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Posted by ブクログ
読書中、映画を見ているようだった。
主人公の辛い感情に共感し、婚約者を追いかけて訪ねた街の描写はまるで色つきで浮かび上がる。
宮古島で台風に遭遇した一夜はその時の空気感まで伝わってくる。
新しい生活を始めた元婚約者を見つけ出すための一年間余りは、主人公にとって、人間的な幅や物の見方を成長させた期間だったといえる。事件は起きないにこしたことはないが、でも、色々な世界を見た彼女はとても魅力的な人になっている。
時代背景も適宜織り込まれていて、昭和の一時代を理解する教材としても最適。
作者の勉強量や様々な境遇の人に向けられる視点のあたたかさに、他の作品を読むのも楽しみになった。
Posted by ブクログ
まだ私が若かりし頃、20代の時に読みました。
今までで面白かった本は?と聞かれたら、宮部みゆきさんの「火車」と、乃南アサさんの「涙」と答えます。20年以上経ってるのに、今だに面白かった記憶が強い本。内容は忘れてますけどね。
「涙」は当時、半身浴をしながら小説を読むのが日課だったんだけど、もう本当に涙、涙で、風呂場でワーワー泣いた記憶があります。
もう、どうにもならないようなことが次から次に起こって、どうしてこんなことに〜って、泣いた気がします。
確か、帯にもピーコさんの推薦文が載っていて、涙、涙が止まらなかった!的なことを書いてありました。その通りだ!と当時は思ったものです。
再読したいけれど、今は感じかたが違うだろうし、
昔のように涙ひとつも流せなかったら、と思うと哀しいので、できないでいます。
昔の記憶は大事にとっておこうかと。
涙の真相
突然、目の前から消えた婚約者を探し求め各地を訪れ、ついに「地の果て」にたどり着いた女性。そこには、変わり果てた姿と昔から変わらない姿の両面を持った婚約者が暮らしていた。この「地の果て」でようやく愛する男性と再会することができた女性の「涙」を感じる瞬間。乃南アサさんの「地の果て」を表現する情景は透明感と寂寥感が目の前に広がり、さらに読みたくなります。
Posted by ブクログ
年の瀬、萄子(とうこ)の家に、結婚して家を出た娘の真希がひょっこり帰って来ます。軽い調子で話していますが、夫に浮気され、実は相当傷ついているようです。結局、真希は3ヶ月後に離婚しますが、友達に誘われていった沖縄から、立ち直りを示唆する明るい便りが届き、萄子はほっとします。
ただ、安堵する一方で、萄子は昔のことを思い出してしまいます。人との別れ、沖縄、これらは萄子には、できれば封印しておきたい凄絶な経験と結びついていました。
「ごめん、もう、会えない」
東京オリンピックの前日、婚約者であり、刑事の奥田勝は電話でそう告げて失踪。その後、奥田の先輩刑事の娘が惨殺死体で発見されます。萄子はわけがわからないまま、こんな状況に納得できず、彼を探す決心をします。
世間知らずのお嬢さんだった萄子は、周囲の反対に耳を貸さず、わずかな手掛かりを頼りに、川崎、熱海、焼津、大阪等を探しまわり、最後に、当時まだアメリカ領の沖縄、宮古島にたどり着きます。
東京オリンピックの頃の日本の空気がよくわかりますが、圧巻は、宮古島の台風の描写です。当時の記録を丹念に調べたのでしょう、まるでそこにいたかのように嵐の凶暴さを描く作者の筆力には脱帽です。こうした描写が、話しの進行に重みを与えているのだと思います。
この本について、「私は泣けなかった」と書いている感想を見かけましたが、私はそもそも「泣きたい」と思って本を読むつもりはないので、そんなことはどうでもいいんです。面白かったです。いい時間が過ごせました。
「一度、言い出したら聞かないじゃないか。本当に、お前によく似てる」
「あなたって、本当に辛抱強い」
プロローグに出てくる、萄子と、夫の淳とのやりとりですが、最後まで読むと、何気ないこの会話の深さがわかります。
Posted by ブクログ
主人公は刑事である婚約者と東京オリンピック後に式を挙げる予定だったが、オリンピック直前に電話で自分のことは忘れるよう言われ姿をくらましてしまう。混乱する主人公に彼が殺人事件の容疑者であるということも知らされる。しかも被害者は婚約者とコンビを組んでいた老刑事の娘だった。
主人公は婚約者の潔白を信じながら、彼を自力で探し出すことを決意。細い糸をたどりながら川崎、熱海、焼津、筑豊と彼を追うがすんでのところで会えず仕舞いでいた。
一方、その後の捜査で彼は嵌められただけということがわかる。しかし黒幕を裁くためには何としても彼の証言が必要。そのことを知った主人公はさらに彼の足取りを辿るが、ある偶然から彼の居場所をつかむ。向かったのはアメリカ占領下の宮古島。そこで彼と再会し事の真相を知るのだが、それはあまりにも理不尽で耐えがたいものだった。
追っては逃げられ追っては逃げられの追走劇。向かったあちこちで親切な人に出会ったり、たまたま情報を持っている人に出会ったりなど、人探しするのにこんなに簡単にいくかなとは思うものの、婚約者を追う執念は漂ってくる。
主人公もそうだが、娘を殺された老刑事側から事件に迫っていくのだが、娘の知らなかった一面を目の当たりにした親の心情や情けなさなど風采の上がらない刑事であるが故に迫るものがある。
そして今までの全ては最後の章に向けての助走のような感じで、それが最後の章に活きてくる。
この作家さんは痛みや悲しみ、背負ったものによる苦悩を描くのがうまい。
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