松浦寿輝のレビュー一覧

  • 香港陥落
    何度か旅行した香港を思い浮かべながら読み進めた。日中戦争時の香港、戦後の繁栄を始める香港、また、現在のイギリスから中国への返還後の香港、さらに返還5 25年を経て、中国共産党の圧倒的な強圧的な支配が進み、多くのイギリス人、中国人が脱出を図る香港、サイド、A、サイドBに続き、細動しー、サイドディーと物...続きを読む
  • 男性作家が選ぶ太宰治
    中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。

    太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました...続きを読む
  • 掌篇歳時記 秋冬
    短編小説。
    中には情景がぼんやりしたまま終幕になったものもあるが、大半は程よく心地良い作品。
    日本には暦のほかにこんなにも豊かな四季の表現があると温かさも得た。
  • 掌篇歳時記 秋冬
    12名の著名な作家の短編が72候の解説と一緒に読める、ある意味で贅沢な本だ.重松清の鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)は父親としての最後の旅行で息子の翔太を見つめる親心がうまく描写されている.筒井康隆の蒙霧升降(ふかききりまとう)は戦後の風物詩を散りばめた彼独特の文章でしっかり意見を述べているのが...続きを読む
  • 掌篇歳時記 秋冬
    物語ではなく、読書そのものと、日本の繊細な四季の移ろいを味わう一冊。初めて読む作家さんもいて楽しかった。
  • 人外
    おもしろっ。
    カワウソみたいな猫みたいな人外が
    ディストピア的な世界を歩くキャッチーさと
    人外の意識「わたしたち」と過去と未来と偶然と必然をらせんに例えるよくわかんなさが程よいバランス。
    表紙もすてき。
  • 名誉と恍惚
    松浦寿輝「名誉と恍惚」(新潮社)は、2016年、話題をさらった作品だが、読み終えて考え込んでしまった。小説を映画化する話はよくある。では、その逆は、映画のように小説を書くということに込められた意味は何だろう、というのがこの長い長い小説を読みながら浮かんできた問いだった。

    始まりは1937年、事変直...続きを読む
  • 名誉と恍惚
    すごい熱量をページ数からも内容からも感じた。カッコいい。
    あぁ、そっちへ行ってはダメだよ、と思うけど行かずにはいられないのでしょうね。最後のビリヤードのシーン、震えたわ。
  • 名誉と恍惚
    日中戦争時、上海で工部局に属する警官芹沢。陸軍参謀の嘉山に青幇の蕭と面会したいと頼まれるが、そこから芹沢の運命は動き出す…760ページの超大作。戦争について、人種について、軍について、テーマがいくつかある。日本人と朝鮮人の子供であることの芹沢の苦悩、日本に捨てられたことの苦悩、埠頭での恍惚のシーン、...続きを読む
  • 名誉と恍惚
    戸籍には記載されない出自として日本の母と朝鮮の父を持ち、日中戦争初期の上海で日本の支那駐屯地と一線を画す上海共同租界の警察官という職業を持つ主人公が、日本が戦争という形で外の世界と軋轢を起こしながら不可逆な道を進んで行く時代に、そのアイデンティティにより不可避な運命に巻き込まれて行く濃厚な日々の物語...続きを読む
  • 男性作家が選ぶ太宰治
    女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。
  • あやめ 鰈 ひかがみ
    「あやめ」の始まりかたが好きだと思う。事故で死んだ木原が立ちあがり死んだことを分かりながらずれた記憶の中を歩いていくところ。隣り合わせの記憶の世界では死者が生者のように動いている。「鰈」は「あやめ」にも出てきた土岐が死者の地下鉄に載って地獄の世界に足を踏み入れていくまでが書いてあった。これはちょっと...続きを読む
  • あやめ 鰈 ひかがみ
     現実と幻想(?)のはざまを漂う男3人のそれぞれの話が、あとがきにもあるようにまるで輪のようでした。
     生きていることと死んでいることは、近いというより、少し重なっているのかなという気がしました。線を引くようにくっきり分かれるものじゃなく、生きてもいるし、死んでもいるし、そんな感じがしました。
  • あやめ 鰈 ひかがみ
    社会の底辺で幽明の境を彷徨う男達が落ちてゆく失墜の中に呑み込まれながらも、幸福を見出してゆく過程を描いている。虚実が定かでない幻想世界に今回もどっぷりと浸らせてもらった。花腐しや幽に比べると幾分弱いか。
  • あやめ 鰈 ひかがみ
    三本の短編からなる連作小説。
    主人公は多少の違いはあれ生と死の狭間の世界にいる。
    「あやめ」は生と死の間に生えているとされる花で、主人公の旧友がママをするスナックの名前でもある。主人公は交通事故にあって死んだはずの男だ。
    「鰈」は泥酔して記憶があいまいになりいつ買ったかわからない魚がクーラーボックス...続きを読む
  • BB/PP
    「BB / PP」(松浦寿輝)を読んだ。

    短篇集。

    表題作の「BB / PP」はかなりグロテスクで、それは私に映画「エクス・マキナ」(監督 : アレックス・ガーランド)を思い出させる。

    それ以外はどれもモノクロームの写真を眺めているような静けさを纏い、あるいは色褪せた古い写真を眺めているような...続きを読む
  • 香港陥落
    香港、戦前、日本人中国人イギリス人、3人な男の話。
    中国に取り込まれ前に行けて良かった。  
    確かに仕事で何回も行ったが、石垣との旅が思い出された。

    日本人とイギリス女のその後など、日本人のその後がないのは致命的な欠陥、と思い直し 四つ星から下げた
  • 掌篇歳時記 秋冬
    12人の作家による秋冬の歳時記にあわせた短編集。はじめましての作家も数人。好みはそれぞれあるけれど、こんな編集でなければ出会わなかったと思う。
    春夏編が先だったと知る。
  • わたしが行ったさびしい町
    講演会で江國香織さんがオススメしていた旅エッセイ。旅エッセイというと旅行先で起きた事件を面白おかしく綴っているものが多いイメージだけどこれは旅行先で筆者が味わったひたすら寂しい気持ちが綴ってある。読んでると「何やってるんだ…」ってなんかいたたまれない気持ちになる。読んでて台湾に行く時に飛行機のエンジ...続きを読む
  • 男性作家が選ぶ太宰治

    趣味を人に合わせてコミュニケーションの手段にしてしまう、ご飯の為に適当に合わせる…つまり〇〇を見れば〇〇は興味を持てない人生を上手く生きるためのものかもしれません
    自分の個性について考えさせられる作品でした。人が冷たくなるってこんな感じなんだと思いマス。