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クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衝に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日露関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。
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Posted by ブクログ
川路は毎日ランニングをしていたこともあって、身体が頑健であった。そのために58歳で隠居しようと思ったのに止められてしまう。幕末、川路は自分たち一派の推す一橋慶喜が将軍になれず、井伊直弼らの推す一派が政治的に勝利したおかげで不遇をかこつ。また私生活でも残念なことなどもあり、井伊らが大老になるまでの成功...続きを読むした人生からは哀しい状態となってしまう。最後を考えると、勝海舟のように幕府ではなく、もっと国そのものを考えても良かったのではと思ってしまう。
後半は安政の大獄で左遷されるなどし、一旦は復活するものの、病を得て身体が利かなくなり、幕府崩壊の情勢下で失意の中で命を落としてしまうという、川路聖謨の最期までが描かれる… 吉村昭は「川路聖謨の物語…」という思いを永い間抱いていたようで、本作はそうした好い意味での思い入れが滲む秀作である。互いに譲り難...続きを読むいものを持っていて激しく言い争いながら交渉した川路聖謨とプチャーチンだが、互いに「人間として」の敬意を抱くに至っていた様子も描かれる。これは名作だ!!!
川路聖謨は幕末の官吏である.官吏としては異例の出世を遂げ,開国を求めてやってきたロシアの使節プチャーチンとの開国交渉の幕府側責任者のような役割につき,高圧的な態度のプチャーチンに対しても一歩も引かず,穏当な和親条約の締結にこぎつけるところまでが第一幕. 後半はアメリカのハリスからの通商条約締結に関す...続きを読むる,さらに(当時の日本側からの見方からすると)一方的な要求を受け,幕府側の意見をまとめ,一方,攘夷論に固執する徳川斉昭や朝廷との板挟みとなり,右往左往する.井伊直弼の大老就任の辺りからは年齢的な問題もあり,川路は第一線から外れ,幕府崩壊までは引いた立場で幕末の動乱を見守ることになる. それほど身分は高くない出自でありながら,その高い能力が,この時代だからこそ認められ,幕府の危機を救った人物の物語である.
幕府公務員の凄さを感じた。 なんとなく幕府の家臣と政府役人ってイメージ違ったけど普通に感覚同じなんだなと気付かされた。FAIREとか絶対言ってないわな 笑
地震による船の破壊。帰れないロシア人。紆余曲折。結果的には信頼が深まった。粘り強い交渉で勝ち取った条件「択捉は日本領、樺太に国境を定めない」。交換条約、日露戦争、二度の大戦‥。その後の変遷を思う。過激な攘夷思想、安政の大獄、桜田門外の変…時代は一度壊れた。再興できたのは維新の功労によるものだけではな...続きを読むい。政変にも災害にも、滅入らず、粛々と仕事を進める。日本社会はそんな人々に支えられてきた。農を離し、設備を棄却し、情報を奪う。グローバル化の名の下にルールを壊し国を売る勢力が蔓延る現代。求められる人材を考える
川路の最期には、人間の悲哀を感じる。 また、江戸時代の武士の忠義の盲目さにも、ここまで徹底していると、これもまたいまに生きる僕には、悲哀と滑稽さを感じる。 彼の知識(西洋知識)を得る目的は、使うため。行動するため。 それにしても、交通機関が徒歩というのは、想像を絶しますね。 この描写をみてそうい...続きを読むうのがまざまざと想像できる。
この作品を読み進む中で、この時代にも、3.11や熊本地震にも勝るとも劣らない地震、津波、火事が頻発したこと、そしてロシア使節の艦船が被害を受けて沈没し、長期にわたって下田の地に滞在せざるを得なかった歴史があったことを改めて知った。 作品の中で、主人公川路聖謨が、精力を維持するため(もちろん彼の仕事を...続きを読む怠りなく遂行するために)、風呂に入るたびに睾丸を塩で揉み洗うという行為には、謹厳実直な人柄(妻以外の女性を相手にせず、家の存続のためと妻から説得されやっと側女を持つような)を想像すると、何となく可笑しみを禁じ得ない。
クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衝に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日ロ関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。(親本は1996...続きを読む年刊、1999年文庫化、2014年新装版) 下巻の前半は、船を失ったプチャーチンを帰国させるための苦心が描かれている。幕府は、開国はしたものの通商は拒否していたが、どのように国益を守るのかが描かれている。後半は、日米通商条約の締結に向けて、朝廷の勅許を得るために苦心する様子や、安政の大獄に巻き込まれ、隠居を余儀なくされる様や、病を得た晩年の様子が描かれている。幕府の凋落する様子は、宴の終わりともいえる。
さいきん、19世紀以前の日本と外国との関係について興味が湧き、関係する書籍を読んでいます。 この作品は、江戸時代末期に、幕府の役人として欧米列強との交渉にあたった川路聖謨が主人公の歴史長編です。 舞台は1850年代。 アメリカのペリーに続き、長崎にロシア艦隊がやってきます。 遠い江戸から駆けつけ、交...続きを読む渉にあたる川路。 その後、場所を下田に移し、厳しい交渉に望みます。 複数の通訳を間に挟み、対立する利害を調整していく交渉。 さらに、下田に大きな異変が襲い掛かって・・・という展開。 幕末の開国にあたっては、「欧米列強から高圧的な要求を受けて、日本側がかなり苦しい対応を余儀無くされた」という認識を持っていました。 しかもその交渉の過程で、大きな災害が発生し、交渉をさらに困難なものにさせていたのですね。 そのような状況の中で、相手の要求の意図は何か、そして日本は何を守るべきかを考えながら、冷静に交渉を進めていた川路という人がいたということを、この作品を読んで初めて知りました。 真摯な姿勢で当たれば、言葉も、背景とする国力も違う人を相手にしても、共感を得ることができるのですね。 そのためには、日頃の心身の鍛錬を怠らず、また昇進に浮かれることなく自らを戒める川路の生き方は、現代を生きる自分たちも、学ぶべきところが多いなあと、感じました。 その他、鉄道も車も無い世界で江戸と長崎の距離がいかに長く感じられるか、下田と戸田を含む伊豆半島がいかに大きいかが、本書の描写で伝わってきました。 このような先人たちの苦労によって、今の日本という国があるのだと、改めて認識させてもらえた、作品でした。
・久々に読んだ吉村昭さんの作品 ・名前しか知らない人だったので、新鮮だった ・幕末というと、安政の大獄などの弾圧のイメージがあり 幕府は基本は無能で、開国したのも弱腰だったからという なんとなくの先入観があったが、 いろいろな考えの人が実際に活躍しており 開国のために様々な努力もしていた...続きを読むことを知って 少し見方がかわった
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