「しかし、創造主である神に代わって生命を生み出す試みは、現在ではますます現実のものとなりつつあるのも事実だろう。いやそれどころか、すでにクローンが次々につくられている今日では、人間を人為的に生み出すことも夢ではなくなっている。その試みがいかなる結果を招くか、それはまだ誰にも想像がつかない。ただしその一端を知りたければ、日本生まれの小説家カズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』( Never Let Me Go、二〇〇五年。邦訳は土屋政雄訳、二〇〇六年、早川書房)を読むことをお勧めしたい。 いずれにしても人造人間の誕生が現実に近づいている今日、『フランケンシュタイン』という作品はますます現代的な小説となりつつある。だとすれば、こうした時期にこの作品の新訳を出すのはまさにタイムリーなことではないかと、少なくとも訳者は考えている。」