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Posted by ブクログ
明治第四代、六代内閣総理大臣、松方正義を父に持ち、川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)の初代社長などを務めた日本の実業家である松方幸次郎。
そんな彼が一枚の絵に胸を打たれて「ほんものの絵を見たことがない日本の若者たちのために、ほんものの絵が見られる美術館を創りたい」と本格的な西洋美術館の創設を目指して、数々の美術品を集める姿を、西洋美術を研究しタブローを愛する青年田代からの目線で描いている。
松方幸次郎という男は読んでいるだけで惚れ惚れするほど賢く立派に書かれていた。周りを巻き込む大きな磁力を持ち、大きくて新しくて強い人。かっこいいと思った。
時代は明治の日清日露戦争の頃。タブローを集めよう、美術館を作ろうなんて、その時は馬鹿なことでそんな時代でもなかっただろうけど、松方は美術のことなんかわからんと言いながらも、一枚の絵が人の心を動かす力を知り、これから文化の力は必要だと考え、美術館を創るため動いていた。造船所の社長で、先を読んでかつ欲深く、経営者としても賢くて、事業も成功を収めている。だから立場上、戦争を否定的に言うことなどできなかったと思うけど、それでもタブローの力を知って美術館を作ろうとしたのは、純粋に未来の美術に興味を持つ若者たちのためだけではなく、戦争よりも文化がもたらす平和を願ってなのではないかなと感じました。
松方自身が平和を願うような表現はなかったので分からないけど、文中に
「戦闘機じゃなくて、タブローを。
戦争じゃなくて、平和を。」
という表現がありました。
造船所社長である松方が集めたからこそ意味があって、動かされるなと思いました。
Posted by ブクログ
最後のほうで、田代が亡き日置のためにゴッホ「アルルの寝室」をフランスとの寄贈返還の交渉をあえてやめて残留させるところがとても感動しました✨
人の想いを紡いでいくストーリーで良い読書時間を過ごせました♪