも、恋愛小説読み、ミステリ読みには楽しめるんじゃないかと思う。
短歌というものは限られた音数に言葉を当てはめるため、そのぶん削ぎ落としている言葉が多い。
それゆえ、想像の余地が大きく、1首1首がミステリめいている。
畳み掛けるように展開していく物語に、ページを捲る手が止まらなかった。
考察系が好きな方にもぜひ。

特装版もあり、グッズ展開もしている。
特装版にしか無い小冊子読みたい!






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2023年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

木下龍也さんと鈴木晴香さんの共作の現代短歌集。
2人の短歌が物語のように、夏のデート→同棲→結末、と、ストーリー仕立てになっています。
特に気に入ったのは
『君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い』
『本棚にふたりの過去を並べれば「海辺のカフカ」上上と下下』

勉強不足のせいか、1回目はあまりピンと来なかったのですが、2回目、3回目と目を通すと、全体が見えてきてゾゾゾとしました。他の方のレビューを読むと、もっと深い仕掛けがありそう。わからなかった短歌をちゃんと読み解きたくなりました。
31文字でこんなに想像を膨らませるなんて、コスパならぬ文字パが高い!

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

幸せな日々からのかすかな違和感。すれ違い。
互いの気持ちの遠さが交互に掲載された短歌で表現されている。
最後まで読んだあとに読み返したくなる。

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2024年01月05日

Posted by ブクログ

木下龍也さんと鈴木晴香さんが紡ぐ虚構のラブストーリー。短歌としてはもちろん物語としても衝撃のラストで「え?」って思ってしまった。

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2023年12月12日

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