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伝統芸能に生きる父娘の葛藤と和解を描き、著者の文壇登場作となった「地唄」、ある男の正妻・愛人・実妹の3人の女が繰り広げる壮絶な同居生活と、等しく忍び寄る老いを見据えた「三婆」、田舎の静かな尼寺に若い男女が滞在したことで起こる波風を温かい筆致で描く「美っつい庵主さん」など、5作品を収録。無類の劇的構成力を発揮する著者が、小説の面白さを余すところなく示す精選作品集。
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Posted by ブクログ
1950年代後半から1960年代に文芸誌に発表された短編の集成。当時としては超ベストセラー作家でありました。 小説って、これだよな。と、思うのです。収録の「孟養女考」にみえる(当時の)新しい中国の形、とか、「三婆」に見える封建的社会の終焉、だとか、「美っつい庵主さん」にみえる(当時の)新しい若...続きを読むい男女の関係、とか、そらぁ含まれるテーマ性というのは、ある。そういう社会情勢に即した作品読解、というのも必要な側面はあるでしょう。だが、そうではなくて。 「本妻と、妾と、実の妹が一人の男が急に亡くなった後どうやって生きていったか」(三婆)とか、「姪の子が尼寺に訪ねてくるんだけど、女友達かと思ったら男じゃないか―!」(美っつい庵主さん)などなど、そういう「読ませる」文藝として、今現在のシーンでもまったく引けを取るものではなかったのです。 妙なリアリズムにこだわるよりも、「これは小説なんだぜ!」と明確に打ち出しているところが、とても小説で、小説家としてのプロ意識だと思いました。 今読んでみて、ハッとするところがあると思います。
「エメラルドって高いもんやろが」 「でもダイヤモンドより安いわ」 「同じ買うんやったらダイヤにし、女子の財産や、買うたるがな」 「だけど、エメラルドの色が好きなのよ、私は」 「何色や」 「グリーン」 「何やて」 「緑よ。ほら、この音」 巾(第十三絃)を弾いて左手で軽く押えた。片方の耳を乗り出すように...続きを読む聴いて、寿久は云った。 「緑か。ふん、そやな、お前に似合うやろ」 ―『地唄』p.15
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