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日米開戦前夜、京都大学の哲学教授・田辺元は学生たちに「悠久の大義のために死ねば、永遠に生きられる」と熱く語りかけ、その講義録『歴史的現実』はエリート学生のバイブルとされた。若者たちを死に至らしめた巧妙なロジックとは? 田辺の矛盾と欺瞞を暴き、〈戦前回帰〉の進む現代に警鐘を鳴らす、佐藤優渾身の合宿講座全記録。
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Posted by ブクログ
私は頭が悪いので田辺元の主張は理解できない。 しかし、解説を通じ人が何かのために死ぬために大義があればそれができることを理解した。 大義のために死んだ一人の死者を通じ大義は伝染し人々は自ら進んで死へと向かう。 いや、死へと駆り立てる。 大義、天皇、文化、そして生き残り。 人間の本能すら大義の形成に利...続きを読む用する田辺元の狡猾なロジックの展開には舌をまかざるを得ない。 凡人ではあるが諦めず知性をものにし自由な存在でありたい。
非常に面白い。 輪読とはこういうものだというものを知らしめてくれた良書である。おそらく私1人ではこの原本を読み通すことなど到底できなかったであろう、かつ佐藤氏をしてもこの難読書を読み解くことが非常に難しいと言うことがわかった。(私の能力が低い) 佐藤氏を通して解読される本書は、私の能力では本当にその...続きを読む読解で、解釈であっているのかいささか不安ではあるがその時代の思想を読み解くのに非常に良い本だと感じられた。 ポイントは3点、 ①京大生ほどの知性を戦場に送り込むのには大掛かりな思想が必要であり田辺元はそれを達成した。 ②しかしその論理には最終的には論理の飛躍がある ③しかし田辺元のずるいところは本書のおおよそ8割はまっとうかつ論理的で正しいことを言っていると言うことである。これは詐欺の手口と同じでほぼ大半を正しいことであれば最終的な結論は正しいように思わせてしまう。私には到底論破することができない。
一人前の泥棒になるために、という話から佐藤氏が自分自身の経験を当てはめて生き残るということを語った部分が印象に残っている。こうあるべき、なにをやりたい、ではなく、瞬間瞬間でできることをすべてやり、使えるものをすべて使わなければ生き残れない局面がある。そのあたり、面白かったし、引き込まれたな。 悪魔...続きを読むの京大講義を読む、というけれど、果たして田辺元という人物が本当に悪魔だったのかどうか。いや、田辺元を弁護しているわけではない。頭のよい個人の口車で悲劇が招き寄せられたのではなく、あの当時はみんなそういう気分だった。ただ頭のよい人がそれを上手に言葉にして、乗りやすくしただけだ。そんなふうに思えたんだよね。 今残る資料や普通にみられる映画から、歴史的場面を感じることができるんだ。そういう刺激的なところを教えてくれる本だったんじゃないかな。
佐藤優 氏の講義「 田辺元 歴史的現実を読む 」を本にしたもの。田辺元氏が 京大生を 太平洋戦争や侵略戦争に 向かわせた 悪魔のロジック(知的操作)を検証している。 京大生に エリートの自覚を促し、愛する人の救済を約束し、死の恐怖を取り除き、社会的大義を与えている。最後の「国のために死ね」という部...続きを読む分以外は 論理破綻を感じない点が 悪魔のロジックなのだと思う。集団催眠にも近い 悪魔のロジック *人間は なるもの→人間になるために変化して成長せよ *未来は 過去に制約されている→未来は変えられる→考える未来は 現在を規定する *愛する者のため死ぬ=種族のために死ぬ→他の者も憧れて死ぬ→それこそ永遠に生きること *既存のゲームのルールに従うことは 強者の論理に従うこと。ならば 自分でルールを立てればいい 「我々は〜その種族から生まれ、現在 その種族に属し、将来の目標を与えられている」 *種族の中の人は 掟に囚われている *種族の掟に従わない人(突出した人)は 普遍言語を持つ→突出した人になれ
松竹の敵機空襲、観なくては。◆◆現在、過去、未来はつながっている。◆8時の自分と12時の自分は同一なんだから、過去の責任は着いて回ること。◆読書会ってすごいな。
どの著作を拝読しても著者の知の巨人ぶりには驚愕します。内容について行くのが精一杯ですが、この講座シリーズは良いですね。恥ずかしながら講座シリーズは初めて拝読させて頂きましたが、スゴく内容がわかり易かったです。脱線含めて自分が賢くなった気にさせてくれます。悪魔の講義の最後の飛躍っぷりは逆に清々しさすら...続きを読む感じますねえ。思考停止している現在の日本国民の過半数は簡単に騙されそうです。小泉や平蔵にコロっと騙されてこの有様ですから。やはり知的筋トレは必須だと改めて感じました。別の講座シリーズも読みたいと思います。
2015年におこなわれた著者の講座の内容をまとめた本です。 1939年に京都大学でおこなわれた田辺元の講演『歴史的現実』のテクスト全文を読み、著者が解説をおこなっています。ほかに、国策映画『敵機来襲』を鑑賞し、また柄谷行人の『帝国の構造』の一部を読むこともおこなわれています。また、講座参加者との質...続きを読む疑応答のやりとりも収録されていて、臨場感をあじわうことができるように思いました。 哲学のテクストをていねいに読み解く講座を書籍化するという試みは、仲正昌樹がおこなっており、本書もそうした内容を期待していたのですが、仲正の本とはかなり異なる印象を受けます。 著者は、田辺が『歴史的現実』の講義によって受講者である学生たちを戦争へと駆り立てていったと述べています。そのうえで、戦争の危機がしだいにせまりつつある現代において、こうした扇動に引っかからないための処方箋として、『歴史的現実』のテクストを読むという目的を語っています。そのためなのか著者の解釈は、『歴史的現実』のテクストに含まれているアジテーションとして有効な議論のしくみを暴くということにのみ向かっており、仲正の講義のように哲学のテクストの背後にあるさまざまな文脈をひとつずつ拾いあげるということには向かっていません。 もちろん著者自身の専門のひとつである神学にかんする補足情報や、現代の国際政治の問題に通じるような観点が含まれていることを指摘するなど、多少テクストの重層的な意味についての考察がなされているところはあるものの、全体としてはやや単線的な議論になってしまっているように感じてしまいました。
1939年京都大学(当時の京都帝国大学)において全6回で行なわれた田辺元の講義録「歴史的現実」(1940)を、現代の知の巨人(またの名を外務省のラスプーチン)佐藤優が二泊三日の合宿で読み解いた一冊。 佐藤優が指摘する通り、時の構造や個人、種族、人類の構造を解いた部分は面白いのだが、その後に「どうせ...続きを読むいつかは死ぬんだから、お国のために死んだら?」と説く部分は支離滅裂。佐藤優の議論のレベルもそれに合わせて、序中盤は充実していて「久しぶりに面白いリベラルアーツの本を読むなぁ」と思いながら読んでいたものだが、後半は軽薄過ぎてつまらず。柄谷行人パートも蛇足。
田辺元をはじめとする”京都学派”の哲学者たちが、旧日本陸海軍の周辺国侵略を擁護する思想的な枠組みを提供したというのは、哲学の業界では結構常識である。本書はその代表的な文書を精読する短期講座をベースにしていて、日本の当時のエリート学生たちがどのようにして「国のために死ぬ」と教育されたかがわかりやすく学...続きを読むべたのはよかった。ただライブ感を出したいためか、横道にそれたところやジョークなどもそのまま収録しているため、読みづらいところも多いのは、ちょっと残念。また終盤の柄谷の著作の部分が尻切れトンボに終わったのも残念な印象が残った。
思想と時代。今は読み解くことができるが、洗脳に近くそれを正しいと思わざるを得ない背景があるのでしょう。
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学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む―
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