夜の明けることのない星にアンバーグラウンドと呼ばれる地があった。
そこに、人々の“こころ”が託されたテガミを配達する国家公務があり、それはテガミバチと呼ばれた。
郵便配達員をテーマにした異世界ファンタジー。
物語は主人公ラグ・シーイングがテガミバチを目指すきっかけとなる出来事から始まる。初
...続きを読むっ端からテガミは紙ではなく人間の少年というエピソード。
甲殻の巨大モンスターあり、それを倒す手段で武器の心弾銃ありの荒唐無稽設定のパレード。
しかし、それを補って余る画力とコマ使い。今後もブレることの無いであろうシンプルで重厚なテーマ性。
ジャンプコミック恐るべし。
「DEATH NOTE」もそうだが、近年のジャンプコミックはハイレベルである。
単純明快これぞ少年漫画の「ジャングルの王者ターちゃん」系は息を潜め、系列敵には近い「ONE PIECE」や「NARUTO」、「銀魂」「CLAYMORE」などは既に友情・努力・勝利の3原則を超越した青年誌の域に達している。小中学生には難しくないだろうか。水準は最早、30代前後の大人が読んで程よい難易度に設定されているような気がする。
テガミバチも言うに漏れず、冒頭から裏テーマは差別社会である。
階級によって陽の当たらない世界に住み、そこから逃がすために人間をテガミとして郵送する。人を買う人がおり、人と距離を置く人がいる。
劇中に登場するモンスターよりも人は恐ろしく描かれ、その人の為に危険を省みずテガミを届ける旅に出るのも人である。
勧善懲悪という概念は消滅し、それぞれの解釈という時代なのだろうか。
本作は宮沢賢治のオマージュと言うべき要素が見え隠れし、太宰でもあり、現代要素のツンデレも抱擁する。
入り口は浅く、中は底無しに深い。
ゲーム化、商品化という都合主義の一切感じられない高純度漫画。
浅田弘幸 その他の著書
・I'll
・BADだねヨシオくん!
・眠兎
などなど。