正直、裏表紙のこの解説ではあまり惹かれなかったのですが、長編賞受賞という言葉に惹かれて買ってしまったこの作品。ドッペルゲンガーとは異なる、といっても自分そっくりサンと出会って
ドタバタ騒動が起きるんだろうとなめていました。が、が、が!
あらぬ容疑で警官である加納に突き出された忍は、彼の車で高級
...続きを読むレストランへと連れて行かれる。
そこでは、自分とまったく同じ容姿で自分の近くを闊歩する謎の存在、バイロケーションに悩まされる人々が会合を開いていた。そこで彼らが語るのは、とても理解できないようなおかしな話。そして胡散臭い会の名前
もう一人の自分であるバイロケーションをなんとかする会
彼らは本当にそのような存在を信じているのか。しかし、その存在を認めれば自身が被った容疑に説明を付けることができる。 そして被害を被った会のメンバーのためには金も権力も惜しげもなく使う謎の主催者の正体とは。
バイロケーションは身が偽物であると自覚していないため、本人がバイロケーションを憎めばバイロケーションももう一人の自分に対して憎しみを抱く。 作中ではバイロケーションを殺したいと思っていた警察官、加納は自分のバイロケーションと出会い、(お互いがお互いを偽物だと思うため)殺し合いにまで発展しそうになる。作中では絶えず『忍』視点で話が進むため、どちらが本物かは見分けがつかず、話を読んでいても何を信じればいいかわからなくなっていく。
二度読み必須の作品。最後は切なく終わります。