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Posted by ブクログ
戦局が悪化をたどっていた昭和18年6月8日正午頃、広島県柱島泊地に停泊中の戦艦「陸奥」は突如大爆発を起こしその場に瞬く間に沈んだ。
それから26年の歳月を経て、本書は陸奥爆沈の真相に興味を持った著者による執拗な探求の道筋を辿った渾身のドキュメンタリー小説であり、歴史の暗部に光をいれた記録文学の秀作である。
最初著者の関心は低調である。しかし、陸奥爆沈の資料を捜索し続けている内に、著者は何かにとりつかれたようにすみずみにまで目配りを行い、活動的かつ執念を燃やして真相に迫る凄みが次第に露わになってきて、たんたんと描いているはずなのだが、読んでいるこちらもその迫力に圧倒されぐいぐいと引き込まれていった。
「陸奥」完成までの経緯から始まり、爆沈後の周囲の動きや、査問委員会の行動、大規模な箝口策、三式弾のこと、そして、困難を極める潜水調査と、緊迫感ただよう状況を刻々と伝えながら、次第に著者の筆致にも熱がこもってくる。その中で査問委員会が持った大きな疑惑が放火説であることを知った著者は、今度は日本海軍の歴代の爆沈事件にまで視野を広げていく。そこにみる構成と視点は、まるで社会派推理小説を読んでいるようであり、著者の思考過程をトレースするかのように展開するその「報告」は、まるで一緒に事件を追っているかのように錯覚させるものであって、なかなか見事な手法であったと言える。
冒頭で著者はいう。別に兵器である軍艦には興味はない。だが、戦艦武蔵にしても(陸奥もそうだが)、フネを作り上げ動かすために結集した人々に戦争と人間の奇怪な関係を見出し、それほどの知識、労力、資材を投入したにもかかわらず、兵器としての機能を発揮しないまま、多くの犠牲者とともに沈んだ構造物に戦争のはかなさを感じると。
そうした著者の視点は事実をたんたんと積み重ねながら、軍艦そのものよりも、それを動かす人間とその背景、組織の中の泥臭い人間関係の狭間で弱さを露呈する人間そのものの行動を明らかにすることであり、そういう意味では本書は陸奥のみならず軍艦爆沈事件に関係した人々のヒューマン・ドキュメンタリーであったと言えるだろう。
実は本書の内容は、中学生の頃に読んだ『海軍よもやま物語』シリーズ(光人社)の中で、今ならコピーライトに抵触するのではないかと思えるほど詳細に紹介されていたのでかなりの部分は知っていて、いまさら感もあったのだが、内容はともかくとして、その鬼気迫る事件真相究明へのアプローチには圧倒されとても面白かった。最近は当時の日本軍機や軍艦などが映画やラノベ、ゲームなどで取り上げられてまたブームになっているようだが、軽薄な物語やキャラに熱中するのも良いが、一過性のブームに踊らせるだけではなく、その背後の生きた「人間」や無機的な兵器の行く末にまで思いをいたして欲しいものである。
Posted by ブクログ
組織論として読むとき戦慄を感じる。
極端な話、組織内の一人の不満分子が何千人もの命を奪い組織を破壊させることができる。
たとえ他のどんな組織より規律が厳しくと統率が執れていたとしても。また、組織が危急存亡の時で困難に取り組むべき状況にあったとしても。
陸奥爆沈という結果に対して、その原因はあまりにも些細なことに感じる。
本書の結論は憶測にすぎないが、想像上確かにありうべきことだった。
そしてどのような組織でも同じリスク、可能性を秘めている。
組織が直面し続ける宿命ととらえるか、
いつか克服すべき悠久の課題ととらえるか、読み手の置かれている組織内のポジションによって読後の感想が様々分かれるのだと思う。(個人的には、根本的に克服すべき課題だと思うのですが楽観的でしょうか)
内部告発のチャンネルが増えて容易になっている現状を考えれば、昔よりも今の方が組織は内部リスクを多く抱えているはずであり、本書はより注目されるべき小説のはず。
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