【感想・ネタバレ】パレードのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

巧みに仕掛けられた伏線が、ラストシーンで見事回収されるわけでもなければ、やられた!と声を上げたくなるようなどんでん返しが待ち受けているわけでもありません。
それでいながら、〝衝撃のラスト〟というのは、このような結末を指すのだろうな……と思わされてしまうのですから、恐ろしい作品です。
都内にあるマンションで、一見平和そうな暮らしを送っている五人の主要人物たちの視点が切り替わる形式で、物語は進行していきます。
しかし、解説にもあるように「こわい」結末が待ち受けているのです。
この「こわい」という気持ちは、実際に経験した〝こわさ〟、そして起こり得るかもしれない〝こわさ〟に対して抱く気持ちではないでしょうか。
「この階段は急だから慎重に降りなければ転げ落ちてしまうかもしれない」、「事故や事件に巻き込まれてしまうかもしれない」といった、日常生活を送る上での不安であったり、「暗闇に恐ろしい幽霊が潜んでいるかもしれない」という心理的な問題であってもそうです。
ひとはその、〝こわさ〟を想像したときに「かもしれない」と思うことで気を引き締め行動を見直し、逆に「かもしれないのだ」と思い直すことで不安を拭い、安堵しているように思います。
では、この作品はどうしてこんなにもこわく、恐ろしいのでしょうか?
そう考えたとき、結末そのものというよりも、すべて「起こり得るかもしれない」という事実が恐ろしくなってきます。



※以下、軽度のネタバレを含みます。



この作品において「起こり得るかもしれない」ことは、多くあります。
殺人事件や交通事故によって家族や友人を失うこと、または自分がそのようにして命を落とすこと。
殺人や薬物といった犯罪に手を染めてしまうこと、そして罪を知ってなお、看過すること。
マンションに暮らす五人、それぞれの境遇。
自身にも降りかかりかねない問題たちは、その恐ろしさを際立たせるのに十分な役割を果たしています。
とはいえ所詮はフィクションの物語なのだ、と切り離すことも難しく、後味悪く、それでいて小気味の良い結末なのですから、そういった意味でも恐ろしい作品でした。
本書「パレード」もさることながら、吉田修一氏の作品は〝現実味〟がよりクリアで色濃い特徴があります。
どんな些細な日常のワンシーンであっても、まるで本当にあったこと__たとえば、自分がそのように暮らしていた記憶があるように錯覚してしまったり、その場の匂いや温度までが、ページに添えられた手のひらから指先へと伝わり、一種のトランス状態へと導かれてしまうのです。
フィクションでありながら、この現実味を味わうことのできる巧みな表現力には、畏れすら覚えます。
余談ではありますが、登場人物の一人である小窪サトルが劇場にて「ハンニバル」を観た感想として
〝……映画は評判通りグロテスクで面白く、最後にレクター博士が男の頭を割って脳みそをスプーンで掬(すく)って食べるシーンなど、思わず「ウオッ」と声を上げてしまいそうになった。(P.217L3〜)〟
と述べています。
自分も幼い頃に観ました、ハンニバル。
脳みそを食べるシーンが衝撃すぎて未だに忘れることができず、もはやハンニバルは脳みそを食べる映画だと思い込んでいる節があるので気分が悪くなりました。
そう、このようにして実際の記憶の隙にまで忍び込んできて、どれが現実の自分が持つ記憶で、どれが架空の記憶なのかわからなくなってくる。
それがとても恐ろしく、そして楽しい。
物語の世界に浸る時間の素晴らしさを教えてくれる作品でもあります。

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2024年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何気ない温い日常。それぞれが"この場"に適した自分を演じ、演じきれない潜在的な自分との狭間で揺れているのが上手く描かれていると思う。
凡庸な人間も、多少の狂気や悪意は孕んでいる。
でも、直輝の狂気だけは行き過ぎた。
そして、レイプシーンに上書きされたアニメのピンクパンサーの踊りのように、直輝の狂気の一面を、共同生活する他のメンバーたちが塗り潰している。
共同生活のための暗黙の了解。
シリアスな話は持ち込まない、持ち込めばこの居心地のいい共同生活が終わるから。
だから、直輝にもシリアスな話を持ち込ませない。
共同生活を続けるために。

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2023年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白い

都内でルームシェアをする5人の男女の物語
それぞれの登場人物によって語られる日常と、それぞれがどんな経緯でこのマンションに住むことになったのか少しずつ明らかになっていく

起承転結は最終章以外ほとんどないが、登場人物一人ひとりの人間味や魅力にひきこまれていく
読書に没入できた

最後の最後に、直樹が連続暴行事件の犯人とわかり衝撃をうけるが、それでも彼らの日常が何もなかったかのように続いていくのがまたこわい

初めて読む作者の作品だけど、この人の文章すき

文章にでてくる映画や音楽のチョイスがいい

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2023年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人が怖い系の本が好きで、帯の文句に惹かれて読み始めた。でも、読んでいても一向に怖い展開にならず、むしろ横道世之介のようなほのぼの感を感じていて、まあこれはこれでいいかと思っていたら、最後の最後で事件が。じゃあ実はあの時もほのぼのじゃなかった…??とすぐに読み返したくなる一冊。何度も読んで、恐怖を確かめたい。

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2022年12月21日

ネタバレ 購入済み

おもしろかった

おもしろかったけどよくわからなかった。
純文学も混じっているような作品なのでじっくり何度も読んだ方が味が出てくると思う。
ただ最後は少しゾッとする感じでしばらく引きずる作品だった。
二度目はもう少しいろんな箇所に気をつけて読んでみたい。

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2021年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的に固有名詞や時代を感じさせるもの(ビデオテープやその時流行していたテレビ番組など)が出てくる小説が好きでは無いので1章目はかなりキツかった。ラストのために頑張って読んだ感がある。1章目は読み飛ばしても正直問題ないと思う。
最後は良いイヤミス好きとしては良い終わり方でした。

でも映画化するほどの作品ではないと思う...。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

杉本良介
21歳・H大学経済学部3年
現在、下北沢のメキシコ料理店でバイト中。

大垣内琴美
23歳・無職
現在、若手人気俳優「丸山友彦」と熱愛中。短大を卒業して医薬品メーカーのOLをしていた。
良介と同居中。

相馬未来
24歳・イラストレーター兼雑貨屋店長
良介と同居中。

小窪サトル
18歳・自称「夜のお仕事」に勤務
酔っていた未来に無理やりに連れてこられた。

伊原直輝
28歳・インディペンデントの映画配給会社勤務
良介と同居中。
小さな映画配給会社で働いている。
非常に良識的な人間で夜のジョギングが日課。

桃子
良介が七万円で買った中古のマーチ。走り出して10kmの地点になると必ずエンジンが止まる。

ルフランのマスター
喫茶店のマスター。良介に桃子を売りつけた。

佐久間
良介が大学で唯一できた親友。

梅崎
良介のサークルの元先輩。直輝の高校の後輩。

真也
良介の中学の同級生。高校受験のため勉強を教えていた。バイクの単独事故で死んだ。

悦子
良介の中学の頃からの同級生で高校では同じバスケット部に所属。

松園貴和子
梅崎の彼女。北海道出身。弟と住んでいる。

綾子
良介がバイトしているメキシコ料理店のホール係。二十九歳。ロックバンド「リミット」でボーカルをやっている。

慎二
未来が働いている輸入雑貨の社長。

美咲
大手化粧品会社の秘書。
みんなが同居しているマンションに元々直輝と直輝と住んでいた。

マリネママ
新宿二丁目の飲み屋のママ。

剣也
マリネママの店で働いていた。酔って店から飛び出したところをタクシーに撥ねられて死んだ。

ラウラ
男子高野球部の寮母になるのが夢。


サトルの同僚。

シルヴィア
サトルの常連。

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2022年12月15日

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