まず、表紙が素敵。こんな素敵な庭で菊子さんのような可愛らしいおばあちゃんが美味しいお菓子と飲み物でもてなしてくれるなんて最高。
だが探偵役は菊子さんではなく、孫で無愛想だけど優しい大学生・拓海。
主人公の高校生・航大が一年前に出会った沈丁花のある家に住む高齢女性を探すという、あまりに大まかな手掛かり
...続きを読むだけでのミッションに拓海が付き合ってくれたことをきっかけに、二人は様々な謎解きに挑む。
とは言え、学校から少しずつ消える植木鉢や、なぜか植物が上手く成長しない花壇、蔦に覆われた密室といった、ミステリーとしてはささやかなもの。
だがそこには優しさと人の気持ちにきちんと向き合う誠実さがあって微笑ましく読めた。
といっても真面目一方ではなく、友人たちと軽口を言い合う明るさもある。
航大も拓海も友人の凛も、相手が年下であっても子どもであってもいい加減な対応をしたり偏見で見たりせずに対応しているのが良い。
逆に航大や拓海とその親との関係はギクシャクしていて、私も考えさせられた。
最終話の表題作はいよいよそこにスポットが当たる。ドロドロしたりキツイ展開にならなければ良いがと思いながら読んだが、その結末はさて。
航大が園芸男子になる日も近そうだ。
庭仕事は体力も必要だし、案外似合うかも。