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自ら産んだ子を「取り替え」た、繭子。発覚 に怯えながらも、息子・航太への愛情が深ま る。一方、郁絵は「取り替えられた」子と知 らず、息子・璃空を愛情深く育ててきた。そ れぞれの子が四歳を過ぎた頃、「取り違え」 が発覚。元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続 ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子た ち。切なすぎる「事件」の、慟哭の結末は……。
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Posted by ブクログ
自分が産んだばかりの息子を、新生児室に寝ている同じ日に生まれた隣の子供と入れ替えるというありえない行為を、誰もが実行してしまう可能性があるかもしれないと思えるほどの精神状態の描写を表現している。その後のいつバレるか分からないとビクビク暮らす日々、入れ替えられた家族の精神描写もリアルすぎて読み始めると...続きを読む止まらなかった。
福山雅治主演の映画「そして父になる」では看護師が故意に取り違えたが、この作品は母親が取り替えた。でもそこには悪意なんてものはなく、十分に同情する状況でもあるし、なにより子供を愛していた。仮に取り違えなくても愛しただろうに。そして取り違えられた側ももちろん。同情してしまう感情もあり、でも取り返しのつか...続きを読むなすぎることでもあり。はやく映像化してたくさんの人に知ってほしい作品
読後、感情をどこに持って行くべきか分からなくて、しばらくボーッとなりました。正解は何だったのか。この結末しかなかったのか。少しだけ考えてみましたが、結局何も思い浮かばず。でも、この結末が正しかったのかもよく分からなくて。 同時期に同じ産婦人科で出産した、繭子と郁絵。新生児室に自分の赤ちゃんの様子を...続きを読む見に来た繭子は、子育てへの不安から赤ちゃんにつけられたネームタグを、郁絵の赤ちゃんのタグとすり替えてしまう。 我に返った繭子はネームタグを戻そうとするが、そこで折しもタイミングが悪く看護師が入ってきたことで、タグを戻すタイミングを失ってしまい…… 前半はかなりしんどい読書でした。帝王切開で出産した自分への侮蔑の念。自身の母との関係性の負い目から、自分がちゃんと育児が出来るのか、という不安の念。そうした術後の不安定な精神状態の描写の細かさたるや…… 一方で郁絵は保育士のため、子育ての知識は豊富。彼女も難産だったものの、最終的には自然分娩で出産したらしく、それと比べて自分は、と卑下してしまい、郁絵に育てられた方が、この子は幸せなんじゃないか、と繭子は思いつめ…… と、衝動的に赤ちゃんのタグを入れ替えてしまった気持ちは、理解できなくもない。その複雑な心情を描ききるのは、さすが芦沢さんだと思うのですが、その後の展開がいまいちすっきりしなかった。 何度も「言い出さなければ」と思う繭子ですが、タグを入れ替えたことを夫や周りの人にどう思われるかを気にし、ズルズルと時間だけが過ぎていく。 確かに言い出しにくいのは分かるのだけれど、そのまま時間が過ぎていって後戻り出来なくなるリスクがあまりにも大きく感じられて、一向に言い出せない繭子にどうも感情移入しきれませんでした。 それでいて、自分のしたことへの後悔や、いつかばれるんじゃないかという不安、といった心理描写は迫真に迫っているから、余計に読んでいてしんどい……。 「もう言っちゃってよ」と何度も思ったし、逆に「なんで言い出さないんだ」と最初の3分の1くらいはイライラし通しだった気がします。 結局言い出せないまま二組の母子は退院。繭子は郁絵の子を自分の子として、子育てを続けていくことに。 不安な感情のまま繭子は子育てをしていき、子供の「イヤイヤ期」が始まったときはかなり不安定な精神状態に。でも一方で、ある瞬間にふっと気が楽になったり、そして子供への愛情が湧いてきたりと、このあたりからようやくテンポ良く読めるようになってきました。 不安な感情の描写もさることながら、子供に対しポジティブな感情を抱いていくまでの描写も上手いので、そのあたりも良かった。そして四年の月日が経ち、出産した産婦人科から、一本の電話がかかってきて…… ここで繭子の章が終わり郁絵の章へ。出産から四年。郁絵の浮気を疑った夫は、子供のDNA鑑定をすることに。その結果明らかになったのは、父母共に子供とは血縁関係にないという検査結果。 産婦人科や弁護士から子供を元に戻す「交換」を提案され、反射的に拒絶する郁絵。一方で子供達の今後のことを考えると、交換の選択肢も一理あるようで……。そして二組の親子がたどり着いた結末は……。 子供への愛と、交換という現実の選択に揺れる父母。その痛みや苦しみ、惑いに罪悪感。そういった感情が読者側にも痛いほど伝わってきます。 なぜ気づけなかったのか。もっと子供と一緒に過ごしていれば。 そうした感情が余すところなく書かれ、そして二人の子供達の描写も痛々しくて、こちらも読んでいて辛くなってくるほど…… そしてたどり着く繭子夫妻の決断と、郁絵夫妻の決断。そして子供達の行く末。 この状況下でこうなったのは致し方ない、もしかすると、まだましとまで言えるのかもしれない。 それでも読んでいる自分も、そして郁絵たちもやりきれない想いを抱え、この選択肢しかなかったのか、と考えてしまいます。答えのない問いが頭の中で踊り続け、名状しがたい読後感が、自分の中でしばらく渦巻き続けました。 展開も読後感も爽快感とはほど遠く、だれも幸せになりようがない物語。そして先に書いたように、前半がとにかくイライラして、最後まで読めるか不安でもありました。 それでも読ませてしまう文章の流暢さと、嫌でも引き込んでしまう心理描写。そして読後に、感情がこれ以上ないくらい揺さぶられたのも事実なので☆5にしました。でも気軽に人に勧められない小説でもあります。 以前別の芦沢さんの作品の感想で、芦沢央さんは湊かなえさんや辻村深月さんに匹敵する女流ミステリ作家になるかも、といったことを書いた記憶があります。そのたぐいまれなる筆力を、今回も見せつけられたような気がします。
産院で衝動的に自分の産んだ子と他人の子を取り替えてしまった母親が、精神的に追い詰められていく様を描いた前半。後半は、その4年後に取り替えられていたことを知った母親側の苦悩を描く。 読み手が男性か女性か、出産の経験の有無、普通分娩か帝王切開か、子育て時に専業主婦か仕事を持っていたかなど、その立ち位置...続きを読むによって受け止め方や衝撃度が大きく異なる作品だと思う。 私は子育てを終えて久しいが、二人の母親の苦しみが途切れることなく伝わってきて、胃が痛くなるような読書だった。 読後も、将来二人の子ども、特に取り替えた親の子どもが事実を知ったときどうなるのかを想像してしまい、憂鬱な気分がしばらくは抜けなかった。 余談だが、そう言えば我が家では断乳後の息子が耳たぶを触るのが好きで、私のはもちろん近くにいる人の耳によく触れていたなと、懐かしく思い出した。
面白くて一気読みした。 繭子の自分を犠牲にした母性もわかる気がしたし、郁恵の気持ちも痛いほど分かった。 普段、育児にかかる手間を厭うていた気持ちを、正してもらえた気がした。
読んでいてこんなにも苦しくなったのは、私も子育て中だからだと思う。 我が子は血が繋がっているから可愛いのか、と聞かれるとそうではないと思いつつも、どこかで自分と似たものを感じるというところも大きい気がする。何年であれ、子どもと過ごす濃密な時間は限られているのだろうから、写真や動画に収めることに囚われ...続きを読むすぎず、自分の目で見ていきたい、と思った。
自ら産んだ子を「取り替え」た繭子。 発覚に怯えながらも、息子・航太への愛情が深まる一方、郁絵は「取り替えられた」子と知らず、息子・璃空を愛情深く育ててきた。 それぞれの子が四歳を過ぎた頃、「取り違え」が発覚する。 元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子たち。切なすぎる...続きを読む「事件」の、慟哭の結末は・・・。 子の取り違えといえば、「そして父になる」が記憶に新しいところだが、この物語は取り違いを起こした人物が、当の母親だというところが大きく違った。 「そして父になる」も苦しくて、苦しくて、登場人物全てが苦しみぬくのだが、取り違いに差があるものの、この物語も終始苦しい、悲しい感情が自分に乗り移ってきてしまった。 物語の序盤では、普通分娩を望んでいた繭子が、急遽帝王切開になり、自分を責めるところから物語は幕が開く。 私にも子供が二人要るが、どちらも普通分娩で生まれた為、帝王切開の人がここまで心を痛めるものなのか!? その辺は全く理解が出来なかった。 繭子の母親も、心を病んでおり、そんなこともあってか、どんどん自分を追い込んでしまう。 序盤の育児の場面は、懐かしいなぁ~という気持ちで読んでいた。 育児は全てが初めてのことだから、何が正解なのかもわからず、右往左往してしまう。 自分にもそんな頃があったなぁ~と・・・。 自分は良い母ではない、何でちゃんと出来ないんだろう?なんて、他人と比較して自分を責めたこともたくさんあったなぁ。 子供が赤ちゃんで居るのなんて、ほんの短い時間でしかないのに、あの時間は永遠に続くと思っていたなぁ。 幸せと不安が交互に押し寄せてきたり、寝不足で死んでしまうんじゃないかと思ったり、自分の育児は間違っているんじゃないかと自分を責めたり。 そんな自分の過去を思い出しながら、繭子と郁絵の愛情深い子育てに、嵌り込んでしまった。 辛く切なく苦しい話だったけど、心掴まれて、ググっと最後まで一気読みしてしまった。
子どもの意図的な取り違え事件を描いた本。 繭子が帝王切開きっかけで産後うつのようになっていくのはちょっと共感できなかったが、後半になるにつれ描写に圧倒されてなんと泣いてしまった。子どもの描写がとても上手。
ほんの出来心から出産直後に自分の子と友人の子をすり替えてしまった繭子。すり替えられた事実を知らずにその子供を育ててきた郁恵。繭子のしたことは許されないことであり、一番の被害者はそれぞれの子供たち。 ただ、読み進んでいくと、繭子の母親は少し心に闇を抱えており、そのような家庭で育ったため繭子自身が子育て...続きを読むに自信が持てなかったためにそのような行動をとったのかと同情も感じた。 私自身は「よい母親」ではなかったかもしれないが、あまり他と比べたり、自信を失ったりせず、できる範囲で子育てをしてきた。「できる範囲で頑張る」ということも大事だと改めて思った。
めちゃめちゃしんどくさせるという意味ではすごいと思う。が、とにかく読んでいてしんどい。あとは疑いもなく自分は子育てできる、保育園にも入れない、と考えていたが、そんなことが果たして絶対にできるのだろうかと、考えさせられた。
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