いじめと向き合う
いじめと探偵。
この二つがどう結びつくのか、不思議に思う人もいるかもしれない。
しかし、残念ながらこれが結びついてしまうのが今の社会なのである。
著者は私立探偵として、いじめ問題と関わることとなった。
教育の専門家ではないし、「不良」な職業と罵られることもあったようだが、ごく当た
...続きを読むり前の、探偵という以前に社会人であり、大人であり、人間としていじめと向き合っている。
著者は何度も言う。
探偵に相談する前に、親や学校、教師、周囲の大人が子供にきちんと向き合ってください。
私たちは証拠を掴むことはできても、根本的な解決はできないのだ、と。
学校ばかりに責任を押し付けている論調ではない。
多くの仕事に忙殺され、子供と向き合えない教師の立場も理解しようとしている。
しかし、現場では真っ当な教師や大人が排除され、事なかれ主義が蔓延していることに疑問を投げかけている。
相談にくる内容には信じられないようなものもある。
カツアゲ、暴力のようなものや猥褻行為までも。
信じられないが、「子供だから」手ぬるいということはない。
より、残酷な方法を思いつくこともあるのだ。
こういったことがある、ということを知らないと問題の本質は見えてこない。
あえて本書の欠点をあげるなら、報道でもあるように、SNSなどを使ったものが語られていないこと。
直接の相談を受けることがないのかもしれないし、インターネット上のいじめは証拠をとることが難しいということもあるかもしれないが、触れておいてもよかったのではないだろうか。
いじめ相談を受ける探偵社が増加しているそうだ。
それは子供ときちんと向き合わない大人の怠慢ともとれるが、もし利用するなら、という前提で良識的な探偵者を見極める方法を伝授している。
結局自社の広告か?いや、そうとも限らない。
できれば探偵なんか利用するな、と著者は述べているのだから。
子供の問題はそのまま大人の問題である。
神聖な教育の場、とか、子供同士のことだから、とかそういうことでは解決にならない。
何が、課題で、どうすれば解決に結びつくのか、第三者の視点は的を射ている。