黒岩比佐子のレビュー一覧
-
黒岩比佐子著、角川ソフィア文庫 2009 『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』
聾唖の写真家・井上孝治の写真を多く掲載した本。
「音のない記憶」とあるが、別の種類の音が聞こえてくる本でもある。
掲載写真は、そういった写真家についての事前の知識を与えられてから見るわけだが、
子供たちが外を走り回...続きを読むPosted by ブクログ -
筆者が命をかけるようにして上梓した最後の作品。
冬の時代を生き抜いた堺利彦の人生と重なり、ずっしりとした重みを感じる。
生きることの使命とは。
「然し決して死にたくはない。死にたくはないが、又善く死にたいといふ欲望もある。」
2人の思いがこの言葉に集約されている。Posted by ブクログ -
やっと手に入れた。黒岩さんの遺作、堺利彦評伝。
幸徳秋水でなく、大杉栄でなく、堺利彦を選んだ理由が、わかるなあ、黒岩さんらしいなあ。
丁寧に丁寧に、つむがれていく著者の思いが、くやしくも泣けてくる。
さておき、これを読むと、本当の意味でフェミニズムというかジェンダーを実践したのは、堺利彦で...続きを読むPosted by ブクログ -
なんという強靭な精神力としたたかさ、そしてどんな苦境にあってもユーモアを忘れない懐の深さか! これまであまり語られることのなかった『売文社』での堺利彦の奮闘ぶりが今に甦る。Posted by ブクログ
-
「人を信ずれば友を得、人を疑へば敵を作る」。その信条の通りに生きた人。堺利彦の生涯と共に、日本の社会主義者の足跡を記した渾身の作品でもある。Posted by ブクログ
-
i文庫HDで少しだけ「食道楽」を読み始めたところで読んだのだが、実に素晴らしい研究。このような素晴らしい研究テーマを掲げ、粘り強い調査を行い、読ませる文章を書ける研究者が夭逝してしまったのは残念至極。「パンとペン」も期待大。先日読んだ「雑食動物のジレンマ」と言ってることがまるで同じで百年経ってもほと...続きを読むPosted by ブクログ
-
労作だ。やはり売文社、出版関係の章は興味深い。翻訳の数々…
ジャック・ロンドンをあらためて読もう。荒川義英の本のエピソードは時代を浮かび上がらせる。Posted by ブクログ -
堺利彦、荒畑寒村、大杉栄、黒岩涙紅、添田亜蝉坊、添田知道、高畠素之、尾崎士郎、山川均、白柳秀湖、幸徳秋水、青野季吉、宮武外骨、「平民新聞」「萬朝報」「売文社」、このどれか一つにでも関心がある人にとって、面白い一冊に仕上がっています。人間味あふるる堺利彦さん、そしてその娘さん真柄さんがよく描かれている...続きを読むPosted by ブクログ
-
昭和30年代の福岡の町や人々の暮らしを撮ったろう者の写真家 井上孝治さんのことは、数年前、NHKの特集を見て知りました。
その頃読んだ堺利彦の評伝を書いた黒岩比佐子さんの名前を番組のエンドクレジットのなかに見つけ、調べてみたら彼女のデビュー作が井上さんのことを書いたこの本でした。
買ったまま本棚...続きを読むPosted by ブクログ -
苦境を笑いとばし、文で闘う堺利彦の抵抗の精神
大逆事件以降、社会主義運動は「冬の時代」を迎える。その時期に、翻訳・編集会社「売文社」を興し、運動の資金稼ぎを行った堺利彦を描く一冊だ。幸徳秋水、大杉栄、荒畑寒村らキラ星に比べると履歴も地味だし、これまで論じられる機会の少なかったが堺利彦だろう。本...続きを読むPosted by ブクログ -
大逆事件によって盟友の幸徳秋水ら同志12人を殺害された悲しみと怒りのなかで、「売文社」という人を喰った名前の出版プロダクション会社を設立し、同志たちを食わせ、「冬の時代」の社会主義運動をささえた堺利彦の人間性と才能、ユニークな闘い方に新鮮な光をあててみせた力作、労作である。
1910年の大逆事件で秋...続きを読むPosted by ブクログ -
堺利彦の伝記であり、明治から大正にかけての社会主義者の流れであり、そしてその時代の出版界の生き生きとした記録である。黒岩さんが堺利彦に魅かれる気持ちがよくわかり、丁寧に文献を掘り起こしておられるので、一級の資料としても貴重な作品だと思います。そして何より「売文社」を始めとして、出版界の様子が面白かっ...続きを読むPosted by ブクログ