【感想・ネタバレ】脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦のレビュー

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ネタバレ

混みいった内容もありましたが、全体を通してとてもエキサイティングな内容でした。
まず1章では、脳の情報処理のメカニズムについて述べられています。
次に、2章で両眼視野闘争を例に出し、感覚器に入力されている=意識に上る、という訳ではないことを説明します。また、視覚野のどの箇所が意識に上るかどうかに連動して応答が変化するのかを調べた研究で、低次の視覚野よりも高次の視覚野の方が意識と関連しているニューロンが多いと述べられています。
3章では、操作実験(脳に刺激を与えるような実験)を利用して、NCC(意識の生成に必要な脳領域)を特定する研究について述べます。
4章では、主観的な経験である意識の、満たすべき要請(物理学で言うところの運動方程式やシュレーディンガー方程式)を明らかにする難しさについて述べられる。それでも、意識の自然則を実験により検証可能にする方法について議論がなされます(むしろ実証&反証可能性がなければ科学的な要請とは呼べないとも述べられている)。
5章では、統合情報理論のような情報(の統合)を意識であるとする理論と、情報処理のアルゴリズム自体が意識の担い手であるという2つの仮説について述べられています。なお、著者は後者の、特に脳内の生成モデルを意識の担い手として妥当だと考えているそうです。
終章では、脳と機械を繋いで機械に意識をアップロードするというSFチックな話が最後に著者の夢として語られます。

また、本書の趣旨とは逸れますが、fMRIがニューロンの入力信号を、電気生理実験でのスパイクが出力を反映しており、これらの結果を単純比較することができない場合があると言うのは面白かったです。また、統合情報理論の説明も分かりやすく、勉強になりました(説明例:2つのニューロンが同時発火した時に得られる情報量がそれぞれの単独での発火の際に得られる情報量の和よりも大きいとき、情報が統合されている状態であり、意識が存在する)。

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2024年04月01日

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脳科学、詳しく言うと、その中でも「意識」の研究にフォーカスを当てた本。
脳の働きは電気信号で、視覚は、聴覚はどのように処理されて、といったようなことは少しずつ明らかになる現代ですが、その中でも未だ謎に包まれている「意識」。見えることではなく、「見えた」というこの感覚。これはどこからくるのか。
「意識」という神秘的で主観的な現象に立ち向かう難しさと面白さをたっぷり味わうことができました。

生物は中学生レベルの理科までしか勉強していませんでしたが、生物の知識には困ることなく読み進めることができました。

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2023年11月16日

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90年代以降の脳科学の進展をよく解説してくれています。前半は基礎的な解説が多いですが、それらを踏まえて後半になると、機械でつくった脳半球と人間の脳半球を接合する構想などが登場。なんとサイバーパンクな!
絵空事としてではなく、工学者でありながら脳の解剖学的構造や生理に真正面から取り組んでこられた科学者としての本気の考察で、とてもエキサイティング。

意識にのぼる前に体が勝手に反応しているスポーツ選手の脳内で起こっていることなども本書で説明されていて、自動車を運転している時の危険回避の自分の体験などとも通ずるものを感じました。

自分としては90年代は脳関係の本をずいぶん読んでいましたが、その後の脳科学を本書で概観することもできて、とても面白かったです。

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2022年09月30日

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私のようなに脳の処理能力の低いものにはなかなか難解な内容であった。が・・・
機械処理としての脳は、例えば水車小屋に比べれば格段に複雑であるものの解明可能であるが、客観的に解明ができたとしても、脳の主観には一歩も近づかない、という考えには目からうろこが落ちる。この問題が分かれば機械に意識を宿らせることもできるかもしれないし、既に宿っていることが分かる!?かもしれない。そもそも科学的なアプローチでこの問題を解明できるのか、も分からない。そのような中でも、果敢にこの問題に挑戦している筆者をはじめとする研究者に、エールを送りたくなる。

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2021年11月21日

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ネタバレ

知覚には遅れがあり、それが物理的感覚とのずれを生じさせる。これが意識の過去と未来の関係性に大きな影響を及ぼす。例えば、バッターが160kmの球を打つとき、その時およそ0.4秒で到達し、知覚には0.5秒の遅れが生じるから、この球を打つという命令をしたのは何なのかという問題が出てくる。つまり、意思を司る何かがあるのではないかということだ。
意識の本質は、脳の客観と主観の境界にあると述べられている。脳の客観とは、三人称的に物が見えるという意識のメカニズムであり、脳の主観は、なぜ、物が見えるという意識(クオリア)が生まれるのかということだ。
この本質に迫っていきたいが、そもそも科学というのは客観性を証明することが宿命であり、意識という主観を客観性で証明するのは、困難だという。ゆえに、既存の科学から逸脱したアプローチで取り組むべきか、それとも従来の客観的なアプローチでいくべきかはわからないそうだ。
決定論カオスによる因果性の網はとても興味深い。
最後に、人の意識を機械に送るときに重要となるポイントは、自分というものが何者なのかを知覚し、そしてそれ以前の記憶が存在するのかということだ。
脳科学の分野の発展は著しく、読んでいてとてもワクワクしたが、倫理的な問題もかなりあると思う。

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2021年04月01日

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結構難しかったので整理しながら読むといいと思う。最初から3章までは視覚に関する脳の機能を中心に様々な実験を通して脳科学的に意識の存在をどう研究するかについて述べている。時折出てくる研究とはなんたるかについての記述が面白かった。4章以降は意識を人工的に再現することについて迫っている。前半は前半で脳の具体的な話を一つずつ追う必要があるので難しかったが、後半は意識とは何かについて抽象的な話が展開されるのでさらにわかりにくい。だけどそのぶん読み応えが大きく、また初めて触れる分野だったのでとても面白かった。

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2020年07月03日

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「未来のどこかの時点では必ず人間の意識を機械に移植することが可能になる。」をテーゼに脳神経科学者の立場で脳の基本的な仕組みの解説から、様々な実験結果を丁重に解説していき、ディープラーニングや哲学なども含めて、テーゼの可能性を検証する。ややもすると冗長な感じも受けましたが、真面目に科学する姿勢とはこういうことなのだなととても勉強になりました。また、我々は自由意志を持たない方向に議論が向かいつつあるとしながらも前野隆司教授の「受動意識仮説」に触れていないところが少し気になりました。

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2019年08月18日

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人の意識を宿した機械。SFであるようなイメージが、はたして現実にできるのか。その前に、そもそも「意識」の定義ができていないと、何をもって意識が宿ったとできるのかさえ分からないと。という問題から本書は入っていきます。
視覚という一つの感覚に焦点を当てて、それを見ている私たちは、それをどのように認識しているのか、その仕組みを分かりやすく説かれています。意識の定義など、雲をつかむようで到底できないと読み始めましたが、すごいことに本書はそれに光を当ててきました。意識というものの輪郭が見えてくる知的好奇心の満足を味わうことができる内容になっていると思います。
そこから、その意識を、どのように機械に移植するのかの問題が残っていますが、それも将来の技術の課題がありますが、方向性が見えているということが分かります。未来の技術の発展に対しての希望が見えてくる読後感でした。

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2018年12月28日

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脳の構造を解き明かし、意識の謎を探る。意識はニューロンの回路に宿るのか。生理学的に脳をいくら解き明かしても、意識の謎は残りそうに思う。

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2018年10月19日

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色々この本はいいところがあるのですが、脳科学が確立されるに至った代表的な実験をざっくり概説してるところが好きでした。地道な「当たり前」の積み重ねである科学の営みから、意外な事実を見つけだす画期的な実験をするのがいかに大変か、ということも認識させられました。

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2018年07月20日

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池谷先生の「進化しすぎた脳」より本書の方が意識について分かりやすかった。もしかしたら「進化しすぎた脳」の後にこの本を読んだからある程度の基礎知識のおかげで理解がしやすかったのかも知れない。いずれにしても、ただのシナプスの電気信号により意識(らしきもの)が発生するという生物の神秘には本当に脱帽する。哲学が捜し求めている「自分の存在」というものが結局は単なる偶発的な電気信号によって発生するというのはどう考えれば良いのだろうか。意識が視覚をコントロールし、見えないものが見えているように思うなどということを聞くと、やはり「自分の存在」はすべて虚構という哲学の問題に辿りつくように思う。意識は実は未来を先取りして過去に遡及するなどというトリビア的な知識も増えて面白い本だった。

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2018年04月08日

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脳科学のうち、特に意識・クオリアの概念とそれについての科学的な研究、また最後には人間の脳と機械とを繋く構想が述べられている。

レイ・カーツワイルのシンギュラリティでも述べられていた生理学的な脳を機械に徐々に置き換えていく発想のもとになっている議論の系譜を知ることができた。

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2022年04月17日

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人間はニューロンの集合体に過ぎない。
だとすると、人間の意識は、機械に移すことが出来るのではないか。
非常に知的好奇心をくすぐられる内容だった。

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2020年01月22日

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ダマシオの本に引き続きの感じ。意識のメカニズムの解明は機械脳をつなぐことでしか達成できないと。意識は主観だから確かにそうなるか。あと生成モデルを知れて良かった。自由意志の問題も改めて理解が深まった。トレーニングされた脳の自動的な判断を、自分で決めたと気持ちよく錯覚させてくれる、そんな脳のこと

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2019年07月06日

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「意識」とはなんぞや−どうやって、「意識」が実在することを確認するのか
目で見ている(と認識している)映像と、現実は同じなのか?
「意識」はどこから来るのか?脳内で何が起こっているのか。
脳内の何が(どこが)意識を生み出しているのか。

でも、あなたも私もシナプスの集合体に過ぎないのよ!?

「(本書を書いていて)考えればかなえるほど、(機械に意識を移すのって)いけてしまう気に」という若き著者の今後の研究に期待したい。

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2022年08月24日

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解き明かされつつある脳科学の入口とその先
ニューロンや視覚の仕組みから、深層学習のアルゴリズムから迫る脳の仕組み
意識の遅れの解釈など、成る程と思わされっぱなしで、脳について分かった気分になる。
一方でマウスの脳と機械を繋ぐ実験など、現代の感覚からすると、聖域である一面を侵しつつあるようにも思え、刺激的である反面、怖い気もした。

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2018年07月29日

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ネタバレ

意識とは何か、そして機械にも意識はあるかを取り上げた1冊。様々な実験で、無いものがあるようにして見せることが出来ることを知ると、クオリアは所詮、脳が作り出したものであり、真実とは何か、深~く考えさせられてしまう。

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2018年05月21日

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ネタバレ

【感想】
<知りたかったこと>
①最新の脳科学の状況は?
②意識をどう考えている?・人間とは何か?
③どうやって、研究を進めているのか?(研究のアプローチ方法・考え方)

【理解とは?】
新たな知見とは、研究対象への理解の深まりである。
あなたが選んだ現象には、おそらくいくつかの仮説が存在する。理解の深まりには、誤った仮説をふるい落とし、可能性のあるものをいくつか絞り込むことによって得られる

[人間の視覚の限界]
人間は、視覚情報を一度に多面的にみることができない。
そこにあるのはいつもひとつの見方だ。

【自分が選んだものを正当化する性質】

選択盲→人間は自分が選んだ選択肢をあたかも正解のように信じ込み、
選択したものが変わったとしても、気が付かない。
女性の顔のすり替え実験

実際には存在しないはずの、「意識のもとの自由意志」を、我々がなぜ信じて疑わないかを説明してくれる。
答えは簡単だ。脳が自由意志という、「壮大な錯覚」を我々に見せてくれるからだ。

【専門家とそれ以外】
専門家とそうでないものの違いは、
「何も知らない」ことを知っていることだ。
専門家の知る「知らないこと」これこそが
前述の主観と客観の間の隔たりである。

【科学と哲学の違い】
科学は、検証のまな板にのらないと意味がない。
正しいことを証明したり、正しくないことを証明して、真の自然則を導くことも意義がある。

【世界は虚構でできている】
世界の隅々まできちんと見えた気になっていても、それが実際に外界を反映したものであるとは限らない。
我々の感覚は、外界を直接的にモニターしているわけではない。あくまで脳の仮想現実システムが、目や耳などから得た外界の断絶的な情報をもとに、「それらしく」仮想現実を作り上げ、我々に見せているに過ぎない。

【人の記憶】
「記憶の方法」
エピソード記憶は、海馬と呼ばれる脳部位に一時的に情報が保持される。そして、夜寝ている間に、その海馬に蓄えられた情報をもとに、実際にエピソードが生じた状態が、大脳皮質に再現される。それが何度も繰り返されることによってヘブの学習則が働き、大脳皮質そのものに記憶が移行する

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【本質を追求する】
ある機能の本質ではない何かに操作を加えた場合も、その機能へと影響が及んでしまうことがある。特に、NCCを探求する操作実験には注意が必要だ。NCCの定義自体に、「本質」の意味合いが深く込められているからである。

→本質の探求の仕方



「ACTION」

意識の本質をさぐる研究アプローチからは
本質を探る方法論が詰まっている。
・削ぎ落としたり
・削ぎ落とした結果、本質にまで影響してしまうものがあったり
・様々な状況を想定したり
しながら、本質を探る。


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2018年04月16日

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分かったような分からないような…
でも具体的な意識の確かめ方が記載されていてそれを試してみる事で言わんとしていることが分かる本

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2018年03月12日

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2017.12.19-2017.12.22
意識についての科学的研究の現状を知るのに良い本。前半は意識研究についての歴史を含めた概説、後半は著者自身の研究について述べる。
両眼視野闘争といふ現象を使つて意識(知覚)の有無を確かめようといふのは、面白いアイデアだ。意識の有無を判断するのは最終的には自分しかないので、機械の脳と自分の半球を繋ぐといふ手法を考へてゐるのも、興味深い。
ただ、個人的には、概念の段階でいろいろと検討すべき問題があるといふ気がする。さうした頭の体操に駆り立てる刺激を持つた本。
意識の問題や脳科学に関心がない人にはお勧めできないので、星は四つ。

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2017年12月22日

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門外漢の私には難しい点はあったが、意識とは何か?をいかに科学者が解き明かしているかを丁寧にまとめてくれている本。この先、AIやシンギュラリティ論がどう進むか、そしてどのように社会実装されるかの根底にある研究たち。

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2023年10月28日

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脳に意識が立ち上る現象も解明できていないなか、機械の意識を論じる大胆な論考に興味を持った。
外界からの情報をもとに、眼で見えて感じている世界は脳内現象である、と理解していても、不思議さの謎の解明には一歩も近づけない。しかしながら、睡眠中みたいに外界から遮断された状態でも見る夢のリアリティーに溢れた映像を思うと、脳内現象という理解は深まる。本書で言及されている、脳の半球と厳密に接続された機械の半球(残り半分の代替)が可能であれば、機械には意識が宿ったといえるのか、という奇想天外な発想には驚かされた。
それにしても、そもそも脳で発生する意識が進化の過程で、どのように獲得されたのか、謎は尽きずに、消化不良気味で読み終わる。

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2022年03月15日

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脳神経科学の門外漢である自分にはかなり難易度の高い内容。

第1章から第3章までの視覚と脳に関する研究の解説はなんとか理解が及んでいたけれど、第4章以降の意識の研究への切り込みは難しくて完全には理解できなかった。
しかし、今まで全く知らなかったし気にかけたこともなかった「意識の研究」について知ることができ興味深い一冊でした。

本書の通りだと、いつの日か、自分の脳と機械の脳を繋ぎ同期させて意識を移植する、という技術が現実になる?
 生体脳の寿命が尽きても自分の意識は永遠に続くといくSF小説のような日が来るかもしれないと思うと、面白い。

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2021年01月17日

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著者は下條信輔の弟子筋にあたるとのことで読んでみた。意識とは何ぞやについての哲学的な考察も、脳の働きを知るための技術的なところも両方ともむずかしく、読み通しては見たが半分くらいしか理解できていない感覚。下條やラマチャンドランとかも読んで扱われている内容には多少馴染みのあるつもりではいるが、わかりやすさよりも、意識研究の醍醐味を雰囲気だけでもそのままナマで伝えることを優先している感じである。
この分野はブレイン・マシン・インターフェイスの発展でそのうちもっと見通しが良くなりそうである。楽しみやら怖いやら。

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2019年01月02日

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意識に係る自然則って筆者記載の通り矛盾凝縮な訳で、そもそもアプローチが違っていたりするのかもとど素人ながら思ってみたり。
しかし意識の機械(あるいは外部客体)への移植って、、、うーん、、、何か踏み込んではいけない領域ではなかろうかと直感的に思ってみたりもしますなぁ。

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2018年03月21日

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本書のテーマは「機械に人間の意識を移植できるのだろうか」というものです。そもそも「意識」とは何かという疑問に関して視覚を題材に「見えると感じること」を定義することからスタートし、機械に意識が宿ることはあるのか、そして最後は自分自身の意識を機械に移植できるのか、という点についての思考実験について述べています。昨今のAI監視カメラは特定の人物を群集の中から判別できる精度に達しています。AIは確かにその人物を「見つけて」いるわけですが、「見えている」と”意識している”わけではないわけです。この違いのフロンティアに切り込むのが本書のテーマと言えます。
前半は「意識」についての現在の脳科学の最前線の解説です。正直なところ、専門用語や専門的な概念がたくさん出てくるので全てを理解するのは困難かと思います。私自身、あまり理解できずじまいでした。しかし、本書の一番の読みどころは意識の移植を扱った後半部です。
自然科学と哲学の境目を扱った本という印象でした。宇宙の起源についてもそうですが、自然科学も突き詰めると哲学的な領域に踏み込んでいくものなのですね。

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2018年04月08日

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