作品一覧 2024/03/06更新 幽 花腐し 試し読み フォロー あやめ 鰈 ひかがみ 試し読み フォロー 黄昏客思 試し読み フォロー 作家と楽しむ古典 松尾芭蕉/おくのほそ道 与謝蕪村 小林一茶 近現代俳句 近現代詩 試し読み フォロー 掌篇歳時記 秋冬 試し読み フォロー 青天有月 エセー 試し読み フォロー 男性作家が選ぶ太宰治 試し読み フォロー 月岡草飛の謎 試し読み フォロー 徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術 試し読み フォロー 人外 試し読み フォロー 半島 試し読み フォロー BB/PP 試し読み フォロー 香港陥落 試し読み フォロー 松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙 試し読み フォロー 明治の表象空間 試し読み フォロー 名誉と恍惚 試し読み フォロー わたしが行ったさびしい町 試し読み フォロー 1~17件目 / 17件<<<1・・・・・・・・・>>> 松浦寿輝の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 人外 松浦寿輝 「人外(にんがい)」(松浦寿輝)を読んだ。 面白い! アラカシの枝の股から滲みだした(神ともけだものともつかない)「それ」が、(何故か過去の記憶に囚われ)探し求める「かれ」とはたして出会えるのかどうか。 そして「世界」は滅びようとしている。 少し難解なところもあるけれどしだいに物語に惹きつけ...続きを読むられていく。 印象深い文章をひとつだけ抜きだす。 『世界と世界ならざるものとの境界に身を置きその両方に魅了され引っ張られ、しかしどちら側にも身を落ち着けられずにいるものだけが知るせつなさでありやるせなさであるようにおもわれた。』(本文より) 〈あゝ、われわれの世界も滅びようとしているのかもしれないな〉と、思う。 Posted by ブクログ 半島 松浦寿輝 中年期の寓話。15年ぶり再読。主人公と同じく中年になったからこそわかる部分あり。様々なからくりのある島の描写が魅力的。仮初か現実か、桃源郷か現実世界か、どちらか一方を選んで終わらないのがもどかしくもあり、可笑しくもあり。 Posted by ブクログ わたしが行ったさびしい町 松浦寿輝 村上春樹ライブラリー階段の本棚にあったのをパラパラめくり、ぜひ読もうと思った一冊。 名著『名誉と恍惚』の作者による、紀行文…なのかな。 旅の本が好きなのだが、この本は単なる町の風景や出来事の描写だけでなく、様々な思索やよしなしごと(と本人は仰るだろう)が織り交ぜられた文章が魅力である。 一番行っ...続きを読むてみたいと思ったのは新京=現・長春であるが、そんな感想を持つべき本ではないような気もする。 「吉田健一にとって余生とは、何かが終わった後の時間である以上に、むしろ何かが始まる時間のことだった」 「『余生があってそこに文学の境地が開け、人間にいつから文学の仕事ができるかはその余生がいつから始まるかに掛かっている』」 というような言葉と引用、 そして早世した私小説作家阿部昭への思いなどが印象に残った。 Posted by ブクログ わたしが行ったさびしい町 松浦寿輝 おそらく、旅に関するエッセイとしては極上の部類に入るのではないか。その旅の細部はほとんど忘れてしまっても、その中でくっきりと記憶に留まっている事柄の記述は、読者があたかも追体験するような錯覚を起こさせる。 Posted by ブクログ 月岡草飛の謎 松浦寿輝 『鴉はその恐ろしい国から俳人のところへやって来た、お迎えの使者、死出の旅路の先導役、まあそういった見立てになろうか。しかしそんなふうに話の筋を通してしまうと、たちまち理に落ちた凡句になってしまうなと月岡は苦笑した』―『人類存続研究所の謎 あるいは動物への生成変化によってホモ・サピエンスははたして幸福...続きを読むになれるのか』 松浦寿輝は東大でフランス文学を学び、パリ第三大学で博士号を取得、詩人として文壇に登場し、その後評論を認められ、小説では芥川賞も受賞したという絵に描いたような文人。歯に衣着せぬ物言いで人の感情を逆なでるなどという単純なことはしないけれど、持って回ったような高尚な理路で人の不興を買うことはある(例えば村上春樹に対する評のように)。この作家には「川の光」なんていう子供向けのアニメの原作になる作品があったりもするけれど、むしろ世間的には堅物と言われそうな読者向けの作品が多いし、個人的には「そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所」のような暗澹たる雰囲気の漂う作品が好み。本作「月岡草飛の謎」もその「そこで~」と同じくらい面妖な連作短篇集。その意味では好みといえば好みの作風だが、それをスノッブだと評する人もいるかも知れない。 snobbish(俗物的)という言い方は、紳士を気取っているとかお高くとまっているという意味合いで使われると思うけれど(今風に言えば上から目線というやつか)、本作のような作品を読む限り、松浦寿輝の場合、それをわざとやっているようなところがあると思う。敢えて俗物的な価値観を持つ登場人物を描き、それに嫌悪感を抱かせておいて、読み手の感情もまとめて切りつけるという構図があるのではないかと。そもそも、判り易い理屈を提示しつつ、実はそんなものには意味がないと切り捨てるような捻ったものの見方が主人公の物言いには通底している。作家の価値観の一部が投影されているとも思う(と決めつけることもまた一つの罠か)主人公、月岡草飛の価値観も、一歩引いて見た時、その俗物的な面をあげつらうことが躊躇われる。単純に嫌悪することは天に唾を吐くようなもの、という構図が見えてくるからだ。その思わず胆が冷えるようなところへ読者を連れていく剛腕が、松浦寿輝の特徴であるような気がする。 例えばこの主人公のショービニズム的ですらある男尊女卑的志向を、旧世代のもの、時代遅れと単純に切り捨てる読者も出てくるだろう。しかしその時、松浦寿輝は「何故そう言い切れるのか」と厳しく問うてくるだろう。何かを評する時、人は自ら問いを立て、自ら答えねばならない。そんな厳しさを、何故か感じずにはいられない作品。 Posted by ブクログ 松浦寿輝のレビューをもっと見る