【感想・ネタバレ】愛なき世界(上)のレビュー

国立T大学の向かいにある洋食店で住み込み店員として働く藤丸陽太は料理人見習い。彼は、よく店に来たり出前を頼んだりするT大学の松田研究室に所属する研究者見習いの大学院生、本村紗英に恋をしてしまう。植物学を専攻する彼女は研究対象のシロイヌナズナに夢中で、恋愛にはまったく興味がない様子だが、この恋はいったいどうなる?

三浦しをんさんご本人によれば、本作は新聞の連載小説だったので、「毎日読む人も飛び飛びに読む人もいるから、ストーリーの時系列が行ったり来たりしない方がいい」というアドバイスがあったそうで、そのためか、お話は非常にわかりやすく進んでいきます。藤丸くんと本村さんだけでなく、研究室の松田教授や先輩たちもそれぞれ個性的にイキイキと描かれていて、気が遠くなるほどコツコツと地道な実験作業の描写が続いても、読み続けている間になんとなく植物学の実験に対する理解が深まるという、非常に三浦しをんさんのお仕事小説らしい側面が存分に楽しめる作品ですが、それと同時に、個人的には「恋愛が“成就”するとはどういう状態を言うのか」を考えさせられた作品でもあり、私はそこがいちばん好きです。何かを追求し続けようとする人を見て癒されたい方におすすめ。

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植物の様に泰然として見えて、実は起伏に富んだ心情を描写される本村さんが可憐で少し泣いた。しくしくしく。

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2023年07月17日

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洋食屋さんに勤める主人公(男)と、植物学を研究する院生(教授含む)のお話。
三浦しおんさんの本は、神去なあなあシリーズ以来だったので、何か植物関係の話が多いような気が勝手にしてる。
お話のほうは、ポップな文体で読みやすく、ユーモアがあって飽きさせないなと思った。
本村さんにフラレても必要以上に落ち込まず、本村さんが食べたがった唐揚げを優先したりする藤丸くんが健気。
最後の特別付録がすごく手が込んでる!わかりやすいし。
本宮さんらしき女性と一緒にいる男性は誰だろう。まさかあれが藤丸くんなのか?
私の想像の藤丸くんは若干チャラい感じかと思っていたのに。

上巻の最後の松田教授の不穏な言動も気になるし、下巻も楽しみ。

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2024年04月16日

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上巻よみおわりました。
いつも、黒服を着てる教授がアロハシャツを着て出てきた場面がとても好きです。
「コンタミ!!」って日常生活の中でも叫んでしまう気持ちすごく分かります、共感の嵐。
詳しくは下巻の感想で。

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2023年05月13日

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“なにかのために”

植物をこよなく愛する大学院生の本村と、街の洋食屋の見習い藤丸。藤丸は本村に恋をした。しかし彼女は植物を愛し、人を愛することはないと決めている。一度は振られた藤丸だが、その後も会話を続けるうちに植物に興味を持つようになる。愛とは、人生とは、そんなことを考えさせられる恋愛物語。

恋愛小説、、、ではない。人生小説と呼ばせていただく。

『うれしいとか楽しいとか感じたなら、結果が失敗でも後悔しない。』
一番響いた言葉。
大切なのは失敗しないことじゃない、楽しむこと。
保守派の私にはとてもよく響く。
いかに失敗しないかと立ち回る自分。
ここまで来たら、もう後戻りできないと思ってしまうよね。


サボテンをこよなく愛する人物、加藤が登場する。
彼は、小さい時からサボテンが好きだったのだが、
周囲の理解が得られず、ひとり孤独な日々を過ごしていた。
しかし研究室に入ってからは周囲と打ち解けるように努力する。
自分の熱を周囲に伝えるようになる。

好きなことに素直になるべきなんだろうなと思った。
私は野球がすごく好きだ。
でも、友達と野球観戦にはめったに行かない。
楽しみ方が違うと思ったいるから。
基本は分析しながら観たい。文句を言いたくない。時々盛り上がりたい。
この考え・熱に合う人がいないと思うから、友達と野球の話すらしない。

こんな自分、変えた方がいいのかな。
こんな自分を自分らしさとして発信して、
嫌われたりめんどくさがられたりしてもいいから、
この熱を外に出した方が楽しいのかな。


『理解は愛と比例しない』
大学生になってから、理解は愛と比例しないと思い始めた。
昔は「知る→好き」だった。今は「知る→合わない」。
人生経験・自己理解が深まったことで、「合わない」という選択肢が出てきた。
合わない中で、好きなところを見つけていきたい。


人生、充実、愛、自分次第。。

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2023年02月23日

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三浦しをん「愛なき世界」(2018年9月単行本、2021年11月文庫本)。文庫化する時に(上)(下)に分冊され、今作は「愛なき世界(上)」と改題。
三浦しをんさんの小説の題材はマニアックなテーマが多くて、未知な世界に導かれる期待へのワクワク感に駆られ、愛らしさや逞しさに純粋さに惹かれ、新鮮な満足感が得られる。
今回のテーマは植物学(生物科学)だ。
この小説の主人公の洋食屋の店員、藤丸陽太(23歳位)がT大大学院で植物(シロイヌナズナ)を研究している本村紗英(25歳位)に恋をして、研究対象の植物に興味を持つ。果たしてこの恋は叶うのか、わからないところで終わってしまうので、すぐに下巻を手にしてしまうことになるという筋書きだ。

主な登場人物は、藤丸の勤める洋食屋「円服亭」の大将、円谷正一(70歳位)。T大大学院の近くで店を経営している。ずっと一人で店をやってきたが、半年前に藤丸を雇った。奥さんと娘が二人いたが離婚して40年経つ。近くの花屋の店主で未亡人のはなちゃん(60歳位)と最近花屋の2階で同棲している。はなちゃんにも大阪に息子がいる。

藤丸陽太は東京の立川出身だが高校卒業後、お茶の水の調理師専門学校を出て、赤坂のイタリア料理店に2年勤めた後、「円服亭」の料理に魅せられて住み込みで働くようになる。専門学校時代から「円服亭」で雇って貰いたかったが頑固で自由気ままな円谷に断られていたのが、円谷がはなちゃんとの同棲をするためにタイミングがよかったのだろう。2年後に願いが叶ったという見かけによらず意志の強い男だが科学には無縁だ。しかし料理への探究心だけでなく知らないことには興味を持ち探求する好奇心旺盛で、しかも細かいところにも目がいく観察眼も鋭い人物だ。

この店の常連客がT大大学院で理学系研究科生物科学専攻(植物の研究)の教授、松田賢三郎(40歳代半ば)とその研究室の面々だ。

研究室の本村紗英は実家は千葉の柏市で神奈川県の私大を卒業後、本郷のT大大学院の試験を受けて合格、松田研究室で修士過程を卒業、博士課程1年目の院生だ。

その他松田研究室には、本村の1年後輩の院生に加藤(24歳位の男、サボテンの研究にはまっている)、助教授で博士の川井(30歳位の男、来年3月にボルネオ島に調査に行く予定)、ポスドクの博士の岩間はるか(26〜29歳の女、奈良県のS科学技術大学院の院生の彼氏がいる)がいる。
松田教授を含めて5人の研究員と秘書の中岡(年齢不詳の女、松田の秘書を5年勤めていて、サラリーマンの夫と娘二人いる)というのがフルメンバーだ。
もっと増やしたいと願ってはいるものの、松田教授の死神か殺し屋のような風貌のためか、松田研究室の院生を希望する大学生はなかなかいないのが現状らしい。

そして松田研究室の隣りの部屋が諸岡研究室で同じ理学系の教授、諸岡悟平(定年まで数年)の指導のもとに芋の研究をしている研究室だ。諸岡もちょっと変人で松田よりかなり年上だが、二人は仲がいいみたいだ。

この上巻で描かれるのは、藤丸陽太と本村紗英との出会い、藤丸が本村に告白するが、取り敢えず失恋。人間の繁殖には興味なく、植物の繁殖にしか興味のない本村。シロイヌナズナの葉っぱの研究への執念の様子がメインだ。
愛がなくても繁殖する植物の世界。様々な愛に翻弄される人間。そういう世界を対比させながら物語は進むのかなぁと思いながら上巻を読み終えた。
この後下巻でどう物語は進むのか、楽しみだ。

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2023年01月03日

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