江戸時代に実際に出版された『算法少女』という本から着想を得て書かれた子ども向け時代小説。
子ども向け時代小説というと『肥後の石工』を思い出すが(実在の人物をモデルに虚実織り交ぜて作った物語という点で似ている)、読み物としては「石工」ほど重くない。
数学が得意で、芯の強さと、優しさを持つ主人公はちょっ
...続きを読むと素晴らしすぎて共感できるというタイプではないのだが(一昔前の道徳的児童小説の系譜にある)、女子でも自立して、意思を持って世のため人のために生きるというところが(発表の1973年当時としては)新しかったのだと思う。
現在は女子でも意思を持って、特技を生かし、生きていくというのが当然だし、そういう主人公が出てくる小説もたくさんあるから、存在意義は薄くなっている気もするが、和算というものがどういうものであったか、どういう位置にあったかざっくり知ることができるし、地方藩の情勢や殿様の苦悩なども窺い知れるなど、いい点もたくさんある。
今どきの児童書みたいな個人の内面的な悩みや家族のごたごたがなくて清々しい気もする。
小学校高学年から、男女問わずおすすめできる、間違いのない作品。