【感想・ネタバレ】辺野古入門のレビュー

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Posted by ブクログ

2022年の年明け早々に初めて沖縄に行った。そのとき、関東から移住して辺野古の埋め立てに反対する活動をしている人に周辺を案内してもらった。それはそれでびっくりするような景色や現実はこうなんだという話を聞いたものだけど、それはそれで一面しか見ていなかったと、この本を読んで思わされた。
著者は長らく辺野古でフィールドワークを続け、辺野古地区の様々な立場にある住民たちともけっこうなつき合いがある様子。自分はてっきり、辺野古の人たちは基地移設に反対していると思っていたんだけど、それはとても浅薄な考えだった。
かといって、辺野古の人々が諸手を挙げて移設に賛成しているなんてこともない。事はもっと複雑で、もともとキャンプ・シュワブがあった辺野古は、米兵たちとも関係をつくりながらそれなりにうまくやっていた。そこにつけ込んだのが基地の県内移設を目論んだ国だったというわけ。
辺野古の人々は、米兵ともわりと良好な関係を築いてきた歴史があり、基地を受け入れることで経済面などが助かることも知っている。だから辺野古の人々は、もちろん基地ができないのならそれが一番だけど、かといって一番に固執して不遇をかこつよりは、次善を受け入れる覚悟もしていた。考えてみれば、それが処世の術だろう。だから、名護市長選だって、基地反対派がなったり反対派でない人がなったりする。周囲から反対を叫んでいられる立場とは違うわけだ。これが現実、渦中にある人たちなのだ。
辺野古問題というと発言する人はどうしても、反対派かそれに異を唱える人かになってしまう。それに対して、この本は基本的には辺野古への基地移設を望まないとしながらも、冷静に辺野古とその周辺の多様な姿を紹介してくれる。そしてこの言葉も至言。
「同じ沖縄県内に新たな米軍基地を建設しなければ、普天間基地の返還はなされない。これが「沖縄の基地負担の軽減策」として位置づけられてしまったことが、問題がここまで長引いていることの根底にあることを、ここで改めて確認しておきたい。」(p.79)
それなのに、論点がずれてしまっている。わざとずらされながら、じりじりと埋め立てが進んでいたりする。のれんに腕押しの政府の不誠実さもひどいもの。また一方で、反対派も沖縄を、辺野古を平和や自由に向けて啓蒙しようとしてはいないか。そういういささかの傲慢さがあるように感じた。そんなことしなくても、沖縄の人たちはちゃんと地に足をつけて考えている。

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2023年07月20日

Posted by ブクログ

【「よそ者」にできること】
辺野古を知ってもらうために書かれた本。歴史と現在について、普天間飛行場移設先になった経緯について、二〇年間のフィールドワークを元にまとめてある。

今や「辺野古」というと、かわいいひびきと裏腹に反基地運動の代名詞のごとく言われるが、ここは林業を主体とした小さな村だった。この村が米軍を受け入れるに至った複雑な経緯については基地問題を考える上で知っておきたい。戦後、沖縄は米国占領下となり頼れるものもなく米軍を相手に直接交渉することになる。びくともしないバカでかい相手に苦渋の選択を何度もした。その後交渉相手が変わっても選ぶことのできる選択肢は変わらなかった。「反対」は無視されるが「賛成」だけ受け入れられ続けて今に至る。

冒頭、筆者はとある言葉を地元の人からかけられることで「よそ者」が沖縄にできることはないのだとうなだれる。「よそ者」ができること?いや、「よそ者」にはしなければならないことがある。基地問題を解決するのは日本人だ。(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会/つちふまず)

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2022年08月23日

Posted by ブクログ

辺野古が/名護市が/沖縄が米軍基地の県内移設を容認せざるを得ない(というかそもそもそれ以外の道を政府が選ばせない)事情がよくわかった。

いつまで彼らだけに負担を押し付けるつもりなのか。どれだけ我々“よそもの”が自分ごと化できるか。そういう問題なのだと思った。

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2022年05月18日

Posted by ブクログ

「あることについて賛成したときにしか決定を認めてもらえないのに、賛否を示すよう迫られている人(たち)」についてのフィールドワークをまとめた一冊。

首長選挙において、辺野古への基地移設に反対する候補者が当選したとしても「淡々と進めていることに変わりはない」(菅義偉官房長官)などとされるのに、賛成する候補者が当選すれば「選挙は結果がすべて」と事業推進の後押しと解釈されるよな事情についてである。

もちろん辺野古住民の意見は一枚岩ではないが、それが単純な賛成・反対の二分ではなく「反対だけど、このまま推進されるのであれば条件闘争をしなければならない」「条件闘争するためには政府寄りの人物が必要」というような、グラデーションであることが描かれる。
そして、辺野古への基地移設で財政的な恩恵を受けるのは名護市であるが、名護市中心部と辺野古区の発展に差があること、そして辺野古住民が全員反対しても他の市域の住民が賛成すれば覆せない人口比であることも説明される。
そしてそれは沖縄県全体で見ても同じ構図がある。

また、辺野古の歴史をさかのぼり、キャンプ・シュワブの建設に当たって、「島ぐるみ闘争」に反する形で久志村(合併して名護市となる前の基礎自治体)が受け入れに転じた事情が描かれる。
それによって、70年にわたって「高度な政治判断」に対して有効な反対手段を持たない立場で辺野古住民の考え・行動を振り返っている。

その中には「最終的に受け入れざるを得ないことが明白でも、ポーズとして反対することに一定の意義がある」という考えもある。
その重みを思えば、キャンプ・シュワブのゲート前での座り込みについて揶揄する気にはとてもならない。

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2023年01月21日

Posted by ブクログ

沖縄についてあまりにも浅い知識しか持ち合わせておらず手にした本。観光で3度、仕事で1度訪ね、いくらか文化や歴史を学んだが、やはり通り一遍の知識だ。沖縄返還50周年の節目の年を迎え、偶然にもこの春に那覇市から移住してきた仲間ができた。かの地をもう少し深く学ぶいい機会に思う。ここでは我々が傍観する普天間基地の辺野古移設問題をめぐり、地元島民の極めて複雑に揺れる胸中の一端を知る。まとめにあるように、反対の意思表示は無視され、賛成という選択肢しか認められない辛さ。それによる責任の転嫁。どう寄り添うべきか考えたい。

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2022年12月07日

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