【感想・ネタバレ】迷える者の禅修行―ドイツ人住職が見た日本仏教―のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

前々から気になっていた一冊。新書コーナーで話題作として取り上げられており、その時にも買おうかどうか迷っていたのをついに購入。海外の人が日本で日本の文化を継承しているというのを見ると、非常に心温かくなる。そんな軽い気持ちで読み始めたが、意外に厳しい仏門の世界という現実を知り、また宗教や文化差という大きい壁を見た気がする。本書は「日本の仏教文化」に対して幾度となく「理想」を裏切られ、自らの禅を生きるために日々「今を生きる」ドイツ人住職のこれまでの人生を書いたものである。
著者であるネルケ無方氏は様々なバラエティ番組やニュースなどにも取り上げられているようで、ご自身が住職をなさっている寺のHPにもその様子が載せられている。どの番組でも、この著書でも語っているのは「日本人が自分の文化である仏教を忘れている。仏教について考えを深めるべきだ。」ということなのだが、ここには少し首をひねらなければならない。なぜか。それは仏教が日本固有の文化かというと、そうではないからだ。仏教は伝来してきたものであり、日本固有の信仰といえば「八百万の神々」である。日本と聞いて仏教をイメージする海外の方は多いようであるが、実際のところそれは固有のものではない。日本人にとって一神教がしっくりこないのは、私たちの根底にある「物全てに神が宿っている」という考え方が由来しているからではないだろうか。神は一人、一つではなく、それぞれに存在し、全てに感謝するというのが私たちの考え方の大本なのではないかと思う。「日本が無宗教国家」であることに嘆かれているようであるが、それは一神教の国家から見た日本の姿であり、日本のよさというのは、寛容なのではないかと私は思う。傍から(特に海外)見れば色々な宗教がごちゃまぜになっている日本であるが、それを寛容し、受け入れることが出来るのが日本の素晴らしさなのではないか。個人的に、宗教というとどうも凝り固まった考え方を想像してしまうのだが、全てに対して神が存在しているという考え方があるからこそ、日本人の和や柔らかさというのが存在しているのではないかと私は捉えている。
確かに現代の日本には欠けているものがあるだろう。それは思想であり、大局観が全体的にかけている。そこは一神教の国であれば倫理が存在するが、それが日本には無い。確かにここでは宗教の関係性は強いと言えるだろう。しかしながら、だからと言って「仏教」という繋がりにはならないはずだ。それぞれの良い部分を受けながら、一人一人が自分の生活を大事にすることで全体としても高まっていくのではないかと思う。
「憧れ」というものは強い。その気持ちが大きすぎて現実とのギャップで潰れてしまうこともあるだろう。本書で、こういった海外の方がおり、毎日を自給自足しながら暮らしていることを知り、色々と考えさせられた。彼に学ぶことはあるだろう。しかしながら彼が素晴らしいのではなく、私たちが一人一人今の生活を見直して改善するなり、歩いていくなりしていくことが先を見通すことに繫がるのだと思っている。

0
2011年05月28日

「学術・語学」ランキング