【感想・ネタバレ】つみびとのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大阪で起こった幼児二人を部屋に置き去りにしたまま若い母親が放置して餓死した事件ーー
ここから構想を得たフィクション作品、だが重すぎる。


事件を起こしたのは娘 蓮音。
厳格で真面目な父、でも家庭より自身の立場や理想を優先する。
母の琴音は小さい子どもを置いて逃げた。
父は仕事はすれども家のことはなにもしない。親の代わりに、小学生のころから幼い子二人の世話をした。
歪みはじめる蓮音。自分を自分で大切にできない。

母親 琴音。彼女もまた愛のない家庭だった。
つねに暴力をふるう父親。それを耐える母、怒る兄、怯える自分…
やっと父親から解放されて現れた継父から性的虐待…
守ってくれるはずの母親も壊れていき、琴音の精神が蝕まれていく。精神病院にもかかったがあまりにも深い傷は人格すら壊していく。
そういう彼女が家庭から、子育てから逃げてしまうのも仕方のないことと思えてくる。

この本は幼児置き去り事件にとどまらず、蓮音の幼少期〜事件に至るまでの経緯、そして母 琴音の子ども時代〜結婚、家庭、家を出てからの生活、と二人の母娘の人生がつづられている。
しかも交互に語られる話が、しだいにどちらのことが区別がつかなくなっていく。


「母親不適合」と世間から烙印をおされる琴音だが、彼女なりにどうすればよかったのかを何度も自身に問いかける。
自分が逃げたから、自分が置いて行ったから

琴音は何回も心の中でつぶやく
「虐待は連鎖する」と。
では、虐待された自分が娘のまえから消えたのに、なぜ娘は虐待するのか?
置いて行った娘と縁がきれたのに、なぜ?
遠目に一度見た娘家族は幸せそうに見えたのに、なぜ?

そんな琴音に声をかける音吉の容赦ない言葉が刺さる。
「そもそも置いて出て行ったあなたは言える立場にない」
完全に遮断してしまうほどの強い言葉…
でも琴音はそうしないと精神がまた壊れてしまう。

子どものころに音吉のような、理解ある大人がいて受け止めてくれたなら、なにかが変わっていたかもしれない。いや、変わっていてほしい。

救いのない話で苦しい、、


2010年の事件からすでに10年以上。
いまだに育児や家事は女性の側に負担を強いられている。
母子で孤立している女性の叫びは届かない。

衝撃的な内容だが、学校教育で教えるべきことだと思う。
子どもを産み育てるには覚悟がいることを。
途中で放棄はできない。放棄した行く末のことを。

0
2023年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほぼノンフィクションのお話だったんですね。
母の琴音、娘の蓮音、小さきもの(蓮音の子供、被害者)のそれぞれの視点で描かれています。
琴音と蓮音がたまにごちゃごちゃになって少し読むのに苦労しましたが、後半からはサクサク読めました。どの立場でも絶望的に酷くて読むのが辛かった。特にモモとモネに関しては何でこんなに純粋で幼気な子供が…と胸が痛みます。蓮音だって十分に子供を愛していて、宝物とか大好きとか言ってるのにどうしてああなってしまったのか。もちろんモネとモモが一番可哀想なのですが、蓮音も辛い。小さい時から頑張りすぎていた。ちゃんと愛情を受けていなかった。自分自身を大切にできていなかった。現実逃避するしかどうしようもなかったんだなと悲しくなりました。殺したのはもちろん許せない事ですが、そうならない社会であってほしいと切に願う作品でした。

0
2023年03月05日

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