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弱者必衰の新自由主義、打つ手なしの格差社会、過激さを増す民族運動――現代の難問の根底にはすべて宗教がある。「宗教は民衆のアヘンである」と喝破したマルクスの著作を通じて現代の仕組みを見通す、専門知識ゼロからわかるキリスト教神学の超入門書にして白眉。世界宗教の有りようを学び、21世紀と正しく付き合うために!
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Posted by ブクログ
前から気になっていた一冊。 「キリスト教」をはじめとした、宗教って日本人にとってはちょっととっつきにくい世界。でも、帯に書いてあるように「もう、知らないでは許さされない!」の通り、教養して知っておかなければいけないことの一つ。 新潮講座「一からわかる宗教」を文字お越ししたもので、とても簡潔かつ分...続きを読むかりやすいので読んでいてスイスイと読み進められると共に、スッと頭の中に入ってきて良著! 本編とは関係ないけど、本の読み方で「抜き書きのすすめ(P.150〜)のところがツボだった。佐藤優さんといえば、次々にいろんなジャンルの本を出版しているけど、その内容を垣間見ることのできる一か所。 難しい本も、大事なところをどんな方法でもいいので抜き出して「要約」をつくることで理解度が一気に促進されるんだということを改めて認識。読める冊数は限られるかもしれないけど、大事だと思うことや重点的に読みたいジャンルはこのくらいの読み方をしなければ、結局は浅い知識にしかないらないので意味がない。 さあ、僕もこんな読み方をして、自分の得意とするジャンルを深めよう!
言ってることは理解できなくもないけど、ゼロからはわからんやろ、という頭の悪い感想。 神学を一通りさらっていないと、とてもじゃないがついていけないのでは…??
ヘーゲル法哲学批判序説を読み込んで宗教を考える。 講義だけでなく参加者の方の質問への佐藤優先生の回答が難しいけど分かった気になれる内容。 カール・バルトについて人間性も含めて教えてくれるのはありがたい。ハーバーマスの『認識と関心』認識を導く利害関心が認識作用に先行するというのが印象的。
新潮講座の口述筆記がもとになっていて、話し言葉で書き綴られている。しかし中身は難解だ。キリスト教の入門書というより、宗教とは何か、そして「資本主義の本質」がもたらす、キリスト教文明とイスラム文明との角逐の構造、とでもいうべきか。 著者によると「国家や民族の枠を超えて、グローバルなイスラム主義によっ...続きを読むて世界を統一しようとする「イスラム国」の運動も、資本主義への対抗策、新自由主義の克服という視点で理解することもできる」(p.13)という。だから、資本主義の問題点を穿ったカール・マルクスを取り上げ、現在われわれが囲まれている危機―「生きていて苦しい」という悩みも含めて―をどう克服するかを考えることに主眼が置かれている。 中心に取り上げられているのは、1844年に発表されたマルクスの『ヘーゲル法哲学批判序説』。有名な「宗教は民衆のアヘンである」の一句を含む、若いマルクスの著した短い論文である。タイトルは法哲学批判だが、実は、宗教(キリスト教)批判になっている。 カトリックとプロテスタントの信仰分裂後、プロテスタントにとって救済は不確かになり、16世紀にジャン・カルヴァンの「予定説(Predestination)」などが生まれる。プロテスタントの信仰は19世紀初頭、啓蒙思想の影響のなかで大きく変質する。シュライエルマッハーは「宗教の本質は直感と感情である」と規定して、神の居場所は天でなく心のなかに(結果、神学は心理学に吸収される)、イエス・キリストは神の子でなく「史的イエス」になった。人間が満たされていない状況や望んでいる状況を投影するのが神となり、神が人間を作ったのではなくて、人間が神を作ったのである(p.104-105)。マルクスの宗教批判も、こうした流れのなかで展開されていく。 従って、マルクスの宗教批判の肝は、我々の周囲にはいろんな宗教性があり、そんな宗教性をどうやって相対化していくかということにある。マルクスは、神は人間が作ったものであり、人間の願望を投影しているものであるなら、神を崇拝する代わりに「本来の人間」、理想的な高さにある人間を崇拝すればよい、という。しかし、キリスト教は「原罪観」があるので、「本来の人間」というものに価値を置かない。一方、イスラム国などは、「原罪観」がない。従って、自らが絶対に正しいと信じるところへ向かって邁進できる。 さらに著者は、原罪観を持たない宗教とでもいうべきものに「ナショナリズムという宗教」を挙げる。これを参考にすると、イスラム教とマルクス主義は、理性主義で、普遍主義で、地上に一元的な理想社会を実現しようとする点でよく似ている。どちらも西欧資本主義に対抗しようとする。しかし、マルクス主義は敗北した。イスラム教は、近代以前の宗教的ロジックを含むので、絶えることはない。 本書でもうひとつ興味ぶかいのは、ハーバーマスの『自然主義と宗教の間』も取り上げている点である。著者によればこれは、西欧キリスト教文明が、イスラムの挑戦を組み止め、手なずけ、生き残ろうとする戦略をのべた、したたかな哲学的対話であるとする。 マルクス主義は、理性主義の流れを汲むが、神の代わりに人間を「最高の存在」とするドグマを人びとに押しつけた。よって宗教を敵視し、資本主義と対峙し、結局自壊した。ハーバーマスは理性主義で、啓蒙思想の現代版で、ドグマによらず自然科学や資本主義と両立し、イスラムと対峙する。自己正当化をはかろうとする、西欧的価値観そのものである。 著者は、妖怪ウォッチを例にあげつつ、異形のモンスターとみえる宗教や異文化との共存の努力が大切だとする。理性によっては理解不能としかみえない知のシステムも、当事者にとっては生きられた現実で、意味ある世界なのだ。 西欧文化の掲げる理性が、普遍的というのであれば、イスラムも東洋文化も変わらなければならない。西欧文化の掲げる理性がローカルな、キリスト教の個性を帯びているなら、イスラムのような他者と遭遇した西欧文化は変わらなければならない。どちらが世界が進むべき道なのだろうか。
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