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若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。ある時、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ、彼を憎んだ“怪物”に追い詰められることになろうとは知る由もなかった――。天才女性作家が遺した伝説の名著。
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Posted by ブクログ
小学生時代、学校の図書室にあった児童向け版を読んでから、20年以上ぶりに読み返したら、胸に迫る原作の緻密な描写に改めて圧倒されました。 人間の立ち入ってはいけない「禁忌」の境界線、自分という存在は一体何のために生まれてきたのかという人間の命題、外見から起こる差別など、200年以上前に書かれた作品で...続きを読むあることが信じられないくらい、現代にも通じるテーマが多く取り上げられた文句なしの名作です。
原題も"Frankenstein"、初出は1818年。 フロストシリーズで毎度テンポの良さとユーモアに富んだ訳で唸らせてくれる芹澤恵さんによる新訳。芹澤恵さん、こんな古典ものの翻訳もされているのねー、これからも色々と読みたい訳者さん。 書かれたのが200年前というのがまず驚くし...続きを読む、作者は執筆当時、20歳の女性だったということにまた驚く。ちなみにメアリーは17歳のときに妻のいる男性と駆け落ちし、駆け落ちの旅行中で本書を執筆した。その妻が自殺して20日後に結婚したらしい。スキャンダラスすぎるし、今の時代からみても倫理的にどうなんだと思う。しかし本書の序文には、「筆者の主な関心は…(略)、家族の愛情の尊さと普遍的な徳の素晴らしさを示すことにある」なんてあったりもする。前妻が聞いたらキレそう。 そういえば確か、ミドルマーチやジェイン・エアの女性作家たちもなかなかの経歴だった。当時の女性作家たちが、常識の枠にとらわれず、想像の翼を広げる人たちだったからこそ世に出た作品群なのかもしれない。 メアリーのことはおいといて、フランケンシュタインである。これが、驚く完成度の高さ。古さを全く感じさせない。めちゃくちゃ面白くてびっくりする。人造の怪物として名前は知られているけど、実は怪物に名前はなく、フランケンシュタインは、この怪物を生み出した科学者の名前である。 北極点到達のため、船で探検の旅に出ていたロバートは、北極海で瀕死の青年を救出する。その青年がフランケンシュタイン。彼は何故北極海を彷徨っていたのか、その理由を語るのだ。 彼は生命の謎を解き明かし、人間のように複雑で素晴らしい生き物を作り出すという研究にのめり込む。しかし自ら作り出した人工の肉体に生命を吹き込み完成させたい結果、あまりにも醜い異形の怪物だった。 恐れをなしたフランケンシュタインは体調を崩す。怪物がいつのまにか研究室から抜け出ていたのを野放しにしたまま、故郷のスイスに逃げ帰る。 しかし、故郷では愛しい弟が何者かに殺される事件が起きていた。さらには、家族のように接してきた善良な娘が捕まっていた。あの怪物の仕業だと思うフランケンシュタインだが、恐ろしい研究のことを言い出すことができず、無実の娘が死刑になることに苦悩する。 そしてついに邂逅することとなったフランケンシュタインと怪物。創造主から見捨てられた怪物は、苦難の旅を続けながら、ある一家の暮らしをつぶさに観察して言語や愛情を学ぶものの、その容姿ゆえに人間には受け入れられず、孤独感を募らせていた。怪物は、フランケンシュタインに、自分の伴侶となる異性をもう一人作って欲しい、この願いが叶えばもう二度と人前には現れないと約束する。 もう一人の怪物を作る手筈を整えるフランケンシュタインだが、土壇場で、人類に禍をなすことを恐れて破壊する。怒った怪物は、フランケンシュタインの大切な者を殺していく。 怪物を退治するために追っていたフランケンシュタインは、ついに北極海に辿り着いたのだが…。 色々なところで見聞きしたことのある怪物の恐ろしげな容姿が脳裏にあるのだが、私が一番感じたのは、この名もなき怪物が可哀想だなということ。 生まれたての子供のように純粋で、知性もあり、愛情を欲しているのに、誰からも受け入れてもらえない怪物の孤独感、「自分は何者か」という苦悩、唯一の理解者たり得るはずの創造主からすら見捨てられたという絶望感。 大切な者たちを殺されたフランケンシュタインの怒りはもっともでもあるけれど、怪物を創造したことで彼が感じているのは人類に禍を引き起こすことの責任だけで、怪物の未来への責任などではない。禍々しいと断じ、死しか望んでいない。これでは本来的には怪物でなかったとしても怪物になってしまうよね。 最後まで息つかせぬ展開。はっきりとした描写ではなく、読者の想像に委ねられている部分もあるラストだった。
恐ろしくも美しく、身勝手で哀しい物語。 最期の怪物のセリフは、心からの叫びとして胸に突き刺さる。 俗っぽい言い方をするなら…、 「ただし、イケメン(≒容姿普通以上)に限る」。 作中幾度となく人間のもつ性善説的な描写に出くわすけれも、それも相手の容姿ひとつで簡単に翻ってしまう。 心地よい登場人物たち...続きを読むの交流が、怪物の存在から途端に軽薄なものにも見えてしまう。 ここまで性善説的な美徳と、偽善的な見方と、迫害される側の哀しみが同居しているのはある意味面白い。 風景描写はとにかく美しい。それがまた怪物の容姿や恐怖、悲哀を際立たせる。…この手法、むごい。 それにしても…。 怪物に対して「フンガー!」(cv.兼本新吾)と、西洋妖怪軍団の脳筋キャラを植え付けてしまった日本アニメの罪は大きい…。 (藤子先生、水木先生のせいばかりじゃないけどさ) これほどかわいそうで、かなしくて、時に優しくて、魅力的なキャラはいないのに~。 さて、こうして読破して原作勢となった今。 原作準拠の怪物を日本アニメでも出すことを強く要望する! 根は優しくて、力持ち。 さらに西洋文学にも通じた、読書家で勉強家。 戦えば強いけど、物事を論理的に考えられる。 でも自暴自棄になると手がつけられない、過激な寂しがり屋。毒親を憎みつつも、彼から親としての愛情をほしいと思っている…。 ん?主人公キャラ? なんにせよ、彼ならば、西洋妖怪軍団のよき参謀役となるでしょう。 そして、奇妙キテレツな容姿の日本妖怪に馴染みのある日本の子供達とは、きっと仲良くなれるでしょう…。 …という、夢想をついしてまうくらい、いいキャラです。
ヘンリーにお気楽さを感じてしまう メアリーシェリーも夫パーシーの詩人たるロマンティシズムに同じものを感じてたのかも、とか
怪物誕生は何を意味するか。『フランケンシュタイン』は、子供を産むことに対する母親の不安を描いた「出産神話」であるとする考察がある。確かに、作者メアリは、自身の誕生により母親を亡くし、彼女自身も度重なる流産を経験していることから、出産に対するトラウマを怪物誕生のドラマとして具現化したと考えることも十分...続きを読む可能であろう。そのような観点から見ると、他の小説には無い独創性を持つ作品だと感じられる。
世界初のSF作品で、「こんなにSFやったんだな」と感じる作品。 科学技術の発展に対する不安心あるいは好奇心が伝わってくる感じが如何にもSF。
外見はともかく、内面の醜さは圧倒的にフランケンシュタイン本人が勝ってた。 悪意なくただ純粋に繋がりを求めたバケモノが荒んでいく回想は胸が締め付けられた。 交渉するための対話も、終始バケモノの言い分が筋が通っているように感じる。 関係ないけど、Fate Apocryphaのフランケンシュタインは原...続きを読む型を留めていない程に美化されているなあと。
フランケンシュタイン博士が生み出した醜悪な怪物は、聡明な頭脳と知性を持ち合わせている寂しがり屋。自己憐憫に浸って都合のいい理屈をひねり出す博士より、よほど「人間」として魅力的だ。
伝説的怪物の出る、フランケンシュタインを読み終えました。好きな漫画家がこの作者を題材に作品を書いていて、友達も読んだというので読んで見ました。内容は悲しみに満ちていて、色々な歯車の掛け違いが最終的な結末になるのだなと思いました。恐怖というより、悲壮。フランケンシュタインは怪物の想像主で、このフラン...続きを読むケンシュタインの作者は女性であるということに驚きました。漫画を読んだ時に驚きました。
全てが詰まってたし、新しく感じる。 古典はすげぇなぁ。 映画と全く違う。 ・再生の構造は伏せられてる 錬金術を求めていたフランケンシュタインが科学に行き着く過程は時代によって信奉される基軸が変わっていく成り変わりを表現 そもそも別の主人公がフランケンを見つけ出すという過程の語り。幽霊譚。ラストで...続きを読む怪物が合流して初めて目視する。 名前さえもない怪物はここが元ネタになっていたし、彼が言葉を段々と覚えていく過程は『哀れなきものたち』の意味がよくわかるパート。 ・めちゃくちゃ喋るのだけど、めちゃくちゃ喋れるからこそ切ない!1人目の少女は濡れ衣だったり、自分がどのような人生を送っていたか?を語るのが… ・自分が生み出してしまった怪物が周りを殺していくという呪い、はエイリアン3の元ネタにも近いし。地縛霊だし、これが呪い。浦沢直樹『モンスター』にも通じてくる。パクったとかじゃなくて、この物語構造はこの時代にもうすでにやってたという。 怪物からしたら父親殺しの物語。 父親が子を殺すためにひたすら追いかけ続けるというこの構図は再映画化してもらいたい。
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