木原善彦のレビュー一覧

  • オーバーストーリー
    『子供、女性、奴隷、先住民、病人、狂人、障碍者。驚いたことにそのすべてが、この数世紀の間に、法律上の人格を持つ存在に変わった。それならば、樹木や鷲、山や川が、自分たちに果てしない危害を加えて窃盗を働いた人間相手に訴訟を起こしてなならない理由があるだろうか?ー 話すことができないので当事者適格性が認め...続きを読む
  • オーバーストーリー
    リチャード・パワーズが紡ぐ物語の力に泣いた。
    特に終章が本当に素晴らしく、本を読んで世界が変わると言う言葉は本当だったんだと思った。
    人と人の道が交わり、また新しい道ができる。
    そこで交差する人達の想いは読み手にも作用する。
    地球のために、森林のために、私にできることは何か考えながら生きていきたい。...続きを読む
  • 愚か者同盟
     ピューリツァー賞受賞作品であり、デヴィッド・ボウイの愛読書でもある。看板に偽りはなく、最初の3ページだけでも既にかなり面白い。
     舞台は60年代のアメリカ南部。傍若無人で高学歴で子供部屋に住む無職の巨漢イグネイシャスがついに就職活動を始める。彼が巻き起こす騒動を軸に珍妙なミステリーと風変りなラブス...続きを読む
  • 愚か者同盟
    イグネイシャス!!! その名の通り、世の中から「迫害」されていると思い込んでいる、陰キャ。陽キャを配役するなら、アレックス・デラージだろうか。アレックスが暴力的「ハラショー」で自己肯定に突き進むのに対して、イグネイシャスは母親の「イグネイシャス‼︎!」で自己肯定に突き進む。ドルーグの白装束と、イグネ...続きを読む
  • オーバーストーリー
    大傑作。あまりにおもしろくて半日で一気読みした。ちょっと動揺するくらいにso movedで、とりあえず今年のマイベストは決定した。極めて美しい無限の姿。
  • オーバーストーリー
    すごい本だった。
    第一に、アメリカで天然林の伐採運動が、どのように盛り上がっていったのか、何人かの人の個人史の集合として読むことができる。
    第二に、樹木の集合体としての森林に、別の次元の特性が備わっていることを、科学的知見も援用しながら示したこと。
    第三に、それに関わる人間のあり方を示したこと。
    ...続きを読む
  • オーバーストーリー
    切ない物語でした。適した大気があるから、我々は普通に生活できている。その大気を作ってくれている樹木。その樹木を伐採する人間。その伐採を食い止める人。レイの発した「正当防衛」がしっくりきた。不条理な世の中だなぁとつくづく思う。メルロポンティを思い出した。
  • オーバーストーリー
    人との出会い・人生は無数に枝分かれし、絡み合い、時に根幹に帰る様はまるで木のよう。

    読み終えた後、木を見上げその樹皮に触れて名前を尋ねてしまったけど、伝わっただろうか。
  • オーバーストーリー
    昔、吉祥寺に知久寿焼のライブを観に行ったことがある。彼はMCで、吉祥寺の街中にあるとても古い木について話していた。その木は不思議なことに、つららのようにいくつもの「こぶ」が太い枝から下に向かって伸びているのだという。自分はその木を幼い頃から当然のように認知していたが、そんな形状が目に入ったことは一度...続きを読む
  • オーバーストーリー
    ‪淡々と積み重なった冷静な言葉が描く、ゾクゾクするくらい緻密で壮大な営みに、ひたすら心を震わされる快感。こんな本にあと何回出逢えるんだろう。
  • オーバーストーリー
    【木々の描く物語を想像してみる】
    世代を超えて存在する木と森林と生態系と、そこに異なる形で関わることになった人が想像する物語の話。

    人は木材を生産する時、木を守ろうとするとき、木を学問する時、自然に対する自らの視点を示すのかもしれない。

    木にまつわる神話や言い伝え、木材の伐採、森林占拠運動、...続きを読む
  • 愚か者同盟
    60年代ニューオーリンズが舞台らしいけど、高学歴引きニートと捉えれば令和日本でも充分通用するよね。巨漢で話の通じないヤバいヤツとすると空気階段のコントみたいな。オカンと元カノはかたまり2役。
  • オーバーストーリー
    樹木と何らかの関わりを持ち、樹木をそれぞれのやり方で大事に思うようになる人々個別の物語が最初にある。短編集のようになっている。
    中盤以降は、彼らの物語が一つに絡み合い大きな流れとなっていく。

    木自体ですでに多くの生態系を抱える環境になっており、地球規模の視点で環境を見ても木は重要な役割を果たしてい...続きを読む
  • オーバーストーリー
    読みごたえあった。7月から約半年かかって読んだ。総じて言えば木と人間の話。壮大。壮大すぎて理解不能な文章が並ぶ。聖書のよう。よくもまぁこんなに脈略があるのかないのかわからない文章をツラツラ書けるな。しかし脈略がないようであるのが木で、あるようでないのが人間、なのかもしれない。
  • オーバーストーリー
    圧倒された。また時を経て読み返したい。読んだ後の世界が違って見えると訳者の後書きにも出ていたが、本当にそんな感じ。情報量も揺さぶられる感情の量も多い。じっくり噛み締めて咀嚼したい。

    ‪I felt a difference of 2 cultures. Due to Shintoism, Japa...続きを読む
  • オーバーストーリー
    まず、ジャケットが出色。巨木の根元に陽が指している写真の上にゴールドで大きく書かれた原語のタイトルがまるで洋書のよう。角度を変えるとタイトル文字だけが浮かび上がる。最近目にした本の中では最高の出来である。表紙、背、裏表紙を広げるとカリフォルニアの朝の森にいるような気がしてくる。そうなると、バーコード...続きを読む
  • オーバーストーリー
    なんらかの社会的な問題を小説で扱おうとすると、えてして、説明的になったり啓蒙になったり説教臭くなったりして、物語やうねりやスピードをそがれることが多い気がするが、これは始めの、木を巡る8人のストーリーからして面白く、ぐいぐい来る。
    環境問題、森林伐採、エコロジーの運動などを取り込んで、こんな小説が出...続きを読む
  • JR

    JR

    机の上に両足を上げ、椅子の背をいっぱいに倒し、太腿のあたりで本を開いて読んだ。手許にある書見台では厚すぎてページ押さえがきかないのだ。画像では実際の量感がつかみにくかろうが、菊版二段組940ページ、厚さは表紙部分を別にしても約5センチある。比喩でも誇張でもなく、読み終えた後、背表紙を支えていた右手が...続きを読む
  • 愚か者同盟
    60年代のアメリカ社会を鋭く切り取ってる。
    個性的で、自分ではどうしようもない受難に耐えながら必死に生きている人たち。会話がいちいち全部面白い。
    ぶっ飛んだ会話のなかから、その人がなぜ今の考えや境遇に至ったかがしっかり読む側に伝わってくる。辛い境遇も笑い飛ばせば良い、と言うけれどそんな問題じゃない。...続きを読む
  • オーバーストーリー
    短編としても成立する序章が寄り集まり、長編に移行する構成はなるほど樹木。ただし森林開発にまつわる現実がそうであるように、愉快な物語ではなかった。ひとつの「お話」として落ちをつけてはくれないため、また読みたいとはとても思えない。