【感想・ネタバレ】陸奥爆沈のレビュー

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昭和18年6月、瀬戸内海の桂島泊地で謎の爆発で沈没した戦艦陸奥。なぜ事故が起きたかを丹念に検証する作品。

最先端の技術を用い、国と国の争いで抑止力として重要な存在。浮かべる海城の戦艦。しかしながらそれを動かすのは人。帝国海軍の過去の歴史から同種の事故が頻発していることを筆者は知る。

技術の極致、攻撃力の象徴の戦艦を支えたのは生身の人間。明治維新から敗戦まで、大日本帝国を支えた下級兵士たち。人々の意図を超えて暴走する機械。

吉村昭ならではのカタストロフィ物を堪能できる作品でした。

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2024年03月05日

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昭和十八年六月八日、戦艦陸奥爆沈。
死者、千百二十一名。
筆者の努力により、次々に明らかになる謎。
果たして、ひとりの軍人による行為で、一隻の戦艦が瞬時に沈没したのだろうか。
今も残る謎。
証拠は、塵となって消えてしまった。

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2019年08月10日

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ネタバレ

連合軍の反攻つのる昭和18年6月、戦艦「陸 奥」は突然の大音響と共に瀬戸内海の海底 に沈んだ。死者1121名という大惨事であっ た。謀略説、自然発火説等が入り乱れる爆 沈の謎を探るうち、著者の前には、帝国海 軍の栄光のかげにくろぐろと横たわる軍艦 事故の系譜が浮びあがった。堅牢な軍艦の 内部にうごめく人間たちのドラマを掘り起 す、衝撃の書下ろし長編ドキュメンタリイ 小説。

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2015年02月22日

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戦局が悪化をたどっていた昭和18年6月8日正午頃、広島県柱島泊地に停泊中の戦艦「陸奥」は突如大爆発を起こしその場に瞬く間に沈んだ。
それから26年の歳月を経て、本書は陸奥爆沈の真相に興味を持った著者による執拗な探求の道筋を辿った渾身のドキュメンタリー小説であり、歴史の暗部に光をいれた記録文学の秀作である。
最初著者の関心は低調である。しかし、陸奥爆沈の資料を捜索し続けている内に、著者は何かにとりつかれたようにすみずみにまで目配りを行い、活動的かつ執念を燃やして真相に迫る凄みが次第に露わになってきて、たんたんと描いているはずなのだが、読んでいるこちらもその迫力に圧倒されぐいぐいと引き込まれていった。
「陸奥」完成までの経緯から始まり、爆沈後の周囲の動きや、査問委員会の行動、大規模な箝口策、三式弾のこと、そして、困難を極める潜水調査と、緊迫感ただよう状況を刻々と伝えながら、次第に著者の筆致にも熱がこもってくる。その中で査問委員会が持った大きな疑惑が放火説であることを知った著者は、今度は日本海軍の歴代の爆沈事件にまで視野を広げていく。そこにみる構成と視点は、まるで社会派推理小説を読んでいるようであり、著者の思考過程をトレースするかのように展開するその「報告」は、まるで一緒に事件を追っているかのように錯覚させるものであって、なかなか見事な手法であったと言える。
冒頭で著者はいう。別に兵器である軍艦には興味はない。だが、戦艦武蔵にしても(陸奥もそうだが)、フネを作り上げ動かすために結集した人々に戦争と人間の奇怪な関係を見出し、それほどの知識、労力、資材を投入したにもかかわらず、兵器としての機能を発揮しないまま、多くの犠牲者とともに沈んだ構造物に戦争のはかなさを感じると。
そうした著者の視点は事実をたんたんと積み重ねながら、軍艦そのものよりも、それを動かす人間とその背景、組織の中の泥臭い人間関係の狭間で弱さを露呈する人間そのものの行動を明らかにすることであり、そういう意味では本書は陸奥のみならず軍艦爆沈事件に関係した人々のヒューマン・ドキュメンタリーであったと言えるだろう。
実は本書の内容は、中学生の頃に読んだ『海軍よもやま物語』シリーズ(光人社)の中で、今ならコピーライトに抵触するのではないかと思えるほど詳細に紹介されていたのでかなりの部分は知っていて、いまさら感もあったのだが、内容はともかくとして、その鬼気迫る事件真相究明へのアプローチには圧倒されとても面白かった。最近は当時の日本軍機や軍艦などが映画やラノベ、ゲームなどで取り上げられてまたブームになっているようだが、軽薄な物語やキャラに熱中するのも良いが、一過性のブームに踊らせるだけではなく、その背後の生きた「人間」や無機的な兵器の行く末にまで思いをいたして欲しいものである。

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2014年04月15日

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組織論として読むとき戦慄を感じる。
極端な話、組織内の一人の不満分子が何千人もの命を奪い組織を破壊させることができる。
たとえ他のどんな組織より規律が厳しくと統率が執れていたとしても。また、組織が危急存亡の時で困難に取り組むべき状況にあったとしても。
陸奥爆沈という結果に対して、その原因はあまりにも些細なことに感じる。
本書の結論は憶測にすぎないが、想像上確かにありうべきことだった。

そしてどのような組織でも同じリスク、可能性を秘めている。
組織が直面し続ける宿命ととらえるか、
いつか克服すべき悠久の課題ととらえるか、読み手の置かれている組織内のポジションによって読後の感想が様々分かれるのだと思う。(個人的には、根本的に克服すべき課題だと思うのですが楽観的でしょうか)

内部告発のチャンネルが増えて容易になっている現状を考えれば、昔よりも今の方が組織は内部リスクを多く抱えているはずであり、本書はより注目されるべき小説のはず。

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2017年06月17日

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あの潮の流れが入り組んだ瀬戸内海で1000人超の死者が出る大惨事。戦時中の海軍の膝下で起こったこの出来事を海軍がいかにして機密事項にしてゆくのか。
浜で遺体を焼くシーンが印象的でした。後半筆者の独特の切り口から、ある仮説に至る。

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2013年06月03日

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吉村昭にしては珍しく、ドキュメンタリー形式の小説。
昭和18年に起きた戦艦「陸奥」の爆沈事件を、それを調べる著者という立場から解き明かしていく。
「陸奥」の話だけでなく、他の戦艦の爆沈事件の歴史を追っている点が興味深い。また、歴史上あった戦艦爆沈事件の原因が、どれも人間が意図してなしたことだという事実に驚く。
戦艦の爆沈事件をとおして、戦艦という器に入っている1人ひとりの無名の人間にスポットライトをあてている見事な小説である。

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2013年05月06日

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吉村節炸裂!すごい本読んだ!導入部から秀逸です!!
風化の波にさらわれて消えてしまいそうな真実・歴史の暗部を、綿密な取材で掘り起こしていく著者のその真摯な姿勢と執念が見事に結実しています。
陸奥爆沈を通して描かれる社会・軍隊のひずみと人間の心の歪み。
著者なりの、陸奥とともに沈んでいった魂への救済であり鎮魂歌であった筈が、それだけではなく、著者の取材とともに意外な真実が明らかになっていく。その様子は上質なミステリーのようだった。
なんとも言えない読後感にそのままもう一度読んでしまった。
吉村昭は本当にスゴイ!!

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2010年12月17日

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昭和18年、岩国市柱島泊地で発生した戦艦「陸奥」の謎の大爆発。記録文学の第一人者が、昭和44年に残存する資料やインタビューを通じて、謎解明に挑む。地道な調査を通して見つけ出した事実とは?意表をつく展開で一気読み。これぞドキュメンタリーという傑作

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2023年12月31日

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ドキュメントタッチの作品で、著者自身が取材を進めていく様が描かれている。旺盛な取材力で、この時期に後世に残してくれたのはありがたい。戦艦が、多種多様な人間を詰め込んだ容器と形容したのは慧眼。2021.3.6

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2021年03月06日

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ネタバレ

詳細な調査により紡ぐ戦艦陸奥沈没の真相に迫る! まあ結局は真相には辿り着けないのだけれども、当時の構造的な問題を掘り下げる筆致は、そうなんじゃないか? と思わせる...。現代の人事施策にも当て嵌まる著者の提言のように思えてならない。

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2020年08月01日

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陸奥の爆沈原因の探求よりも、それを探るうちにドンドン出てくる明治から昭和にかけて海軍軍艦が起こした数々の爆発事件。その発生状況や原因および海軍内での処理方法が興味深い。

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2018年11月28日

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暗部というか、大きな組織だしなと思いつつ…。
陸奥ほどの大きい戦艦であれば、いじめもすごかったことでしょう。しかし…火薬庫を厳重にする前に、もっと何かに気がつけよ!とも思わなくもないですが、時代なのでしょうね。

それにしてもホント、吉村昭ってすごい。ご本人の思うところは差し挟まず、とにかく徹底的に調べている。自分の価値観だけで見ないというのがホント、なかなかできないことです…。

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2015年08月17日

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天一号作戦の大和乗組員の生存率が8%だとすると、陸奥爆沈での生存率10%が如何に異常な数字なのかがわかります。

戦ってもいないのに爆沈した陸奥は哀しいですが、その事実を隠そうとした海軍は昭和18年の時点でそれほどまでにすでに狂っていたのかと感じました。

そして意外なほどに戦艦事故の原因は人為的なものだということに驚き、あっけないほどにもろく潰え去った陸奥はその後の海軍を象徴していると思いました。

この小説は戦後26年経って書かれたもので当時はまだまだ生存者が残っており、吉村氏の丁寧な取材により徐々に真相が明らかになっていきます。

馴染みのない用語が多量にあり途中飛ばしながら読みました。

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2013年11月14日

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ネタバレ

 戦艦陸奥は、何故爆沈してしまったのか。
 上記の切り口で書かれているが、その内容は「人」についてである。過去起こった様々な爆発事故を調査していく中で、其処に関わった人について筆者は言い知れぬ悲哀を覚えている。
 作為的に爆発させられた軍艦たち、それらの事故を究明すべく奔走する人人、艦と共に海中に没した兵士・再び陸上に立つ事の出来た兵士、残されたご遺族。
 それらを丁寧に調べ上げ、この本が出来ているンだなと実感した。

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2011年08月12日

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昭和18年、戦艦陸奥、爆発事故により沈没。


精強をもってなるはずの日本海軍において頻発した艦艇の爆沈事故。本書はその原因に迫ったドキュメントです。

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2011年05月14日

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興味があるジャンルなので。

帝国海軍が誇る戦艦、長門級二番艦「陸奥」。
呉沖で大爆発を起こし、爆沈した。

この事実は最高機密となる。
また、爆沈の原因は何か?

など、作者は最初全く書くつもりはなかった。
誘われて訪れた柱島で慰霊碑を見て、何かを感じ、困難な調査を行って本書にまとめた。

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2023年02月13日

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吉村氏にしては珍しく、筆者目線で過去の出来事に迫り、調査の経緯が描かれている。

日本軍の下の階級の者の中には、前科がある者もいたことを初めて知った。
規律正しく思える軍隊にも、実は色々いて、人間臭い世界があったらしい。

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2022年09月04日

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太平洋戦争開戦時、日本は12隻の戦艦を保有し、その大半は戦場で沈没しました。最大級の「大和級」に次ぐ「長門級」の2番艦「陸奥」は戦場以外で失われた数少ない戦艦で、「陸奥」は広島県柱島泊地(基地のこと)における爆発事故によって沈没しました。
本書はその爆発事故の原因究明にあたった当時の海軍関係者への取材をもとに、「陸奥」以前にも同じような爆発事故で沈没した艦船のケースにも言及しています。
日本海軍にとって、戦時中に国内基地で主力艦を失うというのは大変ショックな事件でした。発生当時、米軍(潜水艦や航空機)による攻撃、設計上のミス(漏電による火薬引火など)、人為的な問題(規律違反によるミスや、放火)などあらゆる可能性を検証しています。証拠を集めるために沈没した艦内へ過酷な条件下で潜水夫を何度も派遣したり、積載されていた火薬や砲弾の引火、爆発の実験も行われた様子が描かれています。そのような徹底的な調査の結果、最も可能性が高いとされたのが乗員による放火でした。
規律のとれた組織である海軍の、しかも軍艦の艦内で放火などが可能なのかと著者も当初は疑問を抱きますが、「陸奥」以前にも6回もの類似の事故があり、そのほぼ全てが放火、あるいは失火であることが判明します。
軍法会議の記録などを詳細にたどると、昇進が見送られて腹いせにやったケースや、日常の厳しい訓練で上官への恨みが募った挙句に行動に移したケース、艦内での金品の盗みが発覚するのを恐れ証拠隠滅を図ったケースなど、非常に人間臭い動機であることが明らかになっています。
いかに強固な艦船を建造しても、それを運用するのは”人”ですから、職場(この場合は艦船)の人間関係や、メンタルヘルスを維持することの重要性を再認識させられるノンフィクションでした。

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2021年11月17日

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「大艦巨砲主義」とは、若き乗組員たちにとって
両性具有者の完全無欠性をイメージさせる言葉だったと思う
それは不可能性を実現した姿として
時に憧れの的であったろう
しかし、時にそれは空疎な妄想として
憎しみの対象となったかもしれない
あの「金閣寺」のようにね
それこそばかげた妄想だと、笑われるかもしれないが
そのように考えれば
火薬庫で火遊びするバカタレどもの心境も
わかる気がするのだ

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2014年09月29日

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原因がはっきりされていないのと、他の戦艦の爆沈に多くの記述がさかれており、氏の著作の中では満足度は低かった。

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2014年05月11日

Posted by ブクログ

この著者はいつも登場人物の人間くささを巧く描いていて、グイグイ引き込まれてしまう。今回も大変面白うございました。

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2009年10月04日

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