星の子

今村夏子

林ちひろは中学３年生。病弱だった娘を救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込み、その信仰が家族の形をゆがめていく。野間文芸新人賞を受賞し本屋大賞にもノミネートされた、芥川賞作家のもうひとつの代表作。《巻末対談・小川洋子》

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内小説
• 出版社: 朝日新聞出版
• 掲載誌・レーベル: 朝日文庫
• ページ数: 256ページ
• 電子版発売日: 2020年01月31日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 2MB

[ブクログ · ★★★★★]

宗教にのめり込む気持ち、わからなくないでもない
だってアトピーが病院へ行っても治らなかったのに水で治るのを目の当たりにすると、やはり信じてしまうのではないか
今月初めに読んだ角田光代さんの「方舟を燃やす」を思い出した
信じる力は何よりも強いなと感じた
ラストの読者に任せたという投げた感じに驚いたけれど、どう捉えていいのかいまも悩んでいる

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「わたしのいる場所はあたたかく、目を閉じればそのまま眠ってしまいそうだった。」

不穏な雰囲気のまま作品が流れ、ある意味幸福な終わり方で締められる。
こういった当たり前を揺さぶられる作品を書かせたら天下一品だなぁ。

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主人公はちひろという女の子
生まれて間もないどうしても発疹が治らず病院に行っても原因がわからないままで、両親はずっと悩んでいました。
ある日父親の同僚に相談をしたところ、神聖な力の入った水を譲ってもらい、その水で丁寧に体を拭くと発疹が治ったのです。
そこから水を購入するようになり、両親は水に、その大元になっている宗教ハマっていくことになりました。
親族からは、怪しい宗教はやめろと忠告を受けていたが一度見た奇跡が両親を宗教から離れ難くさせていました。

幼い頃は特に疑問を持たずに過ごしていたちひろでしたが、成長とともに少しずつ

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全然騙されてなんかないね。
全部ちゃんとホントだった。
好きな人が信じてるものを一緒に信じたいってのぶっ刺さって泣いちゃった。
多かれ少なかれ皆なにかに縋らないと生きていけないんだからそれがもしもホンモノだったら、
少しでもキレイに見えたら嬉しいよね。
お姉ちゃんが信じた男のため息もなべちゃん達が私に優しくしてくれたのも全部全部愛しかった。

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自分が病弱だったために両親が宗教に傾倒してしまった、宗教二世の少女の物語

映画を既に視聴済みで、原作とストーリーがほぼ同じだったので、すんなり読めた

安倍首相の襲撃事件に端を発し、宗教二世の抱える苦悩が明らかになった昨今
出版された当時でもまぁ宗教関係のあたりは強かったけど、宗教二世の悲劇としては描かれていない


ちひろは両親の儀式に参加しようとは思っていないが
その信心を否定するでもなく全面的に肯定するでもなく自然に受け入れている
心の底から信じているわけでもないけど、まったく否定してしまう程でもなく
積極的に受け入れもしないし、抜け出そうとも思わないというフラットな姿勢が却ってリアルに感じる

対して、まーちゃんは馴染めずに離れていった側
後に再登場するかと思ってたけど、その後は行方が語られることなく終わってしまった

映画だとそうは感じなかったけど、小説だとその後の行方に何やら不穏なものを感じる
うーん、雄三叔父さんのところを頼ってもよかったのでは？と思ってしまうけど
水入れ替え事件とその後の包丁のアレの件もあって、そこにも確執があったのだろうか？


宗教に対しての辛辣(?)な揶揄の描写
信じている対象は、有名な学者というけど科学的な根拠は示されていない
偉い人が騙されている可能性もあるし
さらにその人を騙している存在の可能性も指摘されている

宗教と科学の違いは普遍性と再現性なわけだけど、誰しもが検証可能なわけでもないし
誰かが検証した結果、十分に確からしいというのを信じているに過ぎないのかもね
でも、少なくとも宗教よりは信じるに足る状況ではあると個人的には思う


ふと思ったけど、自分もまったく科学的ではない事でも、何となく心理的に行動を制限される事柄がある
夜爪は親の死に目に会えないとか、口笛を吹くと蛇が来るとか、夜蜘蛛は殺してもいいけど朝蜘蛛は縁起が良いみたいな迷信に似ているようなやつ
幼い頃に、祖母の迷信めいたいいつけに対して、今でもその行動をする時にはためらいがある気持ち
積極的に破ろうとは思わないけど、いざ行うとなると若干の精神的なハードルがある気がする
ちーちゃんも同じようなものなのかなとも思う
結局は程度の差でしかないのかも


しかしまぁ大っぴらに活動している宗教に関しては不信感ばかりだけどね

個人的な認識としては「信じる者は（足元を）すくわれる」と思っている

作中で描かれている宗教の解像度が低い
教祖や代表、詳細な教義など描かれない
読者として感じるのは新興宗教のうっすらとした不信感
お金に関しても、他の信者はお金持ちだったりと、信者から絞れるだけ搾り取っているようには見えない

海路さんのトラブルも、あくまで一方の主張だけでなく両面からの意見が描かれてある

それを前提に、ラストの解釈がいくつもできる

所謂メリーバッドエンドとでもいうのだろうか
少なくともちひろにとって家族は崩壊していないし
宗教から逃れようとも思っていない
というか、思えない？のだろうか

流れ星が見えただの見えないだのとすっとぼける両親
帰りたいちひろを引き留めようとする意思を感じるけど
家族として最後の絆を確かめているようにも思える

あとがきのように最後に小川洋子さんとの対談が掲載されていて、その中で当初のプロットについても語られている
当初は星空を眺める家族の背後で海路さんと昇子さんが草むらに隠れて、ちひろはそのまま教団にとりこまれてしまうのではないかというラストを想定していたそう
でも、家族を強調するために変更したそうで

となると、意図としては家族から離れられずに宗教に取り込まれたという解釈するのが自然なのでしょうね

[ブクログ · ★★★★☆]

お父さん、お母さん
ちいちゃんを病弱な体から助けるために
その宗教に入ったんじゃないの？
発疹が治らないちいちゃんに教えて貰った水を使うと治った。
そっから宗教にドンドンハマって行くのだけど
宗教の事にお金を使うことが大事になって
ちいちゃんが何を食べても寒いと言ってもお構い無し。
もはや何がしたいんだ。って思うけど
本人達は未だにちいちゃんのために幸せだと思ってやってるから周りだけ迷惑だなあ。
何も起きないけどぐいぐい引き込まれました。

[ブクログ · ★★★★☆]

宗教にのめり込む両親。
それに賛成も反対もしない主人公だが、周りの反応は変わっていく。
人は安心できるグループ、組織に依存する。宗教もその意味合いが大きいと思う。

[ブクログ · ★★★★☆]

最後の小川洋子さんと今村夏子さんの対談を読んでいて、今村夏子さんの幼さ？（幼稚という意味ではなく、）のようなものをすごく感じたんだけど、この本は今村さんを体現したような本に感じた。もちろん宗教にハマってるんだろ！とかそういう事じゃなくて、なんかこう、するりと読めるけどずっと主人公の年齢からものを見ているような、この本を読んでいる「私」を排除してその物語の1部に自分がなるような。幼さと残酷さ、幼いからこそ、の表し方が沢山あって考えさせられた。

[ブクログ · ★★★★☆]

南先生とのシーン、私が当事者だったら立ち直れない
宗教2世の問題をよくある女子中学生の日常に落とし込むと、こんなに苦しいんだなと思うシーンでした
表面的な"大変そう"では見えなかった苦しさを教えてくれてありがとう

後半はずっと不穏さを纏うけど中には両親の愛や友達・彼氏との希望もあって、一概に悪とは言えない、だからこそ苦しい…となりました

[ブクログ · ★★★★☆]

映画鑑賞後に読みました。
感想自体は映画とそれほど変わりませんが、終盤のシーンは小説の方が不穏に感じました。今現在の環境や関係が続くとは限らないもんね。