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昭和20年9月17日。敗戦直後に日本を襲った枕崎台風は、死者不明者3000人超の被害をもたらしたが、そのうち2000人強は広島県だった――。なぜ、広島で被害が膨らんだのか。原爆によって通信も組織も壊滅した状況下、自らも放射線障害に苦しみながら、観測と調査を続けた広島気象台台員たちの闘いを描いた傑作ノンフィクション。「(自分の著作の中で)自分自身で一番好きな作品はどれかと尋ねられれば、迷うことなく『空白の天気図』を挙げるだろう」(柳田邦男)
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Posted by ブクログ
8/6の原爆と9/17の枕崎台風を結びつけて考えた事はなかった。 当時天気予報が今のように機能していれば被害はもっと小さかったかもしれない。
この本のことは、You Tubeでみた池上彰と柳田邦男の対談で知った。気象台絡みた戦争、戦後史とまとめれると思うが、あらゆるインフラを破壊された中での気象観測、原爆の後に襲ってきた台風。京都大学の研究班が台風で罹災したことは知らなかった。
広島の気象台から見た、原爆と枕崎台風のノンフィクション。 枕崎台風によって広島では2,000人もの方が亡くなられた。通常、台風によってこれだけ多くの方が亡くなることはない。なのになぜ、あまり注目されていないのか。 巨大な災害の後に起こった大災害。 それがどのような災害であったのか。なぜここまで拡大...続きを読むしてしまったのか。実際、どんなことが起きていたのか。 そこにいた方たちの姿が、息遣いが、伝わってくるように感じ、震えました。 気象台の方々の、技術者、研究者としてのご尽力を知り、頭が下がる思いでした。 読み終えた後もずっと、頭と胸に感覚が残っています。 本書を読み、災害は、その規模の大きさゆえに二重に起こることもあることを胸に刻みました。
第2次世界大戦がはじまる前、当時の中央気象台は軍による統制を受けることになり、真珠湾攻撃における気象予報も行った。戦時は人員も拡大し、軍事に資する気象予報を行う。 昭和20年8月1日には、中央気象台が大本営に組み込まれ、大本営気象部となる発令がでるはずだったが、ポツダム宣言の諾否にかかる調整で二の...続きを読む次のなるなか、原子爆弾が広島と長崎に落とされる。 終戦後、通信事情が悪くなったこともあり、気象電報の入電がほとんど止まってしまう。8月17日午前6時の入電は、前橋の熊谷の2地点だけという状態であった。 これでは天気図が書けるわけもなく、空白の天気図が残されている。しかし、8月22日には気象管制が解除され、NHKラジオ放送も再び再開された。 その後、9月17日にのちに枕崎台風と呼ばれる大型台風が九州、中国を横断して日本海に出たのち、奥羽を横断して太平洋に出た。この台風による災害が九州ではなく「広島県の死傷不明3066名を初とし」であったのはなぜか。これが、本書の導入。 「天気図の空白は、歴史の空白ではないかと感じた。記録を残すことが将来の災害、戦争、核戦争を防ぐうえで大きな役割を果たすと考えた。」と著者は述べている。 忘れてはいけない歴史が、本書にある。
終戦のあと2年ぐらいに大きな台風被害が日本で出たことはきいたことがあったが、原爆投下の翌月である1945年9月に広島を枕崎台風が襲ったことは、不勉強にして知らなかった。 その意味で、魂のこめられた(=臨場感があって読みたくなる)ノンフィクションとしてこのような記録がのこされたことの意義は非常に大きい...続きを読む。著者があとがき(p.428)でも言うように。 自分自身も、読んで本当によかった。 原爆投下の瞬間の閃光・熱戦(p.91)や、その後の街中の人々の死にかけたような様子(遺言をきいて下さいとか、水を下さいとか。P.139)の描写も鮮烈で印象にのこるが、やはり9月の台風の時のおそろしさ(河川水位上昇、山津波、それによる京大調査隊の被災)は出色の描かれようだ(p.250~)。のちに広島市長になる浜井氏の「原爆砂漠が原爆湖水になった。このまま水が引かなければいいのに」といいたくなるのも、気持ちがよくわかり、痛ましいほどである(p.268)。 加えて、戦時に文科系から運輸通信省に移り、更には軍部との協力体制に組み込まれるという激動(p.28,38)にありながら、誇りないしは責任感を胸に観測を続け、「空白」を消そうといた観測員たちの様子には胸を打つし、枕崎台風の時「予報」ができなかったことも甚大な被害の一因、ということ自体も業務の重要性を語る典型的なメッセージだ。(p.293,394) 最後に、黒い雨の調査についてもふれておかねばならない(p.369,400)。こういう調査がなされていたこと自体が素晴らしいし、今まさになされている訴訟にあっても、参照できるのではないかとも思える。 いずれにせよ、聞き取りを重ねてマッピングするという手法が本質的で、効果的だとも思い知らされた。
広島の原爆投下後、その翌月に襲った巨大台風。広島気象台で働く人々の目を通じて知るノンフィクション。状況を伝えようにも手段のないもどかしさ、その後の被害状況を地道に調査し、それが後年私たちに伝わってきたありがたさ。そしてページを多くさかれた広島の原爆投下時、後の生々しさ。ひとつひとつが貴重で重く、今も...続きを読む起こる山津波の被害などにも通じる、広い範囲で残してもらいたい1冊です。
1945年、広島地方気象台の記録。 被爆直後の9月17日、枕崎台風が広島を襲っていたことを不覚にも初めて知った。 筆者は、8月6日まで、8月6日、8月6日以降の台員の動きを丁寧にたどる。8月6日の、気象台自身も被害を受けながら欠測なしの観測続行、中央気象台への通知手段探索の奮闘には本当に頭が下がる。...続きを読む市内の惨状の記録は忘れてはならないだろう。また、黒い雨の記録は、後に被災地域の再評価に結実する。 一方、1ヶ月後の枕崎台風の襲来は、気象台にとって、痛恨事となった。情報の収集・発信共に貧弱な状況での被災が如何に悲惨な結果を生むか。3.11もつながる複合災害の教訓は学び、伝えてゆかなければならない。 観測し、記録する、気象人の魂を教えていただいた。
[焰のち豪雨、その下の人間]原爆が投下された広島をそのわずか一ヶ月後に襲った超大型の「枕崎台風」。気象に関する情報が途絶した広島で、数千名の死者・行方不明者を出したその災害と、2つの災厄にも負けることなく、生活を取り戻し、日常を持続させようと務めた人々の記録です。著者は、「核と災害」をテーマに多くの...続きを読む著作を手がけている柳田邦男。 8.15という「点」ではなく、その前後の時間軸である「線」、また原爆の直接の影響にとどまらない「面」までをも視野に入れた作品として超一級のノンフィクション作品と言えるのではないでしょうか。30年以上前に著された作品なのですが、危機管理、戦争、気象学、そして道徳的観点からもいまだに一切色褪せることのない価値を有しているように思えました。 原爆と台風という点にクローズアップしてしまうと、どれだけ悲惨な形相に満ち満ちた本なのだろうと思っていたのですが、本書で特に焦点を当てられているのは、その災厄の中でも必死に地に足をつけて日常を生きた人々の記録。戦時・敗戦時という特別な状況におかれながらも、任された日々の業務をしっかりとこなすことに使命感を覚えた先人たちの姿に、つくづく頭を垂れる思いがしました。 〜考えて見れば、自分がやって来たさまざまな記録や報告書を残す仕事は、未解決の過去を絶えず現在形に置き換える作業ではなかったか。〜 復刊してくださりありがとうございます☆5つ
知られているもの、余り知られていないものを含め、本作は「普通の人達の目線」で「非情な事態」を描く… 現代の戦争は、「敵対陣営の軍事行動を阻む」ことを名目に、輸送、通信、産業の生産活動、エネルギー供給等々「社会が営まれる基盤そのもの」を破壊し尽くそうとする“総力戦”というものである。それ故に、「気象...続きを読む情報を伝える通信網」のようなものまで戦災で損なわれ、大型台風で「考え難い程の大きな犠牲」が発生してしまった…『空白の天気図』という本作の題名は象徴的だ。“天気図”というようなものは、作中に出て来る“観測精神”のような考え方で必死にデータを集め、毎日間違いなく作成することを常とするモノである。それに“空白”が生じたという意味…深いものが在る…
戦後大きな台風が来たのは知っていたが、 ここまで詳しくは知らなかった。 大きな戦争があり被害者としてその場にいる方々が、 職人としか言いようの無い思いや行動、 考え方のおかげで結果や情報が残され後世に伝わっていく。 8月6日からの広島の様子、 今多くの情報や資料として残されている以外のものも たくさ...続きを読むんあったんだろうが、権力や敗戦国としての立場で 日の目を見ないものもあるんだろう。 けれど、苦労して手に入れた情報を活かしているのかどうか。 立場や環境が違えば、大きな災いも資料となり得る。 そして、あとがきにある作者の思いと、 解説の「想定内の事実が起こってしまった」 の文章をしっかり考えたいと思う。
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空白の天気図
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柳田邦男
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