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この金融危機は我々に何を問いかけているか。2008年夏、一瞬にして祭りは終わった。新自由主義とはなんと薄っぺらいものだったのか。表層的な原因分析や処方箋を超えて、いま考えるべき危機の本質とは? (講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
先日参院選があったが、各政党手段は違えど、どこも「いかにして経済成長をするか」を訴えていたことに疑問を感じ読んでみた。どこか一党くらい、「定常社会」の実現を訴える政党があってもいいと思うんだけど……。
エッセーみたいな語り口なので、スラスラ読むことができます。 特に印象的だったのは、P179の「教育をビジネスで語るな」という内容です。 自分達の言葉遣いには、時代の影響が色濃く反映されています。 最近だとコスパという言葉が、時代を象徴していると感じます。 コスパは、コストパフォーマンスの略語ですが、...続きを読む今、社会のいたる所で、 この表現を見聞きします。 コスパは、ある商品が、その価格に見合うだけの価値が「自分にとって」あるORないかという判断基準のことです。 自分にとって、価値があるのか、ないのかをシビアに判断することが、当たり前になりました。 教育の世界にも、 投資、リターン、効率といった言葉が氾濫するようになりました。 母親の学歴が相対的に高く、 そして、一家の年収が高く、子供へ投資できる教育費が多ければ、多いほど、 子どもの学歴は高くなり、年収も高くなる。こういった知識を、 誰もが知るようになりました。 良いか悪いかは、別として、なぜ、そういった言葉が氾濫するようになったのか、 平川氏は、こう語っています。 教育の問題を経営の問題として、語っている。 (以下引用) 経営の問題、すなわち、ビジネス上の問題とは、利潤の確保という現実的、 即物的な目標達成のための処方箋を書き、それをひとつひとつ着実に実行してゆくことで解決されるべき問題である。 例えば、ある生徒の、数学のテストが悪い。テストの点数を30点上げるためには、どうすればいいか。 ①毎日、問題集をやる、②わからない問題を先生に聞く、③間違った問題を繰り返し行う。 ①~③を継続すれば、高い確率でテストの点数が上がります。 日本では、今、これを「教育」といっています。果たして、これが教育なのか? 私は、ビジネスの論理として、問題を考えることは、非常に大切なことだと思いますが、 それをやってはいけないという領域は、やはりあると思います。 教育にビジネス用語が氾濫しているということは、自分達を、商品として考えるということです。 つまり需給バランスで商品価格が決まる。それは、学歴、年齢、経験、知識、所属先を考慮して、 労働市場が個人に値札をつけている社会です。ここ20年で、日本社会は、人を見る基準が、かなり商品化していると思います。 つまり年収300万円の人は、年収600万円の人よりも、価値が劣るということです。 今の日本社会がまさにそうなっている感じがします。 ここ20年で、かなり、日本社会は階級的になったと感じます。 平川氏は、さまざまな著作で、警告していますが、 あまり効果は上がっていません。 多くの人が、今の社会に違和感を持っていると思いますが、 どうにも、ならないというのが、今の現状です。
日頃世の中に感じてる違和感を、見事に文章化してくれていました。「ほんとそうだよな〜」という箇所がたくさんあって本が付箋だらけになりました。
一読するとわかるが本書はけして経済学についての表面的な戦略や批判の書ではない. 継続的な経済成長を目指すことを日本全体が当たり前と考えていることに疑義を唱える.著者の言うとおり数値的に無限の成長などありえないのである. 今の社会は成長期ではなく,成熟期に達した社会であると著者は言う.自然の流れとして...続きを読む社会もこれから老いていく時期が来ているが,若さと引き換えに得たこれらのものを成熟した私達が成熟した未来として生きていくのであると希望を持った締めくくりにしている. 社会も人間も生まれてから成長、退行していくことはいむべきことではなく自然の必然なのである. 一流の哲学書であった.
読み応えのある、とても、味わい深い本でした。 著者と全く同い年(青年から熟年まで、高度成長時代と低成長の時代を生きて、今や「成長の限界」を感じている世代)なのと、大学違えど工学部出身でありながら、エンジニアではなく、ビジネスの世界に身を置いて来たので、言葉に出来ない何かの共通項があるのか、本書の内...続きを読む容には深く共感できた。 私も一時期、ITハード系のビジネスで秋葉にしばしば通っていたのだが、著者と接点はなかったは残念。 目次 ------------------------- 序章 私たちもまた加担者であった 第一章 経済成長という神話の終焉 リーマンの破綻、擬制の終焉 宵越しの金は持たない 思想の立ち位置 専門家ほど見誤ったアメリカ・システムの余命 経済成長という病 グローバル化に逆行するグローバル思想 イスラムとは何でないかを証明する旅 「多様化の時代」という虚構 限りなく細分化される個人 第二章 溶解する商の倫理 グローバル時代の自由で傲慢な「市場」 何が商の倫理を蒸発させての火 私たちは自分たちが何を食べているか知らない ギャンブラーの自己責任論 街場の名経営者との会話 寒い夏を生きる経営者 ホスピタリティは日本が誇る文化である 第三章 経済成長という病が創り出した風景 利便性の向こうに見える風景 暴走する正義 人自由主義と銃社会 教育をビジネスの言葉で語るな テレビが映し出した異常な世界の断片 雇用問題と自己責任論 砂上の国際社会 直接的にか、間接的にか、あるいは何かを迂回して「かれ」と出会う 終章 本末転倒の未来図
友人のtu-taさんのブログを見て、読んでみようと思った一冊。 一言でとても読みやすい本だった。 平易に書かれていたというのではなく 自分のような一般人がうまく言葉に表せない今の世の中のモヤモヤや クエスチョンマークを書き示してくれたような感じがする。 例えば、 「果たして、消費資本主義に浸か...続きを読むりきった現代人は、その価値観を変更することができるのだろうか。 たぶん、価値観を変えることも、生活を変えることも恐ろしく難しいだろう。 誰もが、本心からそのように思わなければ、何も変わらないからである。(P45-46)」 「かくして、経済対策も、医療対策も、教育方針も、人口対策も、経済を持続的に成長させる という前提のもとに設計され、施行される。経済成長は、人間の社会が達成しなければならない ほとんど唯一の目標となる。ほんとうは、経済が成長するか鈍化するかは 人間の社会の様々な要因が生み出す結果であり、成長への期待はただの願望であり 妄信に過ぎないとしもである。しかし、なぜか経済がマイナス成長するという前提は、禁忌とでもいうように 遠ざけられ、よくとも見てみぬ振りをされてきたのである。」(P65〜66) 「グローバリズムとグローバル化は違うのである。グローバリズムの結果、世界がグローバル化してゆくのではない。 世界がグローバル化するのは、民主主義の発展や、科学技術の発展を背景にした自然過程だが グローバリズムはアメリカないし、その随伴国が、世界の富を収奪し、貧富を固定するための 国家戦略だからである。」(P74) 「多様性。国際性。市場性。実効性。自己責任。自己実現。これらは一連のマインドセットであり、 グローバル化する世界の中で、市場競争に打ち勝つために必要な経済合理性を 担保する思考方法を構成する特徴的なワーディングなのである。」(P94) アメリカ合理主義の参照者が褒め称えるダイバーシティーという価値観は 多様というよりは、個々の欲望の目先が細分化し、お互いがお互いを参照する必要のないところで 自己決定、自己実現しようともがいている光景だとしか思えないのである」(P97〜98) これらはふんわりとは自覚していたものの、実は言説かされていなかったことのように思う。 少なくとも、自分自身の言葉として現れていなかった。 なぜ経済成長する必要があるのか、活性化する必要あるのか。 成長、活性化ありきの議論ではなく、その必要性を考えて見る必要があると思う。
☆☆☆2019年9月☆☆☆ 最近、平川氏の著作を読むことが多い。 共感できることが多いのだ。 ここのところ、日本は「お金」こそが人の価値を決めるかのような風潮が強い。貧しいことを恥と考える。 その根底には、経済成長至上主義や市場至上主義があるという。もっと人々の生活やヒューマンスケールを意識した...続きを読む「定常モデル」を確立することが大事だと筆者は説く、と僕は解釈している。
副題として 「退化に生きる、我ら」とある。 著者は、2000年あたり を境に 価値観が変わったと指摘する。 なぜかわったのか よく見えない という。 それを探る作業が この本のようだ。 言葉使いは 巧みで まるで 全共闘の闘士のようである。 ヒラカワ氏は言う 『果たして 私たちは、揺れ動く時代...続きを読むの表層に浮遊することから 自らを解き放つことができるのだろうか』(6ページ) 20世紀は 政治の時代とするならば、 21世紀は 経済の時代といえる。 ヒラカワ氏は言う 『経済の時代とは 卑近な言い方をすれば、金持ちが、 ただ 金持ちだけであるという理由だけで威張っていられる時代 だともいえる』 イデオロギーの正当性から 経済差異という数値的な指標がクローズアップされるようになった。 言葉(思想)よりは 財力 観念(イデオロギー)よりは 実質 質より量・・・ 『何よりも 経済成長が重要であると考えるようになった』 経済重視の成長というのが 金融工学を生み出し、 欲望を限りなく 拡大していった。 それが リーマンショック で挫折して あらたな 座標軸が 見えなくなっている時代といえそうである。
現代は少子化が進んでいるのではなく、むしろ今までの人口増加が異常で、今は正常な出生率に戻りつつあるんだ、という意見がおもしろい。そして納得! 震災があった今、この本を読むと、いろいろと考えさせられます。
2年越しでようやく読めた本。 読み進むにつれ、社会システムにまで言及されていて、真ん中をすぎたあたりから読むのが止まらなくなりました。 話題は少し古くなってしまったけど、そのことを差し引いても今のタイミングで読むことができてよかったと思いました。
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平川克美
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