混みいった内容もありましたが、全体を通してとてもエキサイティングな内容でした。
まず1章では、脳の情報処理のメカニズムについて述べられています。
次に、2章で両眼視野闘争を例に出し、感覚器に入力されている=意識に上る、という訳ではないことを説明します。また、視覚野のどの箇所が意識に上るかどうかに連動
...続きを読むして応答が変化するのかを調べた研究で、低次の視覚野よりも高次の視覚野の方が意識と関連しているニューロンが多いと述べられています。
3章では、操作実験(脳に刺激を与えるような実験)を利用して、NCC(意識の生成に必要な脳領域)を特定する研究について述べます。
4章では、主観的な経験である意識の、満たすべき要請(物理学で言うところの運動方程式やシュレーディンガー方程式)を明らかにする難しさについて述べられる。それでも、意識の自然則を実験により検証可能にする方法について議論がなされます(むしろ実証&反証可能性がなければ科学的な要請とは呼べないとも述べられている)。
5章では、統合情報理論のような情報(の統合)を意識であるとする理論と、情報処理のアルゴリズム自体が意識の担い手であるという2つの仮説について述べられています。なお、著者は後者の、特に脳内の生成モデルを意識の担い手として妥当だと考えているそうです。
終章では、脳と機械を繋いで機械に意識をアップロードするというSFチックな話が最後に著者の夢として語られます。
また、本書の趣旨とは逸れますが、fMRIがニューロンの入力信号を、電気生理実験でのスパイクが出力を反映しており、これらの結果を単純比較することができない場合があると言うのは面白かったです。また、統合情報理論の説明も分かりやすく、勉強になりました(説明例:2つのニューロンが同時発火した時に得られる情報量がそれぞれの単独での発火の際に得られる情報量の和よりも大きいとき、情報が統合されている状態であり、意識が存在する)。