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事故論の第一人者が突く、この国の「失敗の本質」。 なぜ「想定外」という免罪符がまかり通る日本になったのか。福島第一原発の事故調査・検証委員も務めた著者が、50年にわたりあらゆる被災地を歩き、見て、分析し続けた結果、得た教訓を明らかにする。広島・長崎の原爆、チェルノブイリ、スリーマイル、東海村臨界事故、阪神・淡路大震災、新潟中越地震、そして福島。これぞ事故分析のバイブルというべき一冊!
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Posted by ブクログ
「想像以上」「予想以上」という言葉と共に疑問に思っていた「想定外」という言葉から、各種災害(東日本大震災・チェルノブイリ・スリーマイル島・東海村臨界事故・原爆・阪神淡路大震災など)の原因や元凶、今後の対策に至るまで厳しい追求と的確な提言の書かれた本。著者の柳田邦男の性格がよく現れているとともに、最近...続きを読むの表面だけ取り上げての論評とは一線を画す重みのある内容に感服。特に、タイトルにもなっている「想定外」という言葉の定義を3つにまとめ、それをそれぞれ追求している所が本書の核心かもしれない。 それともう一つ。柳田にインパクトを与えたビートたけしの発言、「マスコミは5000人死んだ災害が起きたといって騒いでいるが、そうじゃない。一人死んだ災害が5000件同時に起きたんだ」には、ビートたけしが物事に対する鋭い視点を持っていることを改めて認識させられた。彼が映画監督として大成する素地なんだろう。
東日本大震災の後、「想定外」という言葉が流布したことを受け、それまでにいろいろな場所に書き溜めた小論、現場を訪問して気づき考えたことなどをまとめた1冊。それぞれの章にどういう狙いでこの章をまとめたのか、という導入部分があり、著者が意思をもって編集しなおしたことがよく判って大変ありがたい。 また、この...続きを読む本では「想定外」という言葉や災害の前提条件は、思考停止や想像力の欠如に陥るだけでなく、それ以上の場合のことを考えることを放棄し神頼みとしてしまうことを憂慮している。そして決して「想定外」などではなく、実際には想定もできるし準備や対策もできることを繰り返し述べている。あとは現場での取材を通して考えたこと、現場で生活する人々の心に寄り添うことの重要性についてもページを割いている。 ■巨大システムの時代には、事故はシステムの「辺縁部」で起こりやすく、それが全体を破局に導くことさえあるのに、業界も行政も技術者もそのことへの認識が希薄。 ■災害は人間ば甘く見て問題にしなかった部分や、防災に関する発想の欠落したところを、狙い撃ちするかのように衝いてくる。 ■「専門家」には2種類のタイプがある。ひとつは災害の現場に足を運び、本当の災害とは何かという本質を見て議論するタイプ。もうひとつは行政機構や企業、組織の自己防衛のために、ある種の枠組みの中でだけ議論するタイプ。我々は相手がどちらにタイプなのか、よく嗅ぎ分けて聞く必要がある。
阪神大震災から23年たった、とのニュースを見て、ふと読む。冒頭の、「想定外のシナリオを一々つぶさに想定していてはいつまでたっても物はできない。確率的に優先度を決め、コストとの兼ね合いで線引きをする必要がある」これがだめだ、という文が効く。恥かしながら、本書読後の今、「じゃ、どうすんの?」という問い...続きを読むに自ら答えられず・・・。深く、重い課題である。
世の中の全ての品々に「絶対に安全」というものは存在せず、必ず何らかの「危険性」を孕んでいると私は考えている。例えば、こんにゃく菓子をのどに詰まらせたり、小麦製品でアレルギーを発症したりと、意外なもので重大な事故を起こすこともある。原子力もその例に違わず、「絶対的な安全性」はあり得ない。 私は電力会社...続きを読むや政府の言う「安全神話」という言葉は、関係者の不断の努力が有り、僅かなリスクの芽も摘みとって達成されていると考えていた。しかし、東日本大震災で、原子力発電で言われていた「安全神話」と原子力関係者、電力会社、(原子力安全・保安院などを含めた)政府への「信頼」は脆くも崩れ去った。 東日本大震災で発生した津波は、電力会社および政府の想定をいとも簡単に上回り、福島第一原発の辺縁の弱点を襲った。本書では、電力会社および政府の歴史的事実と事故が起きたときの影響の大きさを勘案せず経営的・政治的都合によりリスクを値踏みした「想定」と、震災後に免罪符として使われている「想定外」という言葉を強く批判している。本書に綴られている様々な事象を読むに、この批判に納得しないわけにはいかない。 本書の後半では、阪神淡路大震災や中越地震、十勝沖地震等での取材経験を生かして、地方自治体や個人が災害を侮ることなく防災意識を改革することが、災害時に被害を最小うえで必要だと説いている。これも我々が災害被害を過小に「想定」することなく、常に備えよと示唆しているのだろう。 とにかく、原発の事故から身近な避難術やボランティアへ活動まで、本書では多くのことを学んだ。
これまで何度も日本を襲ってきた自然災害。 その中で、日本人がどれだけ学び対策を考えてきたのか。 自然災害で大きな被害が出るたびに、これまでの経験になにも学んできていないのではないのかと思わされる。 安全対策と経済性の間で、経済性が優先され、そのことによって大きな被害が生まれていくのだとしたら、そし...続きを読むて、その責任逃れのために、「想定外」という言葉が使われるとしたのだったら、すごく悔しい。 日本は、多くの自然災害にあい、少しずつは進歩している。そのことはこの本を読んでいても感じる。 でも、まだ不十分。 今回の災害でより大きな進歩があることを望む
3.11東日本大震災を受けて、これまで日本を襲ってきた災害を見つめ直した作品。それぞれの災害から間もない頃に書いた文章の再構成となっている。 3.11が歴史になるまでには、まだまだ長い時間が必要だと思いますが、既に歴史となった(阪神淡路大震災を歴史と言うのは、まだ早すぎますが)災害を振り返ると、3...続きを読む.11の時に教訓とできていたはずの出来事が多い。それを想定外と言う言葉で免罪してしまうのは、やはり間違いだと思う。『起きる可能性があるものは、必ず起こる』そう言う考えが重要であることを、改めて感じさせられた。
私が柳田邦夫氏の著作を初めて読んだのは「日本の逆転した日」という文庫本でした。中学生のときだったと思います。自動車のロータリーエンジンや、製鉄での転炉など1980年代に日本の工業時術力が世界に追いつき、そして世界一になるドラマを様々な業界の実話をもとに丁寧な取材で詳しく述べられていました。工業技術や...続きを読む巨大システムを論じさせれば随一の視点をお持ちの柳田氏が福島原発事故やJCO東海事業所での臨界事故などにどのような視点をお持ちであるか、興味深く読みました。「複雑で高度な技術してステムではシステム中枢部は安全確保に万全の配慮をした設計になっているが、システムの縁に当たる部分でまさかと思われるミスなどが起きやすく、それが引き金となってシステム全体の破壊を招く」という柳田氏の「辺縁事故」という概念は、非常用発電機の不備によって重大な事故に至った福島原発事故の本質を的確に押さえていると思いました。
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「想定外」の罠 大震災と原発
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柳田邦男
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