安岡治子のレビュー一覧

  • 地下室の手記
    主人公に、まるで未来の自分が書いたような強い共感を感じた。肥大化したプライドで他者を見下し、同時に自己が矮小で卑劣な存在だと認識していながらも、それを変える為に前向きな、つまり現実と対峙することから逃げ続ける。高すぎる理想で、他人を嘲笑するが、それは自分自身にも適用される。

    自己嫌悪、自意識過剰、...続きを読む
  • 貧しき人々
    ロシアの文豪、ドストエフスキーの処女作。

    その日暮らしで貧乏から抜け出せない初老の小役人と、病弱で幸薄い生い立ちの少女による往復書簡…

    と、話しはこれだけなのですが、手紙という性質を意識しながら読み進めると、会話と違い、文章で語られる熱い言葉の勢いに、自然と引き込まれて行きます。典型的なのは、結...続きを読む
  • 地下室の手記
    「俺は病んでいる・・・ねじけた根性の男だ」で始まる非常に暗い小説。小説は2部に分かれ、Ⅰ部の「地下室」はモノローグで主人公のねじれた人生観がくどく語られ、Ⅱ部の「ぼた雪に寄せて」では主人公を「ひどく苦し」めている思い出が語られます。
    Ⅰ部は難解で矛盾だらけ(ただ、注意深く読むと論理的一貫性があるのか...続きを読む
  • 地下室の手記
    マゾヒスト、と呼べば良いのだろうか。氏曰く、自意識自尊心が極めて強い、人並外れて賢い人たちは、 それ故に悩み苦しむ機会が多く、気づくとそこから快楽を感じるようになってしまうらしい。 氏は冒頭でそういう人間がp0「我々の社会に存在する可能性は大いにある」と述べているが、 私自身がこういう感情に一定の覚...続きを読む
  • 貧しき人々
    この本は、文豪ドフトエフスキーの処女作ということで読んでみましたが、とても情熱的で、引き込まれる作品でした。
    終り方も余韻があって、、とても良かったです。
    ぜひぜひ読んでみて下さい!
  • 貧しき人々
    九等官とは行き止まりの等級。清書係がそれ以上出世することはない。お相手は20歳前後の孤独な少女。書簡が往復する舞台は19世紀前半の帝政ロシア。ソ連となる半世紀以上も前。「うだつが上がらぬ中年下級官吏と薄幸の若い娘の恋物語」…そんな構図だけで語れぬ何かがある。迎える結末はそれしかないだろうという運命。...続きを読む
  • 貧しき人々
    手紙は嘘をつく。意図的じゃなくても、相手に伝えたい想いを文章にのせるとき、真実以上の何かを加えたり、逆に落としたりしてしまう。それが書かれている内容よりずっと多くの真実を、読み手の心に浮かび上がらせて、胸が詰まるほどの感情でいっぱいにしてしまう。ドストエフスキーは読者の行間を読む力と共感力を信じてい...続きを読む
  • 地下室の手記

    娼婦を感動させたのに...

    娼婦に気持ちが伝わったのは感動だ。
    でも、主人公は分裂した感情を持つ。
    単純でないのはつらいことだ。
    だが、読者が
    アンビバレンツを直視するなら
    何かが見えるかもしれない。
    娼婦ではないが汚れた状況下の女性である
    『ブギーポップは笑わない』の織機綺、
    『青春の門・筑豊篇』の牧織江、
    ...続きを読む
  • 貧しき人々
    初めてドストエフスキー作品を読むにあたって、とりあえずページ数も少ないデビュー作を選びました。

    正直、度肝を抜かれました。
    デビュー作にして、人生のあらゆる智慧と苦悩が散りばめられています。

    登場人物による往復書簡のやり取りは見ていて微笑ましいものから悲痛なものまで実に多彩でした。


    この15...続きを読む
  • 白夜/おかしな人間の夢
    白夜: とある内気で空想家な青年が、橋で泣いている少女に出会う。彼はすぐに彼女を愛するが、彼女には一年前に別れ、再開を誓った人がいて、その人が現れないがために泣いていたのであった。
    恋の初々しさを感じるストーリー。

    おかしな人間の夢: 自殺をしようとしていた男が、夢で別世界へ行き、互いに愛し合い真...続きを読む
  • 地下室の手記
    暗く、ジメジメした穴ぐらから溢れ出る呪詛。
    ポジティブを全て向こうに回し、己の駄目さ加減を棚に上げて捏ねくり回される自己肯定。
    でもなんか途中から、なんか自分のこと言われてる‥と感じたり。
    妙にハマった。
  • 地下室の手記
    肥大する自己意識。ちっぽけであると分かっていると同時に、どこか偉大であると信じている自己の存在意義。結局、極悪にも、善良にもなりきれずに世界を恨む。人間の普遍的な自己意識と世界との関わりの間で揺れ動く悩みは時代や場所が変わっても色褪せずに多くの人々の心に問いかけ、また、慰めてくれている。
  • 貧しき人々
    ロシアの文豪、ドフトエフスキーの処女作。
    貧しい47歳の小役人と同じく貧しい10代後半の少女との文通形式の小説。
    この小説が書かれたのは1846年ということは日本で言えば江戸時代の後期ということになる。
    江戸時代に書かれた小説の登場人物の心情がこれほど豊かに描写されているということを今の時代に普通に...続きを読む
  • 地下室の手記
    自意識過剰と書いているけど、実際は人の悪意を正面から受け止め過ぎた悲しい主人公だと思いました。人間は脳髄で考えているのではなく手足からつま先に至るまで、それぞれ別々に考えている。頭も尻もない下等動物の連中が暑い寒いを正確に判断したり、喰い物の選り好みをするのはまだしも、人間の脳髄なんぞが寄っても附け...続きを読む
  • 白夜/おかしな人間の夢
    おかしな人間の夢、がすごい。宗教の真髄を余すところなく語っている。ゾクゾクする。
    百姓のマレイは好きなテイスト。
    白夜は下手だが、最後のまぜこぜになったねじれた感情の表現が秀逸。
  • 貧しき人々
    初めてのドストエフスキー。この年になるまで読んだことがなかったことに恥じる。ただただ圧倒。手紙だけのやり取りだけで、主人公である二人の感情の起伏状態、貧しくとも互いを労わり励まし続け、自分の周りの人達や状況を伝えあうのだか、その表現の豊かなこと‼︎ 娘が昔を回想して描く描写など、目の前にその風景が見...続きを読む
  • 地下室の手記
    新訳ではありますが、久々に手にしてみました。
    凄いですな、これは。
    主人公の倒錯の果ての自意識過剰・自己中心意識には憐れみを覚えると同時に読者(あるいは当方)自身の欺瞞を抉り出されているようで慄きを感じる。
    また、リーザの設定などヨーロッパを知っていればより深くこの本を味わえるんだろうと思いますな。...続きを読む
  • 地下室の手記
    この手記の主人公の惨めな姿に、自らを重ね合わせてしまうのは私だけであろうか。
    この主人公は現代に特有の深刻な人間像の、1つのモデルになっていると思う。高度な知識人、教養人にありがちな、自意識の肥大化、その自意識と目の前の外界がうまく結合せず、自意識の中でもがき苦しむ人々。高等教育が普及した現代にこそ...続きを読む
  • 貧しき人々
    暗い気持ちになりたくない方にはおすすめできません。
    社会の最下層で貧しくひもじい思いをしながらもお互いを手紙で励まし合う物語…とにかく救いがありません。

    カラマーゾフや罪と罰等の長編も良いですが、こちらの処女作もドストエフスキー好きとしては外せません。
  • 地下室の手記
    主人公は明らかにグレている。地下室にいる事が満足と言う訳でもない。そのグレ方は「水晶宮」に対する嫌悪でもあり羨望でもあるような気がする。ただ、彼は水晶宮の幸せを望みつつ、実際になるとアッカンベーをしてしまうのだ。彼は恐ろしい程の自己愛者だがこの自己愛者の表現が凄くリアルであり、正直私自身、自分の心を...続きを読む