【感想・ネタバレ】彼女が言わなかったすべてのことのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほんタメで紹介されていた本。ある事件をきっかけに主人公の波間が学生時代の友人である中川くんと再会し、連絡先を交換するが、2人は実はパラレルワールドのあちら側とこちら側にいて、、というお話。
2人(メインは波間)こ数年間が描かれるのだけど、中川くんの世界ではコロナが流行して緊急事態宣言が出たり、オリンピックが延期されたり、有名人が亡くなったり、読者の現実とリンクしていて面白い。最後には波間の世界では2024になり追い越されているのも。
波間の考えていることが、思ったままの口調で書かれるのでこちらに直接語りかけてきているように感じた。大きなドラマがなくても、淡々と続く日常でも、私たちはここに存在している、という波間の言葉がよかったな。この物語自体も、波間は病気のサバイバーであるけれど、ドラマチックな起伏はなく、まさに"波間"のような時間のまま最後まで決定的な結末で終わるのでなくてよかった。読後も色々考える余韻が残る作品でした。

0
2023年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

パラレルワールド側とのやりとりがワクワクして面白かった反面、いろいろ気になって仕方がない。もうちょっと、あちら側との共通点や相違点を掘り下げて教えて欲しかったな〜!
こっちの中川くんとも仲良くなったらどうなるんだろ?でも、ならないところが、良いんだろうな〜

片胸がなくなってから、無になり楽になったという気持ち。。そうか、そういう人もいるのか。
30代から40代にかけての闘病生活、本当に辛いだろうと思う。

0
2023年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。

この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。

物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せられる言葉だ。
この言葉でふと性犯罪に遭い果敢に裁判に挑んでいる女性に対し、批判的な見方をする人が多くいることを思い出した。
「正しい被害者」でないと、かわいそうではないのか?
そもそも「かわいそう」と当事者達は思われたいのか?
被害者は強くあってはいけないのか、加害者に挑んではいけないのか?
「正しい被害者であれ」とすること自体、セカンドレイプなのだと思う。

パラレルワールドの中川くんがこの物語のキーマンだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。
中川くんも漂う波間と出会った人の1人に過ぎないのかも。
この物語においてのパラレルワールドの中川くんについては、どのような人物だったのかもう少し考えたい。

0
2023年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

見覚えのある語句と見覚えのない世界が交わって描写されて、みっつめのパラレルワールドにいるようだった。いやどちらかと言うと波間のいる世界ではなく、向こうの中川くんの世界が読んでいる自分の世界の描写に近い訳だけど……。

波間は年代も近くて、けれどやっぱり経験が違うこともあって、最初はそれがサバイバーだから、病気を経験したひとだからと思ってしまっていたけど、読み終えて改めて深呼吸をしてから考えてみると、べつにそうではないことを、わたしも良い年だしそろそろ考えなければと思った。ひとりひとり言わないことがあって生きていく世界があるのかもしれないなあ、と思った。

おしゃべり好きでひとと過ごすのが好きなわたしとしては「パラレルワールド」に過ごす誰かと実際には会えないことだけじゃなく、想いを共有せずにぐっと心の中に置いて言葉にしないこと自体を寂しく思ってしまったけど、波間が理解したようにそれはもし言葉にしてたら誰かを傷つけたり影響を与えたりするかもしれないんだもんな。沈黙が正しい、というわけではないけれど、わたしは波間とは違う、だからどんな言葉を吐いても構わないんだ、ということには絶対にならないんだなと思った。
あなたもそうでしょ、わたしもこれが耐えられなくって、もしくはこれが欲しくって、と、立ち止まることない思考で自分の快や不快をぶちまけるということは随分と強い凶器にもなる。終盤以降は前向きな波間の暮らしを見守ることが清々しいとともにすこし切なさと寂しさも漂って、最初の病気の部分にはBGMが邪魔に聞こえてしまって止めたのに、中盤以降はカフェで流れるようなジャズがとてもしっくりきた。
これらを、自分の心の中で捏ね回すだけではなく、社会の出来事を受け止めながら咀嚼して、怒ったり落ち込んだりする描写をする桜庭一樹さんを、改めて尊敬するしその文章をずっと読んでいたいと思った。

0
2023年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

治療を続けながら自分の生活をゆっくり立て直していく数年間の間に、主人公の気持ちが目まぐるしく複雑に変化していく。

元気で明るくて前向きな病人という面だけを見せ続ける社会的な義務

少数派が社会に受け入れていただくため、説明し、努力を重ね、理解してもらわなければならないような義務

そんな謎の義務感にかられたり。
そういうのもういいかなと思ったり。
でも、心が疲れて抗わなくなったり。
自分の言葉が、暴力的に誰かの心を打撃してしまう可能性を考え出して沈黙するしかなくなったり。

複雑なままに終わった。

特に理由はないが、しばらく桜庭一樹から離れていただけに、このNEW桜庭ワールドは、本当にNEWだった。

0
2024年04月18日

「小説」ランキング