【感想・ネタバレ】流星ワゴンのレビュー

「最近、いつ泣きましたか?」――ジメジメした梅雨も終わり、そろそろ疲れも溜まってきたのでは?そんな時は本を読んで泣いて、心をすっきりリフレッシュするのはいかがでしょうか?そこで、悲しいけれど心が暖まるストーリー、重松清の『流星ワゴン』をご紹介します。
リストラ、妻の浮気、息子の家庭内暴力など、度重なる不幸と家庭崩壊によって、死を考えていた主人公の永田一雄。そんな時、1台のワゴン車(流星ワゴン)に乗って、人生の岐路となる場面を旅するという物語。
タイムマシンで時空を巡るといった、非現実的な物語を想像するかもしれませんが、書かれている内容は実にシビアで現実的。流星ワゴンは決して希望に満ち溢れているわけではなく、非情なくらい現実を突きつけてきます。しかし、それでも主人公は問題解決のために必死に体当たりしていく…。そんな姿に「過去は振り返るためにあるのでは無く、前を向くためにあるのだ」と強く教えられたような気がして、何度も涙を流しました。人間とは何か、過去とは何か。心に残る名作です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公目線では『四半世紀まえの父親』
父親目線では『四半世紀あとの息子』

25年の過去と未来が親子のやり取りを通してぶつかり合う、
ファンタジー色つよめなヒューマンドラマを見させてもらいました。

永田一雄は、失職したうえ家庭崩壊の憂き目を見る複雑な事情を抱えて、
生きることに絶望した状態から物語がはじまりますが、
橋本親子のオデッセイに同乗することで、自分と同じ年齢の頃の父親と会い、
人生で大事な節目のシーンをリプレイする機会を得ることで、
自らの現在における因果関係を知らしめられ、苦悩します。

変えようとしても変えられない『過去』を抱えたまま、
死に別れることになった父親チュウさんとのやり取りを経て、
主人公は自分自身の殻を破り、いまがどんなにサイアクの結果でも、
変えられる『未来』のために動き始める。
幕切れに甘みはないですが、伝わらなかった家族愛のかすかな糸が、
三世代にたしかに繋がった様な、そんな雰囲気を感じました。

考えてみれば、人と人のやり取りって間柄が近くなればなるほど、
素直になれないとか、伝わらないもどかしさが有ると思います。
小さい頃には小さい頃の、大人には大人のコミュニティがあり、
みんなその中で自分を律して競争に打ち勝つことで、
他との繋がりを維持している奇跡のたまものなんですよね。

家族を守るために、少しでもいい暮らしをさせるために、
心を鬼にして仕事に打ち込んだチュウさんの気持ちも、
息子の受験に対して父母で協力を惜しまなかった行動も、
多感な子どもからしたら、重圧ともなってしまうわけで、
真の感謝とは時間が経ってみて、初めて両手で受け止められるものなのかもしれません。
一雄には父親の暖かい心が確かに伝わったはずです。

いちど地の底までしゃがみ込んだ家族の絆が、ここからより強固なものになり、
やがて亡くなったチュウさんが誇りに思う様な、一雄とその一家になる、
未来ではそんな物語が用意されていてもいいと思います。

自分も、人生に絶望したら橋本親子の乗ったワインレッドのオデッセイを探します。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分からしたら人生の1冊だと思う。
主人公は家族関係が破綻した、夫であり、親であり、息子。
死んでもいいと、最寄り駅で自暴自棄になっていたところ、
古いワゴンが現れ、乗車するよう促される。わけも分からず、困惑するが、もう全てがどうでもいいと、それに従う。

ワゴンに乗っていたのは、仲の良さそうな普通の親子。父親は、38歳の自分と同年代で、子供は小学校低学年。信じられないが、数年前に話題となった自動車事故の当事者で、後悔を遺した人々を乗せてどこか遠くへ運ぶのだという。

乗客を運ぶのは、その人にとって「たいせつなとき」。
「たいせつなとき」は、人生の分岐点の瞬間で、運命と異なる結果を得られることもあるし、何も出来ずに宿命をなぞるだけの時もある。

主人公は、「たいせつなとき」を何度も旅し、テレクラにのめり込む妻の秘密や、中学受験で苦しむ息子の苦悩を知る。
その度に、過去の自分の不甲斐なさを観測し、後悔したり、未来を変えようともがいたり、何も出来ないと絶望したりする。

ちなみに、この旅には同い年となった父親が朋輩として参加している。主人公に勇気を与えたり、時には叱責したり、喧嘩したりする。幼い頃は大きく強く揺るがないものに思えた父が、同年代の目線で捉えると、涙脆く、弱く、ずるい側面が見えて、親父は大変だと実感する。

この旅を経て、主人公はつらく大変な毎日を生きていく決心をする。「たいせつなとき」は誰にだってある。それに干渉した所で、現実の未来は変わらない。しかし、今触れている、実際に生きている「たいせつなとき」は自分次第で変えられる。そういったメッセージを感じた。

私は家族関係に問題を抱えている。
1番下の弟が大学受験を機に寮生活を始める。自分も一人暮らしのため実家を出る。
家族が離れていくタイミングでこの本に出会えて良かった。
自分の性格上、なくしてたから
ああすればよかった、こうするべきだったと考えることが多い。
この本も、引っ越し終えて、全てが済んでから読んでしまう未来もあったと思う。しかしながら、私はこの本を読めた。ラッキーだった。





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2024年03月09日

ネタバレ 購入済み

息子を父親のみなさんにおすすめ

父親と息子の物語。私自身が息子をもつ父親であり、共感を持って拝読しました。
自分と親父の関係、自分と息子の関係、この物語と同じ道を辿ると思うと少し寂しくなります。
父親が息子とどう接するべきか、答えのないこの問いに作者なりの答えがあります。それを読み思うのは、父親と息子は上下関係ではなく、寄り添う関係がいい。友達とも違う、ただ見守るのとも違う。言うは易し、行うは難し。

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2022年01月28日

ネタバレ 購入済み

ドラマをみて読んだのですが、

本作も凄く素敵でした。
ドラマの配役のイメージが、先についていたので、
ドラマを基軸に読みきった形になりますが、
違和感なく読みきれました。
あぁーこう終わるのかと切ない気持ちで終わりましたが、これも1つかと。
ドラマはどうなるのか!?楽しみてす。

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2015年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子供のことは大切だけど、それだけを背負って生きていくのはキツいんだ。もっと楽になりたいし、自由になりたいんだ。子どもにすがってきてほしくない時だってあるんだよ、親には。

私が常々感じていたことを的確に言語化してくれたと感じた一文。

親であっても誰かの子ども。
ワゴンに乗りながら、子供の前では親である自分になったり親の前では子どもである自分になったり、実際の自分と重なることがあった。

よくあるタイムリープものとちがって、何回過去に戻っても未来が全く変わらないのは斬新でよかった。
今があるのは過去があるから、だからやり直すとしたら気がついた時しかないんだなって思った。

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2024年04月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2002年度本の雑誌年間ベスト1

結果は変えられなくても、全てを理解した上での現状なら本人にかかるストレスが軽くなるんだな、と思った。前向きに捉えられて、少なくとも死んじゃおうかなとは思わないくらいに。
コテコテのハッピーエンドの方が好きなので、あんまり救いがないなぁと悲しい気持ちになった。
プレゼント、黒ひげ危機一髪って、、、受験合格とかもうちょっといいプレゼントを期待してたけど、この物語は甘くないらしい。

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「タイムマシンがあるなら、過去or未来どっちに行く?そこで何する?」
僕は過去に行って今の僕と同じ年齢のお父さんに会いに行く。きっと仲良くなれるし、今とは違った形でお父さんと話してみたい。

未来に行って宝くじの当選番号見るより価値があるんじゃないか????

星3.7

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2023年09月01日

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