ハヤカワ100冊フェアのパンフレットでは「バッドエンド版時かけ」と書かれている。
積読の中でも優先度の高い作品の中に『時をかける少女』があるのだが、フェアのブックカバーがほしくて『リライト』を買い、せっかく買ったからとこちらを読むことに。
ということで時かけは映画しか知らないのだが、結構楽しめた。
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序盤はもう頭が混乱して仕方がない。
あまりにも人間関係がぐちゃぐちゃになるので、作者のミスがあるんじゃないかと疑ったほど。
だんだん整理がついてきても、いくつもの可能性が消えずに残ってうまく推理できない。
木を隠すなら森というが、この作品はそれがうまい。
たくさん謎を提起して、物語の根幹に関わる重要な謎はどれなのか見えなくしている。
終盤で大小問わず謎が明かされるシーンは、あふれる情報量のために、スピード感がある。
多少強引さはあるが、よく考えたものだと思う。
ほとんど同じ展開でもロマンチックな方向性にすることもできると思うのだが、キャッチコピー通りのバッドエンド。
「作者は性格悪そう」と思いつつも、全4部作だというので続編に期待。
2017年5月26日
続編を読むために再読。
内容がややこしかったなーということくらいしか覚えていなかったため。
以下、内容メモのためネタバレ注意。
※ネタバレ注意※
①2311年から来た保彦が、1回目の1992年を美雪と過ごす。
②しかし、その後未来に帰ることができなかった。
つまり、小説を書いたのは美雪ではなかった。
小説を書くべき人に物語通りの思い出を植え付けるべく、クラス全員と1992年を過ごす。
茂だけは物語の登場人物として確定しているため、保彦の協力者となる。
③40番目の友恵は、未来の友恵が置いて行った小説を読んでおり、旧校舎崩壊の場面で薬を使わずに残しておく。
④小説を書く可能性のある人間を友恵が殺害・襲撃。
これを続けられると、2311年に小説が残らず、保彦が1992年に来ることもなくなり、保彦の記憶は1992年に来る以前に書き換えられてしまう。
それは、①の美雪との記憶を失うことを意味する。
つまり、保彦が1992年で得た未来に生きるエネルギーも失う。
そして、友恵が小説を書く可能性がある以上、彼女を殺すこともできない。
この脅迫により、友恵は保彦をこの時代にとどめる。
⑤同窓会の最中、友恵が過去に飛び、美雪が書いた小説を置いてくる。
これにより友恵の企みが生まれる(パラドクス)。
かつ、美雪が小説を目にして、美雪が小説を書くこととなる。
⑥1992年の友恵が保彦を脅し、自分以外の人間の1992年の記憶を消去させる。
これにより、旧校舎崩壊時に生徒+先生が10年後に飛ぶイベントが無くなる。
美雪が小説を書いた時点で②以降のイベントは起きなくなるのでは……?
いやでもそうなると美雪が小説を書くようになるイベントも起こらないというパラドックスになってしまうか。
あー、だから友恵は①の一人目を美雪から友恵に書き換えることにしたのか。
いや、そうすると①’ですべて終わって、保彦は未来に帰れるのでは?
その場合は友恵が「小説を書かないぞ」と脅せばいいわけか……。
ややこしいっ!
そもそも、本を過去に置いてくることで間接的に過去の自分に干渉できるのであれば、保彦もメモか何かで過去に干渉できるのでは?
小説は未来まで存在が確定しているものだから?
でも1992年での存在は確定していたわけではないし……。