鈴木雅生のレビュー一覧

  • 戦う操縦士

    第二次大戦における作者の操縦士としての体験に基づきながら、自由な精神性が失われる「戦争」に対する強烈な批判と理不尽さに対して行動=戦う情熱を示している。「したがって、私が戦うのは、それが誰であれ、… 他の思想に対してある個別の思想だけを押しつけるものだ」(P296)のくだりが響く。
  • 戦う操縦士
    敗北感漂うWWIIの戦禍を掻い潜り
    「なぜ自分が死ななければならないのか」と問い続ける自伝的小説

    目的を意識して行動する昨今の私達とは違い、志願して上記の命題に辿り着き、戦線でその問題の解答を得た作者の知見に胸を打たれました
  • 戦う操縦士
    偵察機パイロットの話。作者の小説の中で総合的にいちばん好きです。昨今の情勢を見るに、この本の平和の定義が染みます。ラストの締め方には賛否あるみたいですが、個人的には秀逸だと思います。
  • 戦う操縦士
    星の王子さまで有名な著者の体験をもとにした戦記。舞台はWW2、フランス。敗色が濃厚なフランス軍の偵察機に乗り込み、敵国ナチスドイツ陣地を偵察する決死のミッション。飛行機乗りならではの俯瞰視点、空戦、地上戦などの戦闘シーン。高度を下げて危険な偵察で砲撃されるシーンは迫力もあるけど、なんともファンタジッ...続きを読む
  • 戦う操縦士
    サンテグジュペリの最後の作品。
    出された当初は戦争真只中といふこともあり、民主主義からの返答と呼ばれてゐたやうだが、本人はそうした思想やらイデオロギーやらをもつてものを書いてゐたとは到底思へぬ。
    ただひたすらに空を求め、彼にできること、さうせずにはゐられぬことを粛々とこなしてゐたにすぎない。それがば...続きを読む
  • ポールとヴィルジニー
    素晴らしい作品。
    純愛物語であり、ただの純愛物語ではない。

    ある意味シンプルな王道悲恋であるが、
    自然の中に生きることこそに幸福の道はあるというメッセージなどの哲学的・人生訓的な深みが一段奥に見える作品。

    18世紀から版を重ね続けているのは、何故なのか。

    これほどまでに美しい恋愛や自然描写。
    ...続きを読む
  • 戦う操縦士
    解説にあるように、これはまさにイニシエーションの、通過儀礼の本だ。
    こんなあからさまに素直な言葉を重ねていけるものかと驚いた。

    人は肉体でもなく精神でもなく、行為だ、というあたりは感動した。プラトンよりもアリストテレスよりもデカルトよりも《人間》なのだ。

    出撃というイニシエーションを通して全く世...続きを読む
  • 戦う操縦士
    著者の実体験に基づく小説。フランス軍の偵察機パイロットとして戦争に参加する。海外文学の翻訳本としては読みやすいと思います。「光文社新訳文庫」。
    「人が死ぬことができるのは唯一、それなしでは自分が生きられないもののためにだけだ」
    印象に残った言葉です。
    「ちいさな王子」が表の名作ならこちらは影の名作と...続きを読む
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)
    感想
    どれだけの才を持ち合わせても、どれだけの美貌を手に入れても。孤独は人間に付きまとう。耐えるという態度を捨てた楽しむという付き合い方。
  • 戦う操縦士
    戦争への怒りを表しながらも、
    祖国のために行動することが重要と説く。
    そして、行動を起こすためには、
    人としてどうあるべきかを、
    自身の戦闘経験を踏まえて表現した作品。

    先に「最終飛行」を読んでいたので、
    時代背景が理解しやすかった。
    最終部で「神」についての言及が増えるのは、
    キリスト教を文化と...続きを読む
  • 戦う操縦士
    1940年ドイツに侵略され敗北しつつあるフランス軍の偵察機に乗り、もたらした情報を有効に使う友軍がいない中を、帰還がほぼ絶望的な命令に従って出撃して生還した飛行を振り返るサン・テグジュベリの小説。この物語がフランスが降伏した後、亡命したアメリカで執筆されたことを差し引いたとしても、自由や平等について...続きを読む
  • ポールとヴィルジニー
    詩的な文章で、読んでいて楽しい。がしかし時折少々大袈裟…?と思うくらいロマンチックな言葉や言い回しが並ぶ。
    自然に囲まれ、閉鎖的にではあるが幸福に暮らしていたポールトヴィルジニー。しかし権力や社会に巻き込まれることでその幸福は崩れていく…。
    単純だけれど、自然への賛美と社会生活への批判が込められてい...続きを読む
  • 戦う操縦士
    「人間の土地」や「夜間飛行」と同じスタンスで
    読み進めていましたが、本作は負けると分かっている
    戦争での不可能であろうと思われる任務である
    偵察飛行を遂行し、帰還するまでが描かれており
    その中で著者が思い巡らしたことが
    書かれてるのか?と思っていたものの途中から
    違和感を覚え…

    「結局のところ、な...続きを読む
  • 戦う操縦士
    人は何のために生きて、何に命を賭けるのか。
    人間とは?個人とは?
    戦争体験から生まれた思考はとても哲学的で、はっとさせられる記述もあり、すぅっと読めます。
    やはりサンテグジュペリは面白い。
    ぜひ。
  • ポールとヴィルジニー
    所謂運命悲劇の物語。神様によって助けられ、豪華絢爛な生活をせず、質素倹約にそれでも幸せな毎日を暮らすポールとヴィルジニーとその母。
    そしてきっかけとなる出来事が起き一気に転落。
    物語としてよりも文学的価値の高い作品。一読の価値あり。
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)
    十人十色の「孤独論」とあるが、実際に20人近くの知識人、著名人による寄稿の寄せ集めなので、ダイジェストとしての読み応えはあるが、全てが皮層的で浅い。なんだか格言や至言を探し出したり、その言葉の周辺を少しだけ肉付けしたような文章。それでも思考のきっかけを得たり、脳内に連鎖して考えさせられるのだから、読...続きを読む
  • 戦う操縦士
    いつかの『新潮』で山内志朗が面白いって言ってたから読んだ。

    第二次世界大戦下で敗北が決定的なフランス。そのなかで敵地での偵察非行に向かう主人公。負けがわかっている(何も守るべきものがない)中で「何のために死ぬのか」という命題を問い続けた筆者の葛藤を自伝的に描き出した小説。

    自分には内容が少し難し...続きを読む
  • 戦う操縦士
    ヒトラー『我が闘争』に対する「民主主義からの返答」として高く評価される。という書評が気になってしょうがなかったので、「ちいさな王子」に続いて読んでみた。

    1940/5/23の、電撃戦直後のフランス軍偵察飛行1日のお話。

    両世界大戦とも早々に降伏しておきながら、戦勝国然としたフランスには、決してい...続きを読む
  • ポールとヴィルジニー
    恋愛小説の古典のひとつで、清らかで純粋な二人の男女の恋愛悲劇を描いた作品です。
    二人のもつ心の清らかさを示すように、細かく描き込まれた風景描写は圧巻ですし、いかなる時にも「神」の存在を信じて自らを律し、他者を恨んだり自暴自棄になったりすることなく常に思いやりを持って行動するヒロイン、ヴィルジニーの姿...続きを読む
  • ポールとヴィルジニー
    美しい大自然のなかで育まれる無垢で純粋な愛情。
    二人を引き裂く文明社会。

    繊細で緻密な植物の描写は、まるで島の木々に囲まれながら太陽の光を頬に受けているかのような気分にさえなる。
    社会状態は堕落、自然状態こそ自由と平和だと説いたルソーの思想の影響が強く表れ、また神こそが摂理という啓蒙的な宗教観も表...続きを読む